口笛の上手な白雪姫 の商品レビュー
8つの短編小説。 どれも出てくるひとが愛らしい。 悪い人はいないし、一生懸命に"こだわり"をもって生きている。 その"こだわり"をなんとなく理解できるから、不思議だ。 きっと、真の人間心理を理解している作者の手腕だと思う。 個人的には『仮名...
8つの短編小説。 どれも出てくるひとが愛らしい。 悪い人はいないし、一生懸命に"こだわり"をもって生きている。 その"こだわり"をなんとなく理解できるから、不思議だ。 きっと、真の人間心理を理解している作者の手腕だと思う。 個人的には『仮名の作家』と『口笛上手な白雪姫』が好き。 どちらも、うまく生きれないでも懸命に心満たそうとしている姿が、共感できる。
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たとえおかしいと思ってもどうすることもできず、小母さんの両腕に身を任せるしかない彼らの、素直すぎる無力さがいとおしかった。 ガラス戸一枚の境目さえ、彼らは一人では超えれられなかった、 庇護する腕がなければ、ただそこに転がっているだけだった。 にもかかわらず、欠けたものは何一つとし...
たとえおかしいと思ってもどうすることもできず、小母さんの両腕に身を任せるしかない彼らの、素直すぎる無力さがいとおしかった。 ガラス戸一枚の境目さえ、彼らは一人では超えれられなかった、 庇護する腕がなければ、ただそこに転がっているだけだった。 にもかかわらず、欠けたものは何一つとしてない、十分な命なのだった。 赤ちゃんの描写がすき
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小川洋子さんの短編集を読むときは、いつどこで話が終わっても大丈夫なように、心の中で常に覚悟しながら読むようにしている。油断していると、ローマに通じているはずの道が突然崖になっているのを落ちてから気がついた、みたいなそんな奇妙な気持ちになるからだ。 この短編集には子どもが主人公の...
小川洋子さんの短編集を読むときは、いつどこで話が終わっても大丈夫なように、心の中で常に覚悟しながら読むようにしている。油断していると、ローマに通じているはずの道が突然崖になっているのを落ちてから気がついた、みたいなそんな奇妙な気持ちになるからだ。 この短編集には子どもが主人公の話がいくつか出てくるが、同年代の子たちと仲良くしているような子どもは出てこない。 わたしも小さい頃からいつもひとりだった。 自分の中だけで世界は完結していて、ほかの人は必要ないのかもしれないと考えていた。誰もわたしの存在に気がつかず、すべて黙って通り過ぎてくれればいいのにと考えていた。 大人になってから、ふと誰かにそばにいて欲しいと思ったときにはもう既に手遅れだった。 幼いときは自らそれを選び、成長してからのわたしにはもうそれしか残っていなかった。 小川洋子さんは、小説を書く理由についてこのように語っている。 「自分はここに居ると、声高に叫ぶ人のことは放っておいてもいい。けれど、小さい声しか出せない人、自分は決して物語の主人公になどなれないと思っている人物を掬い取るために小説はあるのではないか。」 小川洋子さん、あなたの文章はわたしにとって闇を照らす光です。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
小川洋子さんの作品を読むと不思議な気持ちになる。 柔らかな言葉の中にある小さな悪意のような棘であったり、心の中にしまい込んだ秘密。 それは優しいけれども、残酷で、切ない。 だからこそ、彼女の作品は密やかなひかりを放ち、傷ついた心を照らし出すのだろう。
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