日本史サイエンス の商品レビュー
個人的には元寇の話が一番面白い。 大和の話は日本社会のあり方批判に繋がっている点がイマイチ共感できず。
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最初の二つの事例(蒙古襲来と秀吉の大返し)は物理をもとにした歴史の「重み」が感じられた。これらに比べて最後の大和はちょっと趣が違う。いわゆる説明に終わってしまっている。
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蒙古襲来、秀吉の中国大返し、戦艦大和の話し。 それぞれに面白く興味深く読んだ。 戦艦大和は、海軍の秘密事項で一般に広く知られるようになったのは1952年だという話しが「へぇ~」だった。 著者によると、これらは船がテーマになっているという話しだが 歴史のインパクトは、その当時やその後の人々に影響を与えるように思う。 もっと大きな目で見ると、蒙古軍が持っていた火薬を使う「てつほう」のトラウマが、時代を下って種子島に伝来した鉄砲が10年後には世界一の鉄砲生産国になったのでは?とか ペリーの黒船の衝撃が、時代を下って大鑑巨砲を極めた大和になったのでは?とかの感想を持った。 なかでも 終章 歴史は繰り返す の一節「大和は2度沈むのか」で世界の国々が科学教育に真剣に取り組んで理数科教育を強化している中で、日本では理科教育を大幅に減らしている。 なんと高校の理科教育は50年前の7分の1まで減少し、すでに技術系の大学生数は中国より一桁少ない数になっているという。 これは個人的な妄想かもしれないけど、太平洋戦争での敗戦、広島長崎での原爆のトラウマの影響なのかなあ、と。 歴史的な大事件は後世へのトラウマとなって、その国の進むべき道を決めてしまう。 それがどんな結果になるか?そんな事まで考えさせられる読書だった。 Amazonより******************* 蒙古は上陸に失敗していた! 秀吉には奇想天外な戦略があった! 大和には活躍できない理由があった! 日本史の3大ミステリーに、映画『アルキメデスの大戦』で戦艦の図面をすべて描いた船舶設計のプロが挑む。 リアルな歴史が、「数字」から浮かび上がる! 【謎の一】蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか? 最初の蒙古襲来「文永の役」で日本の武士団は敗北を重ね、博多は陥落寸前となったが、突然、蒙古軍が船に引き返したのはなぜか? 【謎の二】秀吉はなぜ中国大返しに成功したのか? 本能寺の変のとき備中高松城にいた羽柴秀吉が、変を知るや猛スピードで2万の大軍を率いて京都に戻り明智光秀を破った「中国大返し」はなぜ実現できたのか? 【謎の三】戦艦大和は「無用の長物」だったのか? 国家予算の3%を費やし建造された世界最強戦艦は、なぜ活躍できなかったのか? そこには「造船の神様」が犯していた致命的な設計ミスが影を落としていた――。 小さな「数字」を徹底して読みとり、積み重ねていくと、 大きな「真実」のかたちが見えてくる! 各界からも絶賛の声! 「面白かった! 歴史を科学的・客観的データで捉え直すという学際的なアプローチは素晴らしい」 大隅典子さん(神経科学者・東北大学副学長) 「結論として、秀吉の大返しは常識的な行軍ではほとんど不可能だったということになる」 藤田達生さん(三重大学教授/『本能寺の変』(講談社学術文庫)著者) 「排泄物の量まで計算して秀吉の不都合な真実を暴き出すとは! 物理という刀で斬り込んだまったく新しい歴史書だ」 山崎貴さん(映画「アルキメデスの大戦」「STAND BY ME ドラえもん2」監督) 「文献だけでは歴史は解明できない。理系の光が史実を照らし出す!」 溝上雅史さん(国立国際医療研究センター研究所) 「戦艦大和は決して無用の長物ではなかった。戦後の日本の造船、電機、機械産業の発展の礎となったのだ。面白くて一気に読んだ」 加藤泰彦さん(前日本造船工業会会長 元三井造船会長) 読者の声 「秀吉の大返しには、ファクトデータに基づかない通説に疑問を抱いていた。事実を検証する犯罪捜査のような手法は見事」 (男性 70歳代) 「無味乾燥な数字の羅列のなかに、歴史に翻弄された人たちの喜びや哀しみが感じられて切なくなった。不思議な読書体験でした」 (女性 30歳代) 「この本を読んで、大河ドラマ『麒麟が来る』を観る視点が変わった。科学の眼で謎解きすれば歴史は刺激的だ」 (男性 50歳代)
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著者は造船の一流エンジニアであり、「アルキメデスの大戦」にも助言をしている。そのレベルになると、専門外のことでも視点が幅広く指摘は的確になるのだなあと感じた。 港の深度分布から上陸地点の推定をしたり、兵站の見積もりとそれの運搬にかかる馬や食料の増分を検討したり、撤退の判断をする...
著者は造船の一流エンジニアであり、「アルキメデスの大戦」にも助言をしている。そのレベルになると、専門外のことでも視点が幅広く指摘は的確になるのだなあと感じた。 港の深度分布から上陸地点の推定をしたり、兵站の見積もりとそれの運搬にかかる馬や食料の増分を検討したり、撤退の判断をするに適当な被害の大きさを他の戦と比較したり。まだまだたくさんのことを検討している。 言われてみるとそうだよなあ、実際どうしたのだろう、と考えることばかり。 それでいて、歴史家ではないと言い、その領域には踏み込まない自制も利いている。
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船の専門家の立場からの、元寇、中国大返し、戦艦大和の検証を試みた本。いずれも数字を交えて実現可能性を考慮しながらの考察ですんなりと受け止められた。面白い本なのでおすすめ。
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日本史サイエンスを読んで思った事を以下に記載する。 播田安弘様のことは存じ上げておりませんでしたが 、今回の本を読んで衝撃を受けました。 ・蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか タイトルの内容に対して物理学、気象学、統計学を用いて、いかに数字的に難しかったか理解できます。 ・秀吉の大返しはなぜ成功したのか 秀吉がどのようにあらゆる戦略を練って、物理学の観点からシュミレーションをして不可能に近い事を成し遂げだ知恵や、卓越した分析能力に驚かされます。 とにかく、昔の有名な武将は、最後まで戦略を練りに練って、不確実要素を排除してきたか分かります。 ・戦艦大和は無用の長物だったのか 同じく大和自体が無用ではなく、その後の日本経済の発展として造船技術にどれだけ貢献したのと、それだけすごい物を造れる技術が日本にあることがどれだけ日本人の精神的な支えになったの理解できます。 最後に、播田様も仰っていますが理科系の能力は落ちてきてると思います。私も、今後の科学技術日本を復活するために、数理系の授業時間は増やした方がいいと思います。
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本書は歴史家ではなく船のエンジニアの方が書かれたもの。「蒙古襲来」、「秀吉の中国大返し」、そして「戦艦大和」をテーマにそれぞれの通説を工学的な見地から検証、批判している。蒙古襲来については、文永の役においてなぜ蒙古軍は突然船に引き上げてそこで遭難したのか、大返しについてはは本当に...
本書は歴史家ではなく船のエンジニアの方が書かれたもの。「蒙古襲来」、「秀吉の中国大返し」、そして「戦艦大和」をテーマにそれぞれの通説を工学的な見地から検証、批判している。蒙古襲来については、文永の役においてなぜ蒙古軍は突然船に引き上げてそこで遭難したのか、大返しについてはは本当に可能だったのか、可能だったとすればそれはなぜか、戦艦大和は無用の長物であり、本当に時代遅れの大艦巨砲主義による失敗だったのか、という疑問である。 謎解きは本書を読んでもらうしかないが、それぞれ非常に説得的であり、面白かった。個人的にはやはり戦艦大和の話で知らない話も多く、タメになった。戦略論的、戦術論的に戦艦大和の意義を認めつつも、それを使いこなせなかった日本軍の問題点にも鋭い指摘がなされている。(海軍は合理的であったという通説も成り立たないように思うが、そこはあまり深掘りはされていないのがちと残念。) 文献には必ずしも寄っていない仮説と科学的な見地からの実証を、歴史家はもっと重視すべきという指摘はごもっとも。そうした観点から一次資料の批判も深められるであろう。
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数字という嘘のつけない根拠を基に、歴史上の伝説とも奇跡とも思える通説に疑問点を投げかける本作。理工系の老舗新書のブルーバックスから、何故日本史の本が?と思ってたが、読んで納得の内容。 鎌倉時代の元寇、戦国時代の秀吉の中国からの大返し、第二次世界大戦の巨大戦艦大和の存在意義について...
数字という嘘のつけない根拠を基に、歴史上の伝説とも奇跡とも思える通説に疑問点を投げかける本作。理工系の老舗新書のブルーバックスから、何故日本史の本が?と思ってたが、読んで納得の内容。 鎌倉時代の元寇、戦国時代の秀吉の中国からの大返し、第二次世界大戦の巨大戦艦大和の存在意義についての3本立て。 どれも日本史における大きなポイントではあるが、共通点はなかなか思いつかない。 それは、著者は、長年の造船に関わったエンジニアという経歴によって明かされる。 歴史学者では無いが故、通説と言われた内容でも、実現不可能なものを客観的に疑問に感じての検証となったのだろう。なるほどなあと唸る内容。
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サイエンスと言いますか,工学的な知見で,日本の歴史上の主な三つの出来事について書かれている本です.特に秀吉の大返しについては,本当にそれが現実的に可能であったかを,様々な観点で数値的に見積もり,真偽はともかく,興味深く読める本でした.歴史は,古文書だけを頼りにするのではなく,この...
サイエンスと言いますか,工学的な知見で,日本の歴史上の主な三つの出来事について書かれている本です.特に秀吉の大返しについては,本当にそれが現実的に可能であったかを,様々な観点で数値的に見積もり,真偽はともかく,興味深く読める本でした.歴史は,古文書だけを頼りにするのではなく,このような工学的知見での検証も,有用なのかも知れません.
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エンジニアの視点から歴史を読み直す。ブルーバックスの異色のテーマ。日本史とサイエンスのコラボから生まれた傑作。 筆者は艦船設計の技術者。映画「アルキメデスの大戦」では製図監修を担当している。 ・蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか。 ・秀吉の大返しはなぜ成功したのか。 ・戦艦大和は...
エンジニアの視点から歴史を読み直す。ブルーバックスの異色のテーマ。日本史とサイエンスのコラボから生まれた傑作。 筆者は艦船設計の技術者。映画「アルキメデスの大戦」では製図監修を担当している。 ・蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか。 ・秀吉の大返しはなぜ成功したのか。 ・戦艦大和は無用の長物だったのか。 日本史における謎をエンジニア視点から考え直した一冊。縦割り行政と同じように学問を縦割りでなく横糸から見ると今までと違ったしかも説得力のある理屈が生まれてくる。 元寇についていえば、蒙古軍の船の隻数や建造に必要な材料、人足の数。実際の運用、錨泊位置など専門的な視点から見つめ直し、神風が吹いたからという偶発的な理由ではない撤退の理由を論じている。 中国大返しも同様。秀吉の兵力数、必要な糧食とさらにそれを運ぶ人足、道程と兵の疲労など、具体的な数値を挙げて検証している。 戦艦大和については筆者の正に専門分野。最先端の技術と戦後日本への貢献について、また日本海軍の艦船に共通の設計上の欠点などを述べている。 何より絶品なのがそうまとめの章「歴史は繰り返される」。数字のリアリティの重要性、ものづくりの力。日本人が陥りがちな目的と手段の乖離など、筆者の経験も踏まえて語る。この章だけでも次回の著作を期待したい。 本書を通じて流れる筆者の思想は科学的な視点の重要性。理科の授業や理系教育が次第に減っている日本の現状。単に歴史ファンの作品でなく、歴史を繰り返さないため未来を見た視点が結論の作品。 ブルーバックスとしては異色の作品。今後同様な分野の作品が増えることを期待したい。
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