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流人道中記(下) の商品レビュー

4.2

65件のお客様レビュー

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2024/09/17
  • ネタバレ

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霧の中を、必死に歩いて、躓いて、悔し涙を流す乙次郎。助けるでもなく、ただ、その名を呼ぶだけの玄蕃は、強くて正しくて、どこまでも優しい。まさに、空のような海のような大きな人。 玄蕃に名を呼ばれて、自らも玄蕃の名を呼ぶ時、霧の立ち込める道が、開かれていく。 乙次郎の生涯に幸あれ。 涙必至の一作。

Posted byブクログ

2024/08/24
  • ネタバレ

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罪人・青山玄蕃を陸奥の三厩まで護送する押送人・石川乙次郎。 しかし上巻を読んだ限りでは、世の中を知り人の心の機微を知る玄蕃は悪人には思えない。 姦通罪を犯した上に切腹を断るような破廉恥漢には見えない。 どこかで冤罪であることが明らかになり、めでたしめでたしになると思いながら読んだ。 浅田次郎なので、そんなに単純な話ではないとは思ったけれど、読めば読むほど深い話だった。 まだ世の中を知らぬ押送人が守るべきと思い定めているのは「法」で、玄蕃が守っていたのは本人の言によると「礼」。 それを私は他人に対する尊厳と自身が恃む矜持と考える。 ”今の世の中は、御法にさえ触れなければ悪行ではないとする風潮がありますね。でも、それは真理ではない。人間の堕落によってすたれた「礼」を、補うためにやむなく求められた規範が「法」であるなら、今日でも「礼」は「法」の優位にあらねばならないはずです。” この旅で乙次郎は大きく成長したと思う。 乙次郎をめぐる状況は一つも改善されないけれど、成長した乙次郎がこの先どう生きるのかを、読みたい。 ここからネタバレ。 けれど、上巻でもちらっと「あれ?」と思わないでもなかった。 貧しい生活から逃れるために盗賊になった男が、あっさりと幼馴染の女性の前でお縄になった。 捕まれば厳罰が必定なので、何らかの情状酌量があるかと思ったのに、それはなかった。 今巻では、無実の少年が磔にされてしまい、それはもう取り返しのつかない事実となった時、多分青山玄蕃はこのまま刑に服するのだろうと思った。 だとしたら、何のために? どんな形であれ、彼は生きていたほうが世のためになる、というのは現代の考え方のわけで、家を潰してまで命永らえる武士ってどういうこと? 結局玄蕃の思いはわかるとして、家族や家臣などは彼の思想に殉じるって結果には、うーん…と思う。 多分奥さんは気丈に町人のように暮らせると思うし、子どもたちのこともしっかり育てていけそうだけど、自分で選んだわけではない苦労の道を納得できるのか? 特に長男。 その辺も続編で書いてくれるとありがたい。

Posted byブクログ

2024/01/15
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 流人・青山玄蕃と押送人・石川乙次郎の旅、下巻は仙台から三厩まで。  未熟で堅物な乙次郎と、彼をせせら笑う玄蕃の旅路は最初苦手に感じた。だが2人と行き合う人々とのドラマと、次第に明かされる玄蕃の身の上に触れて徐々にそのような印象は和らいでいった。特に道中乙次郎が悩み続ける「法」の在り方と、玄蕃が疑い相対する決意をした「武士」・「武士道」の在り方については興味深かった。以下に印象に残った玄蕃の台詞を引用する。   「いいかえ、乙さん。孔夫子の生きた昔には  法がなかったのさ。礼ってのは、そうした結構  な時代に、ひとりひとりがみずからを律した徳  目のことだ。人間が堕落して礼が廃れたから、  御法ができたんだぜ」(21章)   俺は俺のなすべきことを悟った。二百幾十年  の間にでっち上げられた武士道をぶち壊し、偽  りの権威で固めた「家」を潰してやる。それは  青山玄蕃にしかできぬ戦だった。   大勇は怯なるが如く、大智は愚なるが如しと  いう。ならば俺は、破廉恥漢でよい。(22章)  人として法より礼を貴び、傲慢と虚飾に塗れた「武士」像を疑い挑む。青山玄蕃は真に“つわもの”や“もののふ”と呼べる者かもしれない。

Posted byブクログ

2023/12/23
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玄蕃の生い立ちや流人となった経緯がわかって、「武士の存在が世を悪くする」という考えがあってこその冤罪を受け入れる姿勢に、なんて器の大きい、視野の広い人なんだろう‥‥‥と、上巻とは全く違う印象を抱いた。 乙さんは、これからどんな気持ちを抱えて生きていくんだろう‥‥玄蕃から学んだことを、世の中を良くするために活かしていくのかな、と思う気持ちと、家や身分を捨ててまでそう簡単に玄蕃の意志を継ぐようなことはできないよな‥‥という気持ちがあり、複雑。 玄蕃が命を賭けて取った行動が、どうか世の中が少しでもよくなる助けとなりますように‥‥と願わずにはいられない。 「礼」がうまく機能しないからルールや法律が必要になってくる、という視点は大切にしていきたい。

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2023/11/23

江戸時代の価値観が抱える矛盾が、興味深い視点で描かれている。 最後まで飽きさせない珍道中。もっと長くても良かった。

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2023/10/26
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この作家の作品は初読。 正直、上巻を読んでいる間はしんどくて、途中でやめようかと何度も思った。が、上下巻にまたがる仇討ちの話、それから、仮病を使ったお菊の話あたりから、ようやく物語としての面白味が増してきた。ことに、お菊のやるせなさ、生きることへの心許なさ、つたない嘘が引き起こした事態に怯えつつ、そんな中でも空腹を覚えて飯をあさる姿を思う時、ふと憐れみを感じないではいられない。 武士としての「縛り」に抗おうとする青山玄蕃の信条には、必ずしも共感するのは難しいが、法で裁けないことが社会にはあり、それは「礼」によって判断されるべき、という考え方は、今も続く課題かもしれない。

Posted byブクログ

2023/05/20

元旗本の流人と与力見習いの押送人。二人のロードノベルで浅田次郎節満載。なんだけどちょっと爽快感に欠けるか。それを求めてはいけない物語であることは重々承知ですが。

Posted byブクログ

2024/06/03

流人・青山玄蕃と押送人・石川乙次郎は、奥州街道の終点、三厩を目指し歩みを進める。旅路の果てで明らかになる、玄蕃の抱えた罪の真実。武士の鑑である男が、恥を晒して生きる道を選んだのは…。

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2023/03/19

玄蕃の冤罪を受け入れた理由にいまいち納得出来かねる。 がまあこれ以外に理由付もし難いか。 余韻を残す実に実にいいラストでした。浅田次郎氏はハズレ無し。 たまたまだが新聞連載物が続いた。これを毎日読めるのは楽しかったろうなぁ。 新聞連載小説といえば井上ひさし氏の偽原始人を毎日楽し...

玄蕃の冤罪を受け入れた理由にいまいち納得出来かねる。 がまあこれ以外に理由付もし難いか。 余韻を残す実に実にいいラストでした。浅田次郎氏はハズレ無し。 たまたまだが新聞連載物が続いた。これを毎日読めるのは楽しかったろうなぁ。 新聞連載小説といえば井上ひさし氏の偽原始人を毎日楽しみに読んでたのを今思い出した。五十年近く前の思い出だね。

Posted byブクログ

2023/03/03

読売新聞連載時に読みましたが、文庫化されたので読み返してみました。やっぱり結末が納得出来ません。浅田先生,乙さんの再吟味編を書いて下さい。

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