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急に具合が悪くなる の商品レビュー

4.6

79件のお客様レビュー

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    48

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2023/08/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

電車の中で泣きながら読んだ。 人類学者とがんを患った哲学者の2人が、往復書簡を通じて「急に具合が悪くなる」ことや日常の様々なことについて考えをやりとりすることで、現象やそこで生まれた感情について言葉で捉えようとする。後半に行くにつれて2人の(特に磯野さん)文章に熱が帯びてきて、想いの強さにあてられて涙が出た。 考えさせられる点も多かった。 どちらも、「患者」「非患者」といった関係性における定型化したお互いに傷つかないためのコミュニケーションチップスのようなものに頼らずに(頼れない状況でもあるが)ひたすらに向き合い続ける姿勢に、学者のプライドを感じた。この関係性だけでなくても、日常には定型化した(ある程度正解と思われている当たり障りない角が立ちにくい形式に丸められた)コミュニケーションってある。 特に多様性への認識の高まりだったり、「センシティブ」とされる事柄が多い(増えている?)世の中で、「下手なこと言えない」感がコミュニケーションの縛りとして意識下に存在してる。最近の自分を振り返っても、相手に不快を与えないか?気にしすぎて当たり障りない言葉で誤魔化したり、そこに対する努力を怠っていたように感じた。 初対面だったり、仕事上の関わりや不特定多数に対する発信などでは、「下手なことは絶対言わない」ようにリスクを排除し安全に振り切った言葉を使うように注力した方がうまくいくかもしれないが、関係性を深めたい相手とのやりとりでは「互いにとって心地よい言葉や身振りを見つけ」出すことに努力をおしまずにいるべきだと改めて感じた。

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2023/08/20

年初親友をガンで亡くしました。脳に転移してから急速に状況が悪くなってしまい、視覚を失ってからはコミュニケーションもままならず、去っていきました。そんな親友のことを思い出し宮野さんと重ねつつこの本を読みました。丁寧につむぎだされる二人の言葉にひきこまれました。二人の会話をどこまで理...

年初親友をガンで亡くしました。脳に転移してから急速に状況が悪くなってしまい、視覚を失ってからはコミュニケーションもままならず、去っていきました。そんな親友のことを思い出し宮野さんと重ねつつこの本を読みました。丁寧につむぎだされる二人の言葉にひきこまれました。二人の会話をどこまで理解できたかはわかりません。あらためて読めたらいいなと思ってます。

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2023/07/03

実を言うと前半で一旦挫折してしまっていたのだけど、そんな自分の怠慢を棚に上げてしまうとこの本のキモは後半に彼女たちが間合いを詰めて、「死」すべき彼女たちの定め/運命を見極めてそこから「不幸」と「不運」について語らうところではないかと思った。そこから見えてくるのは、静的なデータや合...

実を言うと前半で一旦挫折してしまっていたのだけど、そんな自分の怠慢を棚に上げてしまうとこの本のキモは後半に彼女たちが間合いを詰めて、「死」すべき彼女たちの定め/運命を見極めてそこから「不幸」と「不運」について語らうところではないかと思った。そこから見えてくるのは、静的なデータや合理性に支配された価値観から傷つかずに世界を俯瞰するのではなく、傷ついてでもそこで救いを求めている他者に手を差し伸べてつながり合い「いま」を果敢に生きようとする凛々しい態度だ。そのカッコ悪い(ごめんなさい!)勇気はヤワなものじゃない

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2023/05/18

病(死)とどう向き合うか、が主題なんだけど、どう生きるか、ということを話している。机上の空論や言葉遊びなんかでは全くなくて当事者としての率直な感情あり、それを哲学者・人類学者というプライドをもってして思索し言葉にしている。チープな表現だけど魂のぶつかり合いだった。凄いものを読んだ...

病(死)とどう向き合うか、が主題なんだけど、どう生きるか、ということを話している。机上の空論や言葉遊びなんかでは全くなくて当事者としての率直な感情あり、それを哲学者・人類学者というプライドをもってして思索し言葉にしている。チープな表現だけど魂のぶつかり合いだった。凄いものを読んだな。 一番印象に残ったのは病気のひとというラベルを貼られてコミュニケーションが硬直するという話。不用意なことを言って相手を傷つけないため(ひいては相手を傷つけたという事実に自分が傷つかないため)カウンセラーと客みたいなやり取りしかできなくなるというのは病気を持つということに限らずよく起こることだと思う。

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2023/02/08

不幸と不運や偶然と必然。病気をもつ人への定型文など言葉にするとチープだけど、往復書簡という形で、2人のやり取りを追体験をし、とても考えさせられる本。ひさびさに衝撃的な読者体験だった。おすすめです

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2023/01/28

九鬼周造の哲学が引き合いに出され、病を「ないこともありえたものがある(174頁)」、「あり難いものがある」ことの驚きとして偶然を美しく描きだすこともしてきた(174頁)、「にもかかわらずある」と語ることで自らの存在を保とうとする私の執着(174頁)などなど、往復書簡を通して生きる...

九鬼周造の哲学が引き合いに出され、病を「ないこともありえたものがある(174頁)」、「あり難いものがある」ことの驚きとして偶然を美しく描きだすこともしてきた(174頁)、「にもかかわらずある」と語ることで自らの存在を保とうとする私の執着(174頁)などなど、往復書簡を通して生きるための言葉を紡ぐ姿勢は体調の波があっても変わることなく、自分のことだったら、周辺にいる立場だったら、同じ思考を辿れるだろうか、考えました。

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2023/01/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

すごいものを読んだ。手と体を震わせながら読んだ。 かなり進行したがんを体に抱えてしまった哲学者と、健康な人類学者の往復書簡。お互いに同年代の女性同士。かなり深いレベルで、タブーを突き破って思索をぶつけ合う。 そして哲学者は書簡のやり取りの途中で本当に具合が悪くなり、最後の便の約2週間後に亡くなってしまう。 それでも最後の一言が「私の思索に付き合ってくれてありがとう」だし、多幸感に溢れた書きっぷりがすごい。 とはいえ、書いてある内容は実はとても難しい。学者同士が遠慮なく言葉を尽くしてやりあっている書簡なので、私のような一般人に理解し難いのは当然である。 脇目も振らず一気読みをしてしまったので付箋すら付けなかったが、印象に残ったフレーズがたくさんあった。理解をさらに深めたいためもあるし、これは再読が必須。

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2022/11/22

見た目に比して、熱く深い一冊! 2人の対話による往復書簡は、機知に富みつつ本気の殴り合いのようにも見える。それだけ深いキャッチボールをできるのは、もともとの専門性とともにお互いへの信頼があるからこそなんだろうと感じた。出会えて良かった一冊。 □(告知は意図しなくても)確率ではな...

見た目に比して、熱く深い一冊! 2人の対話による往復書簡は、機知に富みつつ本気の殴り合いのようにも見える。それだけ深いキャッチボールをできるのは、もともとの専門性とともにお互いへの信頼があるからこそなんだろうと感じた。出会えて良かった一冊。 □(告知は意図しなくても)確率ではなくて運命の話 □不運だが不幸ではない □約束することは未来を保証することではなく、今目の前にいる相手への信であり、未来への決意表明

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2022/11/14

図書館でふと手に取った本、出会えてよかったです。 抽象的な話の中には私には理解しきれない部分もあったけれど(さすが学問に生きるお二人)、こんなにもあたたかく、テンポよく、お互いを信頼しあっていることが伝わってくる、一言でいうとこんなにも2人の友情を感じる書簡は初めてでした。 ...

図書館でふと手に取った本、出会えてよかったです。 抽象的な話の中には私には理解しきれない部分もあったけれど(さすが学問に生きるお二人)、こんなにもあたたかく、テンポよく、お互いを信頼しあっていることが伝わってくる、一言でいうとこんなにも2人の友情を感じる書簡は初めてでした。 たった数回しか二人が顔を合わせたことがないなんて信じられないし、もう今後その回数が増えることがないことも、他人の私でも信じたくない。 残された時間の短さを感じながら、こんなにも力強い書簡を遺してくださった宮野先生、そして宮野先生から託されたものの重さを堂々と引き受け、最期まで併走し続けた礒野先生、どちらも心から尊敬します。 この一冊を手に取った私も、きっとお二人から何かを託されたうちの一人。 人生色々あるけれど、時々、ここに戻ってきたい。そう感じる本でした。

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2022/10/02

哲学者 宮野真生子さんと、人類学者 磯野真穂さんのやり取りが、書簡形式で書かれています。 実際にやり取りをしていた書簡をもとに描かれています。 時間が経つにつれて、宮野さんの具合が悪くなっていきます。 その中でのお二人のやり取りが、とてもリアルになったいきます。 毎日の当たり...

哲学者 宮野真生子さんと、人類学者 磯野真穂さんのやり取りが、書簡形式で書かれています。 実際にやり取りをしていた書簡をもとに描かれています。 時間が経つにつれて、宮野さんの具合が悪くなっていきます。 その中でのお二人のやり取りが、とてもリアルになったいきます。 毎日の当たり前が、とても尊く感じました。

Posted byブクログ