大きな鳥にさらわれないよう の商品レビュー
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不思議で共感がむつかしい小説 人類が衰退しそうになった、遠い未来の話ということで、SF的な要素を持つ爽やかな話(表紙から連想)と思って読み始めました、、、 小さな話がいくつも重なって、全体としてひとまとまりになっているのですが、全ての話においておそらくテーマは同じはずなのに、上手く物語に入り込めませんでした。 (遠い未来の話だから当たり前なのかも?) 人間として特有の、「感情」がもっと感じられたらいいのかもしれませんが、全然違う惑星の不思議な生命体を「観察」している気分になりました。それが狙いの本なら、いいんですが、、、 うまく言えないのですが、、小説ってその物語を読んで何かを感じたり、小説の先に新しい世界が広がってたり、潜在的に自分の気持ちが揺さぶられることを求めて読んでしまっているので、本当に「観察日記」みたいなのを読んでいる気分というか、、、 きっと、とてもよい世界観なのに、平面的で「物語」があまり感じられなかったです。 そういう気持ちにさせるのを狙っているのでしょうか、、、 神話でさえ、人間らしい愛とか寂しさ憎しみがあったりするのに、なんでしょうかね、、、 自分にはハマらなかっただけだろうと思います。 低評価をつけてしまいました、、。
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なんの予備知識もなく読み始めた。 むむむ…。 再読の余地あり。っていうか、再読しないと元は取れないか⁉︎
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小説でしか描けない世界だと思う。 都度変わる語り手はどんな時代のどんな街に住み、どんな姿をしているのか、断片的に語られる情報をつなぎあわせてその世界を想像する、そういう小説独自の良さが凝縮された作品だった。 進化を求めながらも変化を受容できずに、自分基準の普通から外れた人間を...
小説でしか描けない世界だと思う。 都度変わる語り手はどんな時代のどんな街に住み、どんな姿をしているのか、断片的に語られる情報をつなぎあわせてその世界を想像する、そういう小説独自の良さが凝縮された作品だった。 進化を求めながらも変化を受容できずに、自分基準の普通から外れた人間を排斥しながら同じ運命をめぐりつづけ、ゆるやかに衰退するおろかな人類の本質が、さまざまな語り手を通してどこか客観的に、ありありと描かれている。 工場で作られた人間、たくさん存在する「わたし」、造形の不明瞭な「母たち」と「大きな母」、見慣れない数字の名前に、当たり前のように何百年と生きる人、クローンと人工知能。 描かれる世界が私にとって異質だと思ったとき、ああ私もまたおろかな人類のひとりなのだと自覚し、この世界の行く末をただひたすら読み進めていくうち、ああ私はこの物語の「見守り」なのだと錯覚する。 全編を通してアイデンティティとか、多様性とか、愛とか神とか、運命とか、さまざまなテーマが緻密な計算のうえに構成されていて、だからこそ「作者はなぜこれを表題作にしたのか」が気になった。掘り下げ甲斐のある作品なので論文一本くらいは書けそうな気がする。
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「自分と異なる存在をあなたは受け入れられますか」 人間って人間に近くてでも絶対に理解できないものを一番に恐れませんか。幽霊とかAIとか人でもそう。 人間よりも理性が強くて穏やかな存在からしたら、わたしたち人間だってみんな可愛くみえるかな。わたしたちが猫とか犬を無条件に可愛いと思う...
「自分と異なる存在をあなたは受け入れられますか」 人間って人間に近くてでも絶対に理解できないものを一番に恐れませんか。幽霊とかAIとか人でもそう。 人間よりも理性が強くて穏やかな存在からしたら、わたしたち人間だってみんな可愛くみえるかな。わたしたちが猫とか犬を無条件に可愛いと思うのと同じに。
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タイトルがつけられた14編の短編。 予備知識なしで読み進めると、初めはバラバラの短編集に感じたものが、どうやら連作のようだと気づく。 どうやら、というのは、時間軸も空間軸もあいまいで関係性が簡単には掴めないからだ。 不可思議な社会の中に生きる不思議な彼ら。 やがてこの世界が何を表...
タイトルがつけられた14編の短編。 予備知識なしで読み進めると、初めはバラバラの短編集に感じたものが、どうやら連作のようだと気づく。 どうやら、というのは、時間軸も空間軸もあいまいで関係性が簡単には掴めないからだ。 不可思議な社会の中に生きる不思議な彼ら。 やがてこの世界が何を表しているのかが見えてくると、薄っすらとした恐怖が襲ってくる。 いつもの優しいふんわりとした語り口がその恐怖を倍増させるが、登場人物たちの切なくも愛すべきキャラクターに少し救われる。
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優しくゆったりした文体で描かれるゴリゴリのSFディストピアもの。 とかくSFというと、あっと言わせるどんでん返しがあったり、 壮大な伏線の回収があったり、 ハラハラするアクションがあったりというイメージが強いですが、 事によると凄まじく詩的で哲学的な領域も持っていて、 久々にそ...
優しくゆったりした文体で描かれるゴリゴリのSFディストピアもの。 とかくSFというと、あっと言わせるどんでん返しがあったり、 壮大な伏線の回収があったり、 ハラハラするアクションがあったりというイメージが強いですが、 事によると凄まじく詩的で哲学的な領域も持っていて、 久々にそういうSFを読みました。 「世界の中心で愛を叫んだけもの」とか。 若い時に読んで全く意味がわからず、 この人はさっきからずっと何を言ってるんだろう?と混乱したものですが。 種としての限界をとうに迎え、人が人でなくなっていく中にあって、 それでも人が元来持つなにがしかの業が、人を人たらしめていて、 それが愚かでもあり、愛おしくもあり。 フィクションによって本質を描き出すSFの魅力をしっかりと持っている、 全編を通して終末のさみしさが漂う良作。 遠い未来の話なのだけど、神話でもある。 というよくできた構造。 どんでん返しはないけれど、 最初から一貫してそれが語られていたことに だんだん気づいていくのが面白い読書体験でした。
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わけも分からず読み進めていて、だんだんとわかりはじめたあたりでほんとうに恐ろしくて、切なくて、それでいてどこまでも優しい。川上さんの書くお話ってよく絶望があらわれているけど、川上さんの絶望ってゆるやかで柔らかくてこんなさみしくない絶望あるんだなって思う。すべて読み終えてからもう一...
わけも分からず読み進めていて、だんだんとわかりはじめたあたりでほんとうに恐ろしくて、切なくて、それでいてどこまでも優しい。川上さんの書くお話ってよく絶望があらわれているけど、川上さんの絶望ってゆるやかで柔らかくてこんなさみしくない絶望あるんだなって思う。すべて読み終えてからもう一度最初の「形見」というお話を読んだときの感想が、感想ってかたちで文字にできない。それくらいの不思議な空気がある。
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「ぼくの死体をよろしくたのむ」以来に川上弘美さんの作品をよんだ。 うーん難しい、どういうこと?という感覚をもちながらも章を読み進めていくと、いつのまにか遠いところまで来てしまった..未来のような、過去のような。リアルなような、嘘のような。小さな集落のはなしをしているようで、いつの...
「ぼくの死体をよろしくたのむ」以来に川上弘美さんの作品をよんだ。 うーん難しい、どういうこと?という感覚をもちながらも章を読み進めていくと、いつのまにか遠いところまで来てしまった..未来のような、過去のような。リアルなような、嘘のような。小さな集落のはなしをしているようで、いつのまにか、ありえなく壮大な歴史のはなしをしていた。気持ち悪さをかかえながらも、どうしてかとてもなつかしい、とてもいとしく感じてしまった。岸本佐和子さんの解説がとても素敵。解説をこんなにも熟読してしまったのははじめてかもしれない。
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結局わたしは、わたしという存在は大河の一滴に過ぎないのだなーと、本に書かれてることはまた少し違う感覚を得て楽になる。人類の未来史。
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人が滅びていく時間。 母なる存在となったITが、その長い時間を見守っていく。 それを哀しいと思うのか、幸いと思うのか。 献灯師を読み終えた時と同じように考えた。 神に救いを求めるには余りに傲慢で、やり直しには遅すぎるのではないか。 そうでないことを切実に願う。
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