カッコーの歌 の商品レビュー
舞台は第一次大戦後の英国。池に落ちて意識を失っていたトリスが目覚めると、「あと七日」という声が聞こえる。両親は心配しているが、妹のペンは、偽物だと言う。徐々に記憶を取り戻すが、それと共に何かが違っていると感じる。そして突然襲ってくる猛烈な空腹。食べても食べても収まらない。いったい...
舞台は第一次大戦後の英国。池に落ちて意識を失っていたトリスが目覚めると、「あと七日」という声が聞こえる。両親は心配しているが、妹のペンは、偽物だと言う。徐々に記憶を取り戻すが、それと共に何かが違っていると感じる。そして突然襲ってくる猛烈な空腹。食べても食べても収まらない。いったい自分に何が起こっているのか? 英国の昔話に出てくる「取り替え子(チェンジリング)」をモチーフに取り入れたサスペンスチックなファンタジー。前半は、決してトリスを受け入れないペンだが、後半はともに戦い冒険する。 取り替え子をモチーフにした小説や映画はあるが、主人公が取り替え子というのは珍しいのでは。何しろ、本当の子ども(この場合本当のトリス)が戻ってくるという事は、取り替え子の自分がいなくなるという事。そこをどうするのかがドキドキだった。昔話に出てくる「とめどなく食べる」とか「卵の殻で湯を沸かす」とか「暖炉に放り込むと煙となってしまう」とか、うまく取り込んでいる。そして、それを知っている読者は、取り替え子本人がどうなるのかが限りなく心配になる。 よくできていた。一緒に取り替え子の昔話をお勧めしたい。
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池に落ちてから記憶を失い、自分はどこか変わってしまった。なぜ、どのように?いじわるな妹は言う、お前は偽者だと。そうして「少女」は不可思議な出来事に巻き込まれていき、自分の真実を知ることになっていき、とある選択を迫られる―― という正当かつ骨太なファンタジー小説。読み応えがっつりあ...
池に落ちてから記憶を失い、自分はどこか変わってしまった。なぜ、どのように?いじわるな妹は言う、お前は偽者だと。そうして「少女」は不可思議な出来事に巻き込まれていき、自分の真実を知ることになっていき、とある選択を迫られる―― という正当かつ骨太なファンタジー小説。読み応えがっつりありました。隣接し、侵入してもいる異世界の描き方が魅力的で、かつ難解ではなくセンスに溢れていて「少女の成長と逃亡の物語」に豊かな背景を与えている。 わりとすぐに明らかになる主人公の正体は、だからこそ彼女がだんだんと苦悩していく様子がわかる。そして、いけ好かない関係だった妹と心を通わせ、亡き兄の婚約者の協力を得て、局面を乗り切っていくうちに、育んでいく絆にたいしていとおしさとそれが故の苦しみを重ねていくのがキリキリと胸に迫ってくる。 そして異形の少女がいとおしく、蜘蛛の糸の涙をかけがえのないもののように感じる。ただの無機物が、いのちを得て、感情を得て、そして希望を持っていく姿がとても眩しいし、応援したくなる。だからこそ世界はすばらしい。逃避行の果てのその言葉の尊さを、しんどく生きる私たちにはあまりにも煌めきすぎていて、羨ましくも感じる。そう思える純粋さを、いつしかなくしてしまったものだから。 少年少女にぜひ読んで欲しい物語でした。児童文学レーベルで、分冊で発刊しても、きっと支持を得られるのではないかなと思ったりしました。
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「嘘の木」が最高だったので、こちらも読んでみました。 これもいいですね。最初からドキドキさせます。 不気味さ、人間性、親子、いろんな要素が詰まっています。
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ドファンタジーなので、私的にはついていきにくかったです。えー、と思いはじめたらもうダメ。嘘の木が好きかなあ。
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作られたものが心と意志を持ち自分を見い出していくトリス,偽トリス,トリステ,見えている世界と重なり合うもう一つの世界の謎.自分の存在とトリスの救出をかけて,その世界に9歳の妹のペンと立ち向かう姿にドキドキハラハラした.そして,助けてくれるパリシュの人間としてのまっとうさ心意気に惚...
作られたものが心と意志を持ち自分を見い出していくトリス,偽トリス,トリステ,見えている世界と重なり合うもう一つの世界の謎.自分の存在とトリスの救出をかけて,その世界に9歳の妹のペンと立ち向かう姿にドキドキハラハラした.そして,助けてくれるパリシュの人間としてのまっとうさ心意気に惚れました.ただの冒険譚ではなく成長譚であり,家族のあり方世界のあり方について考えさせられる物語でもあった.
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何が偽りで何が正しいのかわからない。 でも明らかに何かがおかしい。 そんな不安な心境と不穏な状況があいまり わたしの好奇心はビンビンに刺激された! そして主人公トリスの隠された真相に そうくるとは!と、ワクワクが止まらなかった。 …だけど終盤につれてその勢いが弱まってしまった気が...
何が偽りで何が正しいのかわからない。 でも明らかに何かがおかしい。 そんな不安な心境と不穏な状況があいまり わたしの好奇心はビンビンに刺激された! そして主人公トリスの隠された真相に そうくるとは!と、ワクワクが止まらなかった。 …だけど終盤につれてその勢いが弱まってしまった気がするんだよなぁ… クライマックスの盛り上がりに欠けるというのか。 そんで家族の問題もいまいち解決していない感が… 掌を返すように態度を改めるのはベタすぎだろうけど 変化の兆しを感じるエッセンスが欲しかった。 とはいえ、その世界観は魅力的だったので 次作『嘘の木』も読んでみようと思ってます。
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「7日だよ。あと7日。」 舞台は20世紀初頭のイギリス。主人公の少女トリスは冒頭から違和感や不調、絶え間ない飢餓と日時を告げる謎の声に悩まされる。 破られた日記帳。自分を「偽物」呼ばわりする妹。死んだはずの兄から届く手紙。不思議な事態が次々と彼女の周りにおこりはじめ、トリスは...
「7日だよ。あと7日。」 舞台は20世紀初頭のイギリス。主人公の少女トリスは冒頭から違和感や不調、絶え間ない飢餓と日時を告げる謎の声に悩まされる。 破られた日記帳。自分を「偽物」呼ばわりする妹。死んだはずの兄から届く手紙。不思議な事態が次々と彼女の周りにおこりはじめ、トリスは段々と事件の渦中に自ら足を踏み入れていく。 前作、嘘の木が徹底した現実の中に一つ「嘘の木」というファンタジーを投げ込んで見事なミステリーに仕上げたなら、こちらはファンタジー世界の中に現実的なサスペンス要素を豪快に投入し、見事な融合を果たした一冊。 最初は軽めで始まる読み口は、だんだんとテーマ性を帯び琴線に触れる重さでもって結末まで疾走していく。恐ろしい作家が訳された、と前作に続き自信を持って言える傑作。
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ファンタジーというよりホラーやんけこわいぃぃぃと読み進めたらちゃんとファンタジーでした。面白かった~。
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『嘘の木』が傑作だったので、期待しつつあえてハードルを上げて読んでみたら、あっさりと飛び越えてしまった。 『嘘の木』がファンタジー要素を軸にした謎解きミステリであるのに対して、本作品はサスペンスの手法を組み込んだファンタジー色の濃い作品。だが、抑圧された主人公がアイデンティティ...
『嘘の木』が傑作だったので、期待しつつあえてハードルを上げて読んでみたら、あっさりと飛び越えてしまった。 『嘘の木』がファンタジー要素を軸にした謎解きミステリであるのに対して、本作品はサスペンスの手法を組み込んだファンタジー色の濃い作品。だが、抑圧された主人公がアイデンティティを獲得すべく、覚悟して世界に飛び込む成長の物語というメインテーマは共通している。 物語の舞台は、第一次世界大戦が終わって間もない1920年のイギリス。事故に遭って記憶があやふやな主人公の思考に寄り添うように、読んでいるこちらも手探り状態で進むことになる。理不尽な境遇に戸惑いながらも、覚悟を決めて立ち上がる主人公の脱出劇からの疾走感がハンパない。思惑だらけの周囲の人間に翻弄されながらも、進まざるを得ない主人公と、彼女に迫るタイムリミットの対比が絶妙で、サスペンスファンタジーとして読ませる技にまんまとハマってしまった。 ダークな色彩のファンタジーだが、姉妹ものとしても読みごたえがある。私自身、姉妹ということもあり、注意深く繊細に描かれた姉妹の物語は幾度となく胸に響いた。読後の余韻で比べれば、『嘘の木』よりもこちらが上回る。がしかし、不慣れなファンタジーの世界観への読解力の自信のなさから満点評価とはいかなかった。 この作者の描く少女たちは素晴らしいと思う。次回作もどんな成長物語に出会えるのかと思うと、今から楽しみで仕方ないなあ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
一歩踏み出したらそこは万華鏡の中だったみたいな、めくるめく展開。 戸惑う彼女の動揺が焦る気持ちが怖さが流れて同調してしまう。 とても面白い反面、ダークな部分がわたしに語りかけ、何度も恐ろしかった。
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