おらおらでひとりいぐも の商品レビュー
実際の老い、一人暮らしはこういう事なのかも。 と思いながら読み進めたけれども、話は主人公の心模様が描かれている何も代わり映えの無い日常。 主人公自身の人生も、平穏な日々を歩んできている。 この話を映画にするって凄いなーと思った。 これは自分自身が主人公の年頃になった時に読めば味わ...
実際の老い、一人暮らしはこういう事なのかも。 と思いながら読み進めたけれども、話は主人公の心模様が描かれている何も代わり映えの無い日常。 主人公自身の人生も、平穏な日々を歩んできている。 この話を映画にするって凄いなーと思った。 これは自分自身が主人公の年頃になった時に読めば味わい深いのかも。
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独居老人の東北弁による脳内会話 家の中で立てる音はネズミの動く音 そんな中で桃子は脳内で複数の自分が話している 娘である直美との確執、亡き夫周造との思い出と喪失の記憶、過去の自分との対話、故郷の八角山と自分の見立て 「老い」「死」「孤独」を否応なく感じる いずれ自分もこうな...
独居老人の東北弁による脳内会話 家の中で立てる音はネズミの動く音 そんな中で桃子は脳内で複数の自分が話している 娘である直美との確執、亡き夫周造との思い出と喪失の記憶、過去の自分との対話、故郷の八角山と自分の見立て 「老い」「死」「孤独」を否応なく感じる いずれ自分もこうなると思い、読んでいてぞわぞわした 自分も将来は部屋で独り過去を思い出しながら現在の状況と様々な記憶を比べて自ら対話を延々と繰り返してそうな気がする 物理的な視点ではただ老人がいるだけなのに、その実態としては狂気の一歩手前という状況が怖い 桃子さんの対話は時に哲学的な問いにも思える 人間、突き詰めて考えると自然と哲学的な根源的疑問に行き着くものなのでしょうね 夫の周造を亡くした事による喪失感 桃子さんには適切なグルー不ケアケアが必要なんじゃなかろうか? 自立した新たな女性の生き方 周造さんは精神的な支柱だったんでしょうね あと、母と娘の関係を伝染病のようにとらえるのは面白い 祖母は自分を褒めてくれたが、母は律する事しかなかったという記憶 また、祖母の過剰な肯定とは裏腹に左右盲の他者からの評価による自尊心の毀損 同じように、自分も娘に価値観を押し付けていたという気づき でも、最後には娘が怒った時に東北弁で娘を叱っていると知る 自らの生きた証、親子として繋ぐものがあったということなんでしょうね 読んでいる最中は自分の将来を思って打ちひしがれていたけど、読み終わってみればラストのシーンもあって読後感はそんなに悪くもない 読み終わった後に芥川賞作品だと知った それにしても、宇佐見りんの「かか」は受け付けなかったのに これだと解像度が高いのは何故だろう? 共に読みにくい方言で内心をつらつらと脈絡もなく語られているのは同じなのにね 東北弁に馴染みがあるからなのか、自分の行く末として感じたからなのか? ちなみに、東北弁といってもうちの方言だと、濁点がもうちょっと多いと思う そう言えば映画化してたけど、こんな内面描写がメインの物語を映像化して内容がちゃんと伝わるのか?と疑問に思う 機会があったら見てみるかな
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桃子さんの夢現のような独白のような東北弁が綴られている。 『おらは重々分かったのさ。この世にはどうにも仕方がない、どうしようねごどがあるんだ、その前では、どんな努力も下手なあがきも一切通用しねってごとがわがった。・・・まぁ人間の無力を思い知らされたわけで、この世は絶望づ壁がある。したども一回それを認めでしまえば、これで案外楽でねがと、おらは思ったわけで、・・・。あれがらおらはすっかと、別人になってしまった。』 おらを残して逝ってしまった周造(亭主)への思い、淋しさ・贖罪・自由への喜び・悲嘆・・・。 『結局、自分のあこがれを娘に映すことしかできなかった。 フリルのいっぱい付いたスカートは小さいころの桃子さんの夢だったのだ。』 『かあさん、もうおれにのしかからないで、 息子正司が家を出てときに言った最後の言葉が忘れなれない。』 『母さんはお兄ちゃんばかりをかわいがる』 『結納も済み、あと三日でご祝儀という日に・・・故郷の町を飛び出してしまった。』 『亭主に早くにしなれるは、子供らとは疎遠だは、こんなに淋しい秋の日になるとは思わねがった。』 故郷、子供の頃の出来事、 あったかいばっちゃの存在に言葉、、、 それぞれのエピソードに、桃子さんの揺れる思いが東北弁でイキイキと綴られている。 読者も一つや二つ同じような経験をしているかもしれない。 いつの間にか東北弁にそれぞれの故郷の言葉を重ねて己の世界に浸っているかもしれない。 右に左に暴れる桃子さんの思考に振り回されつつも、チャーミングな彼女に微笑み安堵するラスト。 孤独の先には何が待っているのだろうか。
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第158回芥川龍之介賞、ドイツのリベラトゥール賞受賞作。70代の桃子さんというおばあさんが昔を回顧しつつ、老いを感じて日々過ごす様子を著した一冊です。娘からの指摘で頭の衰えを感じたり、昔の若い頃を思い出して向き合ったり年齢を重ねるとはこういう事かと感じました。夫を亡くしたことで感...
第158回芥川龍之介賞、ドイツのリベラトゥール賞受賞作。70代の桃子さんというおばあさんが昔を回顧しつつ、老いを感じて日々過ごす様子を著した一冊です。娘からの指摘で頭の衰えを感じたり、昔の若い頃を思い出して向き合ったり年齢を重ねるとはこういう事かと感じました。夫を亡くしたことで感じた思い出は時に悲しいけれど、自分の心が解放されたことでうれしかったりもして複雑。無垢な孫と接する様子は温かく感じました。主役の桃子さんの出身としてある方言で書かれているのも情感をもたらしていて良いと思います。
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人にはそれぞれの習慣、思想があり、言葉のアクセントがあり、記憶や人との繋がりがあり、死生観がある。東北弁で綴られても、それはリアルでも完全には理解できぬ方言だから、小説の高度な理解にも至らない。だけど、それがこの小説に通底する主張のような気がして、だから良いのだと一人納得するのだ...
人にはそれぞれの習慣、思想があり、言葉のアクセントがあり、記憶や人との繋がりがあり、死生観がある。東北弁で綴られても、それはリアルでも完全には理解できぬ方言だから、小説の高度な理解にも至らない。だけど、それがこの小説に通底する主張のような気がして、だから良いのだと一人納得するのだ。どんな家庭にも固有の事情があり、問題の無い家族など無い。固有の価値観で読み手さえ突き離す、どこまでも、おらひとりいぐも、である。 ーあのどぎにおらは分がってしまったのす。死はあっちゃにあるのでなぐ、おらどのすぐそばに息をひそめで待っているのだずごどが。それでもまったぐといっていいほど恐れはねのす。何如って。亭主のいるどころだおん。どんな痛みも苦しみもそこでいったん回収される。安心しておらは前を向ぐー
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数年前、母が読んだと言っていた本。 あのとき母は、良かった、と言うだけで 読んでみて、と薦めはしなかった。 自分で手にとるのを、待つでもなく待っていてくれた。 (きっとそんなことばかりなんだと思う。 ほれ、と背中を見せるでもなく見せてくれて、 待つでもなく待っていてくれる)...
数年前、母が読んだと言っていた本。 あのとき母は、良かった、と言うだけで 読んでみて、と薦めはしなかった。 自分で手にとるのを、待つでもなく待っていてくれた。 (きっとそんなことばかりなんだと思う。 ほれ、と背中を見せるでもなく見せてくれて、 待つでもなく待っていてくれる) “ごく自然に周造のために生きる、が目的化した” p.93 “知らね間に自分ば明け渡していた” p.99 人のために生きようとする感覚、 自分のために生きようとする感覚、 そのどちらも、確かにある。どちらかではなくて。 何も自分を明け渡す必要はねんだ、と 8年かけて執筆された作品が教えてくれる。
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この世にはどうにも仕方がない、どうしようもないことがある。その前では、どんな努力も下手なあがきも一切通用しない。 周造が亡くなった数年こそが自分が一番輝いていた時ではなかったのか 悲しみが作る喜びがある。
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老いて孤独になって•••。 「死」そのものは恐れないが、そこに向かって衰えていく過程が怖い。 僕自身は今、55歳になって、自分のさまざまな機能が衰えていく未来を想像することを本能的に避けているが、それは確実にやってくる。 本書のように。 でも、自分の頭の中にも、いくつかの別々の考えや感じ方を持つ自分たちが共存していて、「自分たち」を時間で区切ると、年齢、瞬間によって、さまざまな価値観や行動をとってきた複数の自分が存在する。 一人でいても、そんな自分たちを思い浮かべ、そばにいることを感じ、話しかけることができれば、孤独ではなくなる。 う〜ん、まったくその通りなのだが、僕には難しいな。できるかなぁ。 この本は3名のフォロワーさんがレビューを書かれていて、読むのに精神力がいるだろうなと感じながらも気になって買った作品。 最初のページをめくって3ヶ月、方言というのは耳には心地よいが、読み進めるのはなかなかたいへん。 とはいえ、今後、生きていく上でヒントになりそうないい本でした。 フォロワーのみなさん、ありがとうございました。
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若い頃はどこか遠かった死が、隣で口を開いているのを感じるようになった桃子さん。 老いる事の意味を悟っていく過程が、実にリアルです。 ただ、あまり若い人だと理解できないかな?と思いました。私は片足突っ込んでいるので、老いの準備的感覚でほっこり楽しめました。
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70代の一人暮らしの桃子さん。夫に先立たれ、子供たちとは疎遠。孤独だけれどそれを受け入れ、でも、誰かと繋がっていたい。いきなり娘は現れるけれどそれにも訳ありで。こう言うお年寄りって多いかもしれない。 桃子さんの中にいろんな桃子さんが現れ、自分の生きてきた道を振り返る。決して湿っぽい話ではない。一人になって「おらはちゃんと生ぎたべか?」と内省しながらパワフルな行動に出る。 63歳で本書を執筆し芥川賞を受賞。歳を重ねてこられたからこそかけた作品かもしれません。いずれ訪れる自分の姿を投影したりしました。
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