エデュケーション の商品レビュー
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Amazon紹介から ―― アイダホの山奥で育ったタラ。狂信的なモルモン教原理主義者の父の方針で、学校へも通わせてもらえず、病院に行くのも禁じられていた。兄からは虐待も受けていた。自らの将来と家族のあり方に疑問を感じたタラは独学で大学に入ろうと決意するが……。衝撃の実話。 ―― 教育によって人生が変わったという主題の本かとおもったら違った。家族の束縛から逃れよう、兄弟姉妹を救おうともがく話だった。 出生届もだしてもらえず、誕生日もあいまい。戸籍がないから義務教育からこぼれおちていることに対して助けも得られない。。暴力と精神的虐待の中で、死がすぐそばにある家庭環境。 このような状況が現代(著者は1986年生まれ)でもあることに衝撃を覚えた。 「訳者あとがき」の中でも訳者が翻訳が辛かったと語っている。このあとがきが秀逸なので、買うか迷った方は、こちらを読むとよいと思います。
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家族という閉じた世界、学ぶことへの渇望、環境を勝ち取る努力、学び始めてからの飛躍と世界の広がり、家族への第三者的視点の獲得、などなど…著者にしか語れない強烈な家族論であり教育論。
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モルモン教サバイバリストの家族の末娘の物語。狂信的な父に支配された家族は、政府を敵視し、ある時点から子供たちを学校に行かせることをやめた。学校以前に出生届けも出さなくなった。 本のタイトルから教育についての話がメインかと思っていた。もちらん、高校(それ以前の教育含め)も行っていない末娘が大学に行き、そしてケンブリッジへの留学やハーバードの大学院での博士号取得までの話ではある。でも博士号取るとかいう段階でも父から受けた洗脳に縛られてしまっている。そして、先に大学に行った兄もいるが、暴力的な支配で精神まで隷属させる別の兄との関係の基本的に変わらない。 オウムで高教育を受けた人間が洗脳されて犯罪行為に走った。高度教育を受けていても洗脳にかかる。専門分野にもよるがオウムは理系が多かったが弁護士もいた。 どれだけ教育を受け論理的な思考が発達しても幼い頃から受けた洗脳からは逃れられないということか。
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モルモン教に限らず、この種の原理主義的な流れはアメリカが昔から抱えてきたガンのようなものとはいえ、本書のようにその赤裸々な姿を目の前に突きつけられると、あまりの無残さに目をそむけたくなる。 とはいえ、アメリカはロケット・サイアンスに見られるような先進性と、この種の狂信的な後進...
モルモン教に限らず、この種の原理主義的な流れはアメリカが昔から抱えてきたガンのようなものとはいえ、本書のようにその赤裸々な姿を目の前に突きつけられると、あまりの無残さに目をそむけたくなる。 とはいえ、アメリカはロケット・サイアンスに見られるような先進性と、この種の狂信的な後進性がお互いに掣肘しあいながら発展してきた歴史を持つ国であり、建国の歴史をたどれば、この後進性を一概に捨て去ることはできない以上、どこかに落としどころが見つけられる時期が来ることを期待するしかないのかもしれない。
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タラの家族内サバイバルが想像を絶する。読んでいて、もう実家に帰るのは止めて!と何度も思うのに帰ってゆくタラ。公的な教育を受け様々な知識を得た後でも、そこまで家族との関係を断ち切ることができないのは、幼い頃からの洗脳の結果なのだろうか。父親の精神的病が原因で、一切の公的機関を拒絶し...
タラの家族内サバイバルが想像を絶する。読んでいて、もう実家に帰るのは止めて!と何度も思うのに帰ってゆくタラ。公的な教育を受け様々な知識を得た後でも、そこまで家族との関係を断ち切ることができないのは、幼い頃からの洗脳の結果なのだろうか。父親の精神的病が原因で、一切の公的機関を拒絶し、子供の出生届すら出さず、学校へも行かせず、命に関わる怪我でも病院へも行かせない。これは虐待としか思えない。ホームスクーリングが認められているアメリカでは、社会から隔離されこういった状況に置かれている子供は多いのかもしれない。
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映画『はじまりへの旅』で似たような家族を描いていた。その問題を「個性的であること」かのように描き、母と娘たちは終始従順なまま、大した批判もせず、酷い作品だった…。 本作は特に後半、大学進学してから家族との付き合い方にもがきつつ現在に至るまでのやりとりが生々しい。都合よくすべてを認...
映画『はじまりへの旅』で似たような家族を描いていた。その問題を「個性的であること」かのように描き、母と娘たちは終始従順なまま、大した批判もせず、酷い作品だった…。 本作は特に後半、大学進学してから家族との付き合い方にもがきつつ現在に至るまでのやりとりが生々しい。都合よくすべてを認めて献身的に支えてくれる人は存在せず、時間をかけて自分自身との戦いとリバウンドを繰り返しすところもリアル
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序盤はただひたすらに痛く感じて読み進めることがなかなかできなかった。 父が双極性障害と考えれば合点がいった場面にはリアルに鳥肌がたった。 ショーンから殺害予告の電話が来たところでは内澤旬子さんの『ストーカーとの七○○日戦争』を想起させられこれまた鳥肌がたった。 これを出版することに対してきっと葛藤や逡巡があったし、書き進めるには相当な辛さもあったであろうと思うが、たくさんの人がこの本を読むことでエンパワーメントされたと思う。
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面白い! アメリカの一面、ほんの小さな一例でしかないがアメリカを考えさせられる一冊だった。アメリカでは思想は自由だ、その自由さ故に何でも出来てしまうし、他人に口を出す権利はない。ファンタジーランドという本でもアメリカという大国の異常さは理解できるが、本書では私小説の形をもってそれ...
面白い! アメリカの一面、ほんの小さな一例でしかないがアメリカを考えさせられる一冊だった。アメリカでは思想は自由だ、その自由さ故に何でも出来てしまうし、他人に口を出す権利はない。ファンタジーランドという本でもアメリカという大国の異常さは理解できるが、本書では私小説の形をもってそれを体現してくれた。前半の狂気の家族と、後半の大いなる飛躍。このダイナミックさそのものもアメリカだ。社会的な圧力が強く、(世界的にみると)均質的な社会を作る日本からはまさに異国。
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絶望しかないように見える家に著者は何度も帰る。せっかく出たのに、逃げて断絶すればいいのに、もう自由になっていいのに、とそのたびに思った。 けどそうしない、できない。こんなに聡明な人でさえ。 それほどこの家の呪縛は強烈で、凄まじかった。もう想像を絶する。言葉にならないし、外野から軽...
絶望しかないように見える家に著者は何度も帰る。せっかく出たのに、逃げて断絶すればいいのに、もう自由になっていいのに、とそのたびに思った。 けどそうしない、できない。こんなに聡明な人でさえ。 それほどこの家の呪縛は強烈で、凄まじかった。もう想像を絶する。言葉にならないし、外野から軽々しく言えることなんか何もない。 よく生き抜いたし、よく抜け出したと思う。そしてよく書いてくれた。 著者のものすごい意志の力にひたすら感服した。 読めてよかった。すごく感動した。 ----------------------------------- “不確実であることを認めるということは、自分の弱さを認めることであり、力のなさを認めることであり、そうであるにもかかわらず自分を信じることだ。それはもろさだけれど、そのもろさのなかには強さがある。他人のなかではなく、自分の心のなかで生きるという強い信念だ。私があの夜に書いたもっとも力強い言葉は、怒りや憤怒でなく、疑いから生まれたつぎの言葉ではないかとよく考える。「理解できない。ほんとうにわからない」”(p.303)
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サバイバリストの両親に育てられた著者は一切の公教育を受けられず、家庭内では兄から暴力を受けながらも自学自習で大学に入り家庭から飛び出して人生を歩んでいく自叙伝。
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