最初の悪い男 の商品レビュー
ある種妄想の世界に生きる43歳の女シェリルと、その前に現れる最強最悪の「現実」クリー。よくある女性2人の分かり合いの物語ではなくて、変化、変化、変化。2人の関係はひたすらに変化し続ける。避ける、闘う、愛し合う、あらゆる剥き出しの感情の表出だ。そして見えていないものが見える。職場の...
ある種妄想の世界に生きる43歳の女シェリルと、その前に現れる最強最悪の「現実」クリー。よくある女性2人の分かり合いの物語ではなくて、変化、変化、変化。2人の関係はひたすらに変化し続ける。避ける、闘う、愛し合う、あらゆる剥き出しの感情の表出だ。そして見えていないものが見える。職場の人物。セラピスト。恋愛。あまりにも入り組んでいて話の流れとして読みやすいとはいえないけれど、最初に感じたあまりの嘘くささ(現実との乖離)から、最後には滅茶苦茶な現実が輝く。エピローグの輝かしさ。 主人公にどことなく共感してしまう。ぜんぜん違う性格だし考え方も違うけれど、その人生回避の姿勢に。しかし彼女はぐちゃぐちゃではありながら走り抜けた。素敵だ。
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netflixのドラマのようにゴクゴクと読んでいけちゃう喉ごしでありながら、しっかりと人間のアブない深淵を覗かせてもくれる一冊。笑い、泣き、慄きました。 個人的に一番キてるな〜と思ったのは、シェリルが玄関でカタツムリ百匹ぶちまけながら自慰にふけってしまうシーン。その後人間同士の関係は驚くべき変化を遂げていくのに、カタツムリは後半に至ってもまだ屋内を這っていたりする。また、クリーが去った後もしばらく彼女の搾乳したミルクがジャックに与えられ続ける描写などもあって、一瞬で変化する物事とマイペースに連続性を保った物事との対比が面白く、もの悲しい。 奇妙な筋立てにリアリティーを与える細かな描写もいちいち印象に残った。「いまやわたしたちはいっしょに救急車に乗り、内側からサイレンを聞いた仲だった」とか、「これは政府が国じゅうの出産中の女たちのために配布した道具だ」とか、本当にそういう経験した人からしか出て来なそうな表現で感心してしまう(馬鹿みたいな感想ですが)。 子育て中の身にとっては、夜中の授乳時に自分の人生の可能性について思いを馳せてしまうシーンが、男であっても共感せずにはいられない。訳者あとがきによると本作は妊娠中から出産の三年後まで執筆されていたようだから、これらのシーンの異様な説得力にも納得できる。
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Amazing! と言いたくなった。笑えて切なくてホロッと最後は泣きそうになるエンディング。ページターナーでした。43歳女性が66歳シングル男性に密かに恋してる所から始まるけど日本の恋愛市場ではオワコンの年齢だ。その主人公シェリルの人生がそこからあれよあれよと、ここどこ?私誰?な感じでスピーディーにモノクロからカラフル人生に変わっていく。一番印象に残ったのはやはりsexual fantsies性的妄想やその描写があからさまなんだけど、ちっとも下品ではないとこ。「おりもの」だなと分かるって新鮮だった。おっぱいが垂れてるとか陰毛に白髪とかウケるけどいくつになっても恋してるっていいなと思う。タイトルはクリーの事らしい。本当に素敵な物語だった。
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43歳独身妄想女シェリルの家に、上司の娘クリーが転がりこんできたことで起きた人生の奇跡。 精神的に余裕がないと辛い。人間ってどうしてこうも残酷で単純な生き物で、また美しいのだろう。 シェリルの妄想はリアルだ。欲求や理想をこれでもかと見せつけ、私の脳内にまで踏み込んでくる。 サプラ...
43歳独身妄想女シェリルの家に、上司の娘クリーが転がりこんできたことで起きた人生の奇跡。 精神的に余裕がないと辛い。人間ってどうしてこうも残酷で単純な生き物で、また美しいのだろう。 シェリルの妄想はリアルだ。欲求や理想をこれでもかと見せつけ、私の脳内にまで踏み込んでくる。 サプライズでシェリルと読者を困惑させる。守るべきもののおかげで、なんとか前へ進むのだが。 幸福とは変化なのか?理想の追求なのか? この結末は正しい。そう納得するしかないのは私の器の問題。 タイトルの意味を理解した時、やはり正しいと再認識するだろう。
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『いちばんここに似合う人』を読んだ時にはついていけなかった、一種の奇妙さを、今は少し楽しめるようになった。OK、まあこんなこともあるよね、というふうに。 母性に自然に目覚めるのではなくそれを獲得する物語でもあるし、妄想に囲われた世界の「最初の悪い男」から抜け出す物語でもあるし、シ...
『いちばんここに似合う人』を読んだ時にはついていけなかった、一種の奇妙さを、今は少し楽しめるようになった。OK、まあこんなこともあるよね、というふうに。 母性に自然に目覚めるのではなくそれを獲得する物語でもあるし、妄想に囲われた世界の「最初の悪い男」から抜け出す物語でもあるし、シェリルが何度も奇妙な方法で脱皮して新しい自分になっていく様子が面白かった。それも過去と決別するやり方ではなくて、すべてが繋がっていながら少しずつの変化なのが心地よかった。 ただ性的な描写があまりに多かったのはウッてなってしまったな。
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何度も挫折しそうになったけれど、こんなはずじゃないと言い聞かせながらなんとか読み切った。けど、正直言ってきつかった。疲れた。なんなんでしょう、生理的に無理とでも言いましょうか。。ごめんなさい。
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ミランダジュライ「最初の悪い男」https://www.shinchosha.co.jp/book/590150/ 読んだ。全く好かない内容だったんだけどラストシーンがウルトラスーパー素晴らしくて、それだけでそこまでの全体を補って余りある。あれだな、子供が欲しい女性ってのは自分...
ミランダジュライ「最初の悪い男」https://www.shinchosha.co.jp/book/590150/ 読んだ。全く好かない内容だったんだけどラストシーンがウルトラスーパー素晴らしくて、それだけでそこまでの全体を補って余りある。あれだな、子供が欲しい女性ってのは自分が必要とされた(くてそれを実感した)いんだな。結局エゴ(おわり
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ミランダ・ジュライは、「人生はビギナーズ」の監督マイクイルズの妻。彼女の初長編であるこの作品は、中年女性シェリルの元に飛び込んできた、上司の娘、20歳のクリーとの物語。傍若無人なクリーとの関係は、二転三転して予測がつかない。かなりファンキーな展開かつ、シェリルの空想話が混ざってく...
ミランダ・ジュライは、「人生はビギナーズ」の監督マイクイルズの妻。彼女の初長編であるこの作品は、中年女性シェリルの元に飛び込んできた、上司の娘、20歳のクリーとの物語。傍若無人なクリーとの関係は、二転三転して予測がつかない。かなりファンキーな展開かつ、シェリルの空想話が混ざってくるので、かなり独特な読後感。何が言いたいんだか、よくわからないが、気の利いたエピローグでなんとなくすっきりする。
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人生とは肉弾戦だったと、こんなにはっきり突きつけられて清々しい。 意表を突くタイトルも巧妙な角度から作品を浮き上がらせる象徴性で、手練れの技につくづく感じ入った。この言葉だけで、血気溢れるこの物語のことを、私たちはすぐに思い出せるだろう。
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これまでの人生で当たり前のように内在化してきた自分自身の「価値観」や「倫理観」が思いがけない方向からぶんぶんと揺さぶられる。散々振り回されてへとへとになるのに読後感は人と人が愛しあうことへの祝福に満ちている。不思議な一冊。
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