砂上 の商品レビュー
淡々と生きる人たち。誰にでも闇があるのだろうかと思わせる。大層なことも小さなことも何でもないかのように大差なく描かれる。この、編集者さん主人公の話を読みたい
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16歳で美利を産んだ令央、事情をひと言も聞かずに自分の娘とした母、ミオ。この女3代の物語を令央は小説に書く。何度も何度もダメ出しをする辣腕編集者の小川乙三。この小川さんの小説論はそのまま桜木さんの小説論なんだろう。一気に読み終えたけど深い一冊
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※ 読み終えて小説を書くってことは、ある真実に たくさんの嘘を装飾して限りなく現実にみえる 虚構を作り上げることなのかなと思いました。 作家さん全てがこの方法で小説を書いている 訳ではないだろうけれど、少なくとも『砂上』の 作者である桜木紫乃さんは、話を生み出す際に こんなふう...
※ 読み終えて小説を書くってことは、ある真実に たくさんの嘘を装飾して限りなく現実にみえる 虚構を作り上げることなのかなと思いました。 作家さん全てがこの方法で小説を書いている 訳ではないだろうけれど、少なくとも『砂上』の 作者である桜木紫乃さんは、話を生み出す際に こんなふうに話を構築していく手法を取ることが あるんじゃないかと感じました。 話の中で主人公に感情の薄さが武器になると 告げた編集者との出会いは主人公にとって 運命的に感じましたが、編集者には別の意図が あって、主人公が自分に利する人間かどうかを 様子見するために網を張られただけと考えるのは 穿ちすぎでしょうか。 物語の中の主人公の主体性の無さぶりや、 編集者の突き放しっぷりに、返って体温や 人間味を感じました。
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桜木紫乃の世界でした。 初めは、この本はどうかな?的な感じでしたが、引き込まれて行きました。 母ミオ、娘令央、令央の姉妹として育った美利の親子が織りなす物語でした。女編集者の乙三が良い感じ。
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地元だからこの辺かな、あの辺かな、と想像するのが楽しかった。 ただ読み終わる頃には偶然だけど似たようなことが自身にも起きていて、読み返すのは少しつらい。 数十年後、自分はこの作品をどう思うかもう一度読み返してみたい。きっと感想が違う気がする。
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一人のアマチュア作家が、一人の編集者に出会い突き動かされたように小説を書き上げていく。 彼女の作品の題材は、私小説的な狭い自分の家庭の世界。それを虚構として、第三者の視線で書きあげるようにアドバイスを受ける。彼女の家族の現状と小説とがクロスする。自分の産んだ子供を母の子として妹と...
一人のアマチュア作家が、一人の編集者に出会い突き動かされたように小説を書き上げていく。 彼女の作品の題材は、私小説的な狭い自分の家庭の世界。それを虚構として、第三者の視線で書きあげるようにアドバイスを受ける。彼女の家族の現状と小説とがクロスする。自分の産んだ子供を母の子として妹として家族となリ、女としても母としても主体性なく生活してきた。自分のルーツを知り小説を書き上げる事で、娘と向かい合い、亡き母を認めていく。彼女の作家として、家族としての成長過程。 桜木さんの「小説を書く」という事への想いを込めているのかなと思う。
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何が起こるか分からない、面白い話だった。読み終わってもするりと指の間を抜けていくような、掴みどころのない登場人物たち。それなのに惹かれてしまう女たちが書かれている。とにかく、面白い。 主人公が小説を書き、その話に出てくる主人公も同名の小説を書いている。主人公の家族を題材に書いているし、読んでいる方もフィクションの中の更に事実と虚構の境目が曖昧になっていくのがなんともいえない感覚だった。 実話を読んでいるような気持ちになる。本当にそういう反応を相手が示したんだというような錯覚をさせられる。 虚構でも問題ないのかもしれない。これは小説なのだから。 主人公は小説を書き上げるために自分を見つめ、母の過去を辿り、その他様々な人の言葉を飲み込み自分のものにしたのだと思う。自分を認めなければ先には進めない。その過程で得た感触はそのまま実生活に反映され、ますます強固な自分になっていくように見えた。 自らの意思で物語を生み出していく女たちに引き摺り込まれる。ミオ、令央、美利、そして乙三。豊子も珠子もそうかもしれない。 どれもが真実でどれもが嘘なのだ。こんな魅力的なこと、あるだろうか。こんな女たちのようになれたらいいのに。
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一人の女が、とても鋭い感性の編集者と出会い、本を一冊書き上げるまでの話。 作家さんは、なんてまぁ大変で過酷な作業をされているのかと驚き、そして、ほとんどが自己を見つめて、自分の内面を知っていくという作業で。 乙三が聞いた言葉として語る 「人に評価されたいうちは、人を超えない」は、...
一人の女が、とても鋭い感性の編集者と出会い、本を一冊書き上げるまでの話。 作家さんは、なんてまぁ大変で過酷な作業をされているのかと驚き、そして、ほとんどが自己を見つめて、自分の内面を知っていくという作業で。 乙三が聞いた言葉として語る 「人に評価されたいうちは、人を超えない」は、 そういうことかと、最後の方で理解できた。 それは自己を知ることこそが大切で、誰かの為にとか、支点を自分以外にしないことなのかなぁと、思った。 「主体性のなさ」が今ひとつ私の中で理解できないので、もう一度読み直すこととする。
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どこまでが創作で、どこまでが現実なのか、そして柊玲央はどのように虚構を築きあげるのか・・・。 あまりにリアルな、編集者と、まだスタートラインに立ててもいない作家のやりとり。もっと上手く嘘をつきなさい、と、隠さずに真実をあぶり出す、に矛盾がない。その編集者さえ、虚構に見せる筆致。 ...
どこまでが創作で、どこまでが現実なのか、そして柊玲央はどのように虚構を築きあげるのか・・・。 あまりにリアルな、編集者と、まだスタートラインに立ててもいない作家のやりとり。もっと上手く嘘をつきなさい、と、隠さずに真実をあぶり出す、に矛盾がない。その編集者さえ、虚構に見せる筆致。 スタートから10年後、こう振り返るのか。しかも作品にしてしまう。当たり前のようでいて、これをエッセイにしなかったところが桜木紫乃さん。
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「ケチは生き方、せこさは性分」 「屈託とか葛藤とか、簡単な二次熟語でおさまらない話が読みたいんですよね」 舞台が江別 珍しいな~とおもいつつホテルローヤルに続いて手に取った一冊。本当は前回書店に行ったときも気になったんだけど、読むのを延期しておいた作品でした。小説を書く40歳女性、柊令央を取り巻く関係が母親の死をきっかけに大きく変化していくお話。彼女が16歳で産んだ娘を、妹として育てる母親。彼女の人生を小説として表すために、令央はミオ(母親)の人生を追っていく。 「一人称じゃなく三人称で書く」自分の人生も嘘で覆い、作家に作品を描かせる編集者、小川乙三がなかなかインパクトがある。言語力堪能な彼女の言葉は、令央と同じように読んでいる私もうーんと悩まされたりと考えさせられたりするものばっかり。物を、文章を、産み出す苦しみを主軸において主人公を取り巻く環境について軽快な書き口で表していた。
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