燃えよ、あんず の商品レビュー
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下北沢。本屋。死別。家族。結婚。 下北沢の書店主が綴った物語。 久美ちゃん達に対する由良の仕打ちとか、久美ちゃんと父親の関係とか、カッとなって切って捨ててしまいたくなるけど、決してそうしないのすごいな。
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下北沢の本屋の不思議な常連さんを中心に様々な人間模様が描かれる。 後半桃子さんの運転とオペラと獅子虎さんと…混乱を極めるところはなかなかスピード感があって引き込まれた。 獅子虎さんの生い立ちに納得させられたり、由良さんの悪趣味がスパイスを効かせていたり、なかなか面白い作品だと...
下北沢の本屋の不思議な常連さんを中心に様々な人間模様が描かれる。 後半桃子さんの運転とオペラと獅子虎さんと…混乱を極めるところはなかなかスピード感があって引き込まれた。 獅子虎さんの生い立ちに納得させられたり、由良さんの悪趣味がスパイスを効かせていたり、なかなか面白い作品だと思った。
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下北沢にあるこだわりの本屋「フィクショネス」を舞台に本屋の主人オサムさん、妻の桃子さんと、一癖も二癖もある常連たちの織りなす優しさ溢れるそれでいて、結構ディープな物語。 ーーありふれているように見える出来事には、それを支える長い年月と、幾人かの人間がいて、その人間というのは一人ひとりが、独自の心やおもむき、過去や精神の疵、喜びや歪みを抱えているのだーー という「前口上」どおり、みんなのアイドルだった「久美ちゃん」を中心に、彼女が長い苦労の末に結ばれる「マサキくん」、子供の頃マサキくんを棄てた父「獅子虎」、そして彼らを取り巻くすべての「ぽんこつたち」の「独自の心」を描く群像劇でもある。 中心にいるきれいな心を持った人物を取り巻く、優しい人たちの物語という意味で「世界で一番美しい」を彷彿とさせる。「世界で・・・」で雪駄くんに対してひたすら悪意をぶつけた津々見に匹敵する由良さんは、相当嫌な人物だけど、この物語では彼が最後に改心する場面にグッとくる。 笑って、やきもきして、ホロリと涙して、最後に来る大団円。よかったね~と思った後に「え、まだあるの?」といった風情で書かれたエピソードも「何これ、必要?」と思いながらも読み進めると、最後の最後で「そうだったのか~!」とじわっと涙が・・・ とにもかくにも、藤谷さんの明るくて、楽しくて、それでいて文学的な物語は年始に読むにピッタリの作品でした。 あ~楽しかった。
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著者らしい良い話。この著者は実生活に寄り添った話の方が良く、本作も自信が経営する書店が舞台のモデルになっている。面白いのだけれど、不思議な人々がたくさん出てきて、やや消化不良との感じもある。最終章はちょっと余計か?他の人の分もあっても良かったかも。
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下北沢の書店を営むオサムは小説を書く。お店に来てくれている久美ちゃんについて。久美ちゃんは結婚をするがまもなく不幸にあい姿を消す。お店の別の客とともに10年後、お店に訪れる。久美ちゃんがマサキくんという男性と結ばれるまでを描きます。そしてマサキくんのお父さんについての章もあり。オ...
下北沢の書店を営むオサムは小説を書く。お店に来てくれている久美ちゃんについて。久美ちゃんは結婚をするがまもなく不幸にあい姿を消す。お店の別の客とともに10年後、お店に訪れる。久美ちゃんがマサキくんという男性と結ばれるまでを描きます。そしてマサキくんのお父さんについての章もあり。オサムさんの語り口調もおかしく、楽しく読めました。登場人物はどれも癖のある人たちで物語を盛り上げています。みんな久美ちゃんを応援しているんだという暖かさが伝わってきました。なんだろなあ、本全体で温かさを感じた。お父さんの獅子虎は良かったなあ。カルメンが素敵です。藤谷さんの他の本読みたくなった。
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藤谷さんの小説を読むと、「こんな生き方をしたいな」とか「こんな人になりたいな」と思うことがある。 それは、人生においてのいわゆる勝ち組であったり、絶対的な権力の持ち主であったり、絶世の美女であったり、なんてのとは全く違う、なんていうか、とても丁寧な生き方というか、自分のそばにいる大切な人をきちんと大切にする人生、というか。 ちょっと不器用で、ちょっと変わり者で、でも自分の足でしっかり歩いている、その自分の近くにいる誰かをきちんと受け入れる、そんな登場人物たちにこっそりとあこがれてしまう。 今作も小さな世界でちいさな幸せのために一生懸命になっている人たちの小さなおせっかいと小さな思いやりに読後こころが茜色に染まった。明日きっといい日になる。そんな思いでページを閉じた。
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オサムさんと桃子さん夫妻のやりとりに何度も笑ってしまった。 最後のある人物の人生についての部分を読み始めて、これはいるのだろうか、と思いつつ読み進めていって最後まで読み終わるとこれがあるかないかだとまったく違うものになるんだ、と思った。 「父性」によって子どもたちが右往左往し、悩...
オサムさんと桃子さん夫妻のやりとりに何度も笑ってしまった。 最後のある人物の人生についての部分を読み始めて、これはいるのだろうか、と思いつつ読み進めていって最後まで読み終わるとこれがあるかないかだとまったく違うものになるんだ、と思った。 「父性」によって子どもたちが右往左往し、悩みを抱えてそれをどう昇華するか受け止めていくの話でもあるし、書店・フィクショネスという場がコミュニティとして機能することで血縁でもないなんとなくの顔見知りの関係が、誰かにとっての居場所だったり交流の場所になるというのも作品の中に描かれていた。 場所というのは本当に大事だし、そこでできるコミュニティというものも誰かにとっては大事なもの。ただ、場所はいつかなくなるし、ずっと同じということはない。コミュニティも続きながらも変化しいつか終わる。 この小説を読むと自分が前にいた居場所のことや、今いる居場所について考えたり思ったりすると思う。そこには誰がいて、どういうことがあったのか、なんていうことも。
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