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イノセンス の商品レビュー

3.7

33件のお客様レビュー

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2020/10/27

少年が犯した過ち。救急車を呼べば助かったかも…というところが肝なのはわかるけど、それで無関係な人間が寄ってたかって14歳の少年を叩きまくれるって、人間はほんとに怖いなと思った。あなたがたに裁く権利などありませんよ。自分が正しいことを証明して気持ちよくなりたいだけの癖して。 被...

少年が犯した過ち。救急車を呼べば助かったかも…というところが肝なのはわかるけど、それで無関係な人間が寄ってたかって14歳の少年を叩きまくれるって、人間はほんとに怖いなと思った。あなたがたに裁く権利などありませんよ。自分が正しいことを証明して気持ちよくなりたいだけの癖して。 被害者家族の苦しみを思うとやりきれないけど、それでもやっぱり、臆病だっただけの少年の悲劇にも同じように胸が痛む。被害者を思うと許せない、と思う気持ちは理解できる。でもそれは、わたしたちが決めることじゃない。 物語は、希望が見えるラストでほんとうによかった。最後の絵の描写と、名前を呼んで手を振るシーンには、じんと来てしまいますね。 彼らの交流が丁寧に描かれてきたからか、どちらにも感情移入できてしまう……特にラストで視点が代わってから、彼の複雑な感情がひしひしと伝わってくるのがすばらしかった。 2人がお互いにぐちゃぐちゃの感情を抱えながらも、今後もよき友人でいられることを願います。

Posted byブクログ

2020/10/22

不良に絡まれているところを助けられたにもかかわらず、その後刺されたその人を見捨てて逃げてしまった中学生の少年・星吾。そのことで世間からの誹謗中傷にさらされ、心を閉ざしてしまった彼の物語は実に痛々しいです。もちろん助けを呼ばずに逃げてしまったことはまずいけれど、中学生だし、怖かった...

不良に絡まれているところを助けられたにもかかわらず、その後刺されたその人を見捨てて逃げてしまった中学生の少年・星吾。そのことで世間からの誹謗中傷にさらされ、心を閉ざしてしまった彼の物語は実に痛々しいです。もちろん助けを呼ばずに逃げてしまったことはまずいけれど、中学生だし、怖かったんだろうなあ、と思えば責める気分にはなりません。悪人だったわけでも卑怯だったわけでもなく、ただ弱かっただけなのに。それゆえにその後何年間も苦しむ彼は、至って善人だったのだと思います。だからこそとことんやりきれない物語。 親しい人間を作らないように淡々と生活を送る星吾の周りで、しかしそれでも彼に関わろうとする人たち。彼らに心を開こうとしながら、過去の罪を知られ拒否されるのではという恐怖に怯える星吾。さらに過去の事件の犯人が死亡したことと、星吾の身に起こる不穏な出来事の数々。何者かの悪意が働いているのか、そして星吾はどうなってしまうのか。圧倒的なサスペンスに読む手が止まりませんでした。 悪気のない行為、あるいは行動を起こさなかったことで人を死に追いやってしまった場合、その人は「加害者」になってしまうのか。被害者側から見ればそう感じるのは仕方がないと思いますが。無関係な世間が一方的にそれを判断して糾弾するのは間違っています。むしろそうやって追い込む側が新たな「加害者」なのでは。ある意味、今の時代って誰もが被害者にも加害者にもなりえてしまうので、これは他人事ではない物語なのかもしれません。

Posted byブクログ

2020/10/11

作品を発表するたびに、社会的な問題を提起する作者。 今作では14歳の時に恐喝から救ってくれた男性が刺されたのにも関わらず、警察にも消防にも通報せず、逃げてしまったことでその男性を死なせてしまった大学生の苦悩の物語。 帯では「事件の加害者は人を好きになってはいけないのか」と問いかけ...

作品を発表するたびに、社会的な問題を提起する作者。 今作では14歳の時に恐喝から救ってくれた男性が刺されたのにも関わらず、警察にも消防にも通報せず、逃げてしまったことでその男性を死なせてしまった大学生の苦悩の物語。 帯では「事件の加害者は人を好きになってはいけないのか」と問いかけているが、厳密に言うと主人公の星吾は事件の加害者ではない。 もちろん救護しなければいけない人を放置したことは、決して許されることではないが、14歳の少年がその場に居合わせた時にそんな冷静な判断が出来るだろうか? それでも星吾は、自分を救ってくれた人を放置して死なせてしまったことを、ずっと後悔し、他人と関わらない人生を選ぶ。 しかし、ネットで逃げた少年と特定された星吾の周囲では、彼への脅迫行為が続く。 デビュー当時から作者が問いかけて来た私的制裁の有無が今作の軸でもある。 味方だったはずの人が、事件の関係者であったり、ミステリー要素もありながら、ラストに星吾が描き上げた絵について触れた部分では、14歳の自分が救えなかった命を未来では救ってみせる、と言う強い意志が感じられる。 人間は完璧ではない。時には間違いも犯す。それは誰しも同じ。そのあと、どういう行動をとるか?どう考えるか?どう生きるか? そんなことを感がさせてくれる作品だった。

Posted byブクログ