スター の商品レビュー
あまり読んだことがないようなテーマで新鮮だった。 現代を生きる人々が、多様化され細分化された社会の中に、どう自分の立ち位置を見つけ働きかけていくか、というようなこと。映画とYouTubeを分かりやすい比較対象としながら、オンラインサロンの存在も出てきて、今どきっぽい感じ。 読みな...
あまり読んだことがないようなテーマで新鮮だった。 現代を生きる人々が、多様化され細分化された社会の中に、どう自分の立ち位置を見つけ働きかけていくか、というようなこと。映画とYouTubeを分かりやすい比較対象としながら、オンラインサロンの存在も出てきて、今どきっぽい感じ。 読みながら、この主人公2人が抱える生き辛い感じ、周りを見渡して自分と比較して息が詰まる感じ、覚えがあるな、となんとなくずっと思っていた。 「今、誰でも何でも発信できるようになって、ちょっと調べればどんな欲求にも対応してくれるものがあって……世界はこれからどんどん細分化されて、それこそオンラインサロンの集合体みたいになっていくんだろうなって思う。欲求に大小や上下があるんじゃなくて、ぜーんぶ小分けされて横並びになるっていうか」 「だから、自分がいない空間に対して『それは違う』、『それはおかしい』って指摘する資格は誰にもないんだよね。何か言いたくなる気持ちはすっごくすっごくわかるんだけどさ、全部、自分がいる空間とは違うルールで成立してるんだもん。たとえ自分はそのジャンルの頂点を知っているんだからって思っても、それが本当に頂点だとしても、頂点の場所にある一つの点だけを知ってるに過ぎない」 「そうは言っても、こんなのおかしいって叫びたくなるものに出会う時はこれからも来ると思うのね。そのときのために、私は、誰かがしてることの悪いところよりも、自分がしてることの良いところを言えるように知っておこうかなって、思う」 「でももう、自分が見えた星の形を描いて、これが星ですって言っていく時代になったんだよね。昔からあるあの星形を、これが星なんだって言い聞かせなくても良くなった。星はそんな形じゃないって批判されまくったとしても、私の見えている星もそれですっていう人と出会えれば、そこが小さな空間になる。世界がまた一つ、小分けされる。でも、あの星形を綺麗に描くことを頑張ってきた時間も、絶対に無駄じゃないの。技術があるからってどんな星も描けるわけじゃないけど、あの星形を練習しながら身につけた技術は何を描くときでも役に立つはず」
Posted by
新聞の連載小説だった作品であり、まさにこの著者ならではの作品でした。 大学3年の時に合作した映画で権威ある賞のグランプリを獲得した立原尚吾と大土井絋。 将来を嘱望された2人だが、それぞれの立ち位置は対極的で、理性的な尚吾と感性的な絋は歩む道も選択肢も異なって行く。 旧き王道に拘る...
新聞の連載小説だった作品であり、まさにこの著者ならではの作品でした。 大学3年の時に合作した映画で権威ある賞のグランプリを獲得した立原尚吾と大土井絋。 将来を嘱望された2人だが、それぞれの立ち位置は対極的で、理性的な尚吾と感性的な絋は歩む道も選択肢も異なって行く。 旧き王道に拘る尚吾は信じる道を進むけれどYouTubeの世界で頭角を現す絋に反発を覚えつつも焦りも感じる。 そんな2人の辿る道程が詳細に描かれていて各々が興味深い内容と波乱を提起している。 衰退する映画界と隆盛するS N S世界を巧みに対比しながらも双方の利点と危うさを解り易く表していて参考になる。何の何処に同調するか反発するかはさまざまだが、ますます多様化する時代において自分を見失わないで居ることは自覚しておきたいもの。 惜しむらくは終盤にきて消化不良の感を免れない展開になってしまったことでしょうか。
Posted by
真逆の道を進んだ二人が悩み模索した結果、同じ場所にたどり着いた。自分の信念や理想も時代の流れに合わせて成長し進化することが必要なのかなと思った。物事を否定的にとらえず前向きに、時には時代の流れにのってしなやかに生きていると自ずと道は開けるのかも。それがなかなか難しいねんっちゅう感...
真逆の道を進んだ二人が悩み模索した結果、同じ場所にたどり着いた。自分の信念や理想も時代の流れに合わせて成長し進化することが必要なのかなと思った。物事を否定的にとらえず前向きに、時には時代の流れにのってしなやかに生きていると自ずと道は開けるのかも。それがなかなか難しいねんっちゅう感じですが
Posted by
まさに現代を描いた作品。YouTubeが普及したことで人々は簡単に発信することができ、注目されれば有名にもなれる。YouTubeで報酬も得ることもできる。物語が尚吾と紘に展開されていくのが面白かった。尚吾の心情は少し共感できる部分があった。
Posted by
かつての映画は、名監督がいて、映画スターがいて、みんなでロードショーを楽しんだ。 時代と共に、小説や、テレビドラマや、コミックから映画化されて楽しむようになる。 それぞれの好みのスターがたくさん作られる。 また、スマホがあれば誰でもが動画を配信できるようになる。 そして、自分自身...
かつての映画は、名監督がいて、映画スターがいて、みんなでロードショーを楽しんだ。 時代と共に、小説や、テレビドラマや、コミックから映画化されて楽しむようになる。 それぞれの好みのスターがたくさん作られる。 また、スマホがあれば誰でもが動画を配信できるようになる。 そして、自分自身がスターになることもできるように。 「古き良き」も大切にしたいし、新しい事も楽しみたい。 ただ、最低のルールはいつでも必要だと思う。 暴露系で人を傷つけるようなYouTuberや、犯罪行為は絶対阻止して欲しい。 チャットGPTがこれからの時代、映画や動画配信にどう影響を与えるのだろう。 でも、大切なのはどんな時代でも作る人の心と、観る人の心が正しく感動できる事!
Posted by
面白かった。 YouTubeに関わるって、こういうことか、とか。 特にラストで、主人公たちが交わす会話のやり取りは、濃くて、読んでいて楽しかった。
Posted by
現代にクリエイティブな仕事をしている人たちにはすごく響きそうな内容だと思いました。 まさに監督の映画のように、正解のない問いの提供だなと...。 私はまず映像創作に全く興味なく、かなり疎い分野だったので中盤までは苦労したけど、終盤の畳み掛けは凄まじく、受け取り側はどのような姿勢で...
現代にクリエイティブな仕事をしている人たちにはすごく響きそうな内容だと思いました。 まさに監督の映画のように、正解のない問いの提供だなと...。 私はまず映像創作に全く興味なく、かなり疎い分野だったので中盤までは苦労したけど、終盤の畳み掛けは凄まじく、受け取り側はどのような姿勢で生きるのかという追及は心に響くものがありました。 千紗がレストランで尚吾に語りかけるシーンは胸が熱くなりました。 どんな仕事でも自分の倫理観や道徳心を問われるグレーな場面に遭遇することはあると思う。昔は同調圧力で仕方なくやっていたこともあったが、今は自分の倫理に反することは決してしないと決めている。 守れるものは自分のプライドだけだったとしても、それが最も大切な気がする。
Posted by
二人の才能ある若者、どちらが先に映画監督として有名になるか、”スター”になれるか…それぞれがもがき苦しみ成長していく物語。 元々学生時代にタッグを組み、ある賞を受賞し既に注目を浴びていた二人。 卒業を機に二人は別々の道に進む。一人は憧れでもある映画監督の元で監督補助として働き始め...
二人の才能ある若者、どちらが先に映画監督として有名になるか、”スター”になれるか…それぞれがもがき苦しみ成長していく物語。 元々学生時代にタッグを組み、ある賞を受賞し既に注目を浴びていた二人。 卒業を機に二人は別々の道に進む。一人は憧れでもある映画監督の元で監督補助として働き始め、方や一方はあるyoutubeチャンネルの制作を請け負い仕事を始める。 今の時代や働き方を良く反映していて、非常にリアリティがある。 昔は何かを極めようと思ったら、本物と言われる場所で修行をして、下積みをこれでもかと重ねてやっと世に出て…という道しかなかった。しかし今は違う。一言Googleの検索窓にキーワードを入れれば、ある程度の答えが見つかってしまう時代。今回の映像制作にしても、今や普通の一般人でも好き勝手に動画を作り、ちょちょっと編集をしてボタン一つで全世界に配信できる世の中になった。 その道を極めようとしたときにどちらの道が正しいかはわからない。でもそれぞれにハードルはあって楽な道などない。 結局、最後に信じられるものは自分が過ごしてきた時間であり経験しかない。その最後に信じられるものを自分の中でしっかりと持っていれば、どんな形であれ自分の満足いく結果が得られるのだと思う。 そして、これだけの選択肢がある今の世の中で、人といちいち比べててもしょうがないなと改めて思った。 人と比べるとどうしてもそこに嫉妬や人を卑下する気持ちが生まれ、自分の心が乱れてしまう。 自分がいない空間に対して「それは違う」「それはおかしい」と指摘する資格は誰にもない。そんなことで守れるものは自分のプライドだけ。 いやぁ痛烈に自分の中に刺さりました。わかっちゃいるんですけどね、生きるって難しい。。 基本、朝井リョウの本にハズレ無しですね。世代が近いこともあるのか本当に毎回楽しく、いろいろと考えさせられます。 これからも楽しく読ませていただきます。
Posted by
才能ある若者の成長物語とも受け取ることができるが、終盤の展開がハッピーエンドなのかバッドエンドなのか考えさせられる。 序盤で物語と関係ないところでいくつか違和感を抱きストーリーに入り込めなかった。
Posted by
エンターテインメントが画一的では無く、多種多様になった世界で、何を良しと考えるか、自分の信念をどこに置くか考えさせる作品だった。 日常的にエンタメを享受できる場所が地上波TVに限られてる時代はテレビを観ることに何の抵抗感も持たなかったが、今は1日の過ごし方の選択を求められる。自分...
エンターテインメントが画一的では無く、多種多様になった世界で、何を良しと考えるか、自分の信念をどこに置くか考えさせる作品だった。 日常的にエンタメを享受できる場所が地上波TVに限られてる時代はテレビを観ることに何の抵抗感も持たなかったが、今は1日の過ごし方の選択を求められる。自分は何がしたいのか考え、それに見合ったエンタメを選択していく。今と昔では生き方が変わったと思った。
Posted by