まだ温かい鍋を抱いておやすみ の商品レビュー
「思い出の食事」を絡めた6短編集。どの話にも抑圧された女性が登場する。これは好きな順がハッキリした。①『シュークリームタワー』1番良かった。主人公が自分をしっかり確立している。ドライなようで思いやりのある行動が羨ましい。②『大きな鍋の歌』ちょっと感動。娘の野栄が良い。③『ポタージ...
「思い出の食事」を絡めた6短編集。どの話にも抑圧された女性が登場する。これは好きな順がハッキリした。①『シュークリームタワー』1番良かった。主人公が自分をしっかり確立している。ドライなようで思いやりのある行動が羨ましい。②『大きな鍋の歌』ちょっと感動。娘の野栄が良い。③『ポタージュスープ』④『ひと匙のはばたき』いい話だが、うっすらファンタジー入ってるのが好みではない。⑤『ミックスピザ』気持ちはわからないでもないけど、あっさり不倫をするのはちょっと...⑥『かなしい食べ物』印象に残らず。
Posted by
後半の「ミックスミックスピザ」 「ポタージュスープの海を越えて」 「シュークリームタワーで待ち合わせ」 「大きな鍋の歌」の4編が秀逸。 普段、忙しさに埋もれてしまう 大事なのに見過ごしてしまう いろんな感情たちを思い出させてくれた。 食べることにもっと興味を持たなくては。
Posted by
短編集6編 人との関係がうまく結べない主人公たち.それぞれが,悩みやストレス,トラウマを食べることによって快復していく.食べることがどれだけ生きることにつながっているか,傷ついた心を癒すか.食べ物の力は偉大だ.「大きな鍋の歌」が良かった.
Posted by
初出 2013〜20年祥伝社WEBマガジン「コフレ」の6短編 帯には「心に染み入る極上の食べものがたり」とあるが、食べ物をとおして、自分の生き方、他者との関わりかた、に気づき、考えていく物語。 印象深いのは最後の「大きな鍋の歌」の、他人に興味にない中年の松ちゃん。調理師学校の...
初出 2013〜20年祥伝社WEBマガジン「コフレ」の6短編 帯には「心に染み入る極上の食べものがたり」とあるが、食べ物をとおして、自分の生き方、他者との関わりかた、に気づき、考えていく物語。 印象深いのは最後の「大きな鍋の歌」の、他人に興味にない中年の松ちゃん。調理師学校の同級生だった釣りや山菜採りの仲間の万田が病気になって見舞いに行くが、幼い頃シチューを作ってもらったことのある娘は、母親が出て行った原因である父親の鈍感な無神経さを批判する。私に言われてるみたいだ。 幼い子供を亡くして引きこもる友人の幸を、料理家の夜子は自分の家に連れてきて、少しずつ食べられるものを作ってゆく。夜子の他者の犠牲になることを拒否する生き方が少しずつ変わる話も共感できる。 不思議系の話もおもしろい。鶏肉を食べない清水さんは、孤立していた中学生の時に鳥の群れが自分の中に飛び込んできて寂しくなくなり、どこにいてもそこを自分の群れにできるようになったというのだが、彼女は自分のことを自分で決められるようになることを決めて鶏肉を食べ、鳥たちにさよならする。 日常に疲れた共働き子育て中の女友達二人が日帰り温泉旅行に出かけ、ふだん自分たちが食べたいものを食べていないことに気づき、「家庭の食卓は忖度の積み重ね」だと思う。自分たちが無関心だったけれど母親たちもそうだったのだろう、食べたいものは何だったのだろうと思う。帰り道に迷って休ませてもらった家のできごとは夢? ほかに、子供の頃の悲しい思い出のパンにこだわる恋人の話と、不倫相手と食べたラブホのルールサービスのミックスピザの話。
Posted by
1人の人に焦点を当てて、その心のゆらぎを描いた短編集。 読み始め、んー…刺激が足りないなぁ。と思っていたが、読んでいくうちにその描かれた個人の重みにお腹がいっぱいになっていく。大きな物語ではなく、個人レベルの小さな物語だけどどれもずっしりと重い。その重みを癒すのが食べ物。それで...
1人の人に焦点を当てて、その心のゆらぎを描いた短編集。 読み始め、んー…刺激が足りないなぁ。と思っていたが、読んでいくうちにその描かれた個人の重みにお腹がいっぱいになっていく。大きな物語ではなく、個人レベルの小さな物語だけどどれもずっしりと重い。その重みを癒すのが食べ物。それでプラマイゼロになる感じ。食べるって大事だなぁ。 自分だったら何がその一口になるのだろうとじっと考える。それは幸せな瞬間には思い出せないのだろう。何かが起こった時にこそ、その「おいしい」を欲するんだろうな。なんでも美味しい今この時に感謝。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
老若男女問わず、人は食べる。 途方にくれた時でも、悲しいことが起こってどん底に落ちた時でも。 食べることさえできれば安心できる、元気になれる。 どんなに冷えた体も、悩みすぎて空っぽになった心も。 お腹を満たせば、自然と生きる力もわいてくる。 普段は当たり前のように食べているけれど、食べることって生きることなんだ、と改めて教えられた6つの短編集。 特に共感したのは『ポタージュスープの海を越えて』。 仕事に子育てに、と日々奮闘する二人の女性が久しぶりに楽しむ、二人っきりの日帰り温泉旅行。 「家族の食卓って、忖度の積み重ねでできてるよね。自分がこれを食べたい、以外の理由で組み立てた料理を毎日作り続けるって、考えてみると結構クレイジーだよ」 ほんとそう。 私も子供を生んでから作る料理は"義務"となった。 自分が何を食べたいかなんて、あまり考えていない。 子供が要望するもの、それでいて栄養のバランスのあるもの(特に今は、翌日の弁当のおかずになるもの)…世の母親の考えることはどこも同じ。 たまにはこの二人のような小旅行に行って憂さ晴らししたいな。 そして、大きな鍋に肉や野菜を沢山入れてグツグツ煮込む温かなスープ。 落ち込んだ時はやはりこれに限る。
Posted by
食べ物をモチーフに紡がれる6本の短編集。著者はファンタジーと描写力の作家だと思っていたのだが、夫婦・家族という共同体の再定義を問う『シュークリームタワーで待ち合わせ』と『大きな鍋の歌』が社会批評性を帯びていて新鮮だった。もちろんフード描写はどれも冴え渡っていて実に美味しそう。
Posted by
彩瀬さんの作品は、すごく自分にハマるものとそうじゃないものがバランスよくあって、毎回読むたびに、『今回の彩瀬さんはどっちのタイプかしら』とそわそわしているのです。 (作家さんだって毎回同じものは書かないわけで新しいことに挑戦してみたり、原点回帰してみたりいろいろ試行錯誤するもの...
彩瀬さんの作品は、すごく自分にハマるものとそうじゃないものがバランスよくあって、毎回読むたびに、『今回の彩瀬さんはどっちのタイプかしら』とそわそわしているのです。 (作家さんだって毎回同じものは書かないわけで新しいことに挑戦してみたり、原点回帰してみたりいろいろ試行錯誤するものだと勝手に思っているので、彩瀬さんに限らず同じ作家さんでも好きいいい!ってなる作品とnot for meなものと両方あって然るべきだと個人的に思ってる) で、今回のこれは『好きいいいいいい!』の方でした(・∀・) このお話はいいな!あ、このお話の方が好きかも。いや、待て待て今度のやつのほうがさらに好きだわ!と気がつけば六話すべてを読み終わる。 個人的には僅差で『シュークリームタワーで待ち合わせ』がNo. 1かなぁ。 (大きな鍋の歌も捨てがたい。いや、全部好きだ!) 夜子さんに随所で共感してしまう自分もそうとう危うい人間なんだろうなと思いつつも、わたしも磁場が崩れた世界に踏み込めないでいるので。 お家にいる時間が増える中で、こんな物語が自分に寄り添ってくれたら、少なくもわたしは明日も生きていこうと思えます。 追記 彩瀬さんていつもタイトルがすてきだよね。 章タイトルとか、短編のタイトルもぜんぶセンスの塊で、頭のてっぺんから爪先まで言葉で埋まってるのかなと疑ってる。あるいは血中の言語濃度が異常に高いとか?うらやますいいいい!
Posted by
生きることは食べること。 いま2歳の子どもがご飯を食べてくれなくて、食事の時間が苦痛だった。 日々焦り、試行錯誤して、自分の食事は適当に済ませていた。 食べることは生きること。 この本を読んで、久しぶりに自分のための料理を作った。 子どもには好きなものを食べさせた。 すごく心が軽...
生きることは食べること。 いま2歳の子どもがご飯を食べてくれなくて、食事の時間が苦痛だった。 日々焦り、試行錯誤して、自分の食事は適当に済ませていた。 食べることは生きること。 この本を読んで、久しぶりに自分のための料理を作った。 子どもには好きなものを食べさせた。 すごく心が軽くなった。 明日からはもう少し食べてほしいものを食べてもらいたいけど、 これでもいいんだと思えた。 とても染み入るいい本に出会えた。
Posted by
“食”をテーマにした6編の短編集。人(に限らないが)が生きていくために、必ず必要な食事。自炊したり、誰かに作ってもらったり、出来合いのものを買ったり、外食したり……。さらには誰と食べるか、なにを食べるか、どんな状況かなど、無限のドラマが生まれる。収録された6編はどれもまったく似て...
“食”をテーマにした6編の短編集。人(に限らないが)が生きていくために、必ず必要な食事。自炊したり、誰かに作ってもらったり、出来合いのものを買ったり、外食したり……。さらには誰と食べるか、なにを食べるか、どんな状況かなど、無限のドラマが生まれる。収録された6編はどれもまったく似ていなくて飽きさせない。ちょっとだけ塩味が強かったような気がするが、全体に優しい味わいだった。
Posted by