騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編(下) の商品レビュー
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村上春樹作品の主人公(大抵の場合、僕)は大体同じようなキャラクター(クラシックやジャズが好き、料理が好き、読書が好き、色んな女を抱く、などなど)だなと思っていて、恐らく村上春樹本人(あるいは村上春樹にとっての理想像)がモデルだろうと勝手に思っていて、今回もそんなキャラクターだった。というところから、考えて、ひょっとして絵を描くことと小説を書くことというのは似てるのかなと。 例によってちょいファンタジー要素もあり、ちょいミステリー要素(いつも通り解決しない謎多数)もあり、最近の村上春樹っぽい長編作品でした。
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個人的な考えとして、いい小説の定義の一つに、「終盤に向けて自然に読むペースが上がる」というものを感じている。 村上春樹の場合、それは「思わずページを繰ってしまう」というよりも、「強烈な力でページを繰’ら‘さ’れ‘て’し‘ま’う‘」という方がしっくりくる。 本作もそうだった。 フィクションは大別すると「現実の世界を基盤にしながらも架空である」場合と、「全く現実では起こり得ない架空である」場合との二つになるが、本作は完全に後者である。荒唐無稽とさえ言える。 しかし、この作品にはそれが必要だった。荒唐無稽であることが強’く‘要’請‘さ’れ‘て’い‘た’のだ。 現実にはあり得ない世界。しかし、ほんとうに起こってしまいそうな感覚にも襲われる。多分、何処かにはこんな世界がある。ぼくたちhそれを信じたほうがいい。
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久しぶりの村上春樹長編小説。文庫化を待ってようやく。 突然妻から別れを告げられた36歳の肖像画家が主人公。 おんぼろの愛車で北日本をさまよった後、小田原郊外にある著名な日本画家の家に暮らすことに。 認知症が進行し今は高齢者施設に入っているその画家は、《騎士団長殺し》という謎めいた作品を天井裏に隠すように残していた。 そして主人公はその絵と出会うのだがーーというようなお話。 一見、淡々と進んでいく物語。けれど、その流れには底知れぬ深さがあって、濁流というか、急流というか、激しさや穢れやキラキラした何かがまじりあって渦巻いているかのよう。 それは、絵を描くという創作行為に必要なパワーであり、出来上がった創作物の持つパワーと強く結びついている。 文章を書くことと、絵を描くこと、の違いはあれど、作者の「創作」に対する考え方や感じ方が垣間見えて面白い。 物語の中で起こる出来事は非現実的、かもしれない。 けれど、人の心の中には、謎めいた森や秘密の通路があることをなんとなく理解しているから、抵抗なく受け入れられるのかな。 そういう謎めいた森や秘密の通路があることを物語を通じて気づかせてくれる、それが村上作品の魅力なのだと思います。
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最近は仕事の関係で暫くドラッカーを読んでいたので、半年以上積ん読になっていた。 村上春樹が好きなので読み耽った。満足した。
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『騎士団長殺し』とは絵の名前 小説の中で絵の描写が多数出て来る 確固たる構図を求めても無いのかもしれないが、作者の描写を読み続けるうちに自分の中で騎士団長殺しという絵が出来上がってしまった。 村上春樹の卓越した言い回しは健在で日常的に使う事は出来ないかもしれないが少し...
『騎士団長殺し』とは絵の名前 小説の中で絵の描写が多数出て来る 確固たる構図を求めても無いのかもしれないが、作者の描写を読み続けるうちに自分の中で騎士団長殺しという絵が出来上がってしまった。 村上春樹の卓越した言い回しは健在で日常的に使う事は出来ないかもしれないが少し賢くなった気持ちにしてくれる。 ちょうど良い長さの作品でした。
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私は騎士団長がとても気に入っていたので、彼の退場がとても残念だった…が、必要な犠牲と言うことで 秋川まりえが失踪していた間のシーンが、私はとても気に入りました。私も、免色さんの家がどうなっているか気になっていたし。 あの「開かずの間」にあった衣服は、言うまでもなく秋川まりえの母...
私は騎士団長がとても気に入っていたので、彼の退場がとても残念だった…が、必要な犠牲と言うことで 秋川まりえが失踪していた間のシーンが、私はとても気に入りました。私も、免色さんの家がどうなっているか気になっていたし。 あの「開かずの間」にあった衣服は、言うまでもなく秋川まりえの母のもので、騎士団長が「護ってくれる」と言ったシーンがとても好きでした。 クローゼットを開けられてしまうかも知れない、身体中が心臓になったようなドキドキとした気持ち… まりえが握っていたワンピース…何となく、ワンピースから母の娘を護る気持ちが感じられた… 前も書いたと思うけど、今までの村上春樹作品よりも読みやすいと思う。 4巻あったけど、その割にさらっと読めると言うか、気負わずに読めるというか。 また時間を置いてゆっくり読もう
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(少なくとも主人公視点だと)わからないことはわからないことのまま、という感じ。 考察しやすい作品なのかな?読み込み足りてないのかなー、というしこりが残る。
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作者本人は嫌がるでしょうが、いつものムラカミ・ワールドが提示されています。 長年の読者は、この世界観にひたすら浸っていけば、それなりに楽しめるでしょう。これまでと変わらず筆力も冴えてるので、質・量ともに安定しています---と書くと、何だか新鮮味に欠けるようですが、そんなことは全...
作者本人は嫌がるでしょうが、いつものムラカミ・ワールドが提示されています。 長年の読者は、この世界観にひたすら浸っていけば、それなりに楽しめるでしょう。これまでと変わらず筆力も冴えてるので、質・量ともに安定しています---と書くと、何だか新鮮味に欠けるようですが、そんなことは全然なく、これまでどおり面白く読めるということです。 個人的に興味を惹かれたのは、『1Q84』で描かれた妊娠は、今作に至っては・・・という展開で、作者の心境の微妙な、しかし確実な、変化が起こっているように感じ取れたことです。
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全編を通じての感想。 これまでの村上春樹作品と比べると、村上春樹的なエッセンスを浅く広くすくい取って編み出したような作品に思える。長編小説の前作「1Q84」に比べると、明らかにあっさりとした味付けに感じた。 村上春樹自身はこの作品を「村上春樹入門」のようにするつもりで書いたので...
全編を通じての感想。 これまでの村上春樹作品と比べると、村上春樹的なエッセンスを浅く広くすくい取って編み出したような作品に思える。長編小説の前作「1Q84」に比べると、明らかにあっさりとした味付けに感じた。 村上春樹自身はこの作品を「村上春樹入門」のようにするつもりで書いたのではないか。 まるで、ベテランのロックバンドが、若い新しいファンを獲得するために自分たちの「色」を少し薄めて、分かりやすくして送り出した楽曲のようだった。 そのような意味で、初心者が初めて試す村上春樹、としてはある程度よくできた作品に感じるけれど、重厚で長大な小説を期待して読んだ自分には少し肩透かしを食らったように感じたね。 ノーベル賞候補になるほどの70歳のベテラン作家に、新しい読者を獲得するような試みが果たして必要なのかよく分からない。 細かいところで残念だったところは2点。 村上作品によく出てくる、物語の本筋とは直接関係のない説話(「1Q84」のギリヤーク人のエピソードなど)が少なく、また印象に残るものがなかった。 余計な一言、と思うような表現がいくつかあった(電話機で写真を撮ることについてのくだりなど)。 反対に、個々の比喩の表現は相変わらずさすが、と思うもの多数。美しく希望があって前向きで読後感はよいけれど、「村上春樹ってやっぱり売れたいんだな…」とも思う一作。
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開いてしまった環、それに伴って起こるイベント。イデアである騎士団長や数々のイベントこそがメタファーなのかもしれない
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