居るのはつらいよ の商品レビュー
ハカセが沖縄で悪戦苦闘した日々と、デイケアで次々と人が辞めていく理由にまで焦点を当てた学術書。 面白おかしく書いているけれど、実際はかなりキツいことがたくさんあったんじゃないのかな。精神病や臨床心理学の知識はなかったし、正直想像ができない世界だったが、わかりやすい解説と例えで家...
ハカセが沖縄で悪戦苦闘した日々と、デイケアで次々と人が辞めていく理由にまで焦点を当てた学術書。 面白おかしく書いているけれど、実際はかなりキツいことがたくさんあったんじゃないのかな。精神病や臨床心理学の知識はなかったし、正直想像ができない世界だったが、わかりやすい解説と例えで家庭や職場での生活を時々重ねながら読むことができた。
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※このレビューにはネタバレを含みます
精神デイケアを舞台としたお話。コミカルでとても読みやすい。 「いる」と「する」 「ケア」と「セラピー」 「円の時間軸」と「線の時間軸」 わかりやすい2元的配置で論を展開しており、どれも「なるほどな〜」と頷いていた。 ウィニコットやグッゲンビュールの引用があり、彼らの著作を手に取ってみたいと思った人も多いと思う。 指摘する点があるとすれば、市場関連の話についてだ。デイケアを利用する患者の実際の負担は少ない。少なくとも日本の医療は資本主義と社会主義がごちゃ混ぜになっているところがあり(基本は3割負担以下なのだから、むしろ市場の外に近いかもしれない)、市場原理で結論を出すのは若干的外れのように思える。そういった意味で真犯人に対する納得はあまりできなかった。ただ、そこの部分について考えるタネができたので、僕自身検討していきたい。 最後に、読みやすい文体でたくさん学べる部分もあり、新たな疑問も生まれた。どの分野の人にも馴染みやすい本だと思う。
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「臨床心理学」の研究でセラピーを習得して、博士号をとった筆者が、精神科のデイケア施設で過ごした経験をもとに、物語化した作品。 ケアとセラピーの違いを軸に、リアルな現実に向き合う。 筆者の、お話し仕立ての学術書。という意図だけど、堅苦しくなく、さらさら読めるように書いてある。 ...
「臨床心理学」の研究でセラピーを習得して、博士号をとった筆者が、精神科のデイケア施設で過ごした経験をもとに、物語化した作品。 ケアとセラピーの違いを軸に、リアルな現実に向き合う。 筆者の、お話し仕立ての学術書。という意図だけど、堅苦しくなく、さらさら読めるように書いてある。 セラピーとケアの違い、 ケアは傷つけないこと セラピーとは傷つきに向き合うこと 書いてしまうと当たり前に見えるけど、 この物語を読むと、2つの違いが大きい事がよく分かる。 主人公がデイケア施設に就職し、ケアの中で一番つらいことは、 「ただ、いる、だけ」 ということ。意味がないと思えてしまう事。 でも、デイケアに通っている方々にとっては、おとなしくいるだけでも大変なことである。 何もしなくても「いる」ことができるようにするのが大事なのだ。 最後の方に記載してある アジールとアサイラムの話。 隠れ場所(アジール)でああったデイケア施設のはずが、アサイラムとしてのいる人を画一的に扱い、生産性、経済性を求める地になっているということ。 これがこの本の鮮やかな結論であり、今後も解決されない構造なのだろう。 この結論がとってつけたように感じるのは、小説として提示されている、デイケアに通う方々と、それをサポートする方々のふれあいの物語と、この結論との間に繋がりが若干感じられないからだろう。 この本の物語は、リアルなデイケアの日常と、なぜか擦り減って人が辞めていく現象までを記載している。 このリアルな日常と、疲弊していくミステリアスさ、いることの大変さは物語を魅力的にしている。 が、結論に至るブラックな部分の表現が、「この地獄を生きるのだ」などを引き合いにださなければ説明ができないところに、力技を感じる。 この本の話を読んでいる限り、デイケア施設自体に悪いところがない。でも、誰もかれもやめていく。ここの理由はとくに現実もないのだろうが、お話しとして、何か理由が付くことを望んでいる。 「この地獄を生きるのだ」の経済性重視の施設などは分かりやすい。 でも、そういう、勧善懲悪的な話にしてしまうと、ケアとセラピーの微妙な位置関係などが全く表現できないことになってしまう。 なので、こんな形、ふわっとした話を記載しているのだと思う。 ただ、物語のカタルシスとしては、最終的に肩透かしをされたような、なんだかぽかーんとしてしまうような読後感なのだ。 小説というよりも学術的な、社会学的な課題を見つけるという意味では、色々重要な要素が点在している本だと思うし、筆者も言っているように、最適な形で描いた学術書なのだろう。 この表現ができる発想のやわらかさが筆者の強みだと思う。
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職場の同僚に借りた一冊。 きっとこの本、好きですよ!と言われ読んで、その通り。 精神科デイケア、まさにこんな感じ。 ただ居ること。その大切さ。 そうか、退屈さえ感じないんだと、気づきあり。 ケアとセラピーの違いは、少し異論あれど、なるほど!と。
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とても読みやすかった。 今までに自分が何となく感じていたけれど、言葉にできなかったモヤモヤに言葉を与えてくれるような。 結局最後の結論は、思っていたほどスッキリ!という感じではなかったけども。でもデイケアの居るのはつらいよという感覚をいろんな著名人の作品から上手に引用して分かりや...
とても読みやすかった。 今までに自分が何となく感じていたけれど、言葉にできなかったモヤモヤに言葉を与えてくれるような。 結局最後の結論は、思っていたほどスッキリ!という感じではなかったけども。でもデイケアの居るのはつらいよという感覚をいろんな著名人の作品から上手に引用して分かりやすく説明する東畑さんはすごいと思った。 すぐ売ろうかと思ってたけど、しばらく手元に置いて何度も読み返してもいいなぁと思う本。
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なるほどなぁ。 ケアとセラピー。 バランスが難しいよな。 この本読んでて、教育もケアとセラピーやなって思った。 なのにそんなに勉強もしてない教員。生徒の力にほんとになれるのかって思ってしまった。 ケアとセラピー。 うん。
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≪概要≫ 東畑開人先生がデイケアに勤務した体験に基づき、援助者による関わりと考え方が物語調で描かれている専門書です。とても読みやすく、かつ、関わりが専門性に裏打ちされていることを学べる本です。 東畑先生の飾らない人柄も窺える展開でまとめられています。 ≪感想≫ 「ケア」により要求を満たし、「セラピー」によって自立や成長に向かうということを整理して捉えることができた。 実際には「ケアとセラピー」は、関わりの中に同時に存在するけれども、「ケア」と「セラピー」を分けて捉えることで、実際の援助にあたるときに『相手のニーズは何か』を意識する視点を持つ意義が感じやすくなった。 「相手は何を求めているのか」、「何を訊くと整理されやすいか」考えながら聴く必要がある。相手へのアセスメントをして、自分が、「ケア」と「セラピー」のバランスを判断して行動することで、本当の意味での「相手の立場に立った」援助が可能になると理解した。 ≪「仮説」と「検証」≫ 「ケア」の価値が低く見られがちなのはなぜか。ここで言う『価値』とは、「金銭や評価が伴う社会的価値」とする。社会的に意味がないということではない。 そこには、『自立』に価値を置く考えが影響していると示されている。「ケア」は依存を引き受けることと示されており、『自立』をよしとする場合、確かに「ケア」は望ましくないことになってしまう。 『自立』は何によって示されるかというと「金銭を生み出せること」になる。だからこそ、直接金銭を生み出さない「ケア」は価値が低いことになる。 しかしここには『自立』についての誤解がある。実際に『自立』という考え方は、「自分の意見や考えを持ったうえで、他者や環境、社会と適切な関わり方ができる能力」だと考えられる。 つまり、『自立』とは、「金銭を生み出せること」や「生きるための全てを一人で何でもすること」ではない。 生産性を持った役割を持つことは確かに重要なことではあるが、そのためにはどこかで必ず、「誰か頼る」必要が生じる。それは依存であり、「ケア」を受けることである。 まとめると『自立』への誤解と、『自立』を支える「ケア」の要素の見落としが、「ケア」の価値を見えにくくしていると考えられる。 「あたりまえ」を「何もない」と勘違いしてはいけない。
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読みたかった本。とても面白い。物語的な語り口が軽妙でわかりやすく、ぐいぐいいけるのだが、内容は考え抜かれて緻密。 「いる」ということの難しさや効果、心当たりがあるけれどなかなか言葉にできないものをかなり踏み込んで言葉にしてくれている本。 ケアするひとの傷つきやその逆(ケアされるひ...
読みたかった本。とても面白い。物語的な語り口が軽妙でわかりやすく、ぐいぐいいけるのだが、内容は考え抜かれて緻密。 「いる」ということの難しさや効果、心当たりがあるけれどなかなか言葉にできないものをかなり踏み込んで言葉にしてくれている本。 ケアするひとの傷つきやその逆(ケアされるひとによる癒し)、ブラックデイケアなどについても扱っていて、ああそういう話聞きたかった大事だよねと思うものが網羅されている。
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臨床心理学を通じて介護の現場から社会構造の矛盾、資本主義、ニヒリズムまで展開していきますが、物語としての文章が面白くてぐんぐん読んでしまいました。第8章のー「いない」ことが、栄養になる。ーの部分では春の別れのシーズンに読んだので余計にズンと来ました。
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京都大学大学院で博士号を取得した著者がとある沖縄の精神科デイケアに就職。専門生を生かし、患者さんを回復させたい!と意気込んで飛び込んだその先にあったのは「とりあえず座る」「ただそこに居る」という日常業務だった…。 「バッタを倒しにアフリカへ」以来! 学術×物語の面白さ。 かな...
京都大学大学院で博士号を取得した著者がとある沖縄の精神科デイケアに就職。専門生を生かし、患者さんを回復させたい!と意気込んで飛び込んだその先にあったのは「とりあえず座る」「ただそこに居る」という日常業務だった…。 「バッタを倒しにアフリカへ」以来! 学術×物語の面白さ。 かなりのボリュームで読むのに時間がかかったけど、 読むと止まらない。 初出勤でキューピーちゃんそっくりのおじさんに(統括部長)に「東畑だからトンちゃんね」とあだ名を決められたことを、千と千尋のように古い名前を奪われ、新しい名前をもらったと感じ、 喫煙室に居るデイケアの無言の利用者「ヌシ」と気まずい沈黙を避けるため、タバコを吸い、その感じがサマになってきたことに感動、宇宙の調和さえ感じてしまい、 そんな姿を医療事務の女性に見られただけで、穀潰しのゴミクズだと思われる!と慌ててタバコをしまう… 初日の2ページであ、いいな、と思った。 著者の言葉のセンスの面白さ。 正直な書き方。 読者と目線の高さを合わせてくれる姿勢。 そんな感覚に心掴まれた。 ハゲのタカエス部長 デブの野球狂ダイさん ガリのイケメンシンイチさん 医療事務ガールズ 患者のヌシ、ユリさんハエバルくんリュウジさん、ユウジロウさん… 読むうちに登場人物の顔が浮かび、愛着が湧く。 一緒に辛くなったり、嬉しくなったり、寂しくなったり。 自分のこととして考えられる物語。 デイケアだけでなく、人と関わり生きていく私たち 誰にでも当てはまる物語だと思った。 ケアとセラピーのことについても ぼんやりとした輪郭が何となく見えてきた。 セラピーは心の傷に向き合うこと。 ケアは依存を引き受け、日常を支えること。 どちらも必要で日常では水溶液のように混じり合っている。 読後に残ったのは ケアとセラピーには 一つの言葉では語れない価値があること。 特にケアは成果が見えにくい割に 大変な仕事だということ。 ただいるだけ。 ぐるぐるした成長のない日常に豊かさを感じる。 そこにも価値があること。 私たちが理解を深めて 社会的にこういう仕事、存在を大切にしていかなければ と感じた。 専門知識がなくても、イメージできる、 身近なところから考えることのできる、 ケアとセラピーの入門書のような本。 楽しく読めるのが第一におすすめの理由。
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