Iの悲劇 の商品レビュー
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「ひとはどこに住んでもいいし、何を幸せと思ってもいい。他人を害さなければどこでどんなふうに生きてもいい。生きてもいいことを具体的に保証するのが俺の仕事だ。俺は市職員を、人生を賭けるに値する仕事だと思ってる」
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地方の人がいなくなった集落にIターンプロジェクトが発足し、とぼけた2人の市役所職員が振り回されるブラックコメディ、 かと思いきや、最後に少しのどんでん返しがある。 地方自治の矛盾や難しさを感じてしまった。
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初読みの作家さんで、他の作品も2、3冊チャレンジしてやっと最後まで読了した1冊。しかし4章と6章は飛ばしている。2章の『浅い池』は夫の元同僚の話を思い出した。退職後に山の麓を安くで購入し、掘った池にニジマスを飼い、周囲にネットを張りめぐらしたものの、上に張るのを忘れ全部鳥に食われ...
初読みの作家さんで、他の作品も2、3冊チャレンジしてやっと最後まで読了した1冊。しかし4章と6章は飛ばしている。2章の『浅い池』は夫の元同僚の話を思い出した。退職後に山の麓を安くで購入し、掘った池にニジマスを飼い、周囲にネットを張りめぐらしたものの、上に張るのを忘れ全部鳥に食われちゃったよと、笑いながら語ってくれた。彼ら夫婦は、田舎暮らしは実際にやってみないと分からないことばかりと言いながら、今年で10年を迎える。 序章と終章が『そして誰もいなくなった』のフレーズで共に結ばれている。序章を読んですぐ血なまぐさい事件が頻発する展開が予想され、読むのをよそうかと思った。最終章を読み終え、各章ごとの腑に落ちなかった謎は解き明かされたが、後味の悪さは更に増した。懸念した陰惨な事件こそ起きなかったが、市長肝いりのIターンプロジェクト”甦り課”に与えられた使命はそれ以上に酷い。公務員の悲哀を感じる。
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最初はこのデコボココンビがどう変わっていくのかな楽しみにしつつも、個々の謎は小粒感も感じていた。 物語の全貌が見えると、今までやってきた事は何だったのかという徒労感や全てがうまくいっていたもしもの世界もイメージしてしまい、主人公視点で寂しさを感じる終わりだったが、感情を揺さぶられるという意味で面白い小説だった。 節々で出てくる、リアルな地方字自体の事情や東京勤務と地方勤務の比較などリアルさも面白さの要因かと思う。
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やっかいな移住者同士のいざこざを解消する市役所員のちょいミステリー奮闘記かと思いきや。やる気ゼロの無能な上司が実は、ってのはありがちな話。誰も幸せになる人がいないのがちょっと悲しい、、
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主軸の登場人物が少なく絞られていたので、感情移入でき、短編でありながらまとまりを感じて読むことができた。予測できる結末だと思いきや、最後に思わぬ展開を迎えて、結局後味は良くない。良くないけれど、物語としてはとても魅力的に感じた。
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6年前に無人になった蓑石地区にIターンを募ることが企画され、その推進メンバーになった万願寺邦和の奮闘物語だが、発足前から問題が続出し、2世帯が脱落し10世帯15人が移住してスタート.鯉盗難事件、子供の失踪事件、人工物に嫌悪する女性、秋祭りでの食中毒事件などなどが発生して、1年後に...
6年前に無人になった蓑石地区にIターンを募ることが企画され、その推進メンバーになった万願寺邦和の奮闘物語だが、発足前から問題が続出し、2世帯が脱落し10世帯15人が移住してスタート.鯉盗難事件、子供の失踪事件、人工物に嫌悪する女性、秋祭りでの食中毒事件などなどが発生して、1年後にはすべての住民がいなくなったが、実はこのプロジェクトの裏に存在した奇怪な事実が最後に判明し、読者を驚かす.西野課長の言動や観山遊香の不可解な行動などに何かあるなとは予想していたが、予測不可能な構想があったのだ! 面白かった.
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安定の陰湿さ。主人公が不憫で不憫で、最後はもらい泣きしてしまったよ。本人泣いてないけど。ほんとに解決したのかな? 救われたのは南はかま市の財政と、仕事を完遂した西野課長だけで、他の人間は誰も救われていない。 地の文で一人称が使われなかったのが印象的だった。そういう表現の工夫なのかな。(2022-01-11L)
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*一度死んだ村に、人を呼び戻す。それが「甦り課」の使命だ。人当たりがよく、さばけた新人、観山遊香。出世が望み。公務員らしい公務員、万願寺邦和。とにかく定時に退社。やる気の薄い課長、西野秀嗣。日々舞い込んでくる移住者たちのトラブルを、最終的に解決するのはいつも―。徐々に明らかになる、限界集落の「現実」!そして静かに待ち受ける「衝撃」。これこそ、本当に読みたかった連作短篇集だ* やられました!さすが米澤作品、完全に騙されました… まずは、よくある役所の縦割り業務の悲哀と、いかにも現実に起きそうな移住者たちのトラブルの数々、ほどよいスピード感とリアリティさで面白く読み進めておりました。 ブラックユーモア的なタッチで、悲愴な事件がありつつも、どこか牧歌的。 特に「浅い池」・・・まさかのオチに噴き出してしまいました。よく思い付いたな‥! そしてこのまま「そして誰もいなくなった」エンドかな、と思いきや。 ・・・そう来ましたか。完全に、油断していました。 さらっと読み飛ばしていましたが、見返すと、小題が「Iの喜劇」。巧過ぎる・・・! ミステリ悲喜劇とはよく言ったものですね。秀逸です。
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