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厳寒の町 の商品レビュー

3.7

30件のお客様レビュー

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2019/11/30

アイスランド・レイキャビク警察の犯罪捜査官・エーレンデュルが事件の真相を解き明かしていくシリーズ第五作。 これまでは死体が発見されたことによって過去の事件(十数年前~数十年前)を掘り起こすという体裁が多かったが、今回はたった今起きたばかりの事件を扱う。 しかも被害者はアイスラン...

アイスランド・レイキャビク警察の犯罪捜査官・エーレンデュルが事件の真相を解き明かしていくシリーズ第五作。 これまでは死体が発見されたことによって過去の事件(十数年前~数十年前)を掘り起こすという体裁が多かったが、今回はたった今起きたばかりの事件を扱う。 しかも被害者はアイスランド人の父とタイ人の母の間に生まれた10歳の少年。いわゆる移民の子だ。 そのため、最初は移民に抵抗のある人間の仕業なのかとも考えられたが、少年の周囲を調べると様々なことが分かってくる。 アイスランドのような厳寒の町にも移民の波はやって来ていた。訳者あとがきによると、アイスランドは他のヨーロッパ諸国同様、早い段階で移民を受け入れていたようだ。 だがスウェーデンを舞台にしたヘニング・マンケルの作品やデンマークを舞台にした特捜部Qでも触れられているように、移民が手放しで迎えられるということはない。 アイスランドでも激しく抵抗感を持つ人間もいれば友好的な人間もいる。 どちらが良い悪いではなく、互いに歩み寄る努力を見せない限りこの問題は解決しないだろう。 ただ新しくやって来て、そこで生きることを決めた人間はやはりその土地に馴染む努力をした方が良いだろうとは思う。その中でその土地の人々も新しい住民を受け入れる気持ちになるのではないだろうか。 このシリーズは特に派手なアクションシーンがあるわけではなく、エーレンデュルと同僚たちとの軽快な会話があるわけでもない。 エーレンデュルを始め同僚たちにもそれぞれプライベートに問題を抱えているし、アイスランドの暗く寒い雰囲気と相まってずっと鬱々としている。 それでもついつい読みふけってしまうのは作家さんと訳者さんの上手さなんだろうなと思う。 舞台がヨーロッパだけに警察の聴取は実に穏やかだし無理をしない。そこに付け込んで事件関係者たちは皆何かを隠している。子供から大人、老人に至るまで皆が嘘を吐いていたり何かを隠したりしているのだから堪らない。被害者の家族も残らずだ。それでいて警察に事件解決を迫るのだからエーレンデュルら警察官のストレスはどんなものだろうと読者ながら同情するし、こちらもストレスが溜まる。 移民問題なのか、児童生愛者による犯罪なのか、それとも少年たちの中のトラブルなのか、家族間の問題なのか。次々と要因が浮上しては消えていく。 更に同時進行で女性の失踪事件も抱えているし、エーレンデュルの過去の傷である弟の行方不明事件も引き摺っているし、子どもたちとの関係もあるし、元上司マリオンがいよいよ最後の時を迎えるというシーンもあるし、盛りだくさんだ。 ちょっと詰め込み過ぎかなとは思うが、最後はなんとも虚しい。 大人や親に振り回される子どもたちが可愛そうだし、その逆もあるし、気ままに周囲を振り回したり傷つけたりしておいてなんとも感じない人間も腹立たしいし、何だかなという感じ。 エーレンデュルが日々鬱屈としているのも分かるし、プライベートくらい仕事のことを忘れたいという気持ちも分かる。 とにかくストレスに押しつぶされずにいてほしいと願うばかりだ。 このシリーズは名前だけでは男女が分からない。 エーレンデュル=女性っぽいと思ったらおじさんだったし、エリンボルク=男性っぽいと思ったらママさん刑事だったし、シグルデュル=オーリという男性刑事がいれば、シグリデュルという老婦人もいる。 訳者あとがきでびっくり。エーレンデュルの元上司・マリオン・ブリームって一体…。

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2019/11/10

一人の少年がアパートの中庭で死んでいるところを発見された。彼はタイの出身で、第一発見者もまた有色の子だった。 後書きにあるようにアイスランドは移民を多く受け入れ、他のヨーロッパ諸国と同じく文化的な衝突が起きている。

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2019/10/22

アイスランドを舞台にした警察シリーズの第5弾。エーレンデュルを始めエリンボルクなどのプライベートな悩みや痛みを家族みたいに共有しながら読み進めた。どこにでもあるだろう移民問題とそれを取り巻く根強い差別意識が捜査を撹乱させる。毎回主人公の少年時代に囚われた強い想いに「もう、前を向こ...

アイスランドを舞台にした警察シリーズの第5弾。エーレンデュルを始めエリンボルクなどのプライベートな悩みや痛みを家族みたいに共有しながら読み進めた。どこにでもあるだろう移民問題とそれを取り巻く根強い差別意識が捜査を撹乱させる。毎回主人公の少年時代に囚われた強い想いに「もう、前を向こうよ」と叱咤しつつも、主要人物三者三様の深い描き方にシリーズが出る度に読んでしまう。ミステリーとしては私には物足りない。

Posted byブクログ

2019/10/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

エーレンデュルシリーズ5作目。 相変わらず、少し暗い雰囲気の中、物語が進行していく。 ミステリーとして謎がすごいわけではないが、何となく読み進めてしまう。 ただ、今回は初めから人種問題への持って行き方がちょっと強引な印象。結局人種問題は事件にはあまり関わりなかったし。 次作に期待。

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2019/10/13

被害者が10歳の男の子で…と、最初から辛いのですが、どんどん辛くなるのでどんどん読める。アイスランドにおける移民のことなど、知ることがたくさん。

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2019/10/03

邦訳5作。今作もアイスランドの寒さがあり、人の心にある暗さ、重さが描かれている。移民を受け入れることへの反発、本音と建前の対立。差別があり偏見がある。そんななか殺害された少年。エーレンデュルたち警察の捜査はなかなか進まず、次第に町の人たちの感情、抱えているものが見えてくる。外国人...

邦訳5作。今作もアイスランドの寒さがあり、人の心にある暗さ、重さが描かれている。移民を受け入れることへの反発、本音と建前の対立。差別があり偏見がある。そんななか殺害された少年。エーレンデュルたち警察の捜査はなかなか進まず、次第に町の人たちの感情、抱えているものが見えてくる。外国人を受け入れるということは日本も他人事じゃないというのがよくわかる。人種間にある壁、さまざまな問題とともに進む。派手なシーンがあるわけではないけれど人の奥深くにあるものを映し出しているようなそんな物語。

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2019/09/30

シリーズ5作目も、期待通りの作品!移民問題を、根底にエーレンデュルら、いつもの登場人物達も、よりパーソナルな部分が、増して読みごたえたっぷり!!

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2019/09/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

【あらすじ】 タイからアイスランドに移住してきたスニーの家族。スニーの次男であるエリアスの死体が発見された。心配したスニーは長男のニランをどこかへ隠す。 エーレンデュル達はエリアスが通っていた学校で捜査していると、アイスランド人の子供たちと移民の子供たちが対立していたことが分かった。そしてアイスランド語の教師、キャルタンも移民の子供たちを嫌っていた。 ・失踪した女性 エーレンデュルが担当していた別の事件。エレンは前の夫と離婚して新しい夫と結婚したが、浮気性の夫に絶望し、投身自殺した。エーレンデュルはある女性から謎の電話があり、それはエレンからだと思い込んでいたが、自殺した女性に電話をかけた形跡が無かった。 ・エリアスが殺された日 アントンとドッディは学校から盗んだナイフで車に傷を付けた。そのナイフを処分するため、アントンはハットルにナイフを渡した。ハットルと従兄弟のグスティは放課後に会う予定だった。2人は万引きが成功したことからハイな状態になっていた。そのときにたまたま前を歩いていたのがエリアスだった。ハットルとグスティはエリアスをからかっていただけだったが、エリアスが暴れたため勢いで殺してしまった。そのことを両親に報告すると、ハットルの両親とグスティの両親がお互いの子供に責任を押し付けた。エーレンデュルに電話をかけていたのは罪悪感で押し潰されそうになっていたグスティの母親だった。 移民の子供が殺されたことで、初めは移民に反対する人の犯行かと思われたが実際は違った。「外国のバックグラウンドを持つ子供」は現代のアイスランドでもセンシティブな問題とされている。 【感想】 エーレンデュルシリーズ5作目。1〜4作と比べると陰鬱さが薄れたように思う。マリオンの性別については男性だと思っていたので意外であった。

Posted byブクログ

2019/09/21

シリーズ5作目。テーマは移民問題だ。死体が見つかった。「黒髪が半分凍りついていた」。舞台はアイスランド極寒の地である。そこで移民のタイ人の少年が死んでいた。事件が進行するにしたがって移民に対する人々の感情が露わになっていくのが怖い。内省的な主人公の少し病的な雰囲気も良い。疑わしき...

シリーズ5作目。テーマは移民問題だ。死体が見つかった。「黒髪が半分凍りついていた」。舞台はアイスランド極寒の地である。そこで移民のタイ人の少年が死んでいた。事件が進行するにしたがって移民に対する人々の感情が露わになっていくのが怖い。内省的な主人公の少し病的な雰囲気も良い。疑わしき人物を数人配して、読者の意識をかく乱させながら、一気にラストに向かって伏線回収。

Posted byブクログ

2019/09/21

シリーズ5作目は、前作とは異なり過去に遡るのではなく、現代のアイスランド社会に鋭く切り込む作品となっている。 ​ 移民に対するアイスランド人の戸惑いというテーマに真正面から取り組み、手掛かりの少ない事件にじっくり腰を据えて捜査に当たる展開はかなりのスローペース。骨太なストーリーは...

シリーズ5作目は、前作とは異なり過去に遡るのではなく、現代のアイスランド社会に鋭く切り込む作品となっている。 ​ 移民に対するアイスランド人の戸惑いというテーマに真正面から取り組み、手掛かりの少ない事件にじっくり腰を据えて捜査に当たる展開はかなりのスローペース。骨太なストーリーは読み応えがあるが、一向に進まない捜査に比例して深まっていく移民問題の側面が若干ちぐはぐな感じ。ちぐはぐと言えば、娘やエーレンデュル自身の回想で語られる過去パートの絡みがメインストーリーに馴染んでおらずただ邪魔なだけ。​ ​ 事件の着地にも無理があり、五作目にしてちらほら粗が目立つ気がするのが残念でもあり不安でもあり。

Posted byブクログ