日本史サイエンス の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
<目次> 第1章 蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか 第2章 秀吉の大返しはなぜ成功したのか 第3章 戦艦大和は無用の長物だったのか <内容> 歴史の専門家ではなく、造船の技術者の本。通常こうした趣味の本は、独りよがりな荒唐無稽なものが多いのだが、さすがに講談社のブルーバックスだけある。きちんとした考証(というか計算)がされている。3つの話ともに、専門の船に関することを組み入れた考証となっている(第2章は、秀吉が武器や荷駄と共に船で船坂峠を越えたという話)。第2章は「面白い」だけで終わりそうだが、第1章はかなり信憑性がある。第3章は、当時の日本軍の勘違いを指摘したもの。最近よく見られる太平洋戦争の敗因を分析した話を、技術的に裏付けている(大和の性能自体はとても良かったとする)。
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ブルーバックスのラインナップの中でも異色の一冊になるのではないか。「元寇」「秀吉」「大和」の三題で、歴史上の「通説」を、エンジニアリングの眼で、ロジスティクス、プロジェクトコントロール、ストラテジーなどの観点から、物理法則に則った数値シミュレーションで検証するもの。古今の英雄譚も...
ブルーバックスのラインナップの中でも異色の一冊になるのではないか。「元寇」「秀吉」「大和」の三題で、歴史上の「通説」を、エンジニアリングの眼で、ロジスティクス、プロジェクトコントロール、ストラテジーなどの観点から、物理法則に則った数値シミュレーションで検証するもの。古今の英雄譚も、人やモノを実際に動かすにあたって必要なカロリーや時間を真剣に評価してみれば、別の解釈が浮かび上がる。人文畑の研究者には一般的でない視点であろうが、教科書や人の話を鵜呑みにせず、自分の頭で可能な限り検証することの大事さを若い世代に伝えるこのうえないテキストだ。 終章を読み終わって、つくづく思い出されたのは、いろいろな危機に際して「できることは何でもやれ!」と安易に吠えることがリーダーだと勘違いしていている人が多いということ。この本に示されたような考え方の基本を身につけていない、勢いだけの人や熱意だけの人では、真の危機は乗り越えることはできないだろう。
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