美しい距離 の商品レビュー
余命という言葉で、与えられた生を生きている状態から死に向かっている状態へとストーリーが反転する。 登場人物が妻に対していろんなことを決めつけ、あからさまに無神経だと読者が感じるように描写することで、主人公にとっての正解を示唆するような場面が多々あって、それが最初嫌だったけど、主人...
余命という言葉で、与えられた生を生きている状態から死に向かっている状態へとストーリーが反転する。 登場人物が妻に対していろんなことを決めつけ、あからさまに無神経だと読者が感じるように描写することで、主人公にとっての正解を示唆するような場面が多々あって、それが最初嫌だったけど、主人公の目の前ではそれが真実であり正解。完全に共感はできないが、現実味がある。 当たり前のように感情がゆれうごいて周りにいらいらするけど、あとから、理屈ではこうするべきだった、こういう情動は理に適っていなかったと反省会をする。そしてまた当たり前のように心が頭に先行して反省会を繰り返すのも人間らしい。 延命治療などという言葉でコミュニケーションや状況の簡便化を図ろうとするから互いにすれ違いが生じる。言語の副作用が出ている。 dnarは、人生を諦めモードで生きます、何も抵抗せず大人しく死に向かいます、という意味ではない。 死までの残り時間を未来と呼ぶのであれば、無限ではない未来がどんな状況でも誰にでも生まれた時から死ぬその瞬間まで存在し、死を宣告される前も後もその内容は変わるはずがない 余命宣告後もただそのまま生を続けたい、その気持ちを医療者や世間相手に伝えるのがこれほど大変だということがもどかしい122-138p 妻の死についてストーリーを欲して点と点を無理やり線で結ぼうとしたり、綺麗な姿で最後を迎えられてよかったね、などと的外れなことを言ってきたりする外野に主人公が憤慨していたが、それはちょっと致し方ないよなあ 妻の考えなど誰にもわかるはずないのだから、いくら慮ろうとしても本心あてゲームみたいな感じになってしまうし、人の死という何かしらリアクションをせざるを得ない場面でそこまで厳密に妻の想いを推測しろというのも無茶な話では。ただ確率論で物語ったり、人の死の原因を知ることで自分が死から逃れられる安心材料にしようとしたりするのは、「ある人の人生がこうなった」という圧倒的100%の事実の前では無意味 妻が死んでからの距離が良かった 人生のなかで生きている時間と生きていない時間が死を境にしてあるが、その存在は常に他者との距離を持ち、近づいたり離れたりしていく。ただ刻々と過ぎていく時間の中でその距離の変化を慈しむ、そんな恋が素敵だったような気もしてくる
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当初、主人公が妻に対して気が利かないもしくは考え過ぎと思うところがありモヤモヤしたが、それらは徐々にそうなるべくして、なっていることに気付く。人物描写がすごいリアル。余命と因果についての考え方も非常に参考になった。
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さっきまで生きていた人間に手を合わせて礼をする行為をばかばかしいと思っている主人公に胸を打たれました。 亡くなった人との距離感を考えたことがなかったけれども、生前の人との距離感が、死後にもそのまま反映されるのだなと、看病する主人公の姿を見て思いました。
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人との距離は、亡くなってからも淡くなったり、 濃くなったり、近くなったり、離れていったり、 動いている。 そうやって、ずっと関係性は続いていく。 未来じゃないところにも希望はあるのだと思う。 美しい距離の意味が、心に染みます。
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医者が用意した人生ではなく、妻自身の人生をまっとうしてほしい この言葉の本当の意味が、小説全体を通して段々とわかってきます。 医療職として終末期をみることもある者としては、この小説の医療者の見え方はかなりショックなものでした。特に、医師との噛み合わない話の場面では、医師側の気持...
医者が用意した人生ではなく、妻自身の人生をまっとうしてほしい この言葉の本当の意味が、小説全体を通して段々とわかってきます。 医療職として終末期をみることもある者としては、この小説の医療者の見え方はかなりショックなものでした。特に、医師との噛み合わない話の場面では、医師側の気持ちも大いにわかってしまいました。トラブルを避けるために、事実ベースかつ最悪の想定を常に話しておき、それを理解してほしいという思いが先走ってしまうのです。 仕事を効率よくこなすことに躍起になり、疎かになっていた、病気ではなくそのひと自身をみるということを思い出させてくれる、苦しい読書となりました。 ネガティブなことばかり書いてしまいましたが、 「来たよ」 カーテンから覗いて、片手を挙げる。 「来たか」 笑って片手を挙げる。 このやり取りに、二人の関係が凝縮されているようで、憧れました。
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最後まで読むとタイトルの良さが分かる。とても良い、とてもマッチしたタイトル。まさに美しい。 近い時も遠い時も、近づく時も遠のく時も、相手を想うことで「美しい距離」となるのだなぁと。 この小説の紹介文に“がん患者が最期まで社会人でいられるかを問う病院小説”とあったのだけど、読んでみ...
最後まで読むとタイトルの良さが分かる。とても良い、とてもマッチしたタイトル。まさに美しい。 近い時も遠い時も、近づく時も遠のく時も、相手を想うことで「美しい距離」となるのだなぁと。 この小説の紹介文に“がん患者が最期まで社会人でいられるかを問う病院小説”とあったのだけど、読んでみると印象は全く違うなぁと思った。視点がそのがん患者の夫だからそう感じたのかもしれないけれど。 豊崎由美さんの解説に、“小説は書かれた言葉だけで成り立っているのではない。書かれていないことにも語らせる力を持った小説こそが、いい小説なのだと、わたしは思う。”とあった。「まさに」! この小説は、静かな中にも、ひしひしと夫の深い愛情を感じるし、妻自身の仕事への思いだとか、両親の我が子を思う気持ちだとか、いちいち書かれていないこともしっかり伝わってくると感じた。 死ぬって、実はそんなにドラマチックなことでもなく、いつか誰にでも訪れることで、“その瞬間”も案外普通のように訪れてしまう。それを静かに受け入れられる物語だった。 愛犬を見送るときは必死すぎて自分の中にしか物語がなかったけど、いつか大切な誰かを見送るときには、この小説を思い出したい。 p25 習慣は意味を越える。一度身につけたものは死ぬまでやり遂げたい、なんとなく毎日続けていることで「ああ、今日も自分は自分として生きている」という感じを味わえる p52 配偶者というのは、相手を独占できる者ではなくて、相手の社会を信じる者のことなのだ。
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久しぶりに著者の本を読みたいと思い立ち 図書館の本棚と睨めっこ。 タイトルに惹かれ手に取ったけれど 装丁もとても好きだなぁと感じた。 最近「愛」とはなにか考えることがよくあって いろいろな言葉に言い換えられるうちのひとつが この『美しい距離』であるように思う。 ある人物を中心...
久しぶりに著者の本を読みたいと思い立ち 図書館の本棚と睨めっこ。 タイトルに惹かれ手に取ったけれど 装丁もとても好きだなぁと感じた。 最近「愛」とはなにか考えることがよくあって いろいろな言葉に言い換えられるうちのひとつが この『美しい距離』であるように思う。 ある人物を中心に描かれる放物線同士の交わるところを大切にしつつ、それ以外のところを尊重する、 そういったつながりの連続が共に生きるということであり、大きな輪の広がりに満ちていくのだなぁと思った。
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「がん患者である妻」ではなく「そのままの妻」として全てを考え行動しようとする。 そんな主人公の葛藤に心が揺さぶられました。 愛の形は人それぞれあれど、この人の愛はなんと美しいんだろう。 本当に愛しているんだな、大切なんだな。 そうひしひしと感じる作品でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
自分にもいつか訪れるかもしれない日々 「死ぬための準備期間のあるがんという病気 がんは、それほど悪い死に方ではない」 考えさせられるフレーズだ
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「来たよ」 カーテンから覗いて、片手を挙げる。 「来たか」 笑って片手を挙げる。 こうした2人の、2人だけのやり取りがとてもあたたかくて、やさしくて、今でも心に温もりを宿らせています。 「ありがとう。気をつけて帰ってね」 「大好きだよ」 小さな声で耳元に囁いてみた。 夫と...
「来たよ」 カーテンから覗いて、片手を挙げる。 「来たか」 笑って片手を挙げる。 こうした2人の、2人だけのやり取りがとてもあたたかくて、やさしくて、今でも心に温もりを宿らせています。 「ありがとう。気をつけて帰ってね」 「大好きだよ」 小さな声で耳元に囁いてみた。 夫と妻、そして、父と母やお客さん。 それぞれの、それぞれなりの心づかいや愛情が心に響きました。 また、"余命の物語“や「妻が死んだ時に距離の開きが決定したのではなくて、死後も関係が動いている。」といった言葉も印象的でした。 "余命の物語"はネット上などで時々目にする美談化的な営みの中に似たものを垣間見るように感じますし、自分自身そうした目線を向けたり、物語を勝手につくったりしていたかもしれない、と思いました。 そして、'関係の動き'について、本作では主に妻の死の前後における妻との関係の動きについて語られています。 しかし、当然ながら生の前後、あるいは生の只中においても、(特にまだ出会っていない誰か、何かとの)関係には動きがあるのだと改めて再認識させられました。1日に最大3万5000回の選択をするといわれる私たちの、その選択の一つ一つが、誰かとの、何かとの関係を動かしていくのだと。 上記で述べてきた以外にも多くの気付きや発見、学びがありました。「美しい距離」とは何か、深く実感させられる一冊です。
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