仕事選びのアートとサイエンス の商品レビュー
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読みやすかった。 哲学や歴史などから様々な引用や例えを持ってきていて、著者の教養の深さに驚いた。 以下印象に残った内容 ・「何になりたいのか」と「何をやりたいのか」は全く違う 問題解決が好きだという人に、普段の生活の中で常に問題の解決方法を考えている人は少ない。 放っておいてもやってしまう、人に話したくなる、そういうことが好きなことなのであって、憧れと好きを混同するのはよくない。 ・「いまの仕事、いまの人脈をまずは大事に」 このあたりで三段階の人脈について触れている。「いい偶然」をももたらすのは、育ち方など全てを知っている親友ではなく、仕事ぶり程度のことを知っている同僚たち。 ・「関連分野を固めて読む」 リーダーシップについての本を読んで、アムンゼンについての本を読む。 興味がある職業の領域の本を読む→好奇心のリトマス試験紙 ・「エモーショナル・サイクル・カーブ」 変革が始まると士気は高まるが、進むにつれて様々な障害が浮き彫りになる。 ここを乗り切れば再び上昇曲線になる。 ・「二つのリアリティ・ショック」 「『こういう仕事だとは思わなかった』という戸惑い」 →やりたい仕事の周辺作業、つまり雑用は決して無駄ではない。周辺作業からやりたい仕事の本質やコツが見えてくる。 「周辺、つまりコアの仕事ではない領域から参加することを通じて、コア領域の仕事に必要な知識を少しずつ学習していく」 もう一つが「社風や価値観の違いに基づく戸惑い」。フラットな上下関係の職場から、軍隊的な職場に移ると戸惑うのは当たり前。逆も然り。 転職時にはこの二つのリアリティ・ショックは必ず発生する。 このショックを認める、自覚的であることが大事。 そして違和感を、その組織が持っている文化や価値観をまずは受け入れることが大事。 ショックが生み出す下降曲線は長くは続かない。
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『美意識』が売れたから,『転職は寝て待て』を『アートとサイエンス』に改題して改訂版として出す。抜け目ないというか何というか。 全ては偶然としか言えないのですね。そこに必然としての,とは語れないのが現代における人文学の限界か。
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おりしも、会社がキャリアプランをどうのこうのと言ってきた時期だったので、読んでみた。 上司(=評価者)と、「もう50代にプランもなにもないだろ!」と意気投合もしたが、そんなサラリーマンの飲みの席でのヨタ話を、理路整然と語ってくれているようで溜飲が下がる思い。 天職は与えられるもの。 一見、受け身のようにも思えるが、そうではなく、与えられたチャンスをものにする、日々の努力と鍛錬の必要性を説いている、至極まっとうな本。
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そこらへんのキャリア論とは一線を画す内容です。「今すぐに行動しろ!」「計画を立てて実行しろ!」と言った既存の内容とは違い、筆者の独自の理論と理由に深く頷けます。自分のんかでは結構評価高いです。
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タイトルとカバーに惹かれて購入。 硬い内容なはずなのに どんどん読めてしまった。 筆者の意見にプラスアルファで 偉人の名言や名作のセリフが あることで内容が ストンと頭に落ちてくる。 読み進めていくとカバーの 『カラヴァッジョ 聖マタイの召命』が とても意味を持ってくる。 転職を...
タイトルとカバーに惹かれて購入。 硬い内容なはずなのに どんどん読めてしまった。 筆者の意見にプラスアルファで 偉人の名言や名作のセリフが あることで内容が ストンと頭に落ちてくる。 読み進めていくとカバーの 『カラヴァッジョ 聖マタイの召命』が とても意味を持ってくる。 転職を考えてる人も考えてない人も 一度は読んで転職について考える きっかけにピッタリ。
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山口周氏の本2冊目 山口周氏の解像度の高いロジカルな分析と引用文献のチョイスが心地よい。 過去に経験した転職の失敗の謎が解けてスッキリした。 キャリア形成で試行錯誤してきた中でぼんやりと見えつつあった方向性が言語化されて明確になった。
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深く広い知識と経験に裏打ちされた、他者や仕事への愛と尊敬に満ちたキャリア考察記。 いろいろあるけど、自分の人生を抱きしめ暖め、ともに生きていこう、と思える本。 今回もありがとう、山口周。
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■ひとことで言うと? 転職時には転職動機と失うものを十分意識せよ ■キーポイント ・コナトゥスとエイドス →コナトゥス:本来の自分らしい自分であろうとする力 →エイドス:自分の姿形や立場などの形相 ・人生を見つけるためには、人生を浪費しなければならない。 by アン・モロー・リンドバーグ →何が好きかはやってみないとわからない ・「好き」と「憧れ」 →好き≠憧れ →自分は何になりたいのか? < 自分は何がやりたいのか? ・内発的動機と外発的動機 →内発的動機:自分起因による動機(好奇心、使命感など) →外発的動機:外部起因による動機(報酬、ステータスなど) →その決定は本当に内発的動機によるものか? ・キャリア・アンカー →安定・バランス型、自律・挑戦型、管理型、奉仕型 ・平均への回帰 →状況は上昇と下降を繰り返す傾向にある →「耐える」も一つの戦略(あと半年待てないか?) ・自由とは? →自由には孤独と責任が伴う(自由のコスト) →自由のために一度不自由を受け入れる ・得るものと失うもの? →暗黙的に失うもの(社会的信用、保障、安心感など)も意識せよ ・課題先行型と好奇心駆動型 →課題先行型:与えられた課題を解決する →好奇心駆動型:自ら課題を設定し行動する →求められるスキルがまったく異なることに注意 ・エモーショナル・サイクル・カーブ →転職後の心は上昇局面と下降局面を経験する →「仕事に対するリアリティ・ショック」と「組織に対するリアリティ・ショック」 →過去の成功体験と決別し、今を受け入れる
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転職についての本であるけれど、転職以外にも応用できるような深い内容が多くがとても勉強になった。 冒頭に書いてある言葉「重要なのは著書が『何を言っているか』よりも『どのように考えたか』という点です」 が示すように、内容を鵜呑みにして暗記するのではなく、なぜそのように考えるか深く考...
転職についての本であるけれど、転職以外にも応用できるような深い内容が多くがとても勉強になった。 冒頭に書いてある言葉「重要なのは著書が『何を言っているか』よりも『どのように考えたか』という点です」 が示すように、内容を鵜呑みにして暗記するのではなく、なぜそのように考えるか深く考察することが重要で、この本からはさまざまな学びがあった。 その中で一つ心に残ったことをここに記録しておく。 「ロジカルシンキングは大事だけれど、適切な状況下でロジカルシンキングを捨てることがコアに求められる」 全て言語化してロジカルに考えがちであるが、それにこだわりすぎるとうまくいかないこも多い。 職業柄職場での悩み相談を聞くことが多く、職員同士のいざこざの仲裁をすることがあるが、大抵の場合はコミュニケーションエラー、特に言語化にこだわる人が言語化しきれない内容または人に対してイライラしているケースが多い。 ある程度相手の意図を汲んで溜飲を下げることも必要。かといって、何でもかんでも我慢すれば言い訳ではなく、絶妙なバランスでロジカルシンキングとそうでない場合とを切り替えることが大事なのだろう。
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楠木建先生との対談「仕事ができるとはどういうことか」が面白かったので、借りてみた。予想通り面白かったし、共感できた。 仕事選びを予定調和させることはできない。 自分をオープンに保ち、いろんなことを試し、しっくりくるものに落ち着くしかない。 スタンフォード大学の教育学...
楠木建先生との対談「仕事ができるとはどういうことか」が面白かったので、借りてみた。予想通り面白かったし、共感できた。 仕事選びを予定調和させることはできない。 自分をオープンに保ち、いろんなことを試し、しっくりくるものに落ち着くしかない。 スタンフォード大学の教育学・心理学の教授であるジョン・クランボルツは米国のビジネスマン数百人を対象に調査を行い、キャリア形成のきっかけは、80%が「偶然」であるということを明らかにしました。 リスクをとらずにぶどうの房がもがれるのをただ眺めていた人たちは、後になって、「あのぶどうはきっと酸っぱいに違いない」と話し合って自分を慰めたりします。 こういった人たちが囚われる羨望と嫉妬と劣等感が複雑に入り混じった感情を、デンマークの思想家セーレン・キルケゴールはルサンチマンと名付けました。 ニーチェは著書の中で、ルサンチマンを持つ人々は非常に受身で自ら変化を主導しない(できない)ため、「他人と同じである」ことに最大の価値を見出す、つまり他人と同じであることを「道徳的」と見なすようになると述べています。 例えば、筆者の生業であるマネジメント・コンサルティングという仕事について考察してみると、世間一般的にはロジカル・シンキングの能力が大変重要と見なされています。 確かにロジカル・シンキングの能力はもちろん必要なのですが、それは必要条件のごく一部に過ぎず、コアに求められるのは、適切な状況下でロジカル・シンキングを捨てられるということなのです。コンサルティング業界で活躍している人は、このバランス感覚が絶妙なんですね。 さらに重ねて指摘すれば、職種のタイトルではなく、そもそもの仕事内容が「好き」という場合、長い期間にわたって継続的に努力できる、という強みがあります。これがなぜ強みになるかというと、長期的な努力は才能を帳消しにするからです。 それでは、キャリア形成につながるような「いい偶然」を引き起こすためにはどのような要件が求められるでしょうか? …五つのポイントを挙げてみましょう。 ・好奇心=自分の専門分野だけでなく、いろいろな分野に視野を広げ、関心を持つことでキャリアの機会が増える ・粘り強さ=最初はうまくいかなくても粘り強く続けることで、偶然の出来事、出会いが起こり、新たな展開の可能性が増える ・柔軟性=状況は常に変化する。一度決めたことでも状況に応じて柔軟に対応することでチャンスを掴むことができる ・楽観性=意に染まない異動や逆境なども、自分が成長する機会になるかもしれないとポジティブに捉えることでキャリアを広げられる ・リスクテーク=未知なことへのチャレンジには、失敗やうまくいかないことが起きるのは当たり前。積極的にリスクをとることでチャンスを得られる 私は、この基礎的な戦闘力を「プロセッシング」と「ストック」の二つに分けて考える必要があると思っています。 プロセッシングとは「入力された情報を何らかの形で処理して出力する能力」を、ストックとは「自分の中に蓄積された付加価値の源泉となる知識やノウハウ」を意味しています。例えば、典型的にはロジカル・シンキングが前者に当たり、経営のケース・スタディに関する知識は後者に当たります。 訓練を積まなければ楽器を自由に操ることはできない。一方で、訓練を積めば積むほど不自由性をも同時に獲得せざるを得ない、というパラドックスが存在するのです。 これと同じことがビジネスの領域にも言えます。会社に依存しないで生きていけるような「自由さ」を獲得するためには、人生の一時期に逆に隷属的に仕事に支配されることで、「自由に生きるための力」を獲得しておく必要があります。 私の経験で言えば、それは間違いなく20~30代の前半の時期です。この時期にどれほど密度の濃い職業人生を送れるかで、それ以後、どれくらいの自由度を持ちうるかが変わってくると思います。
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