最初の悪い男 の商品レビュー
初ミランダ・ジェライ。 読んだこともないのにリディア・デイヴィスと同列のように思っていたのは岸本佐知子訳だからなのか。 予想以上に変な話でした。 43歳独身のシェリルをはじめ、登場人物がみんな〝痛い〟。シェリルの妄想についていけなくて最初の数章は読み進むのに苦労しました。...
初ミランダ・ジェライ。 読んだこともないのにリディア・デイヴィスと同列のように思っていたのは岸本佐知子訳だからなのか。 予想以上に変な話でした。 43歳独身のシェリルをはじめ、登場人物がみんな〝痛い〟。シェリルの妄想についていけなくて最初の数章は読み進むのに苦労しました。 その後の急展開から俄然話がおもしろくなって後半は一気読みしたんですが、中盤で予想外のハッピーエンドにしないところがまた。 ミランダ・ジェライ自身、この長編の前に、インタビュー集『あなたを選んでくれるもの』を出版していたりする人ですが、シェリルとクリーの関係は「フェミニストの連帯」を軽く超越してしまうので、どう受け止めていいのか。 彼女はすごい遠回りして自分の妄想を実現させたようにも思えるけれど、これは彼女が望んでいたことなのかどうか。最後まで奇妙な読後感が残りました。 以下、引用。 183 ミーティングがお開きになると、スーザンとわたしは給湯室で黙って紅茶を淹れた。わたしは彼女が会話のきっかけを作ってくるのを待った。わたしが紅茶をひと口飲む。彼女も紅茶をひと口飲む。しばらくしてわたしは気がついた。これが会話なんだと。今まさに、わたしたちは語り合っているのだ。 261 ときどきわたしは彼女の寝顔を、その息づく肉を見て、命あるものを愛することの心もとなさに身がすくんだ。目の前のこの人は、水がなかなっただけで死んでしまうのだ。植物に恋をするような危うさだった。 262 「たしかに。しかしこの子が走れるかどうかは、走ってみるまでわからない。子供というものはそういうもんです」 「なるほど。将来、ですか」ドクターの顔にふっと影がさした。「お子さんが将来ガンになるかどうか知りたい? あるいは車に轢かれるか? 躁鬱病になる? 自閉症になるかどうか? ドラッグ中毒になる? それは何ともわかりません、私は超能力者じゃないのでね。子供をもつとはそういうことなんですよ」 268 睡眠不足と寝ずの番とひっきりなしの授乳、この三つのコンボは、じわじわと、でも確実に古いワタシを型にはめて、新しいワタシ──すなわち母親──に成形するための、一種の洗脳だ。 293 ぼくにとっていちばん大事なことはまちがいなくこれだよ、こういうことをぼくは人生の中心に据えたい。 虹を? 虹と、虹みたいなものぜんぶ。 虹に似たものなんてないのよ。虹に仲間はいないの。虹みたいなものは、この世に虹しかないの。
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すごストーリーだ… いろんな人間のいろんな面に笑わないで向き合うことが得意なのか…? フィクションだからアレなんだけど、みんな外面普通でも案外己の「システム」を大事にしながらズレながらヒステリー球かかえて生きてるんだろうな~というちょっとした救いみたいなものをかんじたり
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43歳独身女性の妄想強めの現実世界。 20歳の居候が入り込んできて、日常がどんどん変わってしまう。 妄想がリアルだけど、現実がそれを超えて広がっていく。
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途中妄想と現実の区別がつかなくなってきて、どこまで行くねん…と思ったけど、やっぱ私はこのタイトルのセンスが好きだな。最初の悪い男。
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60代の役員フィリップを前世で夫だったと慕い、クベルコ・ボンディと呼ぶ少年と結ばれる運命にあると信じ、家事の手間を極端に省くシステムを実行し、現実を回避する為に感情を切り離した結果、喉に心因性のしこり(ヒステリー球)を持つ40代前半のシェリル。上司の20歳の娘で怠惰で不潔で足が臭...
60代の役員フィリップを前世で夫だったと慕い、クベルコ・ボンディと呼ぶ少年と結ばれる運命にあると信じ、家事の手間を極端に省くシステムを実行し、現実を回避する為に感情を切り離した結果、喉に心因性のしこり(ヒステリー球)を持つ40代前半のシェリル。上司の20歳の娘で怠惰で不潔で足が臭く暴力的なクリーが居候として住むようになると彼女の「尖った部分を取り除いた快適な生活」は破壊され、生身の戦いが始まり、現実の生活に引き摺り出される。二人は最初は反発するが、クリーのゲームを察したシェリルは磁極を反転させ求め合うようになる。 著者の意図は理解できないまま、後半のシェリルの人生を読み終え「生まれようと欲するものは一つの世界を破壊しなければならない。」というデミアンの言葉がふと浮かんで来た。
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ずっと気になってたミランダ・ジュライ。 U-NEXTのポイントは書籍に使ってくことにしたので、 初の長編小説という今作を読んで見ました。 いや〜マジでよくこんな話を思いつくなと。 もうひたすら面白かったのは2人が取っ組み合いを始め、 そしてビデオを模倣して絡み合うようになる展開...
ずっと気になってたミランダ・ジュライ。 U-NEXTのポイントは書籍に使ってくことにしたので、 初の長編小説という今作を読んで見ました。 いや〜マジでよくこんな話を思いつくなと。 もうひたすら面白かったのは2人が取っ組み合いを始め、 そしてビデオを模倣して絡み合うようになる展開。 結局、ここでクリーがふいに口にするセリフが 意味深なタイトルになってるとこも本当にイケてる。 シェリルは私の頭の中で完全にエイミー・アダムスだった。 たぶん「メッセージ」の印象かな。 シェリルが自己完結してて閉じてる故に 押しの強いクリーやフィリップスに対して受動的であることが 結果的に頭のおかしい展開を作り出し、 ある意味、夢見てたものを得る結果になる。 ぜんぜん自分と属性の違うシェリルなのに、 まさにその受動性や自分の確信が揺らぎ、 他者に巻き込まれて納得してく感じに 切なさややるせなさを感じつつも、 確実に強くなってるとも思えるからおもしろい。
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”43歳独身シェリルの孤独な箱庭的小宇宙に、美人で巨乳で足の臭い20歳のクリーが転がり込んできて…” 【帯】この時点でクリーの最高さが分かる(笑) クリーの最高レベルは想像以上であり、この女二人の生活を覗き見した先の展開には、胸を打たれるものがあった。 中でも、シェリルとクリ...
”43歳独身シェリルの孤独な箱庭的小宇宙に、美人で巨乳で足の臭い20歳のクリーが転がり込んできて…” 【帯】この時点でクリーの最高さが分かる(笑) クリーの最高レベルは想像以上であり、この女二人の生活を覗き見した先の展開には、胸を打たれるものがあった。 中でも、シェリルとクリーのバトルシーンはとにかく可笑しい。暴力的描写はあまり好みではないけど、岸本佐知子さんも何処かのインタビューで言われていたとおり、”女同士が暴力を振るい合うシーンはなかなかない” この部分を読み想像した時に気づけば笑ってしまっている。ドラマの好きなシーンを戻してエンドレスで観てしまう要領で何度も読み返してしまう。 孤独なもの同士が触れ合うことで、いい意味でもわるい意味でも変化させられる、その面白さを存分に楽しめる本だった。
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予備知識なしで読んだ。自分が普段わりと静かな作品を読むので、最初は面食らった。少年漫画さながらのバトルシーン。途中一瞬任侠感のある言い回しも出てきて、海外小説で任侠って、と笑えた。 それにシェリルの妄想の産物、クベルコ・ボンティなる奇妙な赤ん坊。千と千尋の神隠しの坊みたいで、登場...
予備知識なしで読んだ。自分が普段わりと静かな作品を読むので、最初は面食らった。少年漫画さながらのバトルシーン。途中一瞬任侠感のある言い回しも出てきて、海外小説で任侠って、と笑えた。 それにシェリルの妄想の産物、クベルコ・ボンティなる奇妙な赤ん坊。千と千尋の神隠しの坊みたいで、登場するたびに坊がしゃべってるように思えてならない。 シェリルの奮闘は滑稽でエキサイティングで勢いでどんどん読み進められる。怒涛の出産シーンにはハラハラした。 ジャックには深い愛情を注いでいるがほとんど自分の内で対話しており現実には話しかけていなかった、とシェリルが気づいたとき、読者である私も、シェリルの内側(ほとんど妄想)から現実を見ていることに気づいた。 エピローグのジャック視点から見る2人に、なんだか泣けた。良かったねシェリル。
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一番ここに似合う人、あなたを選んでくれたものに続いて。こんなに1人の人の著書を読むのは久々。人があえて文字にしたり口にしたりしないような人間のどろっとした事や世界の一部を冷静かつプッと笑っちゃうような表現でひとつの作品にしちゃうのがこの人のすごいところ。動物の鳴き声が「たすけて」...
一番ここに似合う人、あなたを選んでくれたものに続いて。こんなに1人の人の著書を読むのは久々。人があえて文字にしたり口にしたりしないような人間のどろっとした事や世界の一部を冷静かつプッと笑っちゃうような表現でひとつの作品にしちゃうのがこの人のすごいところ。動物の鳴き声が「たすけて」に聴こえてもその動物にとっては全く違う意味かもしれないし、とか。しょーーもないんだけど確かに真理だと思わせられる面白い表現がいっぱい。端的に書こうと思えば全然書けそうなことを良い意味でダラダラ書いてて、でもそのどうでもよさに登場人物たちの生活を感じる。短編もドキュメンタリーも面白かったけど長編は読み終わってこのミランダジュライワールドの人達とお別れするのが寂しくなった。
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「ミランダジュライに共感する」と認めるのは自分には大きな敗北なんであるが、何を根拠に敵認定して土俵(一人相撲)に上がっているんだ自分わ、と考えた。共感力吸引力包容力母性。本の女性主人公42歳にすごい共感させられてしまって、十分に自分は手綱を閉めてるつもりなんだよ。しかし好意を持っ...
「ミランダジュライに共感する」と認めるのは自分には大きな敗北なんであるが、何を根拠に敵認定して土俵(一人相撲)に上がっているんだ自分わ、と考えた。共感力吸引力包容力母性。本の女性主人公42歳にすごい共感させられてしまって、十分に自分は手綱を閉めてるつもりなんだよ。しかし好意を持っている男性に匂わされたりなんかして振り回されてない振りを演じつつ、やっぱり一人相撲だった所なんかねー。ししゃもの頭位にげえな。イタい女表記されるも、自分もイタさではトゲニャンと争っている位なので、よくわからなかった。
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