銀色の国 の商品レビュー
人の気持ちは複雑だ。相手がこういう状態だから、こういう言葉を投げかけなければ解決するというような、便利な公式はない。対話に失敗したときの無力感は、晃佑を引き潮のように迷いの沖につれていってしまう。(P.28) 人の話を〈傾聴〉するには、話の裏を読み本音を探ることが必須だ。普通の...
人の気持ちは複雑だ。相手がこういう状態だから、こういう言葉を投げかけなければ解決するというような、便利な公式はない。対話に失敗したときの無力感は、晃佑を引き潮のように迷いの沖につれていってしまう。(P.28) 人の話を〈傾聴〉するには、話の裏を読み本音を探ることが必須だ。普通の人間はなかなか自分の気持ちを把握しきれないものだし、できても伝える表現力を持っていない。 だが、〈傾聴〉しているから齟齬が起きているのではないか。 表面的な情報以外を考えているから、話が噛み合わないのではないか。(P.128) 大切にしていたものを捨てさせられたのだとしたら、感情のしこりが残っても仕方ない。しこりは成長して彼の中で腫瘍になってしまったのだろうか。(P.139) 日常という名の方程式が、翔太という変数の登場で思いもよらない数値を叩きだしている。(P.139) 死にたい。 洪水のように死にたさが高まった。立っていられなくて、ベッドに倒れ込む。死にたい。死にたい。希死念慮が鼠の群れのように頭の中を走り回る。 どうしてみんな嘘をつくんだろう。 勝手にカウンセラーを呼ばれたときもそうだ。お前が心配なんだ。そういう善意を盾にすれば、騙し討ちをしてもいいと思っている。尾行していないと嘘をついて、ずかずかと土足で踏み込んでくる。(P.147)
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誰かの「悩み」「苦しみ」「痛み」を、「理解出来る」や「救える」と思うのはひどく傲慢なことなのかもしれないなと思いました。「寄り添う」や「話を聞く」が、他人に出来ることの精一杯なのかも。 誰かの苦しみも、自分自身の苦しみも、本当に感じられるのは悩みや苦しみを持っている本人だけだし、誰かに「わかるよ〜」と言われた瞬間に、安心しつつも矮小化されてありふれたものになってしまう諦めも感じます。「わかるよ〜って、なんにもわかってないやん」、と。ゆくゆくは「あるあるかぁ」って悩みが小さくなっていくほうが良いのだろうけれど、一旦は、ただ聞いてほしいみたいな心理はわかります。わたしも、こう思いながらもわかるって言ってしまうので良くないなぁとつくづく思ったのを、読みながら思いました。 『銀色の国』でのマインドコントロールも、そもそもの建国の経緯も方法も、とても恐ろしい。 でも、「逃げ場」として救いには確かになっていた。何かに集中して、現実逃避しながら膨大な独り時間を過ごすのは、膨大な独り時間に自分を責め苛んでしまうよりはよい。『銀色の国』は、追い詰めるミッションさえなければ、穏やかな居場所みたいだから。問題は現実世界に上手く戻ってこられるかどうか、か。 人の話を聞くって大事だし、大変なことなんだな。。信じるというのも。 ここまでくると〈王様〉も関係者なんじゃ…と思ったけれどそうでなかったのが良かったです。王様は人の苦しみを聞くばかりで自分の苦しみを聞いてもらうことがなかったから、狂気を溜め込んでしまったのかな。逃げ続けた〈アンナ〉が、『銀色の国』で社会人としてコミュニケーション取れるようになるのもすごい転換でした。 事件は伝えられるときには一方の面だけなのが殆なので、「ありえん」と思ってしまう。けれど、〈アンナ〉や〈なっつ〉みたいな事もあるのかも。「俺はお前たちの物語にはならない」となったらそれまでだけど(流行語です)。 こう考えると、松永太ってもの凄いです。 わたしあと10年もしないうちに半世紀生きてきた事になるけど、この間に起きた凶悪事件でも指折り。。「治安悪くなってきたな…」と思うことは増えても、「……え!?」みたいなのはそうそう無いし、無いのが一番なので。ほんとに。
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日々閉塞感を感じている人に読んでほしい。 自殺を扱っているのもあり前半は暗く沈んだ気持ちになった、しばらく引きずるかと思ったが後半にかけて希望が生まれてきた。 本当の意味の救済とはなにか。人のためにここまで行動できる人たちがいる。 日本の自殺者数は目を背けたくなるほど多い、コロナの影響継続か などとぬかしているがもっと原因は他にあるのではないか。この問題から逃げてはいけないと思う。 パズルのようにぴったりと嵌った 良い表現だなあ くるみちゃんはとにかく良い子だし(お父さんも良い人、まさかあの人だとは思わなかった)、宙みたいな才人には出会ってみたいし、詩織ちゃんも逃亡欲がちょっと強いだけで、自分のその特性にぴったりと当てはまるものを見つけていた。 田宮くんみたいな傾聴力を大事にしたいと思ったし、井口さんのように辛い過去を乗り越えて人のために働ける姿は素晴らしい。今井さんや西野くんのような細やかな気遣いができるようになりたい。 どの登場人物も輝いていた。
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「虹を待つ彼女」「電気じかけの鯨は歌う」に続き同じ作家さんの作品を読みましたが、全て自殺に関連したお話です。特に今回は自殺対策NPO法人の主人公のお話なので、印象としては終始暗いです。少しグロテスクな表現もあります。 主人公の身近な人間が自殺してしまうことから物語が始まり、自殺のきっかけがそれを誘発するゲームが存在するのでは?といった疑問からその調査をしていく流れとなります。物語の内容的に、ゲームが悪者扱いされてしまうのでは?と思っていましたが、むしろゲームについての好意的な表現があり、ゲーム好きの私としては嬉しい気持ちになりました。 逃げることがあまり良くない事として認識されがちですが、あえて逃げることで本来備わっている活力を養い、新たにスタートできるのであれば、それも手段として上手に立ち回っても良いのかなと思わせてくれる作品でした。
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自傷行為を繰り返しサイトに「死にたい」とツイートを繰り返すくるみ。フォロワーからDMが届きVR用ゴーグルとともに「銀色の国」に招待される。ゲームのナビゲーターのアンナが王様と呼ぶ男「アルテミス」とは。アンナと王様の関係とは。自助グループをなのり救済を掲げ、ゲーム内で死ぬことは怖く...
自傷行為を繰り返しサイトに「死にたい」とツイートを繰り返すくるみ。フォロワーからDMが届きVR用ゴーグルとともに「銀色の国」に招待される。ゲームのナビゲーターのアンナが王様と呼ぶ男「アルテミス」とは。アンナと王様の関係とは。自助グループをなのり救済を掲げ、ゲーム内で死ぬことは怖くないと刷り込みを行い、洗脳し集団自殺に導こうとする王様。集団自殺をとめることができるのか。サブリミナル効果を使用した洗脳というのがあり、現実に起きそうな物語で近未来の闇をみました。いやこの物語はすでに現実なのかもしれません。
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病んでる時や現実世界が嫌になった時、ゲームにのめり込むのはすごいわかる。 洗脳の怖さ、現実世界とVRの世界の境目…。怖いな。 実際にありそうな世界観で面白かったです。
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集団自殺の教唆を図る殺人犯と殺人犯に洗脳される女性。またそれと相反するように自殺対策のnpo 法人の代表である主人公が事件の時系列と共に話を解決するために奔走するお話。話の主点がコロコロと入れ替わり、主要人物がどのように考え物語が進んでいくのか面白く読み進めれた。ただストーリーは所々ご都合主義で、なぜそう思いそう行動したのか疑問なる時があった。なにより主観が今回の殺人犯となる猿顔の男にクローズされなかったのが残念。あえてそこは書かず殺人者側のアンナの価値観を主張することが物語の主軸となる、生きづらさを抱える人々がそれでも前向きに生きていくという根幹につながっているという捉え方をするのが正解なのか。とはいえ生きていて様々な辛い思いがあるのは事実で、時には逃げて良い、なりゆきに任せることも悪くない。そんな優しいテーマを語った物語だったのかとも感じた。 私は今まで本当に死のうと思ったことはない。思春期の時に少し感じた事はあるが、すぐ楽しいことがあって忘れてこれたタイプだ。けどそれは自分の中である意味で逃げて成り行き任せに出来たところがあったからだろう。そう出来たことや、実際それで何とかなったのはラッキーで自殺志願者ともきっと紙一重だ。辛い現実があっても彼女や彼らがそれでも物語の終わりに前向きに生きようとしているのは、きっと何処かに生きる意味があり、人生を終わらせる選択が惜しく感じれたからなのだろう。井口さんが言う自殺者への諦念はずっと物語に見え隠れしているが、諦めだけではない地道な自殺対策支援の行動が主人公、ひいては物語の希望となっているように感じた。
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自殺対策のNPOがネット団体を相手に奮闘する物語。いや、物語じゃなく実際にもありそうで‥そう感じる今の社会って怖いと思いました。
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人には、それぞれの地獄があります。 なっつさんがつらいのだったら、それはつらいんです。 苦しみを肯定してあげてください。 人間、自分相手にはいくらでも辛辣な言葉をぶつけられる。 でも、友人に罵詈雑言をぶつけたら、相手は追い詰められるだけだし、こっちは友情を失うだけだ。 友達にか...
人には、それぞれの地獄があります。 なっつさんがつらいのだったら、それはつらいんです。 苦しみを肯定してあげてください。 人間、自分相手にはいくらでも辛辣な言葉をぶつけられる。 でも、友人に罵詈雑言をぶつけたら、相手は追い詰められるだけだし、こっちは友情を失うだけだ。 友達にかけるような言葉を自分にかけてごらん。 自分を友達のように扱えば、色々と上手くいく。
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<今>読んで良かった本。 にしても、病んでるのが若い女の子ばっかりで「はいはい・・・」て思ってしまった。いや、そういう意図がないのはわかっているんだけどなあ。
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