土 地球最後のナゾ の商品レビュー
土壌学を専攻し、土を求めて世界を巡る。時に不審者として職務質問され、時にトレジャーハンターに間違われる著者。少し前にラジオ出演していたの聞いた記憶がある。全人類100億人を飢餓から救う壮大な目標! 12種類の土の研究は、いきおい農業と密接なつながりを持つ。日本の土は結構肥沃だと思...
土壌学を専攻し、土を求めて世界を巡る。時に不審者として職務質問され、時にトレジャーハンターに間違われる著者。少し前にラジオ出演していたの聞いた記憶がある。全人類100億人を飢餓から救う壮大な目標! 12種類の土の研究は、いきおい農業と密接なつながりを持つ。日本の土は結構肥沃だと思っていたが、火山灰と腐植が堆積した酸性の黒ぼく土という分類になるという。畑は、確かに苦土石灰での中和が必要だし、肥料を施さなければ作物がうまく育たない。水田は、水を張ることで中和されるという視点が得られた。カテゴリは自然科学へ。
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大学時代に少々勉強した土壌学であったが、現実の問題に触れ(園芸も始めて)、改めて勉強すると非常に奥深い。人生学びを深めていくと、知りたいことが山程出てくる。 持続可能な食料システムへの転換、そして土壌中への炭素固定の問題など、これから土壌学はますます重要になりそう。
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土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて 著者 藤井一至(かずみち) 2018年8月30日発行 光文社新書 地球温暖化のニュースで流れる氷河が海へと倒壊する映像は、氷河が成長して押し出された縁の部分が陸地の支えを失って崩壊しているだけで、温暖化で融解しているわけではない。 この本で最も印象に残る一文。バブル象徴映像として、バブル崩壊後にオープンしたジュリアナ東京の映像が流れるのに似ている。 著者は、土の研究者で、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員。NASAが本気で目指す火星への入植。注目される火星の“土”よりも、100億人を養える足もとの土の可能性にもっと注目してもらいたい。 学会定義:土壌とは、岩の分解したものと死んだ動植物が混ざったもの。 土の黒色の正体は「腐植」で、火星の土にはない。腐った植物だが、落ち葉や枯れ草や根といった植物遺体に限らず、動物や微生物の遺体やフンも材料となる。 火星の表面は凍っているが、かつて存在した水や酸素により粘土が存在。しかし、腐植がない。だから土壌ではない。月は砂であり土ではない。 熱帯雨林の本には、豊かな森の下の土壌は薄く脆弱で伐採すると不毛化すると書いてあるが、それは落葉層、腐植層に限った話で、土そのものは深い。伐採すると土はレンガと化し、不毛な大地となるというのは真っ赤な嘘。 日本の土の30%は黒ぼく土。世界的にレアな土が集中している不思議な国。黒ぼく土は反応性の高いアロフェンと呼ばれる粘土が多く、腐植と強く結合する。 ウクライナでは最も肥沃な土・チェルノーゼムが1トンあたり1~2万円で売買され、砂漠地帯などへ持っていかれる。肥沃な表土を失った土地はごみの埋め立て地となっている。 一つの地域の土壌の農産物ばかりを食べていると栄養素が偏るリスクがある。スーパーでいろんな産地の食材を選ぶことが健康にはいい。 土の種類は世界に12種類しかない。 1.未熟土:岩石、そして、未熟土がすべての始まり 2.若手土壌:未熟土が風化 3.永久凍土:極寒の未熟土 4.泥炭土:未熟土が水浸しになったもの 5.砂漠土:未熟土が乾燥 6.ひび割れ粘土質土壌:玄武岩や粘土が多い未熟土 7.チェルノーゼム(黒土):未熟土に腐植が蓄積、最も肥沃な土 8.粘土集積土壌:チェルノーゼムが粘土移動 9.黒ぼく土:未熟土が火山灰の場合 10.ポドゾル:若手土壌で砂質が酸性 11.強風化赤黄色土:若手土壌が風化して粘土移動 12.オキシソル:若手土壌が風化して鉄が多い場合、or強風化赤黄色土が風化
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地球人工100億人を養う肥沃な土壌を探す旅仕立ての語り口調が面白い。様々な土壌の成り立ちや用途を面白おかしく解説してくれる。 地球の土壌は12種類に分けられ、死んだ動植物が腐葉土よりも分解された腐食が土壌の栄養素の源である。腐食と粘土は様々な栄養素や水分を保持する力が強い。粘土と腐食が多い土壌が肥沃な土である。 日本の土壌は高温多湿で微生物の働きが強いため、最も稠密な人口を養える黒ぼく土が多い。肥沃な土と世界で名高いチェルノーゼムは降雨量の少ない土地に多く、土と水が必要な作物栽培では一歩劣る。 二酸化炭素や有機酸が水に溶け込むことにより酸性土壌となるため、アルカリの石灰肥料で中和する必要がある。 水田は、灌漑水でアルカリ成分を取り込ませることで土壌を中性にし、嫌気性にすることで鉄さび粘土を溶かし拘束していたリンを供給する。また、水を入れ替えることで細菌環境をリセットし連作障害をなくす。 書かれている内容をすべて理解するには、当然だが化学知識(各種イオン)が必要なためその点自分には難しかったが、単純な読み物としてもとても面白かった。
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土と岩の違いは、有機物を含むかどうかと思っていたがそうではないんだそうです。 岩が一度水に溶けて再結晶化してできた粘土が無いと土とは言わないだって。 だから、金星とか月には水が無い・無かったから土は無いという。 岩石の種類は腐るほど(石は腐らないが)あるが、土は12種類なんだっ...
土と岩の違いは、有機物を含むかどうかと思っていたがそうではないんだそうです。 岩が一度水に溶けて再結晶化してできた粘土が無いと土とは言わないだって。 だから、金星とか月には水が無い・無かったから土は無いという。 岩石の種類は腐るほど(石は腐らないが)あるが、土は12種類なんだって。バリエーションすくねぇ。 泥炭土、ポドゾル、チェルノーゼム、粘土集積土壌、永久凍土、若手土壌、黒ぼく土、強風化赤黄色土、ひび割れ粘土質土壌、オキシソル、砂漠土、未熟土 の12個。 東日本は火山灰のために黒ぼく土、西日本は若手土壌の2つに大きく分類されるそうです。 https://seisenudoku.seesaa.net/article/472425871.html
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今回紹介するこの本の著者はタイトルにある通り「土」を研究されています。なので内容としては土にはどんな種類があり、その土はどのような特徴を持つのかといったことがメインに語られています。私はこの本を父に勧められたのですが、3 年次までの座学や実習で地層や岩石について習ってもその表層の...
今回紹介するこの本の著者はタイトルにある通り「土」を研究されています。なので内容としては土にはどんな種類があり、その土はどのような特徴を持つのかといったことがメインに語られています。私はこの本を父に勧められたのですが、3 年次までの座学や実習で地層や岩石について習ってもその表層の岩石が風化した土の部分や土壌の部分についてどんなものがあるのかと強く意識することがなかったので最初は全く未知の分野なのかと思って読むのを渋っていました。しかし今回このような機会をいただいたので読んでみようかと思い、いざ手を付けてみるとなかなかどうして面白く読むことができ、さらに粘土鉱物についてや氷河堆積物についてなどこれまで座学で聞いたけれどちゃんとわかっていなかったことなどが分かりやすい図を使って書かれており、ぱっと思いついた言葉でいうと「痒い所に手が届く」本という印象を受けました。このような本の内容の中でも私が面白いと思ったのは著者が海外に存在する土の研究をした話です。著者は実際に現地に赴いて採取をしているのでその国での面白いエピソードや、土に関しては実際に見て印象を受けた部分を書かれており、驚きが多くあります。あまり言うとネタバレになってしまうのですが1 つアメリカのプレーリー地帯の話を紹介します。ここにはひび割れ粘土質土壌といわれる粘土が非常に多く含まれる土が存在し肥沃な土地として農場に利用されています。どのくらい粘土が多いかというと、裏山などで見られるねばねばの土の粘土の割合が30%であるのに対してこの土は粘土の割合が60%です。子供のころ林や森で土遊びしたことある人ならすごい多いんだなと感覚的に感じると思います。このひび割れ粘土質土壌は水や養分の保持に有利であり、農業を行う際のコストパフォーマンスが高いのですが、名前にある通りひび割れがひどく、車で走るとタイヤがとられてしまうほどだそうです。私が驚いたのはこの部分です。私は今までひび割れる土というのは常に乾燥して農業には向かないんではないか と勝手に思い込んでいましたがそんなことはないとわかったからです。種明かしをしてみれば、この土壌に含まれる粘土は多くがスメクタイトで給水と乾燥による膨張を繰り返すからひび割れるという話でしたが、いかに自分が普段目にする土について理解が浅いかが分かり、印象深かったです。 このように、土に関する話や著者の出先での話などが多く楽しく読めるうえに、図や写真も多くて理解もしやすいです。 今回紹介させていただいた「土 地球最後の謎 100 億人を養う土壌を求めて」ぜひ手に取って読んでみてください。 (地球惑星科学コース 4年)
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一般人でも非常に読みやすく、面白かった。シンプルにまた読みたい。人間を含めた地球上の生き物にとって、土がどれだけ大切なものか痛感すると思う。
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地球上にある土は12種類に分類されるらしいです。 そこに育つ植物も当然その土壌に左右されます。 砂漠や凍土に草も木も生えないことから想像するのは たやすいと思います。 逆に作物に有用な土も存在します。残念ながらそれは 日本ではないのですが、そんな豊かな土を世界中に 広めること...
地球上にある土は12種類に分類されるらしいです。 そこに育つ植物も当然その土壌に左右されます。 砂漠や凍土に草も木も生えないことから想像するのは たやすいと思います。 逆に作物に有用な土も存在します。残念ながらそれは 日本ではないのですが、そんな豊かな土を世界中に 広めることができれば世界中から食料危機なんぞは 無くなるのでは? そんな思いを込めて研究をしている学者がいることを 知るだけでも本書は一読の価値があります。
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第7回河合隼雄学芸賞受賞作。わたしはマニアックな地名について問われても即答できるほど地理が好きなのだが、高校時代には地理を選択しなかったこともあり、その内容はあくまでも教科書的な智識ではなく、趣味として個人で蓄えたに過ぎない。そのため、たとえばポドゾルやチェルノーゼムといった、高...
第7回河合隼雄学芸賞受賞作。わたしはマニアックな地名について問われても即答できるほど地理が好きなのだが、高校時代には地理を選択しなかったこともあり、その内容はあくまでも教科書的な智識ではなく、趣味として個人で蓄えたに過ぎない。そのため、たとえばポドゾルやチェルノーゼムといった、高校地理で学習する範囲の智識についてはまるで詳しくなく、そのへんの受験生を適当に捕まえて訊いたほうが詳しいだろう。だからコンプレックスを感じていたというほどではないのだが、土にかんする智識もいつか身につけたいとつねづね感じており、そのことも本書を手にとった理由のひとつである。さて肝腎の内容だが、著者が「まえがき」で記すように土というメチャクチャ地味な世界を扱っているにもかかわらず、かなりおもしろく読むことができた。構成としては、12種類(著者による分類)の土をそれぞれ実際にその眼で確かめるべく各地を股にかけたエピソードを交えながら、それらについて学術的な解説を展開するという形になっており、エッセイ的な楽しさもある。土にかんする理解も深まったし、われわれの生活がじつに多くの種類の土から成り立っているということは、言われてみなければなかなか気づかない。また、読んでいて名著『銃・病原菌・鉄』を思い出した。同書では、特定の地域にだけ文明が栄えた理由として農作物を挙げているが、本書の内容を踏まえてより正確な言い方をすれば、農作物そのものというよりもむしろ「土」だろう。冒頭の分布図をみてもよくわかるが、世界の中で農作物の生育に適した土壌がある地域は驚くほど少ない。ヨーロッパにはたまたまチェルノーゼムや粘土集積土壌といった肥沃な土壌が拡がっていたために、早くから世界史の中心となることができたのだろう。また、おなじように日本列島に世界的には稀少な黒ボク土がたまたま集まっていたために、こんな極東の島国に多くの人が集まり経済大国を築くことができたのである。このように、『銃・病原菌・鉄』のサブテキストのような読み方もできるため、同書の読者にもぜひ読んでほしい1冊である。
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