銀の猫 の商品レビュー
舞台は江戸時代、年寄の介抱を仕事としている主人公お咲と、彼女に関わる人々との物語です。 作中に出てくる解放される人達の振る舞いは、一見すると身勝手なように捉えられます。しかしお咲との関わりと通してその人達の背景が見えてくると、なぜこの振る舞いとなったのか分かるようになります。ーこ...
舞台は江戸時代、年寄の介抱を仕事としている主人公お咲と、彼女に関わる人々との物語です。 作中に出てくる解放される人達の振る舞いは、一見すると身勝手なように捉えられます。しかしお咲との関わりと通してその人達の背景が見えてくると、なぜこの振る舞いとなったのか分かるようになります。ーこの振る舞いとなったのは、その人が今まで生きてきた過程の中で根底に残る事柄があるのではないか?これは現代の介護の世界でも見受けられる光景や理解をする際に必要な視点なのではないかと感じました。 よく参考書や教科書などでは、行動の背景に何があるのか知ることが、その人らしさを尊重しつつ適切な援助が行えるようになる…といった事を書かれていますが、この作品では物語(主人公)を通してその気づきを得られるような感覚がありました。実践とまではいきませんが、具体的な例のようにすっと理解できる感じです。 また主人公の人との関わる姿勢が印象的です。戸惑いや理不尽なことに対する怒りなどの感情があっても、相手と正面から向き合い関わっていく姿が心強く思えました。 介護の場で思うことがあった時だけでなく、作品を通して人と向き合う姿勢を感じたいと思う際に読むのも良いかと思います。
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現代に当てはめても心に刺さる部分のなんと多いこと。でもなんだか愉快な場面も多く、介護問題を抱えている人にとって、ほんの少しだけでも気持ちが軽くなるように思う。 めんどくさい人に思えたご隠居のおぶんさんがその後凄く頼りになる存在になったのが良い。 最後のほうで庄助の母の通夜の...
現代に当てはめても心に刺さる部分のなんと多いこと。でもなんだか愉快な場面も多く、介護問題を抱えている人にとって、ほんの少しだけでも気持ちが軽くなるように思う。 めんどくさい人に思えたご隠居のおぶんさんがその後凄く頼りになる存在になったのが良い。 最後のほうで庄助の母の通夜の後、お咲と庄助とおぶん、家族でもない、友人というわけでもない3人でお茶を飲んで喋っている場面になんともいえず和んだ。
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江戸時代も介護問題ってあったんだなぁ。 江戸時代は今よりもっと親の介護は子供が何をおいてもしなければならないという世間体に縛られていて大変だったんだなぁ。 介護問題って、先には死しかなく暗く辛くなりがちだし、この物語の主人公は母親が毒親という悲惨な状況なのに、読み進めていくうちに...
江戸時代も介護問題ってあったんだなぁ。 江戸時代は今よりもっと親の介護は子供が何をおいてもしなければならないという世間体に縛られていて大変だったんだなぁ。 介護問題って、先には死しかなく暗く辛くなりがちだし、この物語の主人公は母親が毒親という悲惨な状況なのに、読み進めていくうちに、人は誰しもゆっくり老い弱っていくのは当たり前で、それとどう向き合っていくかという、ヒント、光を見せてくれてよかった。
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病人や老人の介抱を仕事にしているお咲。 その仕事ぶりは仲立ちをしている鳩屋の中でも一番だ。そんなお咲の仕事ぶりを江戸の四季とともに描いた短編集。 お咲には我儘で自堕落な母親がいて、その母が作った借金を返す為に割りのいい介抱人の仕事をしている。そんなおさきの心の支えが元の舅がくれ...
病人や老人の介抱を仕事にしているお咲。 その仕事ぶりは仲立ちをしている鳩屋の中でも一番だ。そんなお咲の仕事ぶりを江戸の四季とともに描いた短編集。 お咲には我儘で自堕落な母親がいて、その母が作った借金を返す為に割りのいい介抱人の仕事をしている。そんなおさきの心の支えが元の舅がくれた小さな猫の銀細工だった。 様々な人を介抱する中でお咲が気づく家族の在り様や生き方を丁寧に描いている。 お咲が大変ない仕事をしながらも色々な人の人生を垣間見て成長していくのがいい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
星6つにしたいほどの面白さ。 自分の境遇と重なる部分もあり、言語化できずにいた気持ちをふわりと示してくれる巧みさにも唸る。 25歳の介護人お咲は所謂シゴデキで、雇用主にひっきりなしに頼りにされる。自宅に於いても休む暇はなく働き詰めだ。別れた亭主に借金を返さねばならず、気持ちも沈むし時に苛立つ。妙な達観を見せず、自分事はぐずぐずと同じところに留まっているが、人の事となると心の機微に聡く核心をつく。そこがリアルで魅力だ。 今だと35歳位の感覚だろうか。中堅どころ。 傍から見れば仕事をそつなくこなせる頼れる人材だが、本人は時に「私は玄人」と自分を鼓舞しながら必死に仕事に食らいつく。その内面がとてもリアルで自分の若かりし頃も思い出した。 登場人物は皆魅力に溢れ、町の活気が隠居生活の暗さと共に鮮やかに目に浮かぶ。 何度も読み返したくなる一冊だった。
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よかった。ほんとによかった。 お咲も佐和も庄助もおぶんも、みんなほんとによかった。 登場人物が全員魅力的。 江戸東京博物に行きたくなったので、調べてみたら2025年まで(予定)長期休館中でした… 好きな人が老いて弱っていくのは悲しい。 そんなとき私は笑って介抱できるだろうか。...
よかった。ほんとによかった。 お咲も佐和も庄助もおぶんも、みんなほんとによかった。 登場人物が全員魅力的。 江戸東京博物に行きたくなったので、調べてみたら2025年まで(予定)長期休館中でした… 好きな人が老いて弱っていくのは悲しい。 そんなとき私は笑って介抱できるだろうか。優しい声を掛けられるだろうか。 そのときになってみないとわからないけれど、もし思い詰めたときは『銀の猫』を再読したいと思います。
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嫁ぎ先を離縁され、「介抱人」として稼ぐお咲き。百人百様のしたたかな年寄りたちに日々、人生の多くを教えられる。一方、妾奉公を繰り返し身勝手に生きてきた自分の母親を許すことが出来ない。そんなとき「誰もが楽になれる介抱指南書」作りに協力を求められる。
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介護をテーマとした時代小説。 違和感なく、すっと入ってくるのは、老いや家族といったテーマは時代を越えるのだと納得できるうえ、 それでも江戸時代の雰囲気がきちんと描かれているから。 憎たらしい母と、どう決着するのか興味津々で読み進めた。いい感じに終わって満足。、
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読んだのは単行本の方なんですが…文庫版の表紙かわいいな(^^) 江戸時代に介抱人として女中奉公をする、お咲が主人公の物語。現代風に言えば、派遣で勤める介護ヘルパーさんってとこでしょうか。介護する人とされる人、その家族を描いていて、現代にもじゅうぶん通じるお話。介抱人という呼称が実...
読んだのは単行本の方なんですが…文庫版の表紙かわいいな(^^) 江戸時代に介抱人として女中奉公をする、お咲が主人公の物語。現代風に言えば、派遣で勤める介護ヘルパーさんってとこでしょうか。介護する人とされる人、その家族を描いていて、現代にもじゅうぶん通じるお話。介抱人という呼称が実際あったかどうかは知りませんが、女中奉公という名で今でいう介護を担った人がいたかもというのはリアリティがあるなと思いました。「五十過ぎまで生き延びればたいていは長生きで」というのも、然もありなん、て感じです。お咲にはぜひしあわせになってもらいたいなぁ…
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今で言うところの介護ヘルパーを通して江戸時代の介護の様子を描いた物語。 当時は後継ぎである男性が両親を介護することが当然だとか、今と変わらない年齢まで生きている人がいたとか、意外な情報はあったけれど、今も昔も介護を取り巻く苦労は同じですね。介護を美化することなく、苦労ばかり語るで...
今で言うところの介護ヘルパーを通して江戸時代の介護の様子を描いた物語。 当時は後継ぎである男性が両親を介護することが当然だとか、今と変わらない年齢まで生きている人がいたとか、意外な情報はあったけれど、今も昔も介護を取り巻く苦労は同じですね。介護を美化することなく、苦労ばかり語るでもなく、あるがままを受け入れて最期を見送ろうというメッセージが心に沁みました。
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