占 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「漂砂のうたう」より「櫛挽道守」が好きです。木内昇「占(うら)」、2020.1発行。占い、千里眼、口寄せ、喰い師、読心術などをテーマにした7話が収録されています。読んでるうちに、それが連作と知り、読む楽しさが倍加しました。第4話「深山町の双六堂」は平穏・平坦な人生をどう思い、どう得心するかの話で、面白く、奥が深く、恐くもありました。第5話「宵町祠の喰い師」は、小気味よかったです。第6話「鷲行町の朝生屋」は、身の毛がよだつ、ぞっとする話。第4話が一番印象に残りそうです。
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いやー、やっぱ木内さんはすごいなー。 それぞれの立場で占いに頼り、縋り、希望をもとめ、 ドツボにはまり、そうして、また自分の人生を歩き続ける女性たち、その渦巻く感情がリアル。 視えちゃう人の占う側の話もあり、面白い。 展開が、おお、そっちにふるのかーっとなったり、読みがいがある。...
いやー、やっぱ木内さんはすごいなー。 それぞれの立場で占いに頼り、縋り、希望をもとめ、 ドツボにはまり、そうして、また自分の人生を歩き続ける女性たち、その渦巻く感情がリアル。 視えちゃう人の占う側の話もあり、面白い。 展開が、おお、そっちにふるのかーっとなったり、読みがいがある。 とくにゆうたくんの話はちょっとせつない話と思っていたらだんだんホラーになってきて、ぎゃーーっと。 でも最後まではホラーじゃないとこが読後感わるくなくてすごい。 未来はだれにもわからないはずだけど、もう全ては決まってるんじゃないか、という疑いもあったり、 結局はすこしでも 自分にとってよい未来をみとめてジタバタしちゃうのが人間の哀しいとこだよなーー。 自分なんか、と思い始めるとグルグルしちゃうのでひじょーーーに危険。 特に日本人は自己肯定感が低いってゆーけど、 これって本来の気質?それとも育った環境によるのか? とはいえ親は選べないし、育った自分を変えるのってすごい努力がいるよなあ。
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ああこれは「茗荷谷の猫」のような連作だな、と読む。じっくりと書き込まれた長篇もいいけれど、木内昇はやはり短篇が面白いように思う。それも何処かで何かが繋がっているような気配がする連作が。 気配、と書いたけれど、木内昇の短篇の良さは気配を漂わせても結論を出し過ぎないところであるよう...
ああこれは「茗荷谷の猫」のような連作だな、と読む。じっくりと書き込まれた長篇もいいけれど、木内昇はやはり短篇が面白いように思う。それも何処かで何かが繋がっているような気配がする連作が。 気配、と書いたけれど、木内昇の短篇の良さは気配を漂わせても結論を出し過ぎないところであるように思う。江戸の落語ではないけれど、皆まで言いなさんな、という物言いにも通じるような。それは結論が明々白々だからというわけではなく、未来がどうなるかは主人公しだいであるのだから。 そんなこと気にしなくてもいいのだけれど、例えば、白雪姫やシンデレラが「王子様と結婚して幸せに暮らしました」的大団円で終わるのは、ある意味無責任というか、いい加減過ぎないかとか、短絡的だなとか、思ったりするのに対して、木内昇の短篇の終わりでは主人公は問題を抱えたままなところがいい。それでもどこかしら前向きな姿で描かれているのを読んで、多分、主人公はこの後も色々な問題に直面して悩んだり傷ついたりするんだろうなと想像しつつも(それもある意味短絡的だけれど)、すっと噺を手放す気にさせる。それがリアルだとか言いたい訳ではなく、小説を読む側に託されたものに触れた気になること、つまりはそれをああでもないこうでもないと考えることが、結局、小説を読むことの醍醐味じゃない?と思うので。 逆に言うと「万波を翔る」や「光炎の人」のようなずっしりとした長篇では、主人公がぎちぎちに描かれていて、どんな結末を迎えようともすっきりしない感じ(読んでいる側の未練)が残るような気がする(過去の感想を振り返って見たら、やっぱり主人公のことばかり書いている)。 落語の人情噺を聴いているような心地。それは会話の文章、地の文章を問わず用いられる少し時代がかった江戸の話し言葉の効果だろうか。それもあるとは思うものの、丁寧に描かれる日常の緩さ(主人公たちはある意味真剣だろうけれど)のもたらす自由度の大きさに由来するものかな、とぼんやり考える。
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悩める女性達を描いた短編集七話。 タイトルの通り“占い”をテーマに書かれたものと、占いとは異なるけれど、それっぽいものを書いたもの等、舞台は大正から昭和初期頃で、この時代の雰囲気が手に取るように伝わってきます。何となく同著者の「よこまち余話」を彷彿とさせるものがあります。 各話...
悩める女性達を描いた短編集七話。 タイトルの通り“占い”をテーマに書かれたものと、占いとは異なるけれど、それっぽいものを書いたもの等、舞台は大正から昭和初期頃で、この時代の雰囲気が手に取るように伝わってきます。何となく同著者の「よこまち余話」を彷彿とさせるものがあります。 各話すべて秀逸で(勝手に“木内クオリティ”と呼ばせて頂いております)微妙なリンク具合も心憎く、上手いなぁと唸らせる構成です。 個人的には第二話「山伏村の千里眼」と第七話「北聖町の読心術」が好きでした。この二つの話に登場する、杣子さんの人間観察力とそれに導かれる結論が適格すぎて、占いというよりカウンセリング、はたまたプロファイリングか?というレベルです。 そりゃ、相談者も納得だわね・・と、なりそうなのですが、いくら筋が通っていても“自分の希望している回答ではない→納得できない”という事で、何度もやってくる相談者がいるのが面倒ですね。 そう、本書に登場する悩める女性達に共通しているのは“執着”にとらわれているという事。 なので自分で適格な判断ができず、占いだったり、それのようなものに依存してしまう・・・という心理過程の描き方がまたお上手で、感心しながら読みました。 因みに、「宵町祠の喰い師」に出てきた森崎みたいな人って、会社にも普通にいますよね。こういう困ったヤツにつける薬はないものですかねー・・。
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占いにまつわる短編集。 悩むが故に占いに走り、深入りしてしまう人。いや、あなた、もう結論は出ているでしょう。と、言いたくなる人がいます。 逆に、占う方の立場の話もありました。 ゾクッとする話もあり。 占いで人の心までは分かりません。でも、相手のことが知りたい、自分...
占いにまつわる短編集。 悩むが故に占いに走り、深入りしてしまう人。いや、あなた、もう結論は出ているでしょう。と、言いたくなる人がいます。 逆に、占う方の立場の話もありました。 ゾクッとする話もあり。 占いで人の心までは分かりません。でも、相手のことが知りたい、自分の求めている答えを求めて占いを渡り歩き、本当の答えを見失ってしまう。 答えが出ているのに、本人がそれに気が付かない。 ありそうな話なので、ドキドキしてしまいました。
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どれも、悩みを抱えた女性が主人公。 細やかな心理描写に、知らず知らず引き摺り込まれる。 年下の男の心が自分にあるのかないのか信じられない女。 占いの結果に納得できなくて何度でも通い詰める女。 そんな客が大きなストレスになる占い師。 口寄せ師から夫婦それぞれの思わぬ本音を聞いて、...
どれも、悩みを抱えた女性が主人公。 細やかな心理描写に、知らず知らず引き摺り込まれる。 年下の男の心が自分にあるのかないのか信じられない女。 占いの結果に納得できなくて何度でも通い詰める女。 そんな客が大きなストレスになる占い師。 口寄せ師から夫婦それぞれの思わぬ本音を聞いて、見合いへの取り組み方を考え直す若い女性。 隣の芝生の青さが気になり過ぎて、ご近所の家庭を採点し始める主婦。 まだ明治の末、男社会への抵抗と挑戦に悩む才女。 結婚7年、「赤ちゃんまだ?」の問いに苦しみ続ける心優しき主婦。 相手を疑い、不安を膨らませ過ぎて、自分の中に鬼を生み出してしまった少女。 ・時追町の卜い屋(ときおいちょうのうらないや) 翻訳で身を立てる桐子(とうこ)は、30代の一人暮らし。 家の修繕に来た若い職人と男女の関係になるが、彼が一番大切に思うのは、生き別れの妹だった。 ・山伏町の千里眼(やまぶしむらのせんりがん) カフェーのレジに立つ岩下杣子(いわしたそまこ)19歳。存在感がないのを幸い、人間観察が鋭い。 占い師から見た勘弁客とは。 ・屯田町の聞奇館(とんだちょうのぶんきかん) 知枝(ともえ)18歳。この時代(大正の末)では適齢期も末。 父が見合いを勧めてうるさいが、知枝は英語の先生である桐子の家の仏壇に飾ってある、ダンディなおじいさまの写真に淡い恋心を抱いている ・深山町の双六堂(みやまちょうのすごろくどう) 平穏な家庭に物足りなさを感じている政子。 自分が直接に査定されることの無い主婦は、周りの家庭とのランク付に目を血走らせる。俗っぽさと皮肉にブラックな可笑しみを感じる。 ・宵町祠の喰い師(よいまちほこらのくいし) 才色兼備の綾子は、大きな製薬会社に、紅一点の薬剤師として就職した。 最初は女性が入った、と喜んだ男性社員たちだったが、綾子の仕事が出来れば出来るほど、煙たがられるようになり、父の死を機に退職して、実家の工務店を継ぐ。 ここでも、いい加減な仕事をする若い職人に悩ませられる。 彼の処分をどうするか。 ・鷺行町の朝生屋(さぎゆきまちのともうや) 恵子は結婚して7年、子供に恵まれない。 写真よりも生き生きした遺影を描く画家・朝生(ともう)に興味を抱く。 (この話は他と毛色が違う。角川の、黒い背表紙のあの文庫に収録すべきやつ) ・北聖町の読心術(ほくせいちょうのどくしんじゅつ) 佐代(さよ)20歳。容姿も含めて自分に自信が持てない。 島岡富久子(しまおかとくこ)の絵画教室で、画材を納めに来ていた老舗画材屋の三代目の青年と知り合った。初めて「両想い」というものを知り喜びを覚えた矢先、彼の過去に関する噂を聞く。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 結局、恋愛に振り回され過ぎないこと、没頭できる仕事や生き方を持つことだろう。 そして、占いやまじないは相談程度にとどめ、最後の決断は自分で下すことである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 最後の、杣子と佐代の関わりが良かった。 杣子自身も、悔いが残った鑑定の残した澱のようなものをさらえたのではないだろうか。
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自分を知らないと何も始まらない。 良いことも耳に痛いことも全て受け取って、だからどうするんだ、自分と問いかける材料にするなら占も一つの手段かもしれない。 私はどんな風に言われるかしら?と想像するのも面白かった。
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今よりも少し古い時代の話。古風な語り口調が新鮮にさえ感じる。ただ悩む内容は現代とは変わりない。 読み進めるうちに少々飽きが来てしまい、最後の方が消化試合的に読み終えた。今の自分には合わなかっただけで、何年か先にまた読みたくなるかも知れない。
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あまりに 素晴らしかったので 読み終えるのが 惜しいぐらいでした と 思える作品はそうありません 行きつけの図書館に 先週返却したのが 「鬼棲むところ」朱川湊人さん だったのですが 「あっ じゃあ これも ぜひ!」 と 司書さんに薦められたのが この一冊 そのまま 置いていて...
あまりに 素晴らしかったので 読み終えるのが 惜しいぐらいでした と 思える作品はそうありません 行きつけの図書館に 先週返却したのが 「鬼棲むところ」朱川湊人さん だったのですが 「あっ じゃあ これも ぜひ!」 と 司書さんに薦められたのが この一冊 そのまま 置いていて 何気なく 今週手に取ったのですが いゃあ これが 冒頭の言葉につながっていくのです 短編小説群です 何れも 静かに物語は始まるのですが 物語がすすむにつれて それはそれは いつのまにか 魅入られてしまうのです 女人であるがゆえの 人情の機微 心の奥深く棲んでいる気持ち それらが 見事に描かれて 一編一編が終わるたびに ほーっ と してしまう この余韻が たまらなく 心地よい 朱川湊人さんのあとに これを 薦めてくださった 図書館司書さんの慧眼にも 感謝 感謝
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占いなど当たるも八卦当たらぬも八卦であろうが、まだ女の足元が確立されていない時代、周りに流されずしっかりと自分の足で立って生きていくために、占いは彼女たちについと差し伸べられた助けの手に見えたのかもしれない。望む答えを得るために次々と占い師を訪ねる女や、周りの家庭ばかりに興味を持...
占いなど当たるも八卦当たらぬも八卦であろうが、まだ女の足元が確立されていない時代、周りに流されずしっかりと自分の足で立って生きていくために、占いは彼女たちについと差し伸べられた助けの手に見えたのかもしれない。望む答えを得るために次々と占い師を訪ねる女や、周りの家庭ばかりに興味を持ち評価する女の話など痛々しいものもあったが、どんな経緯を経ても、自分と向き合って新しく踏み出せる一歩は愛しい。印象深いのは死者を口寄せしてくれる「頓田町の聞奇館」ちょっとホラーな「鷺行町の朝生屋」。一番の好みは「宵町祠の喰い師」。
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