ままならないから私とあなた の商品レビュー

朝井リョウ(著者)

2022/12/11

レンタル彼女をモチーフにした「レンタル世界」も、表題作の「ままならないから私とあなた」も、朝井リョウらしく現代を痛烈に皮肉っていて好きだった。人をレンタルすることで保てる関係性だってある。

2022/12/03

無駄なことを切り捨てていく薫。
無駄なものにこそ人の温かみが宿ると考える雪子。
きっとどちらの考えも間違っていない。
だけど交わることもない。
価値観の相違により少しずつ噛み合わなくなっていく2人の姿を追いかける表題作。
借り物で得られる安寧について考えさせられるレンタル世界。
読みやすい文章だけど、どちらも強烈だった。

2022/11/26

正確に書くと星3.8。
2つとも面白かった。
1つ目の話は、ありがちなこういう展開に行くのかと思いきや、意外な展開で続きが気になった。
2つ目の話は、単行本と文庫版でラストが違うらしく、単行本版の終わり方だと少しモヤモヤが残る気がしたが、文庫版では意外な展開になっており、面白く読み終えた。

2022/11/23

レンタル世界は短編でちょうど良かった。
この話があってからのままならないから私とあなた…じわじわと首を絞められていくような息苦しくなるような。今まで読んだ作品の中で1番他の人の意見を聞きたいと思った。なんともいえない面白さ。

2022/11/19

価値観の違いってどうしようもないんだなって思った。いくら仲良い心許した友人家族であっても。
最後の薫と雪子の言い合いのシーン好き。人間って感じで。
黒板消しのくだりは、ある人には重大な出来事であっても、ある人には日常の一コマにしか過ぎないんだなって思って。

人間関係をレンタルできるシステム、すごいなぁと思った。
それで結果オーライならそれはそれでアリだと感じた。

2022/11/16

ままならないよな人生
朝井リョウは現代を切り取って少し先の未来まで見る感覚が抜群に優れてると思う。実際今、2022年ではAIが絵を書き出した。それによって人間らしさ、みたいな部分が取り沙汰されてる。薫の言うようにまた新たな人間的なものが別のものに宿るのだろうか。

ラスト作った曲と薫が作ったソフトが作った曲がほぼほぼ一緒になる、みたいなことはまだしばらく起きないとは思うけど、起きそうでちょっとこわい。
ただあのシーンでは二人が今まで交わしてこなかった2人の、曖昧な、それこそままならない違いを吐露し知っていく。だからお互いショックだし、自分の人生を否定されたくなくて強い言葉で壁を作りたくなるのもわかる。なんだけど、あそこまで築き上げてきた関係だと、ネットに先行公開なんて形は取らないんじゃないかなって思うんだよな。
あ、でも雪子も今回に限っては1番最初に薫に見せたわけでは無いのか。いや、でもそれは雪子が心のどこかで薫との違いに気が付いてたからだと思うし、対して薫は自分が雪子のためにしてあげることが100パー善だと思ってやってる節があるから、あんまりあそこは整合性が取れない気がしちゃったんだよな。じゃないと展開は作れない気もしたんだけど。

2022/11/14

物語が進むにつれて少しずつ息が詰まっていき、最後にぐっと息の根を止められる。
2人があの後どうなっていくのか。

私自身新しいテクノロジー大好きで効率主義だけど、人とのつながりも大事にしたいみたいな、まさに著者から言葉で刺される対象であることを感じて溜飲が下がった。

レンタル世界の方はスカッとする話だった。

2022/11/13

どうしようもなくままならなかった。
自分の価値観と他人の価値観が出会う時、その違いを尊重できるようにお互いの世界に寄り添えればいいのだけれど、大切に思う人程、その違いにゆがみを生じさせてしまう。
正論と正論のぶつかり合いほど疲れるものはない。
でもそれは不幸なことではないような気がした。
ままならないことに向き合う時、いろんな形の世界とぶつかりながら本当に譲れないものが見えてくる。
人はその信念を頼りに正しいとも間違っているとも言えないこの世界に折り合いをつけていくんだろうな。この世界はどうしたってままならないのだから。

2022/10/23

なんか、スラスラ〜と読める一方で、普段感じていることを言語化することが難しい描写や感情まで言語化されていて、すげえと感じた。

自分とは違う「誰か」がいることで、自分を認識できる。人と違うことに怯える必要もなく、合わせる必要もない。自分と違う誰がいることは当たり前なのだと、この本を通して教えてくれた。
そして、自分とは違う考え方や価値観も持った人を否定するわけでもなく、そういう点も踏まえて、自分の考えや価値観を大事にし、自分に合ったものを周りに身に纏えばいいと思う。それは一度決めたら変えられないものではなく、違和感を感じる度に着替えればいい。

朝井リョウさんの作品はすごい好きだ。

2022/10/23

やっぱり、朝井リョウさん好きだ。

思考というか、言葉と言うか、凄く共感出来たり、引き込まれる。

凄い！

今作は、レンタル業の話から人間関係を描く。「レンタル世界」
人との付き合い方と言うか、分かり合えるとはと言えばいいのか。

そこを、こんな風に描き出して考えさせる。

そして、表題作の「ままならないから私とあなた」

それぞれの価値観。

どちらも違う価値観を持って、どちらも間違いではない。

どちらかに肩入れする気持ちもあるけれど、もう一方の方の気持ちも分かって。

こんな気持ち、考えを言葉にして描き出せるなんて、恐ろしくも思う。

誰かに読んでもらって、話し合いたい作品だった。