罪と祈り の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
貫井さんの最新作ということで購入。 元警察官が殺されたことをきっかけにその息子が事件解明するため、昔の事件と絡めながら、奔走していきます。 約450ページあって、ボリュームのある量でしたが、物語の世界に引き込まれ、ページをめくるのが止まりませんでした。 物語の構成は、一つは現代パートで、殺された元警察官の息子とその友人(こちらは現職刑事)が事件の解明に奔走しています。解明していくうちに様々な過去の事件に繋がっていきます。 もう一つは過去編として、殺された元警察官とその友人(現代パートでの友人の父親)が主人公です。最初は、なぜ父親が登場するの?と疑問をもっていましたが、真相が徐々に明らかとなります。なぜ自殺したのか?どう誘拐事件につながるのか明らかになります。 2つの物語が交互に進行していき、最初は別々の物語と思っていたのが、段々と色々なことがリンクしていきます。そう思った瞬間に無心になって読んじゃいました。 貫井さんの小説として、思わぬ展開・ミスリードが醍醐味なのですが、この作品もそうでした。読む進めると、こうなるんじゃないか、ああなるんじゃないかと色々推理していたのですが、全然違う方向へと進むので、次はどうなるんだろうと期待しながら、読んでいました。 後半まで、全然犯人が想像できなかったのですが、登場した瞬間、見事に騙されました。その文字が出た瞬間、思わず「えっ?」と思いました。たしかこの人って…。やっぱり貫井さんは日本語の使い方が上手いなと思いました。 ちなみに登場人物が多いので、メモしたほうが良いかもと思います。解明していくと、それが現代と過去の人との繋がりで、同一人物を線で結べます。それが気持ちいいかもしれませんし、スッキリします。 ある元警察官の殺人事件が主軸となっていますが、最終的には、様々な人間が交差したヒューマンミステリーだなという印象でした。 何かをしている最中は、それが最善と思いながら、それに向かって行動するも、後にそれが後悔となって、十字架を背負って生きていかなければならない。何か得体の知れないような感覚がガツンときて、切なかったです。 誘拐事件は、結末が分かっていたもののそれまでの過程を読み進めるにつれて、しんどいなと思いました。 前半の和気あいあいの会話が懐かしく感じます。 息子の推理力ですが、父親である警察官の血なのか、ずば抜けて良いです。一般市民なのにこれだけの情報で、真相を解明するとは、意表を突きます。また、殺人事件もそれだけで血が出る?とちょっと思いましたが、あまり深くは考えないようにしました。 全体的に切なかったですが、読み応えのある作品でした。現代パートでの二人の関係が、今後、より良くなることを願います。
Posted by