樹木たちの知られざる生活 の商品レビュー
最近樹々や菌類の相互依存とか、総体としての森の生態系といった特集ドキュメンタリーが制作されたが、その原点はこの本かと思われる。種をこえた樹々のコミュニケーションや危機に直面した際の化学物質の分泌過程など興味深い話がいっぱい。水不足におちいると悲鳴をあげるなど、動物とはかけ離れたあ...
最近樹々や菌類の相互依存とか、総体としての森の生態系といった特集ドキュメンタリーが制作されたが、その原点はこの本かと思われる。種をこえた樹々のコミュニケーションや危機に直面した際の化学物質の分泌過程など興味深い話がいっぱい。水不足におちいると悲鳴をあげるなど、動物とはかけ離れたありようではあるが植物も生き物であることがよくわかる。林業は効率よく木材を生産するために木の成長が止まったところで伐採してしまうが、木の寿命の観点から考えると、ちょうど成年期に達したところで切ってしまうようなもので、健全な森にはもっと壮年老年の木も必要であるというのは新しい気づき。親に光を遮られて遅く成長する木の方が丈夫な木になるというのも示唆に富む話だと思った。
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いつぞや高橋源一郎が紹介していて気になっていた本。ガーデニングがマイブームの今読んでみた。 樹木について、まさに知らなかったことがたくさん書いてあって、とても興味深い。木ってこんなに「生き物」だったのか! ・木は齧られると味を変えて抵抗する ・木は内部で小さな音を出している ・ブナは仲間と根で栄養を分かち合っている ・海の近くから森があるおかげで雨が降る。森が続いていないと雲にならない ・木の寿命は1万年にもなることがある ・移植されたり枝を切られた木は弱まる。森の中で日陰をお互いに作るから木は長生きする 翻訳の本にありがちなんだけど、ちょっと読みづらかったので、読み切るのに時間がかかった。機会があればまた読み返したい。
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ペーター・ヴォールレーベン(1964年~)は、ドイツのボン生まれ、大学で森林学を専攻した後、ドイツ西南部のラインラント=プファルツ州の営林署に20年以上勤め、その後、フリーで森林の管理を行う。 本書は、長年森林の管理をしてきた著者が、豊富な経験と科学的知見をもとに、森林と樹木の生...
ペーター・ヴォールレーベン(1964年~)は、ドイツのボン生まれ、大学で森林学を専攻した後、ドイツ西南部のラインラント=プファルツ州の営林署に20年以上勤め、その後、フリーで森林の管理を行う。 本書は、長年森林の管理をしてきた著者が、豊富な経験と科学的知見をもとに、森林と樹木の生活について綴ったエッセイ集。2015年に出版され、全世界で100万部を超えるベストセラーとなり、2017年に出版された邦訳(2018年文庫化)も、多数の新聞書評で絶賛された。 私は、30年近く前に数年間ドイツで過ごしたことがあり、そのときにドイツ国内の各地を訪れたが、ドイツは、南部のアルプス沿いを除いて険しい山地がなく、また、地方分権的な体制となっているために巨大な都市もなく、全土がなだらかな丘陵と森林に覆われているという印象であった。そして、ドイツ人は、休日に郊外の森を家族で散歩することが、この上なく好きであった。 本書を読んで、まず頭に浮かんだのは、上記のようなドイツの森の様子とドイツ人の行動パターンなのだが、同時に、知らなければ見過ごしてしまう樹木たちの姿や行動に納得し、ドイツ人があれほど森が好きなのは、おそらくこうした知識を子供の頃から家族に徐々に教わり、それによって森に愛着が増していくからなのだろうと思った。 また、ページをめくりながら、以前読んだ、植物が生き延びるための様々な“すごい”能力・仕組みを紹介した、田中修『植物はすごい』を思い出したのだが、そうした能力・仕組みは、植物が能動的に身に付けたわけではなく、偶々生じた(突然)変異で、生存に有利な形・生態が自然選択され、その膨大な積み重ねによってそうなったものだ。(そう言ってしまうと、身も蓋もないのだが。。。) しかし、著者は本書で、そうした科学的な事実を、樹木を人間に、森を人間社会に喩え、あたかも人格があるかのように描くのである。これは、著者の樹木に対する優しさ・愛情があってのもので、読んでいてとても心地よいし、本書を類書と画する最大の特徴だろう。 今後、樹木のある公園や森を歩くときに、周りを見る目や心持ちが変わることが間違いない、好感度の高い一冊と思う。 (2024年6月了)
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森、樹、植物への見方ががらりと変わる一冊。森の中に生きる樹木がお互いに会話(交信)をしていること、例えばある種の害虫が近づいてきたら防御を張れるようにフィトンチッドや電気信号を送る、など 倒れた木、苔、根、菌糸のつながり。。そして人間とは全く異なる悠久たる時の流れがあることを知る...
森、樹、植物への見方ががらりと変わる一冊。森の中に生きる樹木がお互いに会話(交信)をしていること、例えばある種の害虫が近づいてきたら防御を張れるようにフィトンチッドや電気信号を送る、など 倒れた木、苔、根、菌糸のつながり。。そして人間とは全く異なる悠久たる時の流れがあることを知る。感慨深い ぜひ、本書を読んだ人は低山でもいい、ブナなどの原生林が残る山に出かけてみてほしい。まったく違った風景が見えるはずだ
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ドイツの森林管理をしている筆者がよく木を観察することで気づいた不思議や木、森の生態について語っている。 情報が多いので読むのに時間がかかったが、生きている森の生態に驚かされる。自分が見てきたのは植林地の森ばかりではなかったかと感じた。 筆者の関わる営林地では木に配慮し、伐採し...
ドイツの森林管理をしている筆者がよく木を観察することで気づいた不思議や木、森の生態について語っている。 情報が多いので読むのに時間がかかったが、生きている森の生態に驚かされる。自分が見てきたのは植林地の森ばかりではなかったかと感じた。 筆者の関わる営林地では木に配慮し、伐採した木を運び出すのに馬を使うのだという。 このような配慮をしている所が日本には、あるのだろうか。 ドイツでは営林地の5%には、今後一切手を加えないと決め、ドイツの憲法には「動物、植物、および他の生体を扱う時にはその生き物の尊厳を尊重しなければならない」と記されているらしい。 動植物の隔てなく道徳に扱うべきという考えは日本では、行き過ぎと捉える向きもあると思うが、その前に植物、木、森のことを私たちが知らなさすぎるということもあるだろう。 樹木は痛みを感じ、記憶もありそれを蓄積するのは脳とも言える根っこ、仲間が出す音を聞き、親子が一緒に暮らし、切り株といえど、近くの樹木から根っこの先の菌糸を通じて栄養を受け取っている。 同じ森では、そこにある木の光合成量が同じ 仲のいい木は友達の方向に必要以上に太い枝を伸ばさない。 これらは人の手の入っていない森でのみの現象のようである。植林地では植林時に根が傷ついてしまうので、植物のネットワークが拡げられないという。 植林された木が、なんとなく感情のないサイボーグのように感じてしまう。ある程度育ったら刈り取られる野菜のようだ。 よく森を守る活動をしている人が、森は人の手を入れないと荒れてしまうという話を聞くたびに人間のエゴではないかと違和感を感じていたが、天然の森林ではなく植林地のことだろう。 人の手によって植樹された木は気候や土地に合わない木を植 えられると樹木の墓場と化し荒地に変わってしまうという。 大規模伐採された森や嵐の後の森に裂け目ができ、そこに色とりどりの植物が入り込むと種の多様性が向上したと言って喜ぶ自然保護活動家もいるが、逆で、森林内の植物種が産業利用によって増加すればするほど自然の生態系の乱れがひどくなるという調査結果もあるという。 なんとなくジブリの映画「もののけ姫」を連想してしまう。 死んでしまったシシガミは元には戻らない。 自然保護活動家が言うからそうなのだろうと思ってしまうが、表面的な事象だけを捉えるのではなく、森全体として長い目で見た時に、それは本当によろこぶべきことなのかどうかという視点が必要だと感じた。 面白かったのは以下の部分。 木の言葉 キリンに葉っぱを食べられたアカシアはエチレンガスを発し、周りの仲間に危険を知らせる。 キリンもそれを知っているので、警告の届いていない木や風上の木に移動する。 害虫の種類もかじられた唾液の成分で分かる。 かじられると毒性成分を出し身を守る →植物とそれを食べる生き物たちの攻防が面白い。しかもメッセージ伝達に電気信号も使われているという。 ただ、人間が栽培する植物は会話能力を失っているので害虫に弱い。 年を取るほど生長が早い 広葉樹が葉っぱを落とすのは、 冬の強風、雪から身を守るため。 木にも個性があって同じ環境にあっても葉を落とすタイミングが木によって違う。 →思いもしなかった。ただ日当たりの良しあしだけだと思っていた。 街路樹は、森から離れて身寄りを失ったストリートチルドレンに例えられている。森とは違って、若い頃は枝を伸ばし放題だが、太い枝は切られると根にまで影響し生長できない。 コンクリートに阻まれ根を拡げたくても硬くて拡げられず、アスファルトの熱、汚染物質、乾燥、水や養分をサポートしてくれる菌もあまりおらず、犬のおしっこで腐食し、夜中の人工の光などで死んでいく。 →木を擬人化しすぎだとは思わなかった。 街路樹って強いなと思っていたが、よく生きているなと思わずにはいられない。 この本を読むと、人間は様々なものを利用し尽くしていると思った。森に人の手が入って、いいことは一つもないじゃないかとすら感じる。 自然の森たちは助け合っているのだから、私たち人間も助け合って生きようという上辺だけのスローガンに、森の樹木たちの生き方を利用して欲しくないと思ってしまった。 「森林は資材の自動販売機ではない。 樹木は人間に使われることを目的として、ただそこにあるのではない。感情を持ち社会的な生活を営む生き物である」 という筆者の言葉と、原生林を守ることの大切さが、この本を読むとよくわかる。
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科学的な正確性のほどはわからないが、多くの引用を明示する姿勢は好感が持てるし、何より木々への愛情が感じられる たまたま花見の前に読んだために花よりも桜の枝ぶりに目が行くようになった 木々への見方が格段に深くなるそんな素晴らしい本であった
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自分の森林についての知識の浅さに驚くくらい初めて知ることが沢山あった 木々が会話をしたり同種の木と助け合ったりしているなんて思いもしなかった。 また現在多くの国で行われている植林や街中の緑化運動は一見とても良いことに見えるけど実際は本物の原生林とは環境が違いすぎて、それらの木々は...
自分の森林についての知識の浅さに驚くくらい初めて知ることが沢山あった 木々が会話をしたり同種の木と助け合ったりしているなんて思いもしなかった。 また現在多くの国で行われている植林や街中の緑化運動は一見とても良いことに見えるけど実際は本物の原生林とは環境が違いすぎて、それらの木々は原生林の木々と比べて成長にかなりの差が出ることも驚いた。 人間は歴史の中で最も簡単に木々を伐採し農地や街を拡げてきたけど、それを元に戻すのは単に木を植えればいいだけでなくて、とてつもない時間がかかるものなんだなと実感……。 日常でよく使う木製のものといえば私の中では紙とか割り箸とかなんだけど、なるべく再生紙などのリサイクル品を使ったり、無駄遣いを無くそうと思えた。 日本はドイツとかなり紀行が異なるから森に足を踏み入れるハードルが高いけど、この本でよく出てきた木たちを実際に見に行ってみたくなった。
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木同士が香りで会話をするなんて知らなかった。虫や菌の侵略により身の危険を感じると葉の成分を変化させて身を守り、さらに香りや根のネットワークを使って周りの仲間に危険を知らせることまで出来るなんて想像もしなかった。木は本当に生きているし、人間が思っている以上に仲間と繋がっている。そん...
木同士が香りで会話をするなんて知らなかった。虫や菌の侵略により身の危険を感じると葉の成分を変化させて身を守り、さらに香りや根のネットワークを使って周りの仲間に危険を知らせることまで出来るなんて想像もしなかった。木は本当に生きているし、人間が思っている以上に仲間と繋がっている。そんな仲間からはぐれた街路樹をストリートチルドレンと名付ける著者のセンスには脱帽である。木に関する様々な知識を、著者の木への愛を持って科学的に教えてくれる良書。
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※このレビューにはネタバレを含みます
・あらすじ ドイツの森林管理官が書いたタイトル通りのノンフィクション。 ・感想 まさか樹木たちがこんなに多様性に満ちあふれそれぞれ個性にあふれた生活をしていたとは知らなかった。 これから街路樹や山の木に対して、ほんのちょっとでも彼らの生活を洞察するという視点で見ることができるようになる…かもしれない。 登山が趣味なので、樹木のことをもっとたくさん知ることができればより楽しくなるだろうなと思った。 自然とはどういう状態なのか、やるべきこと、やらなければならないことなど色々考えさせられた。
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森林エコロジーの知見とともに、森林を少し擬人化し分かりやすく伝えてくれる。原生林は考えられているより奥深い、植物も道徳的に扱うべきだと訴える。
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