おらおらでひとりいぐも の商品レビュー
数年前、母が読んだと言っていた本。 あのとき母は、良かった、と言うだけで 読んでみて、と薦めはしなかった。 自分で手にとるのを、待つでもなく待っていてくれた。 (きっとそんなことばかりなんだと思う。 ほれ、と背中を見せるでもなく見せてくれて、 待つでもなく待っていてくれる)...
数年前、母が読んだと言っていた本。 あのとき母は、良かった、と言うだけで 読んでみて、と薦めはしなかった。 自分で手にとるのを、待つでもなく待っていてくれた。 (きっとそんなことばかりなんだと思う。 ほれ、と背中を見せるでもなく見せてくれて、 待つでもなく待っていてくれる) “ごく自然に周造のために生きる、が目的化した” p.93 “知らね間に自分ば明け渡していた” p.99 人のために生きようとする感覚、 自分のために生きようとする感覚、 そのどちらも、確かにある。どちらかではなくて。 何も自分を明け渡す必要はねんだ、と 8年かけて執筆された作品が教えてくれる。
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この世にはどうにも仕方がない、どうしようもないことがある。その前では、どんな努力も下手なあがきも一切通用しない。 周造が亡くなった数年こそが自分が一番輝いていた時ではなかったのか 悲しみが作る喜びがある。
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老いて孤独になって•••。 「死」そのものは恐れないが、そこに向かって衰えていく過程が怖い。 僕自身は今、55歳になって、自分のさまざまな機能が衰えていく未来を想像することを本能的に避けているが、それは確実にやってくる。 本書のように。 でも、自分の頭の中にも、いくつかの別々の考えや感じ方を持つ自分たちが共存していて、「自分たち」を時間で区切ると、年齢、瞬間によって、さまざまな価値観や行動をとってきた複数の自分が存在する。 一人でいても、そんな自分たちを思い浮かべ、そばにいることを感じ、話しかけることができれば、孤独ではなくなる。 う〜ん、まったくその通りなのだが、僕には難しいな。できるかなぁ。 この本は3名のフォロワーさんがレビューを書かれていて、読むのに精神力がいるだろうなと感じながらも気になって買った作品。 最初のページをめくって3ヶ月、方言というのは耳には心地よいが、読み進めるのはなかなかたいへん。 とはいえ、今後、生きていく上でヒントになりそうないい本でした。 フォロワーのみなさん、ありがとうございました。
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若い頃はどこか遠かった死が、隣で口を開いているのを感じるようになった桃子さん。 老いる事の意味を悟っていく過程が、実にリアルです。 ただ、あまり若い人だと理解できないかな?と思いました。私は片足突っ込んでいるので、老いの準備的感覚でほっこり楽しめました。
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70代の一人暮らしの桃子さん。夫に先立たれ、子供たちとは疎遠。孤独だけれどそれを受け入れ、でも、誰かと繋がっていたい。いきなり娘は現れるけれどそれにも訳ありで。こう言うお年寄りって多いかもしれない。 桃子さんの中にいろんな桃子さんが現れ、自分の生きてきた道を振り返る。決して湿っぽい話ではない。一人になって「おらはちゃんと生ぎたべか?」と内省しながらパワフルな行動に出る。 63歳で本書を執筆し芥川賞を受賞。歳を重ねてこられたからこそかけた作品かもしれません。いずれ訪れる自分の姿を投影したりしました。
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桃子さんは、人の期待に答えようと生きてきたと自身の人生を振り返る。夫のために、子どものためにすべてを捧げてきた。けれど、70代になった今、子どもは離れ、夫は死んだ。それらに意味を見出すことで、悲しみを受け入れていく。そして辿り着いた生きる意味。 独りだけど頭の中は自分の声が飛び交...
桃子さんは、人の期待に答えようと生きてきたと自身の人生を振り返る。夫のために、子どものためにすべてを捧げてきた。けれど、70代になった今、子どもは離れ、夫は死んだ。それらに意味を見出すことで、悲しみを受け入れていく。そして辿り着いた生きる意味。 独りだけど頭の中は自分の声が飛び交いとても賑やか。孤独を自由と捉え前向きに生きていく姿に勇気づけられた。
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老いることについてのイメージはどんなものでしょうか。私は決して良いものとは思わなかったのですが、この小説では違いました。老いることは、自由になること。主人公の桃子さんの頭の中を通じて繰り広げられる、女性と老いと自由な物語です。
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ご主人が急逝となった東北出身の主人公。独り暮らしの中で、アイディンティティとしての故郷を思い出し、夫との生活を見直してみる。 亡くなった方々が日常生活に現れ、会話を交わす。 だが、孫の出現で平和な心情があっという間に戻ってくる。 東北弁で語られる主人公の心情は、独特の世界観を作っ...
ご主人が急逝となった東北出身の主人公。独り暮らしの中で、アイディンティティとしての故郷を思い出し、夫との生活を見直してみる。 亡くなった方々が日常生活に現れ、会話を交わす。 だが、孫の出現で平和な心情があっという間に戻ってくる。 東北弁で語られる主人公の心情は、独特の世界観を作っている。
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思ったより難しかったなあ。桃子さんはただのいなかのおばあさんではない。「46億年ノート」を自作するなんてただものではない。ものすごく知見が広いのだ。 解説ノートにあるとおり、桃子さんは、ふつう人が思考を停止してしまうようなところをつきぬけ、考えを進めてしまってショートしてしまう領...
思ったより難しかったなあ。桃子さんはただのいなかのおばあさんではない。「46億年ノート」を自作するなんてただものではない。ものすごく知見が広いのだ。 解説ノートにあるとおり、桃子さんは、ふつう人が思考を停止してしまうようなところをつきぬけ、考えを進めてしまってショートしてしまう領域(つまり頭がおかしくなる)まで行って、それをすべて文字にしているのだ。 小説を読んでいるというよりは、あらゆる事象について「なぜ」と考え抜く人のあたまのなかを文字お越ししたものを見せつけられているような感覚。 そんなわけで、「物語」とはちょっと違う文体に慣れず何度か挫折しかけたが、最後にはさわやかな微風を感じることができる。 子供を育て上げ亭主を見送り役割はすべて終えた。「きれいさっぱり用済みの人間」、であるなら生きる上での規範がすっぽ抜けてもかまわない、おらはおらに従う。 それは老害とはまたちがう、潔くかっこいいほうの、「ひとりでいぐ」のだ。
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田中裕子主演の映画がとても良かったので読みました。東北弁のひとり語りは珍しくも心地よく、ユーモアもあり、ストレスなく読めました。ただ、自分が還暦をこえていない未熟者のためか、はたまたスピリチュアル本を読みすぎてたせいか、あんまり新鮮みは感じられず、観念的かつ情緒過多な語りで終始す...
田中裕子主演の映画がとても良かったので読みました。東北弁のひとり語りは珍しくも心地よく、ユーモアもあり、ストレスなく読めました。ただ、自分が還暦をこえていない未熟者のためか、はたまたスピリチュアル本を読みすぎてたせいか、あんまり新鮮みは感じられず、観念的かつ情緒過多な語りで終始する尻すぼみな印象でした。 こうした小説がベストセラーになるのも、少子高齢化および個人化が行きわたりすぎた現代ならではなのかなと、少し考えたりもしました。 家庭に奉仕した女性が晩年ひとりとなり、個人として目覚めることを祝福するような流れではあるんだけれど、どこかぎこちない。周造の死を喜ぶことや、宇宙と一体化してしまうような悟りも、妙に観念的です。どこかのスピリチュアル本で読んだような内容であり、体臭が感じられません(悟りの境地は皆似たようなものなのかもしれませんが、なんせ悟った経験がないので何とも言えません)。 だから、これは結局桃子さんが自分自身に言い聞かせてるマントラであって、本心じゃないのではないかと思ってしまいました。そうすると言葉は言葉のまんま空っぽに響く。なんだかんだ前向きなことを並べたって、要するにどうしようもない寂しさを紛らわせているだけではないかと。自由と解放よりも孤独を強く感じました。 愛するパートナーに先立たれたり、あれこれ経験を重ねた老人になったら感想も変わるのかもしれませんが、いまの自分にはここまでです。 「からっぽうがからっぽうのまま歩いている。それでいて過不足ない。」p.107 そうなれたら、本当に無敵だろうなと思いますけれど、実際そんな空虚にみまわれたら、自分なら正気を保てなくなりそうな気もします。もしかしたら、孤独だったり寂しかったりしつつ、同時並行で創造的にもなれるのが自由なんでしょうか。だとすれば、真意はどうあれ、桃子さんは正真正銘、自由を得たということかもしれません。
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