エデュケーション の商品レビュー
日本語タイトルは引っかかるのが,読みやすい翻訳です.児童虐待をふくむ 家庭内暴力のと,モルモン教が横軸で,両親と兄弟関係が縦軸の自伝です.今のアメリカの知的エリートと保守的キリスト教の労動者の分断の状況について理解する一助となった.今でもベストセラーとなっているが,どういう人たち...
日本語タイトルは引っかかるのが,読みやすい翻訳です.児童虐待をふくむ 家庭内暴力のと,モルモン教が横軸で,両親と兄弟関係が縦軸の自伝です.今のアメリカの知的エリートと保守的キリスト教の労動者の分断の状況について理解する一助となった.今でもベストセラーとなっているが,どういう人たちが読んで,どう感じているのだろうと思う.著者の反対側の人たちからみて,著者側の事実は どこまでフィクションなのだろうか.
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モルモン教徒のサバイバリストの家族の事実と、学びによって呪縛・専制からの自由を獲得していく物語。 病院や学校を拒否し、暴力と専制に支配される家族。そういう人たちがいるということは、なんとなく知ってはいたがここまでの凄まじさとは。これは現代の物語である。著者が生き延びたのが信じら...
モルモン教徒のサバイバリストの家族の事実と、学びによって呪縛・専制からの自由を獲得していく物語。 病院や学校を拒否し、暴力と専制に支配される家族。そういう人たちがいるということは、なんとなく知ってはいたがここまでの凄まじさとは。これは現代の物語である。著者が生き延びたのが信じられないくらいの衝撃。「洗脳」がどうやってなされて、そこから自由になっていくことがどれほど困難か、著者の10年以上にわたる軌跡が描かれる。 真理を学ぶこと、歴史を学ぶこと、世界が多様でありることを知ること、それらによって獲得されていく自由。その過程は凄まじいが、学びは最終的に様々な呪縛、それは意識されていないものを意識化させることも含めて、から解き放たれ、自分を獲得していく方法なのだとあたらめて気付かされる。 教育の可能性、なぜ教育を受け、学びなければならないのか、自律的に学び続けなければならないのか、を知らしめる。サバイバリストの家庭でなくても、僕らは自律的な学び続ける事によってのみ、自由になれる。
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※このレビューにはネタバレを含みます
「これは100年前の話じゃないのか?」「現在34歳の女性の、まだ終わっていない話って本当か?」と思った段階で自分の中にあるいろんな問題が複雑に湧き上がってきた。この本を読むことは、それが自分の無知に基づくものであることを認め、その一つ一つと向き合う作業でもあった。 狂気と妄信によって家族を支配し見えない敵と戦い続ける父親や、その愚かさを自覚しながらも流されていく母親や、暴力と依存を妹にぶつける兄に対して怒りと批判を向けるのは簡単である。けれど、それはこの本が「フィクション」であったなら、である。いや、でもあるいはこれがフィクションであったら「さすがにそんなバカな親はいないでしょう」とか「そんなにうまく最高の学府までたどりつけないでしょう」とか、ストーリーを作り物として嘘くさく感じてしまうかもしれない。そう、これは嘘くさく感じるほどの衝撃の連続なのだ。 様々な時代の、様々な国の、様々な文化の、様々な家庭にそれぞれの文化や常識や教義があるのはわかる。わかるけれど、タラの父親ほど極端で狂気に満ちた信念を貫き通す存在もなかなかないだろう。それを可能にした経済力と、ある程度の教養が逆にこの家族を不幸にしてきたのだけど。そして母親の作り出す非医学的「薬」によって瀕死の家族たちが救われてしまったのも不幸を増長してきたのだ。 公立の学校に通わず病院にもかかったことのないまま、ほぼゼロの状態でこの家族の呪縛からの一歩を踏み出せたタラの幸運を思う。いや、幸運なんて他力本願なものじゃない、それはタラ自身が引き寄せてきたチカラなのだ。彼女の才能を見出してくれた教授たちとの出会い、狂気の家族へと戻ってしまいそうになる彼女の手をつなぎ続けた友人たちの支え、そして、学ぶことによって過去を故郷を家族を捨てるのではなく飲み込み消化させていったタラ自身の生命力。 あぁ、どんな言葉をどれだけ費やしてもこの一冊を語ることはできない。 知性は自分を守る盾であり知識は闘う剣である。蒙が啓かれる瞬間の痛みと輝きを体感せよ。
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