展望塔のラプンツェル の商品レビュー

宇佐美まこと(著者)

2022/12/10

児童相談所に勤務する松本悠一。問題のある家庭を訪問したりと休む暇もない。と始まり、違う話が途中から続く。まさか前の話と後の話が最後で繋がるとは。意外な結末だった。ありとあらゆる暴力、性犯罪、虐待は辛かった。虐待されて育った子供は又、自分の子供に同じ虐待をする。それもとても辛い事だ。現在になり過去を乗越えて前向きに生きてる事に安心した。

2022/11/29

物語は最後の最後で繋がってくる。時間軸がずれていることに最後まで気がつかなかった。
児童相談所の仕事が分かってよかった。自分の信念がないとなかなかできない仕事だな。
私も不妊治療を、タイミング療法、人工授精、漢方、ヨガ、、、一通り経験してきてから、物語に出てきている女性の気持ちが痛いほど分かった。色々試してみても全然子どもが出来ない自分に対し、努力せずポンポン子どもを産んで虐待している人もいる。本当に「その子ちょうだい･･･」となるほど追い込まれるんだよな～。

2022/11/24

読むのが辛かった。
毎年のように増加する児童虐待、暴力、ネグレクト、性的虐待。
ストレス社会が根底にあるのか。
晴れた海の那希沙、訳ありの三人が共に生きようとした時に海が晴れの前で殺される。
それから長い時間が過ぎ、晴れは公務員になり、児童相談所で淡々と働く、なぎさは食堂を経営し、子ども食堂を切り盛りしてみんなからママと呼ばれる存在になる。
晴れは弟を助ける為に両親の乗る車を海に沈める。
すごい展開。
子どもの生きようとする力は凄い。

2022/11/01

異なる時代の複数の舞台が描かれているが、1つだけどうしても納得いかないのが、1997年にヨガ教室が駅ナカや駅近にあっただろうかという点。オレが知らないだけであったのかな。
オウムの一連の騒動が1995年だから、ヨガに対する世間の目は冷たく、心身の調子を整えるみたいなポジティブなイメージはなかったはず。まあだからこそ落合郁美の夫は拒絶したのだろうけど。

2022/08/25

大事なものって気づけないことが多いのかもしれない。あとになってから、大事だったなって気づくのかなと思いました。
自分にとって、大事だったはずなのに
時間が経つにつれ、気づけなくなって、
わからなくなって、忘れてしまって、それを揺るがす事件が起きないと気づけない。

帰りたいと思う場所。
自分にとっての居場所を探しているのだなと思いました。自分のもっている価値観を揺らがされた作品でした。

2022/08/13

『羊は安らかに草を食み』以来、２冊目の宇佐美まことさん。

ベイビュータワーが建つ多摩川市南部地域は、多国籍な住民や低所得層の家庭も多く、治安が悪く非行や反社会勢力などの温床となっていた。この街を舞台に…

児童相談所の職員・松本悠一
17歳の海と那希沙
不妊治療中の落合郁美

年齢も立場も全く異なる３人のお話が交互に描かれていきます。

ネグレクト、性的虐待、貧困、人種差別、暴力団…これでもかというほど壮絶で悲惨な出来事が起こり、読んでいて何度も目を背けたくなるんですが、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。

３つのお話がどこでどう繋がるのか、こんなにもひどい状況から果たして救いはあるのか…いやぁ〜すごかったです。重く苦しいテーマなんですが、読ませる筆致と展開はさすがです。藤岡陽子さんの『空にピース』を読み終わった時と同じような充足感でした。

貧困にしても虐待にしても、負の連鎖を断ち切るにはどうしたら良いんでしょうね。簡単には答えの見つからない難しい問題ですよね…。

2022/07/26

ネグレクトを始めとする虐待から言葉を話さず徘徊を繰り返す幼児と、その子を放っておけず面倒をみていた少年と少女、しかしこの2人も凄惨な性的虐待や貧困苦に苦しむ被害者たち。この救われない地域にそびえ立つ展望塔を中心とした、それでもまっすぐに生きようともがく子ども達の話。

優しげなタイトルや可愛らしい表紙絵からは想像も出来ないくらい苦しい話、特にナギサへの虐待が凄まじ過ぎて息が出来なくなるくらいひどい。これでまっすぐ生きていられるのはやっぱりお話の中だからなのかな。読後感、悪い！！悪いなかにでも希望が見える感じ。でもやっぱりなんだか救われないな…

まさかこんなトリックがしかけられているとは思わず最後まで完全にひっかかったまま読んでいてラストで「え？あれ？」となる。

2022/07/13

図書館で見つけたお初の作家さん。
タイトルと表紙のイメージとは全く異なる、読み進めるのが辛くなるような凄惨な内容。
児童虐待、集団レイプ、人種差別、殺人・・

多摩川市という治安が悪く生活水準の低い人々の暮らしが描かれ、ミステリーというよりは社会派小説のようだと思っていたら、終盤でそれまでの違和感の正体が明かされ、ラストはほんの少し救われる。

目を背けたくなる内容なのに続きが気になって一気読み。

他の作品も読んでみたい。

2022/06/21

　何か引っ掛かるものを感じながら読み進め、終盤に「あ！やられた！」と思いそのまま一気に読み切った。内容から楽しかったとは言い辛いが、読書の面白さを味わう事ができた。読み終えてから、また初めから読んでしまった。
　ラプンツェルはいなくても大丈夫、生きていこう、そう日々を歩む人がいて救われた。

2022/04/21

深刻な社会問題
エロスや暴力、貧困
児童相談所
舞台は神奈川

最後に登場人物たちの謎が明らかになるー