文身 の商品レビュー
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悪徳小説家 (創元推理文庫) に似ている ゴーストライターの話が主で 私小説とどちらが真実という帯文の引きよりは 小説にどんな物語性を求めらるかって 原題な気がする
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最後の文士と呼ばれた作家、須賀庸一。 酒乱。女好き。乱暴者。 庸一が書く作品は私小説。 彼の生活をのぞき見ているような背徳感を抱きつつ 何かに取り憑かれたように一気に読み終えた。 P48〈山ほどある嘘のなかに、たった一つ嘘が混ざるだけや〉 P305〈私小説とは言え、小説である...
最後の文士と呼ばれた作家、須賀庸一。 酒乱。女好き。乱暴者。 庸一が書く作品は私小説。 彼の生活をのぞき見ているような背徳感を抱きつつ 何かに取り憑かれたように一気に読み終えた。 P48〈山ほどある嘘のなかに、たった一つ嘘が混ざるだけや〉 P305〈私小説とは言え、小説である限りは虚構と現実の混ざり物です〉 私は上手く騙されたのか?
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私小説作家・須賀庸一。須賀が経験したことが小説に描かれる。小説の内容は極めて暴力的だが、全て私小説ということで人気作家となっていた。しかし、須賀には秘密があった、賢い弟の存在。兄は弟のために生きているのか、弟は兄のために生きているのか。描かれた小説は、それは真実なのか虚構なのか。...
私小説作家・須賀庸一。須賀が経験したことが小説に描かれる。小説の内容は極めて暴力的だが、全て私小説ということで人気作家となっていた。しかし、須賀には秘密があった、賢い弟の存在。兄は弟のために生きているのか、弟は兄のために生きているのか。描かれた小説は、それは真実なのか虚構なのか。 兄弟の行く末が最後まで気になる。そして、最後の方は特にどこまでが虚構なのか、分厚い雲の中に漂っている感じだった。庸一が描かれるままに行動するところで、そんな簡単に実行し変わって実行し続けて一生を送れるものかしらと思ったりもしたけれど、そこは目を瞑るとして、兄弟の思いや読み進めるごとの虚構の渦への入り具合、娘に流れる血、後半部分が特に読ませました。
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成績優秀な中学生の弟と落ちこぼれの兄。親の期待は弟に集中し、兄は何をやっても認められないどころか、弟の分まで父親の暴力を引き受ける役割。 普通なら兄は弟に嫉妬したり憎んだりするだろうに、兄の弟への不思議なほどのフラットな姿勢がその後の運命を決めた。兄の、ある意味無垢とさえ言えそう...
成績優秀な中学生の弟と落ちこぼれの兄。親の期待は弟に集中し、兄は何をやっても認められないどころか、弟の分まで父親の暴力を引き受ける役割。 普通なら兄は弟に嫉妬したり憎んだりするだろうに、兄の弟への不思議なほどのフラットな姿勢がその後の運命を決めた。兄の、ある意味無垢とさえ言えそうな性格に弟の突拍子もない計画がまるっと入り込んでしまう。なぜ、そこまで、と思わぬでもないが、それがこの兄、庸一の持って生まれた素質なのであろう。白布が何色にでも染まるように。 中学生が、自分の存在を消す。比喩でもなんでもなく、本当に消す。死んだこととしてその後の人生を生きていくことなんてできるのだろうか。この時代だったからできたことなのか。 そしてその弟の企てに、まんまと乗り切る兄。弟の描く小説を、「私小説」とするために物語の通りに生きていく。いや、そんな、あほな。と思うけど、その通りに生きたほうが居心地がよかったのだろう、そこには弟の、兄への思いがあったからか。 けれど、そんな二つの人生がいつまでも続くわけもなく。悲劇的な展開に眉を顰める。そこまでやるのか。 そして、物語が一気にその景色を変える。これは、なに?なにが、物語なの?どこまでが、真実なの? めまいがする。頭がくらくらとする。物語に取り込まれたのは、弟か、兄か。いや、私自身なのか。 「文身」は分身であり、文信であり、文進であり、文神でもある。
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