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文系と理系はなぜ分かれたのか の商品レビュー

3.7

59件のお客様レビュー

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2024/07/17

昨今では、「文系理系という枠組みはなくしましょう。欧米はそんなものないのだから。」という謳い文句で、文理の融合化が進められているようだが、一向に進まないらしい。なぜできないのか、理由は、想像以上に複雑であった。まず、欧米と日本を二項対立で捉え、批判する前に、欧米ですら、文理の壁に...

昨今では、「文系理系という枠組みはなくしましょう。欧米はそんなものないのだから。」という謳い文句で、文理の融合化が進められているようだが、一向に進まないらしい。なぜできないのか、理由は、想像以上に複雑であった。まず、欧米と日本を二項対立で捉え、批判する前に、欧米ですら、文理の壁に悩まされているという現状を知った。どうやらこの問題は一筋縄ではいかないようだ。

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2023/10/23

文系と理系の学問としての成り立ちと現在、主に日本とアメリカの産業界との関連について書かれている。 自然科学、人文社会学、社会科学の歴史については、本書で説明されているのは西欧における歴史であるので、イスラム社会や日本以外のアジアなど他地域での歴史を他書で補わないと全貌はつかめない...

文系と理系の学問としての成り立ちと現在、主に日本とアメリカの産業界との関連について書かれている。 自然科学、人文社会学、社会科学の歴史については、本書で説明されているのは西欧における歴史であるので、イスラム社会や日本以外のアジアなど他地域での歴史を他書で補わないと全貌はつかめないという点で注意が必要。 各国の時勢における各学問の扱いについてはこれまで意識してこなかった内容であり、重要な気づきがあった。

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2023/04/24

文系、理系の分かれは、比較的最近であり、また、各国で違いがある。学問史といえる流れはとても興味深い。 学問のヒエラルキーの中で、工学はヨーロッパではあまり高くないが、大学制度が日本に入ってきたタイミングと、富国強兵のタイミングが重なったことで、東京帝大は工学部が作られ、これが世界...

文系、理系の分かれは、比較的最近であり、また、各国で違いがある。学問史といえる流れはとても興味深い。 学問のヒエラルキーの中で、工学はヨーロッパではあまり高くないが、大学制度が日本に入ってきたタイミングと、富国強兵のタイミングが重なったことで、東京帝大は工学部が作られ、これが世界初の国立大学の工学部だった。ほ~。

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2024/03/14

近代大学の成り立ちにかなりのページを割いている分厚い論説。文系の学問は王族や支配階級が牛耳っていたこともあって学問としては新しいというのが意外。 1910年頃の日本は、当時の高等学校が文科と理科に分かれていた。富国強兵からの国を豊かにして欧米列強と渡りあっていくために実学と産業...

近代大学の成り立ちにかなりのページを割いている分厚い論説。文系の学問は王族や支配階級が牛耳っていたこともあって学問としては新しいというのが意外。 1910年頃の日本は、当時の高等学校が文科と理科に分かれていた。富国強兵からの国を豊かにして欧米列強と渡りあっていくために実学と産業振興が優遇された流れがあって、そこに戦争の影響が感じられた。 今後は文理融合の学際系がますます増えていくのかなと感じた。

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2023/02/01

わたしは自らを典型的な文系人間と思って生きてきたが、近年は生物学や量子力学などに関心を持つようになっている。正直それらの本を読んだところで本当に理解したともいえないし、そもそもなぜそうなったのかも自分でわかっていない。そんな中、文系と理系がなぜ分かれたのか、というタイトルに惹かれ...

わたしは自らを典型的な文系人間と思って生きてきたが、近年は生物学や量子力学などに関心を持つようになっている。正直それらの本を読んだところで本当に理解したともいえないし、そもそもなぜそうなったのかも自分でわかっていない。そんな中、文系と理系がなぜ分かれたのか、というタイトルに惹かれて一気に読んだ。 話しは中世の大学の成り立ちから始まる。宗教革命で、新たな学問の地平が生まれ、神から解放された自然科学が興隆する。人間を理解しようと人文科学も生まれる。 やがて産業革命を経て、近代以降の戦争もあり、産業界のニーズに応える形で学問も変容していく。いわゆる理系優位の潮流が訪れる。 ジェンダー論のくだりもいかに自分が偏見を持っていたかを思い知らされて新鮮だった。 大きな流れでみると、学際化や統合の動きもあるが、より分かれる逆のベクトルもある。歴史は一方向に行くわけではないのだ。何となく文系人間のわたしが今に至った理由がわかった。 最後にあった、諸学問の中には「人間」をバイアスの源と捉える傾向と、「人間」を価値の源泉と捉える傾向が併存しています。という表現は納得した。違いが活かせてこそ、補い合うことができる。集合知が発揮できる、そう思うことから一歩が踏み出せる、はまさにその通り。ネットの分断が指摘される現代こそ筆者のような姿勢の重要性は増すと感じた。

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2022/12/30
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気軽に読める文庫サイズながら、なかなか中身の濃い本。「なぜ〇〇は××なのか」系のタイトルの本は普段、あまり手に取らないのだが、ちょっと気になって読んでみた。 まずは序盤、「文系と理系」という定義そのものについて、しっかりページを割いて検討していて、単純に二項対立として捉えていた文系、理系という区分が、実はけっこう深い歴史と経緯を経てのものだったことが分かる。学問の発展の歴史を知りたい人は、2章ぐらいまでを読むと面白いと思う。 3章は産業界と理系、文系の関わりについて。学生時代によく言われていた「就職に有利な理系」というイメージが実際にはどのようなものか、それは事実なのか虚像なのかなどについても語られている。 4章はジェンダーと文系、理系。「男性はどのように理工系に引き寄せられ、女性はどのようにそこから遠ざかるのか」といったあたりは非常に興味深い。本来は男性と女性で有利、不利な学問というのはないはずで、イメージや先入観というものが如何に悪さをするのか、というのが良く分かる。 終章では、今後、変容していく学問領域の区分や、文系理系の区別がどのように変化していくと思われるのか、その展望が述べられている。2018年の刊行時点の推論なので、これをあと20年ぐらい寝かせておいて、2040年あたりに再読してみると、また面白いかもしれない。

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2022/09/17

政治に迷ったときにどうすべきか、生活で迷ったときにどうすべきか、そういうときには常に教皇庁が回答していたから(=精神的な支配)、文系(社会科学)の学問は育たなかったらしい。キリスト教がいかに生活に入り込んでたかってよくわからないから驚き。

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2022/07/03
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※このレビューにはネタバレを含みます

王権神授説に対するマキャベリの『君主論』やホッブズの「社会契約説」は、政治と宗教の切り離しとして歴史上の意義がある。そして、自然科学と人文社会学が宗教や王権から自立していく方向性の中で、a.神の似姿である人間の五感や感情からなるべく距離を置き、「客観的」に物事を見ようとし、人間をバイアスの源とする理系 b.神と王を中心とする世界秩序から離れ、人間中心の世界秩序を追い求め、人間を価値の源とする人文社会系に分かれた。 日本の新卒一括採用においては、大学卒業後に企業に所属し、実務訓練を受けて一人前の職業人になることが前提のため、学生からすると「職業のための必要な教育を企業で受けられる」ため、大学院の必要性が薄くなる。一方、新卒一括採用がない海外の国では、新卒v.s.院卒や中途採用者となるため、能力の高い院卒や博士卒の給料が高くなる。 「どこまでの学位を持っているか」より「どの大学を出たか」を重視する日本の学校歴重視の価値観はポジティブに捉えれば「大学さえ出ていれば、学歴上の格差が比較的小さく、学位や専攻により職業選択の幅がさほど狭くならない」が、ネガティブに捉えれば「高度な教育を受けた人材を活かせる産業が育たない社会」で「専門スキルを持つ人より国内の特定の大学卒業者が過度に優遇される不平等な社会」である。

Posted byブクログ

2022/03/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

タイトルの問いに対して歴史的、性差などの視点で考察。 著者自身が述べているように最後まで読んでも明確な解答はないが読みものとしては面白い。

Posted byブクログ

2022/02/22

・理工系、人文社会系諸学問が共に何らかの権威から自立することで近代的な学問となった ・人間はバイアスの源であり、価値の源泉でもある ・マジョリティの価値観に浸っているために自らの政治性が自覚できていない状態のことを、『中立』という名で呼び変えていないか などなど、今まで考え...

・理工系、人文社会系諸学問が共に何らかの権威から自立することで近代的な学問となった ・人間はバイアスの源であり、価値の源泉でもある ・マジョリティの価値観に浸っているために自らの政治性が自覚できていない状態のことを、『中立』という名で呼び変えていないか などなど、今まで考えたことのない視点を多数提示してくれた、内容の濃いものでした。 

Posted byブクログ