エデュケーション の商品レビュー
キツかった。私よりずっと若い女性、現代の話なのだ。連鎖を断ち切る公の役割、教育とは何か、あらゆる問題を投げつけられる一冊。必読。
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後にケンブリッジで博士号をとり、研究者になるアメリカ人女性。実はアイダホで、反政府主義者の父親の元、学校に行かせてもらえず、医療も受けさせてもらえなかった。そんな著者の死闘を描くドキュメント。 素晴らしかった。アメリカには進化論を教えない学校があるとか、トランプ前大統領を支持す...
後にケンブリッジで博士号をとり、研究者になるアメリカ人女性。実はアイダホで、反政府主義者の父親の元、学校に行かせてもらえず、医療も受けさせてもらえなかった。そんな著者の死闘を描くドキュメント。 素晴らしかった。アメリカには進化論を教えない学校があるとか、トランプ前大統領を支持する反知性主義があるとは聞いてはいたが、当事者(被害者?)の声を聞くのはまた別格の体験。 頑迷な人間の心を変えるのは不可能なのだろうか、、、個人的には後半、学校に行ったことのない子がブリガム・ヤング大学に入り、初めてホロコーストという言葉を知ったり、そして猛勉強して、奨学金をとって無料でケンブリッジに入る、というサクセス体験に癒やされた。
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読んでいてとても苦しくなった。 家族からの暴力と親による精神的虐待、洗脳、支配、親の偏った思想。 公教育も受けさせず、大怪我をしても病院には連れて行かないなど、考えられないことばかり。 それでも家族でいたいのか。 家族とは何かを考えさせられる。
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子どもの悲惨な状況の中でどのように自分が変化していったか、という変化がeducatedということである。教育という漢語では言い表せない、変化されてきた、ということが最後で述べられている。 日本の副題で、大学は私の人生を変えた、とあるが、半分以上が自分の自宅があるところでの出来事...
子どもの悲惨な状況の中でどのように自分が変化していったか、という変化がeducatedということである。教育という漢語では言い表せない、変化されてきた、ということが最後で述べられている。 日本の副題で、大学は私の人生を変えた、とあるが、半分以上が自分の自宅があるところでの出来事であり、単なる大学の役割を説明したところではない。 モルモン教とひとことで言ってもよくわからないし、コーヒーを飲まないのがモルモン教だと安直に思っていたが、モルモン教のサバイバリストという宗派について知ることもできるであろう。 日本でも最近で親の宗教の信心による子どもへの影響が問題になったのは、この本の出版によるものであろうか。
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知識を得ることの価値がずしんと伝わってくる。親が子供に与える影響は重大だけれど、教育を受けあらゆる方面から物事を見ることが出き、きちんと判断できることの素晴らしさ。多くの痛みを伴いつつ前を見る著者は素晴らしい。
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髙橋源一郎さんのラジオで知って読んだ。 両親の極端な考え方のせいで、公教育を受けず、病院にもいかず、けがや病気はハーブ等の力で治し、そもそも自宅出産で生まれ誕生日もあやふやで途中まで戸籍もなくといった主人公の少女が、日本でいう大検のようなものを何とか受験し、大学へ進み、ケンブリ...
髙橋源一郎さんのラジオで知って読んだ。 両親の極端な考え方のせいで、公教育を受けず、病院にもいかず、けがや病気はハーブ等の力で治し、そもそも自宅出産で生まれ誕生日もあやふやで途中まで戸籍もなくといった主人公の少女が、日本でいう大検のようなものを何とか受験し、大学へ進み、ケンブリッジやハーバードの大学院まで進むというセルフドキュメンタリ。 アメリカのキリスト教原理主義の人は子どもをホームスクール(家庭内教育)で育て、外の教えに染まらないようにしていると聞いたことはあったけど、まさにそれの実践版といった感じ。両親が信じていたのはモルモン教だけれど、かなり厳格な教えを守っており、それに加えて、地球が1999年に終わるとか、イルミナティが支配しようとしている、など、妄想のような考えも加わっている。 読んでいてつらかったのは、お兄さんからの暴力描写や、自分が悪いんだ、私の考え方や記憶が違うのではないかと何度も思い込もうとする少女の幼さ。兄弟や両親、作者が頭を打ったり、骨を折ったり、皮膚がただけるほどの火傷をしても病院にいかないのも怖すぎる。頭を打ったせいでおかしくなった人もいるような気がする。ワクチンを打ったり、抗生物質を飲んだりすると、子どもが奇形になる、悪魔に取り込まれるといった考えもヤバイ。 作者は教育を受けることで、それまで慣れ親しんできた考え方を徐々に手放していく。両親とは決別することになるが、自分自身の人生を取り戻していく。 作者がアメリカからイギリスに渡るときに、陸続きだったらどれだけ離れていても、敵が攻撃してきたとき、終末が来たときに、家の備蓄を使ってお前を助けに行けるのに、といった感じのことを父親が言っていたのが切なかった。 どんなに歪んでいようと両親は娘を愛しており、そのことを作者は理解しているのだけれど、両親に愛され続ける娘ではいられない自我というものを教育によって得たのだ。と思った。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
アメリカでずいぶん話題になって、あちこちでやたらタイトルを目にしたので、読みたいなぁとずっと思っていた。 親がキリスト教原理主義で、子どもは全員自宅学習で育ち、17歳まで山の中で世間から隔絶されて育った後に大学へ行った女性の自伝。 最終的にはハーバードで博士号を取得した、と聞いたので、知的好奇心でいっぱいの聡明な子供が、学ぶ喜びに目覚め、様々なことを吸収してハッピーな人生を送るサクセスストーリーなのだろうとぼんやり想像していた。 全然違った。驚愕した。 「神の御心」という名のもとに行われる想像を絶するような虐待の世界から血だらけで這い上がる女性の壮絶な物語だった。 モルモン教の教義と陰謀論にとりつかれた父親は一家を完全に支配しており、子どもたちを学校には行かせないで廃材置き場の危険な解体作業に従事させる。 ガソリンを浴びて体が火だるまになろうが、高所から落ちて脳髄が見えていようが、自動車事故で脳震盪を起こし、記憶が混濁しようが、病院には行かせようとしない。痛みにもがき苦しんでいても、与えられるのは自家製ハーブで作った薬のみ。骨折、炎症、流血など日常茶飯事である。 この手の本を読んで、いつも思う。 私は、「洗脳」の恐ろしさをまったく分かっていない、と。 シエラレオネで少年兵士として戦場に駆り出されていた少年の自伝(イシメール・ベア『戦場から生きのびて』)を読んだ時もそうだったが、とりあえず地獄だった場所から抜け出して安全に住む場所が見つかった時点で、読んでいる私は「ああよかった、やっと助かった」と安堵する。「ここから先は落ち着いた幸せな暮らしが待っている」と思う。 だけど、すぐにそれは大きな間違いだと気づく。 完全に洗脳された心は新しい世界を拒絶し続け、信じられないような力で彼らを元いた場所へと連れ戻そうとする。(つまり、自ら戻ろうとする) タラ(主人公、=著者)は、ケンブリッジで教授が一目置くような論文を書くほどになってもなお、元いた世界から完全に決別することができず苦しみ自傷し続ける。助けようとする人が周囲にたくさんいるのに、誰の声もうまく届かない。 タラの家族を外の世界から隔てている境界線は、私の目には簡単に踏み越えていけそうに見えるだけに、その線の上で何年も苦しむ姿には驚きしかなかった。 洗脳というのはこんなにも解けないものなのかと。 タイトルの「educated」は、それをそのままカタカナにしても日本人にピンとこないだろうから訳者は「エデュケーション」にしたのだろうな、と思う。 確かにそれしかないと私も思うけれど、でも、この壮絶な戦いを読んだ後では、日本語として聞く「エデュケーション」はどうしても意味が狭く感じてしまう。 読者の感想にも「教育の大切さを感じた」等あるけれど、ちょっと違和感。 彼女がタイトルにこめた思いは本文で明確に説明されていて、明らかに学校教育や大学の学位などのことを指しているのではない。 支配被支配、罪の意識、恥の意識、そういうものへ対処するためのゆるぎない自分を作るもの、自分を自分で解放できる力、そうしたものをeducatedという言葉に象徴させている。 もちろんそうしたアイデンティティを作るものの一つが教育なんだけれど・・・ いろいろと過酷過ぎて、読んでいて非常に辛い本だったけれど、ブリガム・ヤング大学でも、ケンブリッジでもハーバードでも、著者は素晴らしい指導者に恵まれていて、その部分にはとても救われた。 彼女のためだけじゃなく、「高等教育はまだまだイケてる」と知ることができたという意味でも。 著者の父親とは正反対の考えですけどね。 父親や兄が彼女の心に刻みつけた罪の意識に苛まれ続けるタラに、教授が「君は本物の金、ピュア・ゴールドだ」と言うシーン。 教授の言葉を読みながら、激しく泣いてしまった。 「君は特別な明かりの下でだけ光る見せかけの金(フールズ・ゴールド)ではない。君がどんな人間を演じようと、 何になろうと、本当の君はずっと変わっていない。それは君のなかにずっといたんだ」 高い塔の上で、みんな腰がひけて柱などにしがみついてよろよろしている中、さっそうと風を受けて立つタラの姿を思い浮かべて、読んでいる私は胸がすくような思いがした。 ところで、この本、オバマとビル・ゲイツが絶賛しているということで評判になっていたが、この二人は陰謀論者たちの標的ナンバー1と2なので、ちょっと笑える・・・
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アメリカの福音書主義者(?)のことなどは、トランプ政権とも絡んでそれなりに聞いてはいたものの、こんなにも何もかもが、現代の先進国でさえ、こんなにも違う人たちの世界がある、というのはいったい何なのだろう。 分かりあえることがあるのだろうか。文字通りの「痛い」場面の連続。科学やフェア...
アメリカの福音書主義者(?)のことなどは、トランプ政権とも絡んでそれなりに聞いてはいたものの、こんなにも何もかもが、現代の先進国でさえ、こんなにも違う人たちの世界がある、というのはいったい何なのだろう。 分かりあえることがあるのだろうか。文字通りの「痛い」場面の連続。科学やフェアな議論を封じ込めて男尊女卑や力による支配を全面的に支える信仰心。信仰、宗教とはこんなあり方になっても迷いの生じないものなのか。この父親が特に極端で常軌を逸しているにしても、それが通ってしまう背景にあるものはいったい…。 今の日本で、科学的なものの見方を歪めてまで差別を蔓延らせるようなものが一向になくならないのも、根深いところで繋がっているのかもしれない。自分自身の心と頭で正しさについて謙虚に考え、あるべき姿や行くべき道を探るより先に、何かの権威があり、その権威を通してしか世界を見ないことで、判断は歪んでゆく。考えなしの謙虚さはその従うところの権威を一見高めているように見えても、一歩外に出たところから眺めれば、むしろ貶めることになりかねない。排他性、権力者・強者による弱者支配、暴力の肯定などを許容するものが、本当に尊敬すべき権威か。そういう謙虚さ?みたいなものは我慢するべきところが間違っているようにしか思えないけど。
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モルモン教の教義に従い家族に病院には行かせない。学校にも行かせない、終末に備えて食料や燃料、弾薬を大量に備蓄する。絶対権力者として一家を支配する父親の下、家庭内はいびつな暴力に満ちている。いびつの根源は宗教的視座による愛だ。神に祝福される存在で、家族は互いに愛し合っている。美し...
モルモン教の教義に従い家族に病院には行かせない。学校にも行かせない、終末に備えて食料や燃料、弾薬を大量に備蓄する。絶対権力者として一家を支配する父親の下、家庭内はいびつな暴力に満ちている。いびつの根源は宗教的視座による愛だ。神に祝福される存在で、家族は互いに愛し合っている。美しく語られるベールの下には、鉄鎖にからめとられ不自然な姿勢を強いられていることが、自発的な価値観として肯定されている。主人公は大学に進学し、教育を受けることで自らが育った環境を鳥瞰し、自叙伝としてまとめ、米国で高い評価を受けている。 本書を読んでいるあいだ、ずっと不愉快な気分で読むのが辛かった。主人公を取り巻く環境が劣悪、かつ、それを受け入れる主人公の価値観に反発するからだ。それは主人公が大学に進学してからも変わらない。いくら教育を受けても、宗教的な理想の家族の在り方から何も抜け出せていないからだ。米国で評価が高いのは、宗教的価値観が脅かされていない範囲の中での活躍譚だからだ。
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家族にそこまで影響受けるのか。宗教は怖いな。 しかし、母親も成功して、自身の主張も本にしてというところがアメリカ的か… Gmapで実家やスーパーなどを見ながら読んだが、地図ではバックスピークのスはないのはなぜかな?
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