この気持ちもいつか忘れる 先行限定版 の商品レビュー
序盤は頭になかなか入ってこない。馴染みのない言い回しが原因? 中盤はファンタジー、後半は恋愛ものとして楽しめました。 が、人生をかけるほどの特別な何かなんて、巡り合う人の方が少ない。
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本書の帯には「初の恋愛長編」と大きく書かれていて、私は「あれ、『君の膵臓をたべたい』は恋愛小説じゃないの?」と思ったが、本書に挟まれているインタビュー冊子によると、著者は『君の膵臓をたべたい』について「全く恋愛モノを書いたつもりはなかった」とのこと。 でも私は、本書のほうが恋愛小...
本書の帯には「初の恋愛長編」と大きく書かれていて、私は「あれ、『君の膵臓をたべたい』は恋愛小説じゃないの?」と思ったが、本書に挟まれているインタビュー冊子によると、著者は『君の膵臓をたべたい』について「全く恋愛モノを書いたつもりはなかった」とのこと。 でも私は、本書のほうが恋愛小説から遠いように思う。 本書は大きく前後編に分かれていて、前半は高校生のカヤがチカと出会う物語、後半は31歳になったカヤの物語だ。 前半、カヤは世界も自分をつまらないものだと思っていて、チカとの出会いで何か特別なものを見いだせないかと考える。 自分も他人もどうでもいいものだから、カヤは特別なものを見つけるために手段を選ばない。 とにかくひねくれていて自分勝手で、私はこの主人公を好きになれず、共感することもなかった。 他人の犬を誘拐するシーンなんて、犬好きの私には特に嫌悪感が強かった。 チカとの関係は特別なものを見つけることを目的としていて、もっと言えば「特別なものを見つけなければいけない」という考えに縛られていて不自由だ。 チカに惚れたことは特別なものを見つけたという勘違いと特別なものを守らなければいけないという錯覚をチカに押し付けているだけ。 カヤは自分の世界の中で都合よく相手を捉えているだけで、相手のことを見ていない。 相手を好きになって思いやっているわけではなくて、自分の中で盛り上がっているだけだ。 しかも、特別に感じることの一つが、チカがカヤのすべてを認めて許してくれることにあるようなのだ。 つまりカヤは自分がかわいいだけだ。 とはいえまぁ、「恋」に恋して騒いでしまう中学生もいるし、初恋であれば相手を思いやれずに自分を認めてくれることだけに快感を覚えてしまうのも理解できる。 (それでもカヤの自分勝手さは目に余るが。) 問題は後半の大人になってからだ。 31歳にもなって、中身が子供のまま。 異世界の少女との恋という特別なことがあったのに、何も成長していない。 相変わらず世界をつまらないものだと思っていて、カヤ自身はひねくれていて身勝手。 正直気持ち悪い。 終盤では紗苗の包容力によって丸く収まっているように見えるが、またカヤは自分が認めてもらうことしか考えていない。 すべてを許してくれる人と付き合いたいのなら、母親に甘えていればいい。 このままならカヤは必ずまた同じ過ちを犯す。 相手を見ていないのに何が恋愛なんだ? これは恋愛小説ではない。 住野よるはこういうひねくれた人物を書きたいのだろうか? 『青くて痛くて脆い』もかなりひねくれた作品だった。 この作風で行くのなら次作は文庫で十分かもしれない。 あとTHE BACK HORNとのコラボも失敗だと思う。 彼らの楽曲自体はかっこいいが、『この気持ちもいつか忘れる』という作品に合っていないと思う。 ヒロインが主人公の男の子の耳元で歌う曲がロックって笑ってしまう。
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Thebackhornの音楽と一緒に読むことでより楽しめる作品。 評価が分かれそうな印象があるが、個人的には悪くなかった。
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退屈な人生に絶望し、特別を追い求めて生きている「カヤ」。そんなカヤの前に現れた、目と爪だけしか見えない「チカ」。カヤの16歳の誕生日に2人は出会った。ここからがカヤにとっての特別の始まりだった。 本書の3つの着眼点は「特別」「異文化」「時間」だと思う。 「特別」 人は誰しも特別を求めている。自分だけしか、見たことない、聞いたことない、経験したことのない何か、つまりオリジナルを探そうとする。ただ、特別を追い求めれば追い求めるほど、自分を普通だと肯定することになる。特別は掴めないものかもしれない。 カヤとチカを繋ぎ合わせたのは、その「特別」だと思う。カヤに対する「特別」な誕生日プレゼントがチカだったと。安易で浅はかな考えだと思われるかもしれないが、私はそう信じていたい。 ただ、彼らを離れさせたのもまた特別である。カヤがチカへ誕生日プレゼントである歌を贈る前に、チカのひとことがカヤの「特別」を壊した。カヤはずっとチカと出会えるのは自分だけだったと思っていた。しかし、チカが出会っていたのはカヤだけではなかった。これがチカへの特別な思いを消失させた。カヤにとっての特別は「自分だけ」であり、チカにとっての特別は「何人かの中の1人」だった。これは似て非なるものだろう。 カヤが追い求めていた特別はこんな一瞬の出来事で消え去ってしまった。やはり、特別は掴めない。 「異文化」 本書を読み進めていくうちに、異なる文化の恐ろしさを知ったような気がする。 カヤとチカの世界で異なる文化は少なくなかった。髪、服、戦争、食べ物、恋愛など。特に、チカの世界には恋愛というものがなかった。カヤは必死にそれを教えようと試みたがチカがそれを理解したかは最後まで不明だった。 そして、私が1番文化の違いを感じたのは、カヤがチャイムを破壊した場面である。カヤはチカの世界のサイレンを壊せる方法を考え、自分の世界でサイレンに変わるものを壊そうとした。それが学校のチャイムだった。そして、カヤはそれを実行し、見事サイレンを壊した。ただ、普通に考えてこれがありえていい話だろうか。私なら、普通自分のために相手が他人のものを壊そうとするならば、絶対に止める。それが相手を思う気持ちがあればなおさらだ。ただ、カヤとチカの世界は文化が異なる。物事に対する考え方も恐らく違う。だからこそ、カヤがチャイムを壊したこともチカは大事に捉えなかったのだろう。もし、仮に最悪な方向に捉えるならば、チカはカヤを利用したとも言える。自分の世界とカヤの世界がリンクしていることをいいことに、戦争を一時的にでも止めるためにカヤを利用したという説も言えないこともない。ただ、あまり考えたくはないが。 「時間」 本書は大きく分けて3つの「時間」の流れがあったように思う。まず1つ目が「特別を感じる前の時間」そして、2つ目が「特別を感じている時間」最後が「特別が過ぎ去った後の時間」。 1つ目の「特別を感じる前の時間」は、カヤが人生をつまらないと感じていた時間だ。これはカヤの人生の中で長い時間だったと思う。 2つ目の「特別を感じている時間」は、カヤがチカと出会ってからの時間ではなく、チカのことを愛していると気づいたときからだ。つまり、この時間はカヤの一生において1番短くて愛おしい時間だっただろう。ただ、彼はこの時間を「特別」だと気づくのが遅すぎた。ずっと特別を追い求めていたからこそ、簡単に手に入るものではないと分かっており、認めたくなかったのかもしれない。 3つ目の「特別が過ぎ去った後の時間」は突風が過ぎ去ってからの時間だ。1つ目の時間と同じく、人生をつまらないと感じているよだが少し違う。この頃のカヤは「特別」を追い求めるのではなく、もう来ないと分かっていた。チカには2度と会えないと。そして、生きる上で面倒なことだけは避け、ただ死を迎えるだけだった。 これらの時間をカヤがどう過ごし、どのように感じていたのかは本書を読めばわかるが、全ての時間に共通して言えることは、全て忘れてしまうということ。人は過去の事実だけを覚えているだけで、感情を思い出すことはできない。どんなに嬉しくても、悲しくても、幸せでも、全て過去となり、未来にその感情を持っていくことは誰もできない。でも、それでいい。同じ感情を味わうことができないからこそ、その1つ1つの瞬間が「特別」なのである。と私は本書から学んだ。 最後に 本書で出てくるバンド「Her Nerine」 Nerine=ネリネ ネリネの花言葉「また会う日を楽しみに」 カヤとチカが再び会うことができてよかった。
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起承転良き良き どんな展開になっていくのか毎回楽しみに読めた 良くも悪くも、張った伏線を回収しない ファンタジー的な要素もありそれもあり だけど、あの終わり方は、、、
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* そうだったのか。 俺達は、出会い方を知っていたのか。 * 読みたかった住野よるさんの最新作。CD付きで楽しむため予約してお迎え。 THE BACK HORNさんの音楽が曲中の音楽と重なり、まるでチカが歌っているかのようだった。帯にある通り、本当に小説と音楽の境界線を超えてきて...
* そうだったのか。 俺達は、出会い方を知っていたのか。 * 読みたかった住野よるさんの最新作。CD付きで楽しむため予約してお迎え。 THE BACK HORNさんの音楽が曲中の音楽と重なり、まるでチカが歌っているかのようだった。帯にある通り、本当に小説と音楽の境界線を超えてきている。面白いなぁ。 . 爪と目しかない相手と心を通わせていくというファンタジーもありながら伝えたいことはリアルだなと感じた。自分にとって特別な存在と思っていた相手。でも相手にとっては自分が特別な存在ではないと分かった時の嫉妬心。得体の知れない者とも言葉や感覚で気持ちを分かち合えること、でもその気持ちもいつか忘れてしまう儚さに触れた。 . カヤは日々に飽き飽きしていながらもチカに会うことで人間らしい感覚を手に入れている気がする。カヤと対比した音楽と出会った紗苗の存在感。カヤはいい人に出逢えたなと思った。チカに改めて会えた時、あの言葉をかけれたのは紗苗の存在もあったからかなと。自分が紗苗の立場なら中々耐えられないと思う
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正直、カヤのような「こじらせた」感じがすごく苦手で、「なんだコイツ……」と思いながら読んでいました。チカと出会って少しずつ変わっていきそうなところで「よしよし」と思ったものの、その後の展開に「あれれ……」となり、よく考えてみるとこれって「同族嫌悪」だったのかな、と。 だから、カ...
正直、カヤのような「こじらせた」感じがすごく苦手で、「なんだコイツ……」と思いながら読んでいました。チカと出会って少しずつ変わっていきそうなところで「よしよし」と思ったものの、その後の展開に「あれれ……」となり、よく考えてみるとこれって「同族嫌悪」だったのかな、と。 だから、カヤのように日常に飽き飽きとしている人に、「恋愛小説なんて……」と思わずに読んでもらいたいなあと思いました。 斎藤のように自分を変える何かに出会うこともあるし、カヤのように何かに囚われてしまうこともあるだろうけれど、その出会いは決してムダじゃないし、それを大事に生きていくことは悪いことじゃない。大切なのは誰かのために生きることではなく、誰かと共に生きること。あなたの隣にいる誰かは、私のためにいるあなたではなく、あなたをあなたとして見ている。そんなあなたとともに歩いて行きたいと思っている人だよという、そんなつながり方ってステキだなと思いました。
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ベタっぽい恋愛ファンタジーと思わせ、後半で一転「喪失、それから」を描き切る。ライト文芸の異端のような構成。 埋めることのできない空白を抱えながら、更新され続ける現実と向かい合わなければならない残酷さ。前半の青臭さと多幸感、後半の盛大な痛々しさ......過去作のエッセンスが詰めこまれつつ、大人の世界にも踏みこんだ、著者の新境地では。おなじみのミスリードにもやられましたが、最大の引っかけはいかにも中高生向けな装丁?
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人によって感想や解釈が分かれる作品だと思うけれど、私はすごく心が揺さぶられた感じがしました。 今まで、恋愛小説というものが好きじゃなくて、だけど住野よるさんの作品はどれも大好きだから読んでみたのですが、一筋縄ではいかないというか、ファンタジーのような設定もあるのに妙に現実味を帯びた恋愛の痛さや辛さも含まれていて悲しいもあり共感できる所もあり、とてもよかったです。 第1部と第2部に分かれていて、どんどん繋がっていく感じと大人になった主人公らの変わりようも印象深かったです。 そしてやはり、題名が全てを物語っていて、なんとも言えない気持ちになりました。 時間が経ってまた読み返してもきっと違うふうに受け取れる作品だと感じます。
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住野よるさんの作品はタイトルですべてを物語ってる。 退屈な日常を送る主人公カヤの前に目と爪しか見えない異世界の女性“チカ“が現れる。 これは恋愛小説か? 不思議な世界観だった。 どんなに大切な自分の気持ちや思い出も忘れてしまうのかな? 少し悲しいけど、現実かも。。 ずっと過去や思...
住野よるさんの作品はタイトルですべてを物語ってる。 退屈な日常を送る主人公カヤの前に目と爪しか見えない異世界の女性“チカ“が現れる。 これは恋愛小説か? 不思議な世界観だった。 どんなに大切な自分の気持ちや思い出も忘れてしまうのかな? 少し悲しいけど、現実かも。。 ずっと過去や思い出の中では生きられないし、時には過去に浸りながらも今を生きるしかないと思った。 最後に自分の考え方とか内面に深く目を向けている住野よるさんらしい、チカとカヤの会話はとても印象的でした。
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