とめどなく囁く の商品レビュー
久々に桐野夏生の世界観に入り込んだ。登場人物のすぐ隣でシーンを観察するような距離感。いつもながら感情の機微を描くリアリティ性が高いため、臨場感がある。更に、ミステリー仕立て。登場人物に感情を重ね、一緒にモヤモヤする所から、読書を楽しめる。最高のエンタメだ。 真実は中々明かされな...
久々に桐野夏生の世界観に入り込んだ。登場人物のすぐ隣でシーンを観察するような距離感。いつもながら感情の機微を描くリアリティ性が高いため、臨場感がある。更に、ミステリー仕立て。登場人物に感情を重ね、一緒にモヤモヤする所から、読書を楽しめる。最高のエンタメだ。 真実は中々明かされない。いや、明かされるのかもここには記さないが、実際の人間社会においても、それぞれの主観、視点で事象が観察され、その認識を他人に伝える際には更に言葉に編集が為される。だから、隠したい事、言うべきでは無い事、言い換える事、嘘をつく事、会話はこうした加工を経た相互の文章で織り成される。桐野夏生は、登場人物から放たれる文章に対して、その加工する舞台設定が極めて上手いのだ。リアルな世界でも、その加工前の感情が全て透視できれば、イヤミスだらけである。従いその表現力をもつ作家の小説で見通せる人間模様は、自然とイヤミスになるのかも知れない。
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読みやすく面白かった。けっこうボリュームがあったけど2日で読めました。 あんまりスッキリするラストではなかったけど、読後感は悪くなかったです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とてもドキドキして読み応えがあった!!!もー、どうなるのか、ドキドキハラハラ、背筋がぞくぞく。 ネタバレなので、まだ読んでいない人は気を付けてくださいね↓ 主人公の早樹の夫は、8年前に突然行方不明になった。海に釣りに出たきり帰ってこなかった。洋上で船だけが見つかっている。遺体も見つからないまま、数年後に死亡認定され、早樹は心身ともに疲弊した末、父親ほど年上の年齢の男性と再婚する。 相手は実業家だが、妻を亡くし、引退することにして悠々自適な生活を送っている。 小説の最初の方は、年上の優しい男性との、少々気を遣い合いすぎている感じの穏やかな生活が描かれる。周囲からは、財産目当てだとか詮索され、更に傷ついたりもする。その状況で、これからの早樹の人生はどうなるのかな?この夫婦関係はどうなっていくのかな?というだけでもドキドキするのに、ある時、死んだことになっている夫を見た、という情報が入り始め、背筋がぞくぞく。情報源は義のお母さん(元夫の母)。お母さんはもちろん、突然息子を失って、死んだという確証も得られないままなので、主人公の早樹と同じように心を痛めているわけで、早樹も再婚したとはいえ義母を気遣ったりもするのだが、荒唐無稽な話に翻弄される。夫に打ち分けるわけにもいかない。 亡くした(はずの)夫、今の夫、自分と同じ年の夫の娘や嫁たちとの関係がいろいろ読み応えがある。 元夫が生きているかもしれない、だとしたら、なぜ自分の前から姿を消したのか?と考え始めた早樹が、夫の釣り仲間に話を聞きに行く。そして、結婚していたときの自分と夫の関係を見つめなおす。夫の釣り仲間から語られる話も興味深い。 夫はどんな人物だったのか。結婚していても、一人の人間のことをちゃんと理解することは何と難しいことなのか。ここも読みごたえがある部分だ。夫の釣り仲間が、それぞれに、それぞれのことを考えているのも興味深い。一番親切に思えた人物は編集者で、頼っていいのかと思っていたら、「このことを本にしてみませんか」と持ち掛けられる。じわっと絶望。 残りページ数が少なくなって、このまま夫の失踪の真相が明かされないまま終わるのか?と思うけど、良かった、ちゃんと真相は分かりました。 夫はやはり、自ら計画的に海で遭難したと見せかけて行方をくらましていたのだ。 何度か無言電話がかかってくる場面もぞくぞくするのだが、これは夫がかけてきているのだと確信した早樹が、何も答えない電話の向こうの相手に向かってしゃべり続ける場面もスゴい。そしてついに、感情が高ぶって、「どうして今頃でてくるの?そうだ、もう一回死んでください」と言ってしまう。なんともドロドロの感情に、読んでいる方も心がドロドロになりそうでした。 桐野夏生さんもともと大好きだけど、本作も素晴らしかったです!
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はぁ〜っ‼︎ 読後すぐの私の呟きは 「ひどい男だ…」です。私は女なので、やはり、主人公の早樹の気持ちに寄り添ってしまう。 それにしても、やっぱり私は桐野夏生さんが好きだ。毎度毎度、読み始めたら、勢いよく止まらなくなってしまう。二段組、445ページ、ちっとも長くは感じませんでした...
はぁ〜っ‼︎ 読後すぐの私の呟きは 「ひどい男だ…」です。私は女なので、やはり、主人公の早樹の気持ちに寄り添ってしまう。 それにしても、やっぱり私は桐野夏生さんが好きだ。毎度毎度、読み始めたら、勢いよく止まらなくなってしまう。二段組、445ページ、ちっとも長くは感じませんでした。 今作はある意味ミステリーでもあるけど、全編に流れる空気は、夫婦、親子、兄弟姉妹、そういう『家族』の形を考えさせられるお話です。ってか、『人間同士』の形……関係?かなぁ。 はたから、どんなに恵まれてるように見えても、その人個人の心の中は、結局、その人自身にしかわからない。 夫婦といえども、親子といえども、見えていると思っていても、相手の心の中は、全然見えていないのだと、それを痛感したのでした。 まあ、だから良いというのも事実ですよね。心の中だけは、人は自由なのだから。 けどなぁ…読後感じた思いは変わらない。(誰とは言えないけど)この男は酷いわ。 印象に残ったところを少し… ーーーーー もちろん、克典を愛し、尽くしたいと思うのは、早樹の本心だ。ただ、世間がそう見ないことに対して、鎧う気持ちがある。 悪意を持って人を見れば、いくらでも悪口を言えるものだ。 『空気を読めない人』といっても、他人への想像力に欠ける人間もいれば、その場の雰囲気に安易に合わせることを潔しとしない人間もいる。 すごいダメージを喰らったのに、弱った顔ができないから、平気なふりをして生きている。そのことに疲れたのね。 何でも少しは苦労した方がいいと思わない?だって、楽な人生なんてないもの。 私たちは、取り返しのつかない馬鹿なことをさんざんして歳を取取り、赦されないままに死んでゆくんだと思った。 無理を通せば、何かが壊れるのだということを知りました。
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それぞれの思惑と、ささいな行き違いは、最後に静かに落ち着くべきところに落ち着きます。海鳴りがずっと響いていて、読み終えてからも余韻が残りました。
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桐野さんの12冊目。上下2段、しかも444Pもあり正直大丈夫かと思ったけれどさすが、最後まで読ましてもらいました。。一人海釣りに出かけた夫が海上で姿を消し、7年後遺体無しとして葬儀もし、自分の両親より年上の資産家の男性と結婚したが元義母が姿を消した息子の姿を見たと言い出し・・・と...
桐野さんの12冊目。上下2段、しかも444Pもあり正直大丈夫かと思ったけれどさすが、最後まで読ましてもらいました。。一人海釣りに出かけた夫が海上で姿を消し、7年後遺体無しとして葬儀もし、自分の両親より年上の資産家の男性と結婚したが元義母が姿を消した息子の姿を見たと言い出し・・・という内容です。 400ページくらいまで読み進めて、残ページこれだけで収束するの?どんな結末?と思っていたらそのままぬるりと読み終わり。 これはうーん、という感じです。主人公の早樹があまり好きじゃない。
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とにかく不穏な空気漂う作品。 出入りの造園業者やそこで働く若者まで何か絡んでくるのかと思った。桐野さんだもの、何か事件が起こってドロドロしてくのかと思った。 実際は、事件が起こるというより、過去の事件がずーっと付きまとうって感じ。 海を一望できる高台の家、太陽がサンサント降り...
とにかく不穏な空気漂う作品。 出入りの造園業者やそこで働く若者まで何か絡んでくるのかと思った。桐野さんだもの、何か事件が起こってドロドロしてくのかと思った。 実際は、事件が起こるというより、過去の事件がずーっと付きまとうって感じ。 海を一望できる高台の家、太陽がサンサント降り注いでるはずなのに、それがみじんも感じられない。まとわりつく暗さ、あきらめ、みたいなのを感じる。 とにかく暗かった。さすがって感じです。 最後に一言、康介最低だろ。
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続きが気になってどんどん惹き込まれていきました。最後はちょっと驚きました。予想もしてなかったことを手紙で知ってこういうことだったのかと思いました。赦せないです。
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ジリジリとなかなか進まないストーリー。 細かな人物描写が頭の中で映像化して迫ってくる感覚。さすがです。 元夫が生きているのか死んでいるのか気になって、何度も後ろのページを開いてみたくなる衝動にかられてしまった。勿論、開かなかったけど。 元々は新聞連載小説とのこと。 これ、朝刊...
ジリジリとなかなか進まないストーリー。 細かな人物描写が頭の中で映像化して迫ってくる感覚。さすがです。 元夫が生きているのか死んでいるのか気になって、何度も後ろのページを開いてみたくなる衝動にかられてしまった。勿論、開かなかったけど。 元々は新聞連載小説とのこと。 これ、朝刊で毎朝読んでたら気になって仕方ないだろうな。
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この本を読んでいる間、 ずっと頭の中に波の音がしていた。 小説の世界にこんなに没頭したのは、 久しぶりかもしれない。 誰もが共感できるような、 ありふれた日常なんかではまったくないのに、 自分の暮らしとは似ても似つかないのに、 それなのに、圧倒的なリアリティがある。 目の前...
この本を読んでいる間、 ずっと頭の中に波の音がしていた。 小説の世界にこんなに没頭したのは、 久しぶりかもしれない。 誰もが共感できるような、 ありふれた日常なんかではまったくないのに、 自分の暮らしとは似ても似つかないのに、 それなのに、圧倒的なリアリティがある。 目の前に海が見える大きな庭のある家に、 自分もいるかのような錯覚を覚えた。 夫婦関係に悩む人は、 ぜひ読んでみて欲しい。
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