掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集 の商品レビュー
う~ん、何と言ったらいいのだろう? この短編集(ショート・ショートもある)に収められている作品、これらの作品を読んで感じたことは一体何なんだろうか? 例えば、とても上級とは言えない人たちの簡単で詰まらない「死」がいつでも側にある「日常」とか。 ...
う~ん、何と言ったらいいのだろう? この短編集(ショート・ショートもある)に収められている作品、これらの作品を読んで感じたことは一体何なんだろうか? 例えば、とても上級とは言えない人たちの簡単で詰まらない「死」がいつでも側にある「日常」とか。 例えば、アル中患者が自分のアル中病状を笑い物にする「自虐性」とか。 例えば、本人たちだけが真剣で、周りから見たらとても滑稽な「行動」などなど。 すなわち、外国映画でよく出てくるようなアル中、ヤク中の「クソったれ」と罵られるような人間たちが織り成す何気無い「日常生活」、それらとても綺麗とは言えない「日常生活の切れっ端」が何故か儚く、それ故に美しく感じてしまう。 そんな私なりの感想でした。
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読み進めるうちに、どんどんと読むのがゆっくりになった。ハッとするような表現を読み飛ばしたくなくて。 著者自身のカラッとしたカッコよさ(知らんのだけども)が滲んでるような、小気味よい文章。
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岸本佐知子がベタ褒めしてたのを見て「文庫出たら読むか」と思ってたはずが文庫化見落とし。古本で文庫より安く単行本見つけたんで読んでみた。 「エンジェル・コインランドリー店」冒頭にコレか。どんなんやろ?と探りながら読むにはちょうどええ感じで本全体の雰囲気捕まえやすい。 「ドクターH...
岸本佐知子がベタ褒めしてたのを見て「文庫出たら読むか」と思ってたはずが文庫化見落とし。古本で文庫より安く単行本見つけたんで読んでみた。 「エンジェル・コインランドリー店」冒頭にコレか。どんなんやろ?と探りながら読むにはちょうどええ感じで本全体の雰囲気捕まえやすい。 「ドクターH.A.モイニハン」そこだけ印象に残るのは違う気はするんやけど、抜歯の描写がキツい。ギャツビーの目の看板くらい強い。 「星と聖人」些細なボタンのかけ違い、子どもではどうにもならない歯車のズレ、切ない、胸が痛い。この辺がこの人の真骨頂なんかなって気もする。 「掃除婦のための手引き書」表題作にして一番ユーモラスかな。その分なのか感情を揺さぶられる感は薄い。何を求めるか、ってところやけど。 「どうにもならない」アル中言うても人間やねんな、当たり前やけど。子どもに心配されるとかツラいし、ツラさを自分でも感じてるのがまたツラい。 「喪の仕事」一人っ子やしオヤジは亡くなってるんで、オカンのその時には分けるとか無しに引き取るか処分するかだけの身の上やねんけど、それでも身につまされる。この人、こういうのが一番上手いんかな。 「さあ土曜日だ」語り手が男ってこともあるんかもやけど、一番入り込めたかも。結局そこ書いちゃうみたいなオチも割とキレイに決まってるし。
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ルシアとは友達になれそう。 この人は、生きるために小説を書いていたんだろうなあ。 歳をとったのか、人生のちょうどそういう時期なのか、今の私にはすごくそれが沁みた。生きるために、小説として吐露するのも悪くない。 短編。すぐ手近にあったペン。エピソード。 解説の人がいみじくも言ったよ...
ルシアとは友達になれそう。 この人は、生きるために小説を書いていたんだろうなあ。 歳をとったのか、人生のちょうどそういう時期なのか、今の私にはすごくそれが沁みた。生きるために、小説として吐露するのも悪くない。 短編。すぐ手近にあったペン。エピソード。 解説の人がいみじくも言ったように、彼女が書く内容は残酷なんだけど、その描写の巧みさや語りの軽快さが、読者をして内容の残酷さより語りに身を任せる爽快感に酔わせてしまう。そういう魅力。 きっと人生もそうかも。内容は平凡(ルシアの場合そうでもないけど..)で苦しくて、微妙で歪。でも語りかた次第。そういう哲学。 ルシア自身、「物語が全て」と言ったとか。 ああ、その態度だ。私が好きなのは。 語ることのユーモアにかまけてもいいんだ。 コメディーが根本的には「客観」の総体であるように、物語ること自体が「客観」の賜物。人生に傷ついた経験の多い人ほど、そういう文章を書くのかもしれない。 それはまるで、傷つきやすい子供が、周りを常に笑わせようとするような痛ましさもあるけど、そこには同時にそうして生き延びてゆく逞しさもまたある。 Don’t take life seriously. He/she doesn’t take life seriously at all. 英語圏の人々がよく言う褒め言葉を思い出す。 エルザベス・ストラウトのように簡潔で客観的で。そこにユーモアある技巧と、それをナルシシズムからではなく、心底おかしがっている可愛げ。 緩急あるリズム。短文と長文。短い話と長い話。 エピソードの組み合わせかた。 ある光景のどこにフォーカスするか。誰の立場から切り取るか。 彼女の文章は、生活者の..人生をサバイブする人が書く物語のための偉大なる手引書だ。少なくとも、私にとっては。
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ルシア・ベルリンの小説は、ほぼ全てが彼女の実人生を題材にしている。そしてその人生が紆余曲折の多いカラフルなものだったために、切り取る場所によって全く違う形の断面になる多面体のように、見える景色は、作品ごとに大きく変わる。 これは、訳者の岸本佐知子による著者の言葉であり、非常に的確...
ルシア・ベルリンの小説は、ほぼ全てが彼女の実人生を題材にしている。そしてその人生が紆余曲折の多いカラフルなものだったために、切り取る場所によって全く違う形の断面になる多面体のように、見える景色は、作品ごとに大きく変わる。 これは、訳者の岸本佐知子による著者の言葉であり、非常に的確に本著を説明している。 これ以上の表現は難しい。この短編集は、詩集のようであり、ショートフィルムのようでもあり、しかし、実際には言葉の才能を備えた芸術家による日記や雑感以上のものではなく、その肩の力が抜けたナチュラルさが、更に魅力を引き立てる。 文体や文章から広がる雰囲気を少し残しておきたいから、下記に引用をしておく。 ー シルバーとトルコ石の素晴らしいネックレスに混じって、認識票が下がっていた。一カ所、大きな凹みがあった。弾が当たったの?いいや、怖じ気づいたり女が欲しくなったりするたび、こいつを噛み締めたのさ。 ー いちど彼から、俺のトレーラーハウスで一緒に横になって休まないかと誘われたことがある。エスキモーなら一緒に笑うって言うとこね。私はそう言って、蛍光グリーンの洗濯機のそばを離れるべからずの文字を指さした。 ー 掃除婦たちへのアドバイス。奥様がくれるものは何でももらってありがとうございますと言うこと。バスに置いてくるか、道端に捨てるかすればいい。原則友達の家では働かないこと。遅かれ早かれ、知りすぎたせいで憎まれる。でなければいろいろ知りすぎて、こっちが向こうを嫌になる。 ー 母は変なことを考える人だった。人間の膝が逆向きに曲がったら、椅子ってどんな形になるかしら。もしイエス・キリストが電気椅子にかけられてたら。そしたらみんな、十字架の代わりに椅子を鎖で、首から下げて歩き回るんでしょうね。
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作家の生涯書いた76の短編のうち24篇が岸本佐知子さんという素晴らしい翻訳家によって届けられた作品集。もう〜翻訳が素晴らしい!変な不自然さを感じない! この手の感情に訴える系の文学が苦手だと思ってきたが何故か読みたくて。そうビビッときただけあって、言葉や文章から香ってくる彼女の世...
作家の生涯書いた76の短編のうち24篇が岸本佐知子さんという素晴らしい翻訳家によって届けられた作品集。もう〜翻訳が素晴らしい!変な不自然さを感じない! この手の感情に訴える系の文学が苦手だと思ってきたが何故か読みたくて。そうビビッときただけあって、言葉や文章から香ってくる彼女の世界に引き込まれていった。もっと深く読んでいくともっと言葉が味わえる...ちょっと待って、これって翻訳本の感想⁉︎ 岸本佐知子さんの才能に大拍手!原文で読めたら一体どこまで味わえるんだろうか?
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カバーの写真は著者自身だとは思わなかった。美人で聡明さと自信が自然と表情に表れている。それとは裏腹に傷ついたり苦労した人生の経験を根ざした短篇たち。確かにテーマは重なっているものもある。それだけ自身の中で繰り返し繰り返し問答したのだろう。数度の結婚と離婚、片親の子育て、母や妹の死...
カバーの写真は著者自身だとは思わなかった。美人で聡明さと自信が自然と表情に表れている。それとは裏腹に傷ついたり苦労した人生の経験を根ざした短篇たち。確かにテーマは重なっているものもある。それだけ自身の中で繰り返し繰り返し問答したのだろう。数度の結婚と離婚、片親の子育て、母や妹の死、アルコール中毒。彼女がそれらを詩的に物語る才能を持ち合わせ、それを読むことができてうれしい。ヒリヒリするけど瑞々しくてからっとしていて、女々しく凛々しい。岸本佐知子さん訳、クラフト・エヴィング商會装丁のコンビもうれしい。
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なんかの本にでてきたと思う、ルシアベルリン。気になったので読んでみたら、圧巻!短編でボリュームが少ない中で比喩の面白さ、表現の巧さ、物語に引き込まれていく。実体験を基に描かれているということだけども、どんだけ数奇で波瀾万丈な人生歩んでんねん。家族との関係、そこに起因するであろう自...
なんかの本にでてきたと思う、ルシアベルリン。気になったので読んでみたら、圧巻!短編でボリュームが少ない中で比喩の面白さ、表現の巧さ、物語に引き込まれていく。実体験を基に描かれているということだけども、どんだけ数奇で波瀾万丈な人生歩んでんねん。家族との関係、そこに起因するであろう自身のアルコール依存症の苦しみ、読んでいるだけで辛くなるというか胸が痛くなるというか切なくなりそうな内容だけども、辛気臭く感じさせないし、悲壮感ただよわないし、かといって喜劇的な感じでもない。種々の感情が絶妙なバランス感を持って進行していく物語ともいうべきか。多様な人間の人生や、家族や友人との人間関係の機微について、ユーモラスにむき出しの言葉をもって紡いでくれる。読んだ後、何かを感じずにはいられない一冊。
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やっと読むことができた。凄く良かったです。 表紙が目を惹きますよね?綺麗。本人なんでしょうか。あらゆる描写が鮮明でこんな本に出会ったことがないよ。 うわーっと息を飲んだのはティーンエイジパンク。 描写が。思わず何度も読んでしまったほどの鮮烈さ(たった3ページの物語)。鶴が、鶴がや...
やっと読むことができた。凄く良かったです。 表紙が目を惹きますよね?綺麗。本人なんでしょうか。あらゆる描写が鮮明でこんな本に出会ったことがないよ。 うわーっと息を飲んだのはティーンエイジパンク。 描写が。思わず何度も読んでしまったほどの鮮烈さ(たった3ページの物語)。鶴が、鶴がやって来るんです。読んでみて欲しい。 表題の掃除婦のための手引き書も美しくて素敵でした。 どの話も私もそこにいるみたいに体温とかも感じるような。 彼女本人の日記かと思われるほどなんだけど、後にある解説ではその辺りについても言及されてあります。是非読んで。
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ゆっくりじっくり読んで、心臓にグサグサ来る作品集 末尾にもあったけど、緩急がすごくて、特に急が最強 個人的に最後の作品が一番キュってなった
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