わたしのいるところ の商品レビュー
暗い小説を「暗い」と言う人が嫌いなのだけど、これは暗い。「この孤独感わかるなあ」というよりは、自分の知らない孤独の日々を一緒になぞっている気分になる。 読んでいると結構主人公は色々な人と繋がっているのだが、「家庭がない」だけで人は(主人公もそれを読んでいる私も含めて)こんなに孤独...
暗い小説を「暗い」と言う人が嫌いなのだけど、これは暗い。「この孤独感わかるなあ」というよりは、自分の知らない孤独の日々を一緒になぞっている気分になる。 読んでいると結構主人公は色々な人と繋がっているのだが、「家庭がない」だけで人は(主人公もそれを読んでいる私も含めて)こんなに孤独を感じるんだな、、とも思うし、そういう問題ではなく孤独感は全部育ってきた家庭環境や考え方の癖から来ているだけなのかもとも思う。
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ローマっぽいどこかの街に暮らす、40代の一人暮らし独身女性のエッセイ風の小説。長編ということだけど、中身はとても短い日常の場面がとにかくたくさん並んでいて、歩道で、道で、仕事場で…というふうに、場面場面の場所が章題になっている。主人公は恋人もいるし、友人も複数いるし、定期的に訪ねる母親もいるが基本的に暗くて孤独である(なんじゃそりゃと思わないでもないが)。ここが自分の居場所と言えるような感覚が全然感じられないのだ。その孤独を嫌がるでもなく、特別好むでもなく、ただそうしている、という感じが印象的だった。 私は友達が少なくて家族と過ごす以外は大体一人だからその感覚もちょっとわかるが、わかるからなんだか怖くなる。もう死んでいる父親への恨み言とか、特に怖かった。他の人間たちとちゃんと触れ合うことなく、本当は分かるべきことを何にも分からないまま孤独に人生を終える気がしてしまう。最後に主人公が町を出るのは少しほっとした。
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【琉大OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB28741845
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インド系アメリカ人、ジェンパ・ラヒリの長編、とのことだがどちらかというと掌編集。 何気ない日常の風景を淡々と綴った作品。 掌編集のように、場面場面でしっかりと区切られる。その中でも、ずっと恋焦がれている既婚者の友人との関係、世界中を転々とする友人、母親との関係などは一つのストーリーとして盛り込まれる。 他の小説の合間にも読める、良い作品。
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日常の様々な場所で自分の孤独と向き合う。主人公には離れて暮らす年老いた母親以外に守るべき家族はいないが、友人や知り合いも多く決して孤立はしていない。が、不意に孤独や悲しい記憶や抑えられない思いはやってきて苦い痛みを残していく。ごく短い短編が訥々と続く。居心地の悪さ、自己嫌悪、後悔...
日常の様々な場所で自分の孤独と向き合う。主人公には離れて暮らす年老いた母親以外に守るべき家族はいないが、友人や知り合いも多く決して孤立はしていない。が、不意に孤独や悲しい記憶や抑えられない思いはやってきて苦い痛みを残していく。ごく短い短編が訥々と続く。居心地の悪さ、自己嫌悪、後悔、悲しみ、落胆、虚しさ。それらを抱えて生きていかなければならないが、これまでもどうにかやってきたし、これからも何とかやっていけるだろう。それが生きてきた証なのだから。色々とあるけれどもこの町の居心地は悪くない。 男性の自分には十分に理解できていない部分もあるとは思うが、男女問わず誰しもナイーブにならざるを得ない時期がある。そんな時ラヒリの文章はほんの少し心を軽くしてくれる。彼女の小説は4冊目だが読んでよかったなと毎回思う。
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一人の女性がある街で暮らし、日々の中での出来事、思ったことを日記のように綴る物語。 その時々の心の動きが暗い部分も含めて淡々と語られることで、生活の生々しさ、根底にある淡い寂しさを感じる。
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孤独な女、神経質な女、不満を抱える女 主人"わたし"はそんなイメージ でもその"わたし"が見ている世界、纏っている雰囲気が嫌いじゃなくてむしろ心地よくて落ち着く "わたし"の不安感に私は共感したんだけど、そこには暗さはな...
孤独な女、神経質な女、不満を抱える女 主人"わたし"はそんなイメージ でもその"わたし"が見ている世界、纏っている雰囲気が嫌いじゃなくてむしろ心地よくて落ち着く "わたし"の不安感に私は共感したんだけど、そこには暗さはなくて
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表面的には大きな起伏のない出来事を文章にして、それを読ませるのは難しいと思う。日記を人に楽しく読ませるような難しさ。少し違うか。 でも読めてよかったと思う。日常っていうのは本来そんなにドラマティックではない。一番身近にあるのは日々の感情の揺れ。小さいこともあれば大きな揺らぎも起こ...
表面的には大きな起伏のない出来事を文章にして、それを読ませるのは難しいと思う。日記を人に楽しく読ませるような難しさ。少し違うか。 でも読めてよかったと思う。日常っていうのは本来そんなにドラマティックではない。一番身近にあるのは日々の感情の揺れ。小さいこともあれば大きな揺らぎも起こるけど、わかりやすい表面での出来事は少ない。人の内側の動きを大袈裟に表現せず、あくまでも淡々とした日常生活の中で描くのはとても胆力と技術がいるのではないかと勝手に想像しながら読んでいました。
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イタリア語で書くと、どんな感じなのかなと思いつつ、翻訳されたものを読む自分にはあまり関係ないかとも思う。 拙い言葉がもしあったとして、翻訳者がそのニュアンスを加味して訳すわけでもないから。 何度もそんなことを思いながら読んだ。 ともあれ、ジュンパ・ラヒリのファンとしては、彼女...
イタリア語で書くと、どんな感じなのかなと思いつつ、翻訳されたものを読む自分にはあまり関係ないかとも思う。 拙い言葉がもしあったとして、翻訳者がそのニュアンスを加味して訳すわけでもないから。 何度もそんなことを思いながら読んだ。 ともあれ、ジュンパ・ラヒリのファンとしては、彼女の書くものを読めるだけで幸せ。 ずいぶん長いこと、本棚に飾ってあったが笑
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削ぎ落とされた文章で淡々と静かに日常の瞬間にある孤独と情景が描かれていて、文章から漂ってくる「どこにいても親しい道連れのようについてくる孤独」の静かな気配がとても良い。「わたし」は主人公でもあり誰のことでもあると思う。 「わたしはわたしではなく、わたしが去った後もわたしが残る。...
削ぎ落とされた文章で淡々と静かに日常の瞬間にある孤独と情景が描かれていて、文章から漂ってくる「どこにいても親しい道連れのようについてくる孤独」の静かな気配がとても良い。「わたし」は主人公でもあり誰のことでもあると思う。 「わたしはわたしではなく、わたしが去った後もわたしが残る。駅に道端に公園にお店に」 「わたしたちが通りすぎるだけでない場所 などあるだろうか」
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