神様の暇つぶし の商品レビュー
父親より年上の男性との恋。 たったひとつの季節を過ごした人。 その人はもうこの世にはいない。 その夏の蒸し暑さ、濃厚な空気を感じる。 いろんな思いを抱えた藤子が痛々しい。 死に向かう男と、生命力溢れる女。 対照的な2人がとても際立つ。 遺作となった写真集の中の藤子は、いったいどん...
父親より年上の男性との恋。 たったひとつの季節を過ごした人。 その人はもうこの世にはいない。 その夏の蒸し暑さ、濃厚な空気を感じる。 いろんな思いを抱えた藤子が痛々しい。 死に向かう男と、生命力溢れる女。 対照的な2人がとても際立つ。 遺作となった写真集の中の藤子は、いったいどんな藤子なんだろう。
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新境地、神様って誰のこと?お勧めの恋愛小説の一つとして読んでみたが、想定外の展開を楽しむことができた。
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外見にコンプレックスがあり、自分を卑下してきた藤子。 ある夜、父の訃報を知らずに訪ねてきた写真家の全さんとの出会いによって、今まで知らなかった自分の一面を知ることとなる。 "誰かと関わると、もう出会う前の自分には戻れなくなってしまう"と本文にあった通り、人生...
外見にコンプレックスがあり、自分を卑下してきた藤子。 ある夜、父の訃報を知らずに訪ねてきた写真家の全さんとの出会いによって、今まで知らなかった自分の一面を知ることとなる。 "誰かと関わると、もう出会う前の自分には戻れなくなってしまう"と本文にあった通り、人生は無かったことにはできないから、選択の連続が果たしてベストとはいかなくともベターな選択ができたのか、たまに立ち止まって振り返りたくなる。
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高身長で周りに女扱いされない自分がコンプレックスの20歳の女子大生藤子と、昔近所に住んでいた写真家の全さんとのひと夏の思い出の話です。 冒頭で全さんは既に亡くなっており、それから既に10年以上経っていることが語られます。 最初は自分の父親より年上の男の人を最初から異性として意...
高身長で周りに女扱いされない自分がコンプレックスの20歳の女子大生藤子と、昔近所に住んでいた写真家の全さんとのひと夏の思い出の話です。 冒頭で全さんは既に亡くなっており、それから既に10年以上経っていることが語られます。 最初は自分の父親より年上の男の人を最初から異性として意識している主人公に違和感を覚えましたが、歳に関係なく妙な色気があって女性を惹きつける男性というのはいるので20歳の女の子じゃ余計抗えないよなと思ったり。 藤子は全さんに嘘をつかれていた、捨てられたとショックを受けていますがどう考えても他の女性達とは違う扱いだったので絶対愛されてるよ大丈夫だよ‼︎と思いながら読んでいました(笑) ここが泣ける!ってところがあったわけではないんですけど、写真集の自分の体についての藤子の語りを聞いていたら涙が出てきて…… 藤子は自分の外見にコンプレックスを持っているけれど、全さんからみたら死にかけている自分とは違ってご飯をもりもり食べて裏表がなくて純粋な藤子は生命力の塊のようで眩しいくらい美しく映ったんだろうなと思います。
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2024.2.21 P.2 時間は記憶を濾過していく。 思い出とは薄れるものではなく、濾されてしまうもの。細い金属の糸でみっちりと編まれた網に通され、濁りが抜けおちていく。時間はそれを何度も何度もくり返し、日々の些事はぽたりぽたりと滴り、どこかへ流れ去ってしまう。 やがて、純度...
2024.2.21 P.2 時間は記憶を濾過していく。 思い出とは薄れるものではなく、濾されてしまうもの。細い金属の糸でみっちりと編まれた網に通され、濁りが抜けおちていく。時間はそれを何度も何度もくり返し、日々の些事はぽたりぽたりと滴り、どこかへ流れ去ってしまう。 やがて、純度の高い記憶だけが網の上できらきらとした結晶になって残る。洗いぬかれたそれは日を追うごとに輝きを増し、尖った欠片は胸に突き刺さる。 P.217 あのひとに悪意はなかった。いつだって、誰に対してだって、なかっただろう。無慈悲な神様そのもののように彼はただ欲求に従って行動し、後に遺された結果がどうなろうと構わなかった。それが無残なものであれ、美しいものであれ、心惹かれる瞬間だけに執着した。 私たちの時間はあのひとの作品になった。
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ずっと好きだった人のこと思い出した あのすれ違ってしまってたことをあとから知った辛さとか哀しいけど楽しかった記憶を思い出しちゃった
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千早茜さんの本で、初めて読みました。 序盤から夢中になって、あっという間に読んでしまいました。 そばにいたい、触りたい、触られたい、でも嫌われたくない。 こんなにも深く愛する人に出会えたことは、終わりがどうであれ、それだけで幸せなんじゃないかと羨ましく思う。
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3年も経っているのに、忘れられないあの人との感覚、匂い、色を思い出した。 あの頃の自分は喰われるはずがないと思ってた。彼は、私から見たら只の大勢居る人の一人でしかいなかったから。なのに、時間をかけてゆっくりと私の芯を喰ってどこかへ行った。 あの時貪るように喰らい付いていた時間や感...
3年も経っているのに、忘れられないあの人との感覚、匂い、色を思い出した。 あの頃の自分は喰われるはずがないと思ってた。彼は、私から見たら只の大勢居る人の一人でしかいなかったから。なのに、時間をかけてゆっくりと私の芯を喰ってどこかへ行った。 あの時貪るように喰らい付いていた時間や感情を、私は未だ忘れたくない。
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父を亡くし1人で暮らしている藤子、そこに怪我をした男が父宛に尋ねてくる写真家の全さん、人を好きになるのは止めることができず、写真のためだったのか藤子少しでも心をから愛していたのか、最後はひっそりと海外で死んでいく世の中に残る藤子の写真を残して。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
【あらすじ】 親を亡くし一人になった20歳の夏、父よりも年上の写真家の男と出会った――。男の最後の写真集を前にあのひとときが蘇る。妙に人懐っこいくせに、時折みせるひやりとした目つき。臆病な私の心に踏み込んで揺さぶった。彼と出会う前の自分にはもう戻れない。唯一無二の関係を生々しく鮮烈に描いた恋愛小説。 『誰かと関わると、もう出会う前の自分には戻れなくなってしまう。それが幸福なことか不幸なことなのかはわからない。』 『泣きたくなったら食べればいい。泣きながらでも飲み込めば、食べた分だけ確実に生きる力になる。』 『自分ではない他人に、手に入らないものを求めて、叶わないと知ったことがあったのだろうか。』 『私は死のにおいに鈍感だった。それは私が若く、圧倒的に死から遠かったせいだ。』 『心の傷の深さなんて他人にはわからない。』 【個人的な感想】 千早茜さんの小説にはハッとさせられる言葉が多い。 今作は初恋と呼べるような甘酸っぱい恋ではなく、最低で最悪で退廃的な恋。 食の描写が素晴らしく、小説に出てくる食べ物が食べたくなった。
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