地面師たち の商品レビュー
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地面師たち 著者:新庄耕 発行:2019年12月10日 集英社 初出:「小説すばる」2019年1~6月号、8~10月号 Netflixのドラマがヒットしている「地面師たち」。その原作小説。2019年に発表されているが、言うまでもなく2017年に品川区の五反田で起きた事件をヒントに書かれたもの。被害にあったのが積水ハウスという大手の住宅メーカーだったこと、55億円を超える大きな被害額だったことに世間は驚いたが、多くの人々が「地面師」という言葉を初めて知った事件だったのではないだろうか。僕もそんな言葉、知らなかった。 現場の元旅館は山手線からも見えるが、昼の時間帯になると近くの人たちが集まる喫煙場所となっているようで、大勢の人が密集し、煙に包まれている様子が異様だった。 小説では、五反田ではなく、港区の地下鉄泉岳寺駅と、建設中の新駅・山手線の高輪ゲートウェイ駅の近くにある、宗教法人(お寺)の敷地が舞台であり、その金額は100億円に設定されている。 主人公は辻元拓海という37歳の男で、かつては伯父が社長、父が専務をする医療器機関連の会社に入って働き、妻子を養っていたが、自分が紹介したフリーの医師から紹介された得意先に騙され、会社を潰してしまった。父親は妻(拓海の母)と拓海の妻子を巻き添えにして放火心中をはかった。父親のみ大やけどをおいつつ助かり、懲役23年で服役中。拓海は妻子を失ったが、その息子は3歳だった。 希望を失い、デリヘルの運転手をしていた拓海は、出張した女の子が客とトラブルを起こした時、客の身方をした。その客がハリソン山中という一番の悪。地面師の親玉、プロデューサーだった。前科2犯。運転手をやめ、ハリソンの手伝いをするようになり、やがて地面師の一員に。小説では、恵比寿で詐欺を成功させて7億円を稼ぎ、報酬を配分するあたりから始まる。 次の案件は、上記のお寺、100億円である。これも、危ないところだったが、大手デベロッパーを騙してなんとか成功。これまでとは桁違いの金額を手にした。ところが、途中、図面師という重要な役割を果たすメンバーが薬物中毒で死んでしまう。実は、ハリソンに殺されたのだった。そして、100億の詐欺が成功した後、メンバー2人がこれを最後にすると言って去っていった。これも殺されることになるとハリソンは密かに拓海に教える。最初の恵比寿で売主になりすまし役をした老人も、ゆすりをしてきたので殺されていたことが判明した。 さらに、自分が伯父や父の会社で働いていたときに騙された件も、実はハリソンの仲間だったことが判明した。さらに、母親と妻子を火事で黒焦げにして殺したのもハリソンだった。冷酷非情だった。 この小説は、もう一人の視点、定年間際の刑事である辰の視点でも一部描かれていて、彼がハリソンに関するそうした情報をつかみ、拓海にたどりついてそれを教えた。彼はハリソンを逮捕することに人生をかけていた。 短い時間で書かれた小説のためか、あまり入り組んだミステリー的展開はなかったし、人生の悲哀との絡みも弱かった。登場人物のキャラも際立ってはいなかった。ただ、飽きずに短時間に読み切らせる点はよかったので、甘いけれど星3つの評価。
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土地の所有者になりすまして土地を売り数億円の詐欺集団の話。 実際の事件を聞いた時にはそんなことある?と思っていたが、小説を読んでみるとなるほどとあり得そうなやり口で真実味を感じられた。 映像化しているのが面白そうなのでよんでみた。
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積水ハウス地面師事件をモデルにした小説。主人公の男性は、元は真面目なサラリーマンで、父と一緒に親族が経営する会社に勤めていた。 しかし、詐欺師と出会い、役員である父に紹介したことで会社のお金をだまし取られ、会社は倒産の危機に。 自暴自棄になった父は、主人公の母と妻、3歳の息子が寝ている自宅に放火をする。家族も仕事も全てを失った主人公は流されるままにその日暮らしの生活をしている中で、伝説の地面師ハリソンに出会い、やがて地面師の仕事を手伝うようになる。 詐欺にあい、人生を破滅させられた男が、今度は騙す側に回る。ありがちなストーリーだけど、とても引き込まれる内容で一気に読んだ。 それにしても、ハリソンのサイコパスっぷりが半端ない。小説ではあるけど、現実に存在する詐欺師や反社の親分はみんなこんな感じなのだろうと思う。
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実際にあった事件をモチーフにした、土地売買にかかわる巨額詐欺事件をめぐる地面師たちの話。 導入から、主人公の生い立ち、本編となる事件までが流れるように進んでいくので、話にのめり込みやすく最後まで一気に読むことが出来る。 特に過去に自分が騙されたことがきっかけで家族を失った主人公が、同じく人を騙す地面師として活動していく中で、葛藤を感じたり、過去を振り返る場面は胸をうつものがある。 また、騙される側である大手不動産ディベロッパーも、サラリーマンの立場で見たときに色々と感じるものがあった。
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流行りモノに乗っかってみたw 面白くて、サクサク読めます。 まぁ、面白くはあるし、犯罪の中で生まれる絆だったりにホロっともするんだけども… 一人勝ちかーって悶々とします。 それぐらいの人物でないと、ここまで率いることもできないでしょうけども。 なーんか悔しいから⭐︎みっつw
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Netflixを契約していなくて、どうしても内容を知りたくて原作を読みました。 とても読みやすく、すぐに読み終えました。 実際にこう言う人たちはどのタイミングで足を洗うのだろう? 永遠に走り続けないといけないマラソンランナーは苦しいだけで、幸せなど訪れるのだろうか? みたいな事...
Netflixを契約していなくて、どうしても内容を知りたくて原作を読みました。 とても読みやすく、すぐに読み終えました。 実際にこう言う人たちはどのタイミングで足を洗うのだろう? 永遠に走り続けないといけないマラソンランナーは苦しいだけで、幸せなど訪れるのだろうか? みたいな事を考えながら読んでいました。 本筋からはそれますが、青柳さんのその後を知りたい。 スピンオフ書いてくれないかな。
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面白かったです!一気読みです。この作品は実際に起きた事件をモチーフにしてます。地面師とはなんぞや?から、どういう手口で詐欺が行われ、またなぜ騙されてしまうのか?非常にわかりやすく描かれていて、そんな事が実際に起きているのかと驚かされます。また内容的にも緊迫した状況下で行われていく...
面白かったです!一気読みです。この作品は実際に起きた事件をモチーフにしてます。地面師とはなんぞや?から、どういう手口で詐欺が行われ、またなぜ騙されてしまうのか?非常にわかりやすく描かれていて、そんな事が実際に起きているのかと驚かされます。また内容的にも緊迫した状況下で行われていく地面師たちの行動が、ハラハラドキドキ感あり、展開が気になる作りであっという間に読み進める事が出来ます。読みやすいです。実際の事件は五反田、本作では高輪ゲートウェイ、私の職場が五反田にあり通勤で高輪ゲートウェイを毎日通過してますが、こんなにも身近な場所で、こんなにも非日常的な出来事が起きているのかと思うと、一般庶民の私からすると、世の中って本当によくわからないなと。。。この後、Netflixを見ようと思います!
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チームで大金を騙しとる男たち。リーダーは品のある紳士。癖のあるメンバーに紅一点の美女もいて、ルパン3世みたいで面白いなー、そりゃあドラマ化するわと思っていたのだけれども、これは実際に起きた事件をモデルにしているらしい。 ルパンと違うのは、やはり彼らが犯罪者であることを全面に押し出していること。 騙されたら必ず不幸になる人がいるわけで。 ここからネタバレという名の備忘録。 主人公の拓海は、妻子と母を自宅の火事で失っている。家に火をつけたのは父。父は拓海が信じて紹介した男に騙され、事業の失敗を苦にして無理心中をはかったのだ。父は刑務所に入った。 拓海はそれからデリヘルの運転手をしていたが、そこで地面師のハリソン山中と知り合い、地面師の仕事をするようになる。 ハリソンの主導により、時価百億という物件で詐欺を行うこととなった拓海たち。さまざまなアクシデントに襲われつつも詐欺を成功させる。 しかし、ハリソンを追ってきた老刑事の辰は、拓海の家族をめちゃくちゃにしたのはハリソンだと告げる。 死んだメンバーの持っていた写真を見た拓海は、そこに自分と父を騙した男が映っているのを見て、主犯がハリソンであることを確信した。 拓海はハリソンを刺し殺そうとするが、ハリソンは防刃チョッキを着ており、拳銃で拓海を撃つ。瀕死の拓海のもとに駆けつけたのは辰であった。拓海は命を取り留め、自供する。拓海の自供により、事件は白日に晒された。 その頃、ハリソンはシンガポールで、新たなカモを見つけ、話しかけるのだった。 ドラマのハリソン役は豊川悦司。拓海や他のメンバーについても先に配役を知ってから読んだのだけれども、うーん。彼だけはイメージとは違う気がするなあ。ハリソン、外見の紳士さと本性を見せたときの下衆っぷりがおぞましいのだが、そういう演技をするのだろうか。 地面師の仕事の関係で拓海が知り合った、スキミング等の天才で、顔が焼け爛れている長井。彼とのやりとりが良かった。拓海とのやりとりを重ねて心を開いたのか、オンラインで知り合った女性と結婚に至る。拓海は「俺がいなかったら新郎側の友人ゼロになるじゃねえかよ」と、長井の結婚式に出ることを約束しながら、身辺整理をし、ハリソンを殺すことを決意する。切ない。 悪は滅びなかったし、拓海も報われなかった。でも心は救われたのかな。
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終始、緊迫感があって面白い。詐欺をする側に主人公を立てるにあたって、うまく理由を作り込んでるのが良かった。感情のなかった主人公が、最後に感情を出すのは気持ちいいが、勧善懲悪ではないラストは好き嫌い分かれそう。
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