1,800円以上の注文で送料無料

急に具合が悪くなる の商品レビュー

4.6

78件のお客様レビュー

  1. 5つ

    47

  2. 4つ

    16

  3. 3つ

    5

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/07/16

結末はわかっているのだけど、二人の言葉の応酬にぐいぐいと引き込まれてしまう。 「不運」と「不幸」の使い分け。不運は点、不幸は線。とても好きな箇所で二人とも丁寧に意味の違いを掘り下げてくれる。

Posted byブクログ

2024/06/15

末期の乳がんの状態であった哲学者宮野さんが、残りの「死」が見えている人生の中で、今起きていること、考えていることを人類学者の磯野さんに伴奏してもらいながら、言葉に残した往復書簡。 最後はものすごく難しい。 でも、最期まで語り合える、語り合えた伴走者がいてくれたことは、死への恐怖...

末期の乳がんの状態であった哲学者宮野さんが、残りの「死」が見えている人生の中で、今起きていること、考えていることを人類学者の磯野さんに伴奏してもらいながら、言葉に残した往復書簡。 最後はものすごく難しい。 でも、最期まで語り合える、語り合えた伴走者がいてくれたことは、死への恐怖の中において強烈な光で、ものすごくありがたかったのではないかと思う。 宮野さんもすごいけど、受け手の磯野さんもすごかった。 ・ヘルスケア・システムの話 ・周りの人の「どうにかしてあげたい」と思っての言動が放つ暴力性 ・代替医療に手を出したくなってしまう人の心理について ・説明のつかない不運は誰かのせいにしたくなる話 ・不運と不幸の話 ・患者100%になはなりたくない話 ・ぐだぐだいろんな話をぬるっと、ずるっとすることのありがたさ などなど。 宮野さんの話に分かるなあと思うところもあれば、磯野さんの話にわかるなあと思うところもあった。 その人が怒るときはどんな時か。 「宮野怒る」の場面が現れるとき。 そこにその人の考え方の根幹に当たる部分が見えてくるんだなと思った。 何を良しとして何を良しとしていないのか。 哲学者と人類学者の書簡なので感傷的な本ではない。自己を徹底的に見つめ、引っかかる言葉について、一つ一つ二人で解き明かしていったような本だった。

Posted byブクログ

2024/06/07

Xでこの本の事が流れてきて、ふと気になった。急いでブクログに登録して、先月読みたくてたまらず、コロナなんぞに今頃かかった、自宅療養のベッドの上で読み終えた。コロナと言っても高熱は下がった。死にそうにもないし。用心をしてやり過ごせば良いだけのことで済みそうだ。ところで。 研究とい...

Xでこの本の事が流れてきて、ふと気になった。急いでブクログに登録して、先月読みたくてたまらず、コロナなんぞに今頃かかった、自宅療養のベッドの上で読み終えた。コロナと言っても高熱は下がった。死にそうにもないし。用心をしてやり過ごせば良いだけのことで済みそうだ。ところで。 研究というものは、研究したい事物現象を、客体化して見つめることから始まると思う。ここでは、宮野さんのガンという病が、宮野さんという美しい星の周囲をくるくる回って、その軌道を狭めてゆくのを、磯野さんというアストロノーツが、星と交信しながら、軌道の変化なにするものぞ、広がる、深い交信をし続けて。 お二人の、その状況を、こころのありようを、客観と学究のキャッチボールで記した……と。言いたいところなのですが。ええ、それはそう。ですが何よりも。 なんてお二人、楽しそうなんだろう!お一人は、死に刻々と向かっている最中だと言うのに。そんなことぶっ飛ばす、深い深い「生きること」への認識の、うんと先へ向かう二人連れの道の途中。すごく楽しそう。紙幅の関係で削られたであろう、ごく普通の雑談も、私はたまらなく読みたかった。 私は別に、ガンの苦しさや痛みや、どうしようもなさを軽くは見ていない。並大抵のことで、この往復書簡が成り立つわけがないからだ。私自身も完治しない病をふたつ身に携えているし、想像を絶するものだと思う。死ぬかも、と思えば、怖い怖いもう駄目と、看護師さんに情けなく言ったこともある。だからこそ。 この本に綴られた状況で、考えること、ともに在ること、語り尽くし、問い合うことをやめないことが、どんなに。 壮絶なのに、明るさがずっとある。そのひかりの感触。 それは、どこか幸福で。 私も、意識ある限り、自分なりの問と、考えを突き詰めていきたい。このように分け合えるひとは、おそらくいなくて、私はひとりで逝くだろう。悲しむ人も、いるやらいないやら。 人間が考え、語り、伝え、それゆえに人であれる。そのしぶとさと幸福と、死に向かう時間の怖さやるさなさ。 すごい。 いいなあ。 一読だけで答えの出る本ではない。幾度もたどることになりそうだ。

Posted byブクログ

2024/05/05

終盤、お互いの距離がさらに縮まってもつれるように進んでいく様子がわかってきたとき、すごいものを読んでいるんだと息を飲みました。

Posted byブクログ

2024/03/03

がんを患った哲学者宮野さんと人類学者磯野さんと往復書簡が本になったもの。 宮野さんは最終的にこの本の完成直前に亡くなられてしまうのだけど、宮野さんは亡くなる数日前まで、ガンに苦しめられながら講演会や本の執筆活動をしていたそう。 一人の哲学者の最期の言葉が紡がれていて、それだけでか...

がんを患った哲学者宮野さんと人類学者磯野さんと往復書簡が本になったもの。 宮野さんは最終的にこの本の完成直前に亡くなられてしまうのだけど、宮野さんは亡くなる数日前まで、ガンに苦しめられながら講演会や本の執筆活動をしていたそう。 一人の哲学者の最期の言葉が紡がれていて、それだけでかなり貴重な本だと思う。 ただ、悲壮感に満ちているのかというと全くそんなことはなく、学者同士の知の応酬という感じだった。 全編面白かったが、特に、九鬼周造の「偶然性」についての話と、アゼンデ人の妖術の話をつなげていった2人のラリーが面白かった。 この本を読んでいた最中に能登半島地震のニュースを見たので、この本で触れられている偶然性というものをありありと感じてしまった。 死に近い宮野さんに対して、磯野さんが「今のあなたにとって死とはどういうものなのかを、哲学者としてここで語るべきだ」と言っていたのだけど、この質問は相当な覚悟があっただろうなと思った。し、それに応じる宮野さんの精神力もものすごいと思った。そういうことを聞いてくれる&答えてくれるような関係性の相手と会話をし続けていられて、宮野さんはきっと幸せだっただろうなとも思った。 読後感としては、単純に「へーおもしろ!」となるようなインプット本・トリビア本ではなくて、読み終えてから日常生活のアレコレと繋げて物思いにふけってしまうような本でした。 「私は不運ではあるが不幸ではない」という宮野さんの言葉は、自分にとっても大事な言葉になりました。

Posted byブクログ

2024/02/07

すさまじいと思ういっぽうで人文学を研究していない「普通」のひとにはこんなことは難しいのだという思いもある。

Posted byブクログ

2024/07/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2020/6/15読了 手帳に残してあった感想(取り留めのなさがすごいですが…) ↓ 魂を分け合った二人、という、偶然の出逢いは必然だったのだという言葉、何もうまく言えないけれど死にゆく自分と、そうでありながら約束を取り付け、責任感を強く感じ、もう手放してしまいたいと思い、それでも生きて、踏み跡を残し、自分の意思の中で、運命だからと何をせず生きることではなく……… 言葉を仕事にする人ってすごいなあ 泣きました

Posted byブクログ

2024/01/14

偶然性と死のとらえ方 死にまつわる当事者とその周りの人達のやり取りの暗黙のルールがあること →これが生きる力を損なわせている可能性はないか? 偶然性への興味が沸いた →九鬼周造の思想 →宮野真生子の他の著書 磯野真穂の摂食障害に関する本も興味あり

Posted byブクログ

2023/11/19

なかなか辛い本だった。 読み終えて、何か気分が変わる軽い本を探して読んだほど。自己開示を命懸けでしている宮野さんへの思いで胸が潰れそうになった。多くのことを考え過ぎてグッタリ疲れもしたし。 重い本だ。決して悪い意味ではない。 これから何度も思い出して、今よりもここに書かれたことが...

なかなか辛い本だった。 読み終えて、何か気分が変わる軽い本を探して読んだほど。自己開示を命懸けでしている宮野さんへの思いで胸が潰れそうになった。多くのことを考え過ぎてグッタリ疲れもしたし。 重い本だ。決して悪い意味ではない。 これから何度も思い出して、今よりもここに書かれたことが深まっていく予感もする。いろんな人に、この2人のことや、自分が読んだ後何を考えたかを話すだろうなという予感も。 「ネガティヴケイパビリティ」というものがある。これも帚木蓬生の著書を読んだ後に、何度もその概念にあたることに遭遇して深まった言葉だ。 今回もまた「腑に落とす」ということに関しての二人のやりとりから、「ネガティヴケイパビリティ」って大事だなと思うことがあった。 合理的に見える物語を受け入れることは楽だ。 わからないものと対峙するのはしんどいから。 自分ががんになったというのは多くの選択肢の中のたった一つである。なぜ他の道でなかったのだろう。理由は?と問う。 でもわかる必要などない、そのままを受け入れるのだ、と宮野氏はいう。 カオスを整理整頓し二項対立で秩序づけたのは近代の精神だ。しかし、人間の感情は簡単に整理整頓できるほど単純ではない。複雑なものを複雑なままに受け入れる。 ここでもまた「ネガティヴケイパビリティ」が発動していた。 がんになったのは不幸なのか? 磯野氏は言う。 「不運は点、不幸は線」 私にも不運はあったので、とてもよくわかる。不運は不幸にも幸せにも、「普通」にも枝分かれする。 がんになってしまうと、周りの人は、気を遣い言葉選びをするのがマナーだという風潮がある。それは、相手を「100%のがん患者」にしてしまう。 「自分はいつもがん患者なのではない」という宮野氏の言葉に、コミュニケーションが相手を「がん患者」に閉じ込めることもあることを知った。 そこで磯野氏のいうLINEにおける会話の広がりの効用はなるほどなと思った。 LINEのやり取りはあっちへ行ったりこっちへいったり、取り止めがない。 最初の「100%の患者」気分から、いつのまにか「ほぼ患者」くらいへ移行できる。「患者ではない素の自分」にも。 私たちはそういうふうに、あっち行ったりこっち行ったり、一息ついたり、逃げたり、横目で見たりしながら、本質から外れたり戻ったりしていくことは多い。 そうやって二人は信頼関係を築いていく。 信頼感が深まるにつれて、学者同士として、「死」を迎える哲学者はいかなる思いを持ち、何を発見していくのかという核心へと歩を進めていく。 宮野氏が本当に具合が悪くなってから 磯野氏が、宮野氏がそう遠くない時に迎えるであろう「死」を哲学者としてどう捉えるかについて真正面から問いかけた時、(おそらく読者である私も、その問いをし意識しつつ封印して読んでいたせいで)涙がどっと出た。 このやり取りの後、二人の本気が「ミラクルな本気」になった。この本気度がすごい。切なくて何度も本を置いた。 「シスターフッド」という言葉を使うと2人は嫌だろうか?(安直に聞こえるかもしれないが、私は好きなので使わせてもらおう) 一人で渡るしかない「死」を、二人で渡ることができるのだな。しかも一人はまだ死なないのに! 見事な「シスターフッド」を見せてくれる本だ。

Posted byブクログ

2023/08/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

電車の中で泣きながら読んだ。 人類学者とがんを患った哲学者の2人が、往復書簡を通じて「急に具合が悪くなる」ことや日常の様々なことについて考えをやりとりすることで、現象やそこで生まれた感情について言葉で捉えようとする。後半に行くにつれて2人の(特に磯野さん)文章に熱が帯びてきて、想いの強さにあてられて涙が出た。 考えさせられる点も多かった。 どちらも、「患者」「非患者」といった関係性における定型化したお互いに傷つかないためのコミュニケーションチップスのようなものに頼らずに(頼れない状況でもあるが)ひたすらに向き合い続ける姿勢に、学者のプライドを感じた。この関係性だけでなくても、日常には定型化した(ある程度正解と思われている当たり障りない角が立ちにくい形式に丸められた)コミュニケーションってある。 特に多様性への認識の高まりだったり、「センシティブ」とされる事柄が多い(増えている?)世の中で、「下手なこと言えない」感がコミュニケーションの縛りとして意識下に存在してる。最近の自分を振り返っても、相手に不快を与えないか?気にしすぎて当たり障りない言葉で誤魔化したり、そこに対する努力を怠っていたように感じた。 初対面だったり、仕事上の関わりや不特定多数に対する発信などでは、「下手なことは絶対言わない」ようにリスクを排除し安全に振り切った言葉を使うように注力した方がうまくいくかもしれないが、関係性を深めたい相手とのやりとりでは「互いにとって心地よい言葉や身振りを見つけ」出すことに努力をおしまずにいるべきだと改めて感じた。

Posted byブクログ