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流人道中記(下) の商品レビュー

4.2

65件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2021/07/14

不義密通を犯した“破廉恥漢”の旗本、青山玄蕃。「痛えからいやだ」と切腹を拒否したことによって、お家断絶の上、蝦夷地へと送られる処置がとられた。その青山を送る役割をおおせつかった、江戸町奉行の19歳の若き見習い与力、石川乙次郎。北の地へ向かうこの二人の道中を描きます。 各宿場で出...

不義密通を犯した“破廉恥漢”の旗本、青山玄蕃。「痛えからいやだ」と切腹を拒否したことによって、お家断絶の上、蝦夷地へと送られる処置がとられた。その青山を送る役割をおおせつかった、江戸町奉行の19歳の若き見習い与力、石川乙次郎。北の地へ向かうこの二人の道中を描きます。 各宿場で出会う人々も、それぞれの人生に抱えているものがあり、それらが二人の人生と交錯する。そこから紡ぎだされる物語がなかなかいい。人生とはままならないもの、それでも生きることは続いていく。そんな中、各場面でふるわれる青山玄蕃の采配に、心が動かされました。 話はそれますが、この人物には映像的に阿部寛がぴったりで、読んでいる間中、ずっと頭の中にその姿がありました(連れ添う見習い与力は、さしずめ染谷将太あたり)。 そして次第に明かされていく青山玄蕃の生い立ち、および彼が犯したという罪の真相。最後は大いなる感動をもたらしてくれます、思わず涙してしまいました。

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2021/06/11

 浅田次郎「流人道中記(下)」、2020.3発行。上巻は千住大橋~仙台、下巻は仙台~津軽三厩。奥州街道45次107里、旅は道連れ世は情け。流人と押送人でなく旅の道連れになっている青山玄蕃と石川乙次郎。武士が定めた世の理不尽さが次々に。何も知らず騙されて押込みの手引きをした16にな...

 浅田次郎「流人道中記(下)」、2020.3発行。上巻は千住大橋~仙台、下巻は仙台~津軽三厩。奥州街道45次107里、旅は道連れ世は情け。流人と押送人でなく旅の道連れになっている青山玄蕃と石川乙次郎。武士が定めた世の理不尽さが次々に。何も知らず騙されて押込みの手引きをした16になったばかりの亀吉が磔の刑に。仮病で宿村送りをしてもらったお菊45歳。そして、そもそも「言い訳(申し開き)をしないで「冤罪」に身をまかす青山玄蕃の決着が理不尽。武士は、その存在自体が理不尽であり罪。青山玄蕃に心打たれた石川乙次郎。

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2021/06/04

この作品、ストーリーはとってもいいです。 が、しかし、私のような人には、なかなか情景が頭に浮かばない(笑)。何故か?旅先で出会う人々の描写が説明調子だからかも。そして、「」の話しは武士口調で、ストーリーは現代風な方がいいかも。 そして、旅先で出会う人たちのぽっと出の感じなので、そ...

この作品、ストーリーはとってもいいです。 が、しかし、私のような人には、なかなか情景が頭に浮かばない(笑)。何故か?旅先で出会う人々の描写が説明調子だからかも。そして、「」の話しは武士口調で、ストーリーは現代風な方がいいかも。 そして、旅先で出会う人たちのぽっと出の感じなので、それよりも、流人を送ったあとのストーリーもあればなお良かったかな。

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2021/05/09

『破廉恥』な罪を犯して蝦夷福山へ預かりの身となった青山玄蕃と彼を押送する奉行所の見習い与力・石川乙次郎の道中物語後編。 上巻の終盤、宛の無い敵討ちの旅を七年も続けている神林内蔵助という男と出会った二人。神林はかつての乙次郎と同じく部屋住みの身分、いわばお家存続のためと部屋住みの...

『破廉恥』な罪を犯して蝦夷福山へ預かりの身となった青山玄蕃と彼を押送する奉行所の見習い与力・石川乙次郎の道中物語後編。 上巻の終盤、宛の無い敵討ちの旅を七年も続けている神林内蔵助という男と出会った二人。神林はかつての乙次郎と同じく部屋住みの身分、いわばお家存続のためと部屋住みの彼を厄介払いするために宛の無い旅に出されたのだった。 またこの宿場ではもう一人、騙されて押し込み強盗の手引きをさせられて死罪が決まった小僧・亀吉とも出会う。この当時、十五才以下であれば死罪は免れたらしいのだが亀吉は親が歳を偽って奉公に出したため書類上は十六歳になっていた。 双方の事情を知れば知るほど暗く切なくなる。神林は武家の面目を保つために翻弄され、亀吉はその幼さと無学無知なために死罪に相当する大罪を犯してしまった。 ところがここでまた偶然が起こる。神林の敵がついに現れたのだ。 となると再び青山の出番。仇討ちの見届け人を買って出、乙次郎には助太刀をさせる。 ついでに亀吉の様子も見に行く青山に期待が膨らむ。先の大泥棒発見の時のように皆が救われる道へ導いてくれるのではないかと。その結末は…。 次に出会ったのは夫の供養の旅の途中で病に倒れた中年女性。当時『病を得た旅人が故郷に帰りたいと願ったなら、沿道の宿駅はその懸命の意思を叶えてやらねばならな』いという『宿村送り』という法があった。もちろんその際に掛かる治療代や食事、宿泊代に旅費は沿道の宿駅持ちになる。 女性の事情が次第に見えてくると『宿村送り』の行方が気になるのだが、同時に青山玄蕃の事情も少しずつ明らかになってくる。 青山が何故様々な人々と直ぐに打ち解けるのか、何故物事を捌けるのか、そして時に何故厳しい判断もするのか。 そこには乙次郎の事情も可愛く見えてくるほど数奇で厳しい人生があった。 これまでの道中で様々な人々の人生や思いに触れてきた乙次郎。自分のような下っ端武士にも辛さがあるように、青山のような身分の高い者にはそれなりの、また様々な役職や町民、果てはその土地ならではの悩み苦しみ迷いがあることを知る。 そして改めて『法』とは何なのか、人が人を裁くことの恐ろしさや疑問も抱える。 『本来はおのおのが心得ねばならぬ当然の道徳こそが礼。功利や我欲によって礼を失したゆえに、法という規範が必要とされるようになった。すなわち、僕らが全能と信ずる法は、人間の堕落の所産に過ぎぬのです』 この文章にはハッとさせられる。日本はあらゆる法やシステムが性善説を前提に作られていて違和感を抱いていたが、それが本来あるべき姿なのだ。 『宿村送り』の女性との別れの後、青山はついに『破廉恥』な罪の全貌とお家取り潰しにまで発展した経緯を語る。上巻で予想していたようなご時世との関係は無かった。しかし乙次郎同様、青山への反問疑問は湧いて出る。だがそれも青山の出自や人間形成を思えば理解出来なくもない。 ただやはりその後を書いて欲しかった。歴史的にはその後武士の社会は瓦解していくわけで、その時代の中で乙次郎はどう生きていくのか。もっと近いところでは江戸に戻った後どうお役目や婿入り先の家庭と向き合うのか。 また青山の家族や家臣たちはどうなったのか(ある程度始末を付けて来たとは思うが)。青山がこの先長い後生を過ごす蝦夷地はやがて戦場にもなるが、その時青山はどうなるのか。などなど。乙次郎の意識や思いの変化は描かれるが、それがどうその後の人生にも影響するのか知りたかった。 最初は流人と押送人だった二人。科人の事情を知るべきではないと青山の名前も呼ばなかった乙次郎が旅の終着点・三厩ではついに名前を呼ぶ。映像が目に浮かぶようで良いシーンだった。

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2021/04/27

55久しぶりの浅田作品。続けて読むと食傷するけどたまにはいいね。右左に関係なくこういう心持ちでいることは難しいと実感してます。

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2021/04/11

江戸から津軽の三厩まで。奥州街道を北上する流人と押送人、道中で出会う市井の人々との心の交流。 上下巻のうち下巻は仙台から北。流人の旗本青山玄蕃を軽蔑する押送人見習い与力の石川乙次郎は正義感が強い。だが乙次郎はなかなか認めないが次第に玄蕃の人柄に惹かれていく。 法と礼そして武士...

江戸から津軽の三厩まで。奥州街道を北上する流人と押送人、道中で出会う市井の人々との心の交流。 上下巻のうち下巻は仙台から北。流人の旗本青山玄蕃を軽蔑する押送人見習い与力の石川乙次郎は正義感が強い。だが乙次郎はなかなか認めないが次第に玄蕃の人柄に惹かれていく。 法と礼そして武士の存在について。浅田次郎が自衛隊出身であることが本書に大きく影響しているように思う。テーマ的には「赤猫異聞」に似ている。 江戸に戻った後の乙次郎の活躍を予想はさせるが全く描かない、実にあっさりしたラスト。筆者の強い自信が感じられる。 一部の隙もない傑作。

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2021/03/31

まさに一気読みでした。こんな侍がいたかどうかは問題ではなく、こういう考えに触れることができたのが幸せです。小説のよさや価値は、ここにあるのでしょうか?

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2021/03/27

浅田作品は何を読んでも感動する。 この作品も主人公二人の関わり合い、それぞれの思いが心に響く。 あえて言うなら、亀吉を殺してしまわない展開はなかったのだろうか。

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2021/03/03

腹を切るのは受け入れないが、言い訳せずに流人の刑罰を受け入れることが、武士としてお家大事のしきたりの被害者である本当の罪人になり変わって理不尽な世の中に反発したということなのだろうか?今ひとつ理解できていないのですが、なんとなく気持ちがわかった、というカンジです。

Posted byブクログ

2021/01/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

面白かった!旅の終盤でちゃんと青山殿の事情が本人の口で乙次郎に語られるので、ある程度スッキリはするが、どうにもこうにも、対馬の糞野郎に対して腹が立ってたまらんねぇ。 印象に残るのは序盤の亀吉。確かに年齢を偽っている幼子なのかもしれないが、部外者に内情を語り、夜中に悪党を招き入れ、雀を握りつぶした亀吉にかなりゾッとした。磔刑となり、青山達が供養したことが読んでいる者に救いがあるように感じる。 ”大勇は怯なるが如く、 大智は愚なるが如しという。 ならば俺は、 破廉恥漢でよい。” ”「親がウトウと呼べば、子がヤスカタと答えるわや。  子煩悩な鳥でのう」” ”「おのれに近き者から目をかけるはあやまりぞ。武士ならば男ならば、おのれのことは二の次ぞ。まして大身の旗本ならば、妻子のこととて二の次ぞ」” 青山は破廉恥漢と見せかけて、己の身を、 千年の武士の世の贄としたのだ。 漢である、カッコ良すぎる。 ”「存外のことに、 苦労は人を磨かぬぞえ。 むしろ人を小さくする」 やはり言葉にできぬまま、 僕はかぶりを振って否んだ。” いろいろと詰め込まれすぎた、 スタンドバイミーな 男の子が漢と出会い、ちょっと成長するストーリー。 かっこよかったが、、 やっぱり、糞野郎に足を引っ張られるのが 誠に腹に据えかねるな。 世の中、糞はなくならぬものよ。

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