文字渦 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
漫然と読んでいたらうっかりすると自分の立ち位置が分からなくなってしまうような、読み手にも相当の集中を要求する複雑怪奇な連作集だ。 まず文字を擬生物に見立てたパッケージがピンとくるまでに、特に円城塔氏の他作あるいは周辺のSF作品にもし免疫がなければ、少々時間が掛かるだろう。 カンブリア大爆発やら犬神家の一族やらインベーダーゲーム? やら、ジャンル無視のパロディが繰り広げられる一方で、筆で紙に書かれていた時代の文字とデジタル入力してディスプレイに表示される文字との根元的な違いに関する考察が練達の技で描かれていたりと、まさに硬軟何でもありの思考が存分に踊りまくっている。 表現に語弊はあるが、これはどこかで頭がおかしくないと書けない作品であることは間違いない、もちろん誉め言葉。
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まさか文字にこんな解釈があったとは!面食らいながら読み進めましたが、読み終わった瞬間感じたのは爽やかで明るい希望。きっと媒体が紙から電子になっても、文字は生き残って本という存在も続いて行くでしょうね。これからも、いえこれまで以上に文字たちと仲良くしたいです。
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表意文字としての漢字をテーマに据えた短編集.様々の意味を持つパーツから構成された漢字という文字の多様性,意味や使われ方の流動性を,我々が疑問もなく受け入れていることに対する不思議さを喚起する内容.変な文字大好きな人間なので,変な漢字やアスキーアートみたいなものがたくさん出てきて楽...
表意文字としての漢字をテーマに据えた短編集.様々の意味を持つパーツから構成された漢字という文字の多様性,意味や使われ方の流動性を,我々が疑問もなく受け入れていることに対する不思議さを喚起する内容.変な文字大好きな人間なので,変な漢字やアスキーアートみたいなものがたくさん出てきて楽しかった.表記する材質や道具による字形の変化はアルファベットでも存在するため興味深い.漢字が組み合わさることで成長するのであれば文全体を一つの漢字と見なせるとか,意味の数だけ文字が必要なら,究極的に意味を体現する物体そのものが文字なのではという発想も面白いと思った.アルファベットだと数学記号としてではあるものの,Unicodeで同じ文字の違う書体(フラクトゥールとか)が割り当てられていて,こんなこと→A
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文字をテーマにした連作だが、それぞれ独立しているし、文字の役割も色々であるし、そもそも扱う文字も様々だ。ある時は言霊のようだし、生物のようなものの時もある。通読して、やっぱり漢字はすごいと思う。象形文字から整理され、異体字を多く産み、整理され、各地域でさらに変貌していく。生物に例...
文字をテーマにした連作だが、それぞれ独立しているし、文字の役割も色々であるし、そもそも扱う文字も様々だ。ある時は言霊のようだし、生物のようなものの時もある。通読して、やっぱり漢字はすごいと思う。象形文字から整理され、異体字を多く産み、整理され、各地域でさらに変貌していく。生物に例えるのもよくわかる。不思議な読後感だし、一字ずつ辿るのは難しく読むより眺める部分もある本だが、私は面白く読んだ。
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読み終わった…。 とりとめなく感想を書き留めるなら、第8章「誤字」で突然自我を得たようにおしゃべりを始めるルビのふるまいが可愛いこと、一冊を通して澱むところのない…というか淀んで立ち込めてもくもく煙っているというべきかまさに渦を巻くようなこの奇想はどこから湧いてくるの?という感...
読み終わった…。 とりとめなく感想を書き留めるなら、第8章「誤字」で突然自我を得たようにおしゃべりを始めるルビのふるまいが可愛いこと、一冊を通して澱むところのない…というか淀んで立ち込めてもくもく煙っているというべきかまさに渦を巻くようなこの奇想はどこから湧いてくるの?という感嘆、そして執筆状況報告でちらっと例のページを紹介してた時にも思ったとおりこれはアート作品なのだなと。 本というのは読めば読者は同じ話をたどってその先にいろいろと感想など思うところを抱くものだと思うけど、文字渦は話自体をどう理解するかも人それぞれな気がする。同じ文字を追いながら辿る道が違うというか。 なんにせよふりがなに徹している最中にふと読者が本文ではなく自分を見ていることに気づいたように、 ”おっと、こんにちは。おまえはだれかといわれるとそう、まあね、みてのとおりルビですね” と話し始めちゃうルビちゃんは、もはやひらがなの横まではみ出しながらびっしり行間を埋め尽くす異様な絵面的にも、妙に親しみのある可愛さ的にもこの本の最大の見どころなのではないかと思います。 とりあえず一読して理解するのは無理でした!
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文字(漢字)の作り、配置、音にまつわる12編。飛ばし読みはできず難航したがようやく読破。 進化論から密教曼荼羅、犬神家の一族まで、何でもあり。文字を使ったSF怪作、いや改作か。
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読み通すのにかなりの力が必要だと思い読み進めたが、ひょっとすると、この本は「理解」ではなく「感覚」を求めているのでは、と思い始めた。只々「文字」の並びを、その流れを見つめればいいのでは…と。そうすると、次から次へと、バカバカしい言葉が…。ひたすら「文字」で遊んでいる作者が羨ましい...
読み通すのにかなりの力が必要だと思い読み進めたが、ひょっとすると、この本は「理解」ではなく「感覚」を求めているのでは、と思い始めた。只々「文字」の並びを、その流れを見つめればいいのでは…と。そうすると、次から次へと、バカバカしい言葉が…。ひたすら「文字」で遊んでいる作者が羨ましい!そして、何より、「文字」は美しい…。
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今の世界とたどった歴史やこれからたどる近未来はほぼ同じだけど、ほんの少し、文字に係る法則が違う世界に放り込まれて、そこでエッセイや小説を手にした感覚 決して文書がわかりにくいということはない。けれど、前提にある法則が異なっているが故になかなか読み進むことができない、そんな気分を...
今の世界とたどった歴史やこれからたどる近未来はほぼ同じだけど、ほんの少し、文字に係る法則が違う世界に放り込まれて、そこでエッセイや小説を手にした感覚 決して文書がわかりにくいということはない。けれど、前提にある法則が異なっているが故になかなか読み進むことができない、そんな気分を味わった 面白いけれどアタマがすごく疲れる、でもまだ内容の1割も理解できていないような感じもするので、しばらくしたら再読したい
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中島敦とは違いますね。そこが面白かった。「もじうず」なんですから。もっとも、ルビと本文の二重表記で、本当に眩暈がしたのには参った。これに気づいた作家はえらい。
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#日本SF読者クラブ 円城さんとは相性が悪いらしく、読んでも頭に入ってこない。途中からは、ただただページをめくるだけだった。
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