あとは切手を、一枚貼るだけ の商品レビュー
表紙の大竹利絵子さんのDanceという作品好き。 鳥と女の子。 小川さんと堀江さんの往復書簡 目の見えないふたりの紡ぐ、とても視覚的な描写。 昼間の病人のもつ、白く明る過ぎるくらいの風景 カミオカンデとチェレンコフ光、ライカ犬 湖。昼蛍。
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『昨日、大きな決断を一つしました。まぶたをずっと、閉じたままでいることに決めたのです』―『一通め』 連歌のようにお互いの言葉から次の言葉が引き出されて世界が膨らんでゆく。最初から物語が消えゆくように閉じることを予感させながらも、うたかたに交わされる恋文をなぞらえて。少し引いて眺...
『昨日、大きな決断を一つしました。まぶたをずっと、閉じたままでいることに決めたのです』―『一通め』 連歌のようにお互いの言葉から次の言葉が引き出されて世界が膨らんでゆく。最初から物語が消えゆくように閉じることを予感させながらも、うたかたに交わされる恋文をなぞらえて。少し引いて眺めれば、小川洋子の描く「記憶」という物語が、堀江敏幸による「本当のような嘘の話」に置き換えられていく、そんな印象を抱く。二つの異なる世界を上手く消化することは容易そうで案外と難しい。それは物語の主人公が交互に自分自身のことを内省的に語るからでもある。その意味では、「一通め」は最も小川洋子らしく、「十四通め」が最も堀江敏幸らしい物語であるとも言える気がする。しかし内省的に語るのは手紙の常でもある。 少し斜めから本書を読めば、物語を通して作家がお互いの特徴を語るのが文芸評論のようでもあるところが面白い。小川洋子のこだわりは「記憶」であるとずっと思ってきたけれど、堀江敏幸によれば「閉じ込められた」物語への執着があるという。確かに、そう指摘されてみると小川洋子の作品のあれもこれも閉じ込められた世界を描写する物語であると気づかされる。 しかし果たしてこの文通を模した文章のやり取りは一つの物語を描いているといえるのだろうか。互いの言葉に触発された空想を投げかけ合い可能性を広げながらも「閉じることを運命づけられた」という印象があちらこちらに散らばっている。そのことは、通常の手紙のやり取りにある親密さを少しずつ削いでいく。その予感が邪魔をして物語として読むことを拒まれる感触が残る。予定調和的である訳ではないけれど、どこへもたどり着かない物語であることを意識しながら、慎重に、チェスの一手を指すように、その駒の動きの持ち得る意味を語り尽くす。二人の作家が作り上げたものは、そんな棋譜の解説のような作品であるように思う。
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小川洋子さん、堀江敏幸さんの2人が交互に書かれる書簡体小説。なんと贅沢な。 どちらの作家の小説も読んでいるが、小川さんの方が多いからなのか、うっかりすると小川さんお一人が書いていらっしゃるのかと思うような、ボコボコした感じのない静かな往復書簡だった。 今は体が不自由になってしまっ...
小川洋子さん、堀江敏幸さんの2人が交互に書かれる書簡体小説。なんと贅沢な。 どちらの作家の小説も読んでいるが、小川さんの方が多いからなのか、うっかりすると小川さんお一人が書いていらっしゃるのかと思うような、ボコボコした感じのない静かな往復書簡だった。 今は体が不自由になってしまった2人が手紙のやり取りをする。かつて愛し合った2人が。 リアルではないのだが、ふと普通の2人の男女のやり取りみたいな感じで呑気に読んでると、あ、違った、みたいな繰り返しで読み進めていった。 別れてしまわなければいけなかった、それはそうなんだけど、まだ愛し合っている、おそらく死ぬまで壊れることのない愛の話だった。 いつものことながら、なんか好きではあるけど、あまりわかっていないし、感想もうまく書けない小川さんと、堀江さんの小説であった。
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「あなたはどんな測量士にもできないやり方で世界を測る。」 「きみのまぶたの裏に、ぼくはまだ映っていますか。」 声を出さずに泣きました。蝶になった貴方が目の縁にたまった涙を吸いにくるから、 そのままにしておきます。
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正直なところを書くと、難解だった。 二人の、詩のような、現実のような非現実のような、手紙のやり取りは、静かで美しい世界だけれど 事実については、あまり説明されていなくて、 【きみはなぜ、まぶたを閉じて生きると決めたのー】帯の疑問がすっきりと解けて、なるほど、と心打たれると言うよ...
正直なところを書くと、難解だった。 二人の、詩のような、現実のような非現実のような、手紙のやり取りは、静かで美しい世界だけれど 事実については、あまり説明されていなくて、 【きみはなぜ、まぶたを閉じて生きると決めたのー】帯の疑問がすっきりと解けて、なるほど、と心打たれると言うよりは、手紙から少しずつ見えることを繋ぎ合わせて、自分なりに、そう言うことなのかな、と思う、と言う感じ。 何度か読むと、また取り零していたことが、見えてくるのかもしれない。
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昨日、大きな決断を一つしました。まぶたをずっと、閉じたままでいることに決めたのです。目覚めてている間も、眠っている時と変わらず、ずっと、です。 (P.7/一通め) 傷ひとつない、美しい皮膚をもった生きものが、少し濁りの生じたホルマリンの中に浮いている。浮くという重力に反する幸...
昨日、大きな決断を一つしました。まぶたをずっと、閉じたままでいることに決めたのです。目覚めてている間も、眠っている時と変わらず、ずっと、です。 (P.7/一通め) 傷ひとつない、美しい皮膚をもった生きものが、少し濁りの生じたホルマリンの中に浮いている。浮くという重力に反する幸福が、ガラス容器のなかに幽閉される不幸と相殺されて、見る者の心を無の状態にしてしまう。それを静けさと呼びうるなら、きみはいつも声と体温を失った命の静けさに引きつけられているようでした。 (P.117/六通目) きみのまぶたの裏に、ぼくはまだ映っていますか。映っていると知ったときの幸福は、そのままべつの痛みを引き出すでしょうけれど、映っていない不幸よりはまだましかもしれません。 (P.249/十二通目) 永久に消えてしまった存在を、不在という言葉に置き換えるのはあまりにも安易です。言い換えの暴力が許されるなら、人は罪をいくらでもごまかして、楽に生きていくことができるでしょう。ぼくたちの暮らしに必要なのは他者への想像力であり、それは暴力的な言い換えを拒むことだと、何度も確認しあいましたね。言葉だけではありません。表現とはなべてそうしたものです、 (P.273/十四通目)
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「博士の愛した数式」小川さんの作品とあって、久しぶりに読もうと思い購読。元恋人同士の手紙のやり取りがそのままシリーズ物の短編集になったような構成。いろいろな仕掛けが散りばめられていて、そのことに気づくのが大変。メッセージの真意を読み取るのも大変。決してわかりやすいストーリーではな...
「博士の愛した数式」小川さんの作品とあって、久しぶりに読もうと思い購読。元恋人同士の手紙のやり取りがそのままシリーズ物の短編集になったような構成。いろいろな仕掛けが散りばめられていて、そのことに気づくのが大変。メッセージの真意を読み取るのも大変。決してわかりやすいストーリーではないものの、人間同士のコミュニケーションって、本当はこんなもんだよなと思うと妙に納得。
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かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。2人を隔てた、取りかえしのつかない出来事。14通の手紙に編み込まれた哀しい秘密とは…。 純文学の名手2人による共作なので期待して読み始めたものの、純文学過ぎて?通勤電車で読むには向かず、早々に断念した。すみません。 (E)
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とある男女の往復書簡。 あれ?思ってたのと違うなぁ?と思いつつ読了。 どうやらこういう関係でこういうことがあったらしい…は、 なんとなくわかったけれど、 結局のところ、よくわからない…が出てしまう。 後半でてた、亀か蝶、どちらか分担という振りに、 二人とも蝶に、と返すのが良かった、と思いました。 他、いいな、と思うフレーズがあったけれど、 忘れてしまった。これからはちゃんとメモせねば。 ライカ犬の死因は意外。 梨木香穂さんの本が引用されてたので読んでみよう。 「渡りの足跡」 季節的に今読むのがよいのでは??? と、巻末の参考文献みつつ書いてますが、 偶数の方、やたらと文献多いな!多かった。
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共作だからか、小川洋子さんらしさがあまりなく感じた。 そんなに驚くほどのこともなく予想ができる展開。
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