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きみの存在を意識する の商品レビュー

4.2

35件のお客様レビュー

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2020/05/07

両親と、同学年で3ヶ月違いの養弟と暮らすひすいの、新中学2年の担任教師は、個人が読んだ本と感想を書いた「読書カード」を掲示し、班ごとに冊数を競う方針を掲げた。彼女は、本そのものや読み聞かせは好きだったが読むことは苦手で、なかなかカードが出せず焦っていた。ところが、同じクラスの入来...

両親と、同学年で3ヶ月違いの養弟と暮らすひすいの、新中学2年の担任教師は、個人が読んだ本と感想を書いた「読書カード」を掲示し、班ごとに冊数を競う方針を掲げた。彼女は、本そのものや読み聞かせは好きだったが読むことは苦手で、なかなかカードが出せず焦っていた。ところが、同じクラスの入来理幹は、プライバシーを理由にカードの提出を拒む。担任に気に入られたいひすいは、理幹の行動に驚くが、同じクラスの心桜の汚い字で幼い文章のカードにも、その字をパソコンで打ち替えたカードに張り替える担任教師にも驚くのだった。 ディスレクシア、書字障害、化学物質過敏症、里親養子、外国人の血筋、過食症……、中学2年生の様々な悩みを、語り手を替えながら描く。 *******ここからはネタバレ******* 異性で、しかも実娘と同学年の養子を迎えた親子がどう物語を展開していくか期待しながら読み始めたこの本は、結局、物語としての進展は見せず、いろいろな悩みを紹介して終わりました。 特に、著者の抱えている困難と同じ書字障害や化学物質過敏症についての記述はこれが中学2年生の言葉かと思うくらい詳細で、解説書のようです。 他の人には理解してもらいにくい困難さを理解しようとしよう、お互いが気持ちよく暮らせるように配慮し合おうということで物語は締めくくられますが、本作で紹介される悩みがたくさん過ぎていささか消化不良に感じます。 とはいえ、共感できるところもありました。理幹が、読書カードとプライバシーについて争ったところです。 私自身、高校生の時、大嫌いな国語教師から自らの心情を描いた作文を書くように言われて拒否したことがあるので、気持ちがわかります。 今でも、学校に掲示してある絵や習字等の作品、文集等を見ながら、子どもたちは自らの作品の公開を拒否できないのか、したくない子もいるだろうにと考えてしまいます、教育とプライバシーの境目についてもっと議論してほしいところです。 物語としては物足りないが、たくさんの議論のネタを提供してくれる道徳の教科書のような一冊です。 表現は平易で読みやすいけれど、ところどころ深いところがあるので、中学生以上か、しっかり考えるのが好きな高学年からオススメします。

Posted byブクログ

2019/12/19

生きることや勉強することに困難を抱えていたり、自分のアイデンティティを模索したりしている中学生達のお話。 現代の子ども達の身近にある問題について、本人の気持ちだけでなく、周りの人達の視点でも考えることが出来る。 ドラマや小説、教科書で、ディスレクシア、LGBT、アレルギーなどの...

生きることや勉強することに困難を抱えていたり、自分のアイデンティティを模索したりしている中学生達のお話。 現代の子ども達の身近にある問題について、本人の気持ちだけでなく、周りの人達の視点でも考えることが出来る。 ドラマや小説、教科書で、ディスレクシア、LGBT、アレルギーなどの話が出てくると、自分はちゃんと皆のことを理解できていると思いながら読む。 しかし、もし自分の子どもや友人が当事者の場合ではどうだろうか?同じように、冷静に、相手の立場になって考えることが出来るだろうか?この本にも登場する、何も分かってない親や教師のような反応をしてしまうのではないか…? 頭では分かっていても、感情や言動をコントロールするのは難しいだろうなぁと考えさせられました。 ストーリーとしては、最初の、ディスレクシアの姉と、血のつながらない弟の家族の話が、この先どう進んでいくのかも読みたかったなぁと思いました。

Posted byブクログ

2019/11/12

読字障害の疑いがあるひすい、性別に分けられることに違和感を感じている理幹、漢字を書くのが苦手な心桜、両親と死別しひすいの両親の養子となった拓真、大人の期待に応えたい過食気味の賀川、化学物質過敏症で教室に行けなくなった留美名。 この本には、彼らのような生きづらさを抱えた中学生達が...

読字障害の疑いがあるひすい、性別に分けられることに違和感を感じている理幹、漢字を書くのが苦手な心桜、両親と死別しひすいの両親の養子となった拓真、大人の期待に応えたい過食気味の賀川、化学物質過敏症で教室に行けなくなった留美名。 この本には、彼らのような生きづらさを抱えた中学生達が登場する。 その中でも一番印象に残ったのは、性別に分けられることに違和感を感じている理幹だ。彼女は、体は女性でも、心は女でも男でもない、いわばXジェンダー、無性愛者である。 多様性を求める社会となった今でも尚、この社会は「男」か「女」に分けたがっている。 例えば、学校の模試や入学試験の願書、パスポートなど、私たちは様々な場面で、性別を問われている。 かくいう私の学校では毎月一度、頭髪服装検査が行われる。 特に髪型については厳しく指導される。 男子は目、耳、襟に髪の毛がかかってはいけない。 これまで約15年の間に育まれてきた私たちの個性は、大人達の手によって、大人達のものさしで測られ、切りそろえられていく。 もしも、性同一性障害で、体は男性でも心は女性という人が髪を伸ばしたら、私の学校の大人達はどのように対応してくれるのだろうか。 それでも彼らは彼らなりの「普通」を押し付けてくるのだろうか。 この本に登場する中学生達は皆悩みを持っている。それでいて、彼らは人から「個性的で変わった人」というふうに見られてしまう。 私の目には、食事中でも電車の中でも歩いていても、薄っぺらに光る四角い端末を飽きることなく凝視している彼らの方が、よっぽど変わっているように見えるのは、単なる視力の問題なのだろうか。

Posted byブクログ

2019/09/29

すっっっごくよかった! 学校図書館に置くべき一冊だと思う 手渡したい生徒の顔が何人も浮かんでくる 個人的には、デイジー図書を生徒にも分かりやすいところに排架し直さなきゃとか、リーディングトラッカーを気軽に使えるようにできてるかとか、今いる図書館を見直すきっかけにもなりそう この本...

すっっっごくよかった! 学校図書館に置くべき一冊だと思う 手渡したい生徒の顔が何人も浮かんでくる 個人的には、デイジー図書を生徒にも分かりやすいところに排架し直さなきゃとか、リーディングトラッカーを気軽に使えるようにできてるかとか、今いる図書館を見直すきっかけにもなりそう この本の彼らが気持ちよく使ってくれる図書館でありたいと強く思った

Posted byブクログ

2019/08/25

本を読むことが苦手でディスレクシアのグレーゾーンにいる子、字を書くことに違和感を持つ子、自分を女にも男にも分けられたくない子、過敏症で教室に行けない子、親と死別し養育里親の養子となった子、大人の期待に応えたくて過食気味になる子など、「みんな」と違う子がその違いに対峙していく連作短...

本を読むことが苦手でディスレクシアのグレーゾーンにいる子、字を書くことに違和感を持つ子、自分を女にも男にも分けられたくない子、過敏症で教室に行けない子、親と死別し養育里親の養子となった子、大人の期待に応えたくて過食気味になる子など、「みんな」と違う子がその違いに対峙していく連作短編集。 「みんな」と違うことに対しての、本人の反応や対応は様々です。そういうものだから仕方がないと諦めてしまう子、受け容れようとする子、必死に抗う子、自分の中に閉じ込めてしまおうとする子、どうしていいかわからず困惑する子。 「みんな」と違うことに対しての、他人の反応や対応も様々です。困った子だと思う、自分勝手なワガママを言っていると思う、迷惑だと思う、何とか力になれないかと悩む、そんなものだと受け容れる、そして全く気付かない気付こうとしない人も。 作者お得意の共通した舞台での語り手を変えた連作短篇の手法により、「みんな」と違うことに対しての、本人の思いと他人の見え方が交差し、より厚みと深みを増して読み手に提示されます。 本人が困っていることも、本人が必死に頑張っていることも、他人には違うように受け取られることがあることが書かれています。しかし書かれることによって困っているのだ、だから悩み何とかしようともしているのだと読み手に伝えるのです。 この作品は今現在困っている子には、寄り添い力となってくれるものとなるでしょう。作中には困っていることに対しての対処の仕方もエピソードとして織り込まれており、巻末には参考となる情報源が示されてもいます。 そしてこれは今現在困っていない全ての人にも読んで欲しいものとなります。あなたの目に怠けていると見える人、ワガママを言っていると見える人、みんなの和を乱す存在に見える人は、本当はその人自身が困っているのかもしれない。どうしようもできないのかもしれない。 その困ったことを除き取り助けることができるとは限らない。でも困っているということを知ることにより、寄り添い救える心はきっとあるでしょう。そんなことに気付かせてくれる作品でした。

Posted byブクログ