展望塔のラプンツェル の商品レビュー
”本の雑誌”から。3つの視点人物についての物語が、決まった順番で章ごとに紡がれるという結構。考えてみれば、この結構だからこそ、最後の種明かしが活きてくる訳やね。まんまと騙されちゃいました。ただそれは、全く本書のメインではなく、あくまでスパイス。虐待と不妊治療。それが2つの大きなテ...
”本の雑誌”から。3つの視点人物についての物語が、決まった順番で章ごとに紡がれるという結構。考えてみれば、この結構だからこそ、最後の種明かしが活きてくる訳やね。まんまと騙されちゃいました。ただそれは、全く本書のメインではなく、あくまでスパイス。虐待と不妊治療。それが2つの大きなテーマで、問題提起。深くて重い。
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山本周五郎賞候補作にノミネートされた作品。児童虐待や不妊治療、貧困などの社会問題をテーマにしている点に興味を惹かれ、読了しました。 多摩川市という架空都市で上記の3つの問題を抱えた人々の物語が並行していく。それぞれの物語は独立している話だが、所々で関係性を仄めかす伏線が張られてお...
山本周五郎賞候補作にノミネートされた作品。児童虐待や不妊治療、貧困などの社会問題をテーマにしている点に興味を惹かれ、読了しました。 多摩川市という架空都市で上記の3つの問題を抱えた人々の物語が並行していく。それぞれの物語は独立している話だが、所々で関係性を仄めかす伏線が張られており、最後にあっと驚く伏線回収を持ってくる辺りがとても良かった。章はじめの挿絵だったり、伏線回収のやり方から伊坂幸太郎に似たものを感じた。伊坂作品が好きな人にお勧めしたいですね。 タイトルからはとても童話的な明るい話が想像できるが、社会問題をテーマにしているだけにダークな救いようのない雰囲気が好感を持てた。 「子ども食堂」と言う存在はニュースで知ってはいたが、その背景までは理解していなかった。「そもそもこのご時世ご飯食べれない子どもなんているのか?」なんて主観的に考えていたけど、この本を読むことで粗悪な児童虐待、貧困、そしてその連鎖が関与していると背景を俯瞰的に知れたことはとても有意義であったと思う。
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13毎年どこかで子供たちが亡くなって、そのたびに背中が寒く痛くなります。書かれている地方だけの問題ではなく、こういうところに人とカネを使えよ!と残念な先生方をTVで見てる
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書評に惹かれて図書館で借受。児童虐待、不妊治療といった現代社会のテーマを織り込みながら、読ませる小説に仕上がっている。物語の途中には辛い描写も多いが最後に救いがある。仕掛けられたトリックにも気持ちよく騙された。大した読書量でも無いが、個人的2020年のベスト小説。
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虐待、ネグレクト、家庭内暴力。そして人種差別。世間にはどれだけ苦しんでいる子供たちがいるのだろう。どれだけの子供たちの叫びを世間は聞き取ることができているのだろう。口を閉ざす小さな体を思い、読んでいる私まで体のあちこちが痛くなる。不妊に悩む主婦の心の叫びもリアルだ。望んでも望んで...
虐待、ネグレクト、家庭内暴力。そして人種差別。世間にはどれだけ苦しんでいる子供たちがいるのだろう。どれだけの子供たちの叫びを世間は聞き取ることができているのだろう。口を閉ざす小さな体を思い、読んでいる私まで体のあちこちが痛くなる。不妊に悩む主婦の心の叫びもリアルだ。望んでも望んでも手に入らないものがそこで痛めつけられているという実態。歯を食いしばって読み進んだ先にミステリのご褒美が待っていてほっと息をついた。児相だけではない。一般の私達こそ、大きく目を開いて見えるものをちゃんと見なくてはいけないのだろう。
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貧困、幼児虐待、不妊と重めのテーマを扱った作品。 作中では「多摩川市」という実際にはない架空の地で 書かれていたが、 多分川崎をモデルとしているんだろうな。 貧困が虐待を産み、そして虐待が連鎖する。 どうにか生活を変えようともがく若者たちだが、 悪環境を断ち切れずに変わることを...
貧困、幼児虐待、不妊と重めのテーマを扱った作品。 作中では「多摩川市」という実際にはない架空の地で 書かれていたが、 多分川崎をモデルとしているんだろうな。 貧困が虐待を産み、そして虐待が連鎖する。 どうにか生活を変えようともがく若者たちだが、 悪環境を断ち切れずに変わることを諦める者も。 読んでいて辛かったなぁ。 ラスト希望も見え、宇佐美作品らしい仕掛けも。 しかし宇佐美まことは作品の幅が広いと改めて思う。
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時代背景は1986年頃と現在の物語。残念ながら虐待問題は現在も続いている。行政等の関係者の苦悩・苦労も続いている。 印象強い作品だった。孫からラプンツェルの話を聞いたら、当分はこの物語を思い出すだろう。
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こんなに悲惨な状況があるのか、と苦しくなるような児童虐待、ネグレクト、強姦、輪姦、ヤクザ、暴力、不妊治療に殺人まで。 負のスパイラルから抜け出せない環境、土地柄が、児相職員悠一を中心に描かれる。 時系列のトリックもすごくよかった。 内容も、エンターテインメントとしても。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
東京近郊にいると外国人(という書き方が良いか悪いかは置いておくが)の方々は生活の中でも違和感が無くなってきているが、やはり人種差別というものは存在する。容認するつもりはまったくないが、異質なものとして見てしまうのだろう。ちょっと人と違う考え方や動き方をすると目をつけられるのと同質か。 本作のメインはそこではなく児童虐待。 フィリピン人とのハーフ海(カイ)、性虐待を受けてきた那希沙(ナギサ)が児童虐待を受けていると思われるが、全く言葉を発しない少年(幼児)と出会い、ハレと名付け「晴れの海の渚」と3人の接点を表現し、共に時間を過ごす。 また児童相談所で働く松本悠一は日々発生する事件に対応し、不妊治療を続ける郁美、彼女が住むマンションの向かいに住み虐待を受けている壮太と様々なバックグラウンドを持つ年齢性別バラバラな登場人物が虐待問題の大きさを伝えようとストーリー展開される。 舞台となる神奈川県多摩川市(川崎市か)のランドマークであるラーメンタワー(ベイビュータワー)の存在が常に目に入るが、それに対しての市民の微妙な想いもストーリーにエッセンスを加えている。 時間軸の使い方が非常に秀逸で、様々な事象が伏線となり一気にラストへ向かう展開に一気読み必至の作品です。
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児童虐待や育児放棄を題材にした作品だが、とてもおもしろかった。社会的な問題提起とエンターテインメント性が絶妙なバランスで成り立っている。きちんと読めばわかるはずだが、あまりの猛暑にボーッとしていた(いつも?)せいか、作者の仕掛けたミスリードに手もなく引っかかってしまった。最後の最...
児童虐待や育児放棄を題材にした作品だが、とてもおもしろかった。社会的な問題提起とエンターテインメント性が絶妙なバランスで成り立っている。きちんと読めばわかるはずだが、あまりの猛暑にボーッとしていた(いつも?)せいか、作者の仕掛けたミスリードに手もなく引っかかってしまった。最後の最後で芋づる式にあれもこれもと真相が明かされ呆然とした。
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