破局 の商品レビュー
タイトルが【破局】だか、読み終わった瞬間のわたしには【破綻】という言葉がしっくりきた。 自分を律する力、相手や世の中を受け入れる力だけが育ってしまって、自分自身の感情や相手の感情を真に理解する、感じて、考えようとする力がない(もしくはその姿勢がない)主人公がとても不気味だった。...
タイトルが【破局】だか、読み終わった瞬間のわたしには【破綻】という言葉がしっくりきた。 自分を律する力、相手や世の中を受け入れる力だけが育ってしまって、自分自身の感情や相手の感情を真に理解する、感じて、考えようとする力がない(もしくはその姿勢がない)主人公がとても不気味だった。 これは自身の周りにもよくいるタイプの人間だと思う。ずっと不思議に思っていた相入れない人間の中を垣間見た妙な感覚だった。多分、今時の若者、だけの話ではないんだろうな。 主人公はなぜそう感じるか、どうしたいか、という意思ではなくひたすら、客観に近い感覚で物事を捉えている。それを感じさせる見事な文体でした。 途中何度か出てきた、警察官の事件が、主人公が「自分は公務員になる人間だから、自分を律しなくては」と思いつつ、自分の欲には逆らえないことと重なっていることに気がつき、ぞっとした。 人間が人間らしさを受け入れないままでいると、いつか破綻してしまうんだろうな。なんとなく思ってたその感覚をここまでその本人の視点として、見させてくれたことに感謝します。
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主人公は終始第三者目線で物事を見ていて、人間味がない感じだったのが、周りの人間の人間臭さというとのを際立ててたのかなと思う。 少し難しかった。
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終始主人公が気持ち悪かった。 っていう感想を薦めてくれた男の子と仲良しの男の子にしたら、2人とも共感しかないって絶賛してた。 男の人に見ていた夢や幻想はもうとっくに壊れたと思ってたけど、まだまだ全然だったみたい。 この主人公の行動基準が自分どうしたいかとか、相手を大事にした...
終始主人公が気持ち悪かった。 っていう感想を薦めてくれた男の子と仲良しの男の子にしたら、2人とも共感しかないって絶賛してた。 男の人に見ていた夢や幻想はもうとっくに壊れたと思ってたけど、まだまだ全然だったみたい。 この主人公の行動基準が自分どうしたいかとか、相手を大事にしたいとか人間関係の上にあるものじゃなくて第三者にあるのがとても怖かった。 部活のシーンとかにこの気持ち悪さが特に表れていると思う。 人間不信が加速する。恋とか愛とか、本当にこの世に存在するの?
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『人間失格』と少し似てると思った。 主人公はまるで人間らしくない。 自分の欲望に素直。欲望のままに出来ることは欲望のままに行動する。 社会とか、世間がそれを許さない場合はしない。 AIとか、人造人間とか、そういうものを思い浮かべた。 ただ主人公がAIと違うのは、感情があることだ...
『人間失格』と少し似てると思った。 主人公はまるで人間らしくない。 自分の欲望に素直。欲望のままに出来ることは欲望のままに行動する。 社会とか、世間がそれを許さない場合はしない。 AIとか、人造人間とか、そういうものを思い浮かべた。 ただ主人公がAIと違うのは、感情があることだ。 セックスは気持ちがいい。肉はおいしい。体を鍛えることが好き。 その感情もなんだか直線的すぎるというか、周り道を全くしないでその感情に辿り着いている感じがなんだか怖かった。 不思議な読後感。 面白かったのか面白くなかったのかよく分からない。 でもあっという間に読んでしまった。
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ルールがあるから、ダメだと決まっているからやらない、こう振る舞うのが正しい、など全て頭で考えて行動する主人公。感情が希薄な感じ。 人生上手くやっているように見えるけど、愛のない性格ゆえに段々周りの人の様子が変わってゆく。歯車が狂って不穏な雰囲気になっていくのに没頭した。 物語...
ルールがあるから、ダメだと決まっているからやらない、こう振る舞うのが正しい、など全て頭で考えて行動する主人公。感情が希薄な感じ。 人生上手くやっているように見えるけど、愛のない性格ゆえに段々周りの人の様子が変わってゆく。歯車が狂って不穏な雰囲気になっていくのに没頭した。 物語の特性上性に関しての描写が多く、読んでいていやなところもあったが、ある意味リアルなのかなとも思った。 登場人物のだれにも共感できないが普通に面白く、読みやすかった。
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語り手自身の抱える人格の問題は、芥川賞でもよく見受けられるテーマだと思いますが、破局の主人公の無感情さ&強いこだわりという点に今の時代の若者っぽさがあるのではないかー?と思った
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作者の遠野遥さんの紹介文で、 ” 物議を醸すニヒリズムの極北 ” と書かれていたのを見て、読んでいて何を伝えたいのか分からなかったことに納得できた。 「ニヒリズム」=虚無主義。 ニーチェなどを代表とする、哲学的な立場である。 主人公の語りが、ただただ起こっていることや本能的に感じることを淡々と述べているように感じた。 自分がなぜこの行動(泣いたり、顧問の佐々木の家に肉を食べに行ったりする行動)をとっているのか分からないというようなことが書かれたシーン。 人間の三大欲求を指す「食欲」「睡眠欲」「性欲」を主にしたような大学生活の描写。 ラグビーやトレーニングをやっているときの描写も、コーチとして指導しているときも倫理観が他人とずれていて、肉体をただただ論理的に追い込み、結果を残すことしか見えていないところ。 いろいろなところから、作者が表現しているニヒリズム、虚無を感じた。 一つの文が短く、テンポが良いので読みやすいけれど、 それもまた読み手側に何の感情も感じさせない、虚無に繋がっているように思う。 麻衣子の昔の思い出について書かれているところがすごく長くて、それもなにか意味しているのかもしれないけど私には分からなかった。 でもその部分だけ麻衣子の語りが少し主人公に似ていた。 他にも隠喩(メタファー)など語るところはあると思うが、切りが無いのでこの辺で。 ニヒリズムを小説でこのように表現するという発想は新しいんじゃないかなと思うし、そこが芥川受賞にも繋がったのかなと思った。
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設定が良かった。主人公の「私」は慶應大学法学部4年。ラガーマンで筋肉質。恋愛経験も豊富で女性の扱いにも慣れている。公務員採用試験を受け、安定した将来を保障しつつある。そんな男としての価値を兼ね備えた彼は順風満帆に見えてどこか空虚な日々を送っている。というよりも、充実した日々に見...
設定が良かった。主人公の「私」は慶應大学法学部4年。ラガーマンで筋肉質。恋愛経験も豊富で女性の扱いにも慣れている。公務員採用試験を受け、安定した将来を保障しつつある。そんな男としての価値を兼ね備えた彼は順風満帆に見えてどこか空虚な日々を送っている。というよりも、充実した日々に見合わず彼の物事に対する熱量の乏しさを感じる。彼は全てを「こなしている」。 個人的な話になるが、私は春から大学生になる身でかつ、今まで慶應男子と関わりを持つ機会が多かったのでこうして一男子学生の脳内を覗けたことはこの小説を読むにあたって最も光栄なことと思う。 しかし、芥川龍之介の「恋愛は性欲の詩的表現」とは見事なもので、性欲に始まり、性欲に動かされ、性欲に支配されるストーリー展開には流石に虚無を覚えた。「恋愛は美しいものである」という18歳の乙女の幻想を破壊するには少々力が強すぎた。その答え合わせはこれから大学生活を送り、自ら見つけるものとしよう。 P.S. 細かい点だが、慶應大学でラグビー経験もあるのに何故商社マンを目指さず公務員試験を受けたのか不思議である。
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名門私立在籍、高校時代にはラグビー(アメフト?)部で活躍し、公務員試験も合格して尚且つ性格も優しくてジェントルマンという魅力的な要素を兼ね添える主人公が、最終的に型にハマりすぎた己の正義のせいで瓦解してしまう話に思えました。 正義を縛り付けた自分のルールとも言い換えられますか、要するに行動要因に彼の感情は不要なんですよね。 幼少期の父からの教えも影響しているのか。 彼の思う自分の中の優しさ、信念が、かえって仇となってしまい不器用に思えた。 読み進めるに連れて不穏な空気になるので、先が気になりすぐに読み終えてしまいました。
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バイトの先輩にお勧めしていただき読了 初めは陽介は感情が無いという印象を受けた。しかし人々の不幸が無くなることを願ったり、自販機の前で泣いてしまう場面などを考えると陽介にも感情があると考えられる。だが、陽介は強力な自分ルールを課している。その結果自分のルールに縛られ感情が見えにくくなっているのではないだろうか。 自分ルールへの執着の異常を感じたのはゾンビの場面。陽介はラグビー部で「自分をゾンビだと思えば、何も怖くない」といったアドバイスをする。実際に陽介は自分ルールに従うことが出来てしまう。(きっと陽介は緊張したときは面接官をジャガイモと思うことが出来る人なのだろう。) またこの本には様々なメタファーがあるように思えた。特に私が印象に残っているシーンは麻衣子の回想シーン。夢に出てきた男は麻衣子のベッドに胸の前に指を組んで寝転んでいた。これは陽介が前半でひとの不幸が無くなるようにと胸の前で指を組んでた場面とリンクするのではないか。それがどのようなメタファーになるかはわからないが… 純文学の中では読みやすく、好きでした
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