夏物語 の商品レビュー
乳と卵の続編は、夏自身のお語で、まさしく夏物語だった。生まれること、生きること、生むことを深く考える一冊。
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泣いた。 哲学だね、これは。ふわふわしてて掴めそうで掴めないほんとは掴めるものではないのかもしれない、けどそこに確かにあるはずで、という感じで途中意識が飛ぶ(眠)。 けど、ブワッと泣けた。 文に点々ついてる箇所がよく出てきて、そのほとんど強調する意図がよく分からなかった。 p....
泣いた。 哲学だね、これは。ふわふわしてて掴めそうで掴めないほんとは掴めるものではないのかもしれない、けどそこに確かにあるはずで、という感じで途中意識が飛ぶ(眠)。 けど、ブワッと泣けた。 文に点々ついてる箇所がよく出てきて、そのほとんど強調する意図がよく分からなかった。 p.49 んで生まれてきたら最後、生きて、ごはんを食べつづけて、お金をかせぎつづけて、生きていかなあかんのは、しんどいことです。お母さんを見ていたら、毎日を働きまくっても毎日しんどく、なんで、と思ってしまう。 p.88 でもそのあと、わたしは気づいたことがあって、お母さんが生まれてきたんは、おかあさんの責任じゃないってこと。 p.436 自分が登場させた子どもも自分とおなじかそれ以上には恵まれて、幸せを感じて、そして生まれてきてよかったって思える人間になるだろうってことに、賭けているようにみえる。人生には良いことも苦しいこともあるって言いながら、本当はみんな、幸せの方が多いと思ってるの。だから賭けることができるの。(略)そしてもっとひどいのは、その賭けをするにあたって、自分たちは自分たちのものを、本当には何も賭けてなんかいないってことだよ。 p524 「でも、わたしがそう思ったのは」わたしは言った。「それを話してくれたのが、善さんだったからだと思います」
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23/4/3読了 「すべて真夜中の恋人たち」に続き2冊目の川上未映子さん。 一作目の登場人物の三束(みつつか)さんに始まり、今回の逢沢さんも、川上さんの作品に登場する男性はなんだか雰囲気が似てる。口数は多くなさそうで、でもあったかくて、おおらか。 少し影のある主人公を包み込める...
23/4/3読了 「すべて真夜中の恋人たち」に続き2冊目の川上未映子さん。 一作目の登場人物の三束(みつつか)さんに始まり、今回の逢沢さんも、川上さんの作品に登場する男性はなんだか雰囲気が似てる。口数は多くなさそうで、でもあったかくて、おおらか。 少し影のある主人公を包み込めるような男性でよかった。 夏子の姪である緑子の幼少期の日記も印象的だった。子供が生まれることをネガティブに考えたことがあまりなかったが、生まれてこなければ辛いことを経験しない。誰も望んで生まれてきていないと言う緑子の幼少期の日記にはっとさせられた。 文章の比喩表現が何とも言えない言葉選びで、実際に想像するのが楽しかった。
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毎日出版文化賞 芸術部門受賞 米TIME誌ベスト10 米New York Times必読100冊 米図書館協会ベストフィクション選出 本屋大賞7位 前半は芥川賞受賞作の「乳と卵」の改稿らしい(未読) 普段読んでいる本と違い、密度が圧倒的に濃い。 例えば、大阪の下町のスナック...
毎日出版文化賞 芸術部門受賞 米TIME誌ベスト10 米New York Times必読100冊 米図書館協会ベストフィクション選出 本屋大賞7位 前半は芥川賞受賞作の「乳と卵」の改稿らしい(未読) 普段読んでいる本と違い、密度が圧倒的に濃い。 例えば、大阪の下町のスナックやボロアパートの描写など、本当にそこにいるように感じる。 精子提供についても、いろいろな登場人物が語る内容が、どれも説得力があり、夏子の選択はそれはそれで大団円なのだが、善百合子の考えも否定できないなど、正解はないように感じた。 ただ、善百合子の言い分は理解できるのだが、読んでいて深い悲しみを感じてしまう。 読んだ後、こんなに心を捉えられてしまうのは、村山由佳「風よあらしよ」以来かも。
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女性にとって、子どもを産むとはどういうことなのかを考えさせられる物語でした。自分は男だからなのか、物語の登場人物のような複雑な考えはなく、シンプルに好きになった人との子どもが欲しいと思い、無事に授かることができました。確かに、登場人物が述べたように、私自身も子どもを授かる前と後で...
女性にとって、子どもを産むとはどういうことなのかを考えさせられる物語でした。自分は男だからなのか、物語の登場人物のような複雑な考えはなく、シンプルに好きになった人との子どもが欲しいと思い、無事に授かることができました。確かに、登場人物が述べたように、私自身も子どもを授かる前と後では、自分の世界が変わりました。いろんな家族の形があるでしょうが、生まれてきた子どもたちに幸せになってほしい、その子どもたちが自分たちも子どもをもちたいと思える社会であってほしいと思います。
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Audible読了 『黄色い家』でヨレヨレの札束でビンタされた川上作品。もうこの人は、とことん貧困感たっぷりのどんよりした作風なのねーと思いつつ、ガリガリに痩せたブランドおばさん(失礼)の存在感には自然と笑いを誘われた。 ──ところでママ、シャネルって何人? アメリカ人や。 ...
Audible読了 『黄色い家』でヨレヨレの札束でビンタされた川上作品。もうこの人は、とことん貧困感たっぷりのどんよりした作風なのねーと思いつつ、ガリガリに痩せたブランドおばさん(失礼)の存在感には自然と笑いを誘われた。 ──ところでママ、シャネルって何人? アメリカ人や。 いやー関西人ってほんと得だなー。 物語は前半・後半でゆるやかに連続性をもたせつつも、はっきりテーマ分けがしてあり、前半では女性の裸体が、後半では妊娠がフォーカスされている。基本的にはずっとハラハラさせられる展開。半年間、母親に対して一切言葉を発しなくなった小6の娘が、いつ爆発するのか、しないのか。セックス障害の主人公が精子提供に踏み切るのか、切らないのか。 壊れるのか、壊れないかの危ういバランスでふらふら歩いていく感じは、酔っ払いを見ている既視感だった。 ── 自分の子どもが一体どういう存在だと思っているのか。ただ、その誰かもわからない誰かに会うことが、自分にとって、とても大事なことだと思っている(後略) 子どもを求める女性の気持ちが徹底的に掘り下げられていく。男性は排斥され、出産の痛みも育児も一旦退場願って、「自分の分身」に対する思いの純度をどんどん高めていく。生む、ということを煮詰めて取り出して、しげしげと眺めて高々と掲げる。ああ、やめて、振り下ろしちゃダメだよ! もーほんとハラハラしかしないミステリーだった。 父である私目線だと、子どもを産んでもらったことについて今は猛烈に感謝をしている。ただ、、、計画的な妊娠だったにせよ、夫目線で言えばあまり深く、いや全く想像力を働かせてなかった、と思う。いや、なかった。 『そして父になる』という映画のタイトルが思い出された。男性でも女性でも等しく、「親」になるということは時間がかかることだ、と思う。(いいわけ) そして子どもに対して、初めて見せる共同作業は育児だと思う。それは夫婦という形でなくても構わない。ただワンオペは看過してはならない。女性にフォーカスしきった果ての、少し急な作品の終わらせ方には、そんな作者のメッセージを感じ取ったような気もした。(いいわけ) 全然関係ないけど、命日って、生まれた日にすればいいのにね。その方が覚えやすいし、命がつながったハッピーな日だもんね。
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内面を深く抉り削られるテーマにガクブル状態で手に取った「夏物語」1部は芥川賞受賞の「乳と卵」のリメイク版とゆうことで加筆修正は部分的にあるらしいですが概ね元のままのようです。といっても川上未映子さんは初読みだから違いはわかりませんでしたけど。 小説家を目指して東京で暮らす30歳に...
内面を深く抉り削られるテーマにガクブル状態で手に取った「夏物語」1部は芥川賞受賞の「乳と卵」のリメイク版とゆうことで加筆修正は部分的にあるらしいですが概ね元のままのようです。といっても川上未映子さんは初読みだから違いはわかりませんでしたけど。 小説家を目指して東京で暮らす30歳になる夏子のもとに9つ違いの姉巻子と娘の緑子がやってくる。巻子のキャラがめっさ大阪弁で逞しく、苦労してるのに笑い飛ばして傍でみている人には飴ちゃんくれそうで、まわり無視して話しまくるガサツさがあるにも関わらず豊胸手術をマジで考てるって。娘の緑子は会話を拒み筆談で応答してるし、初潮前の微妙な感情から嫌悪感マシマシで乳も卵も欲しくないと思っている。生まれてこなければよかったと。夏子は聞き手に回って巻子や緑子を観察しながら回顧する。銭湯に行ったり外食したり、遊園地に行ったりの3日間。語られる話は臨場感があって引き込まれました。ほんと大阪のおばちゃんって感じで巻子さん面白いわぁ、痩せ細ってきてる体躯が心配だけど。 女性の体って不思議ですよね。毎月体内で何が起こっているのか不安と不調でストレス抱えたりで。女になることに嫌悪する娘と、女に戻りたいと切望する母が対照的に描かれていて、そんな背景を呆然と眺めている夏子。 緑子にせがまれ最後に乗った観覧車から俯瞰する景色に何が映ったのやら・・ 2部は8年後、小説家となった夏子38歳からの物語。 父親の愛情に恵まれず貧しい中、母と祖母の死を10代で体験した夏子。男女が愛し合った末に授かるのが子供とゆう認識が性の多様化により家族体系も変化して曖昧になっている現代。AID(非配偶者間人工授精)とゆう方法で子を得ることができることを知る。元来、不妊治療で子を望む夫婦に限りに門戸を開いてた方法なのだけど、夏子はAIDでパートナー無しの出産を望むようになる。父親なしの環境で育つ子供は幸せなのか不幸なのかはわからないけど夏子自身は母子家庭だったし、姉もシングルで緑子を育てた。セックスなしで子を持ちたいと思う気持ちは女のエゴなのか批判も共感も含め新たな選択肢なんだろうなあ。 私には高次元な考え方で禁忌に思えて理解できないけど否定もできない。 またAIDで生まれた子供が日本にも1万人以上いるそうで、忌野際に真実を知らされショックを受けたとか、出自を知る権利があるとか、親のエゴだとか云々思うみたいだけど逆に血の繋がりなんて気にならない子もいたりで様々。 多方面からメリット・デメリット、真摯に情報をへて夏子が辿り着いた答えは尊重しなければと思うけど、価値基準とか考え方を昭和から令和にアップデートしなくちゃいけないのかなって思いました。 作中に会食するシーンが豊富にあるのですが、いろんな立場の人たちと語り合い、その人生観に触れるのですが、対話形式で進められる文章と夏子の心情や情景が織りなす雰囲気がツボでした。別々に会計するときはいくら払ったか金額まで書いてありますが、省いてあるときは親密度高いんだなって思えたり。編集者と飲みに行くと経費で払ってくれるみたいだし、1作ヒットだしたら印税700万入ったて一体何部売れたんだろうかって勘ぐったり。医者のバイト代は時給2万円が相場なんだとか、本筋から逸れた情報にも興味津々でいろんなこと知ることできて楽しませてくれました。
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深さをもった物語。単純なメッセージではない。 親の否定。血縁の肯定。 友情。恋愛。仕事。 いろいろなものから距離を取った上で、それでも残るもの。再定義できるもの。 ゆさの大阪弁に関する考察が面白かったなあ。 行き交う中でわざと肩をぶつけてくるような人の描き方がエグい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
第一部と第二部の繋がり方が絶妙なところは鳥肌もの。 親であることとか子であることとか、女であることとか、男とはとか人のつながりとか生活とか…ものすごく頭を使った。 そして、結構普通に丸くおさまるんだと思ったけれど、丸く納め方が想像以上でため息。
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川上未映子さんの「夏物語」読了!かなり時間をかけ、最後は声をあげて泣いてしまった。 芥川賞「乳と卵」の再構成から出発する物語(と知らずに読み始めて「あれ?これって……」ってなった)。 パートナーなしでの妊娠を望む小説家、夏子。 女で一つで娘を育て上げた姉、巻子。同じくシングルで...
川上未映子さんの「夏物語」読了!かなり時間をかけ、最後は声をあげて泣いてしまった。 芥川賞「乳と卵」の再構成から出発する物語(と知らずに読み始めて「あれ?これって……」ってなった)。 パートナーなしでの妊娠を望む小説家、夏子。 女で一つで娘を育て上げた姉、巻子。同じくシングルで、働き詰めの上死んでいった母。祖母。 独身の辣腕(かな?)編集者の仙川涼子。大衆小説家のシンママ・遊佐。自らを「ま●こつき労働力」と卑下する元同僚の紺野さん。AID(非配偶者間人工授精)で生まれ、性虐待を受けた善百合子。…… 夏子は性行為ができない。多くの女たちと関わり合い、しゃべくりあい、自らもAIDによりシングルで子を妊娠しようと望む姿は、第一章で姉・巻子が豊胸手術を受けようとした姿と重なる。 女であること、女であると周囲から見られること。子を産むこと、生まれること。その意味を深く掘り下げた大長編。 とにかく、大きな力を持つ小説だった。すごくよかった。最後まで読むのはかなりのエネルギーがいるけれども、読んでよかった……!! 「乳と卵」を読み返したい。 もし川上さんの作品をこれまで読んだことがなくて、本作を読んでみたいと思うなら、「乳と卵」から入ってみると解像度が上がるかも。
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