文字渦 の商品レビュー
一瞬「文字禍」と空目して「中島敦への挑戦状か!?」と思ってしまいましたが、こちらは「文字の『渦』」ですね。 日本SF大賞・川端康成文学賞受賞作。日本SF大賞はともかく、川端康成文学賞の方は、かなりの英断ではないかと(笑)まさに「奇書」です。 あらすじを紹介するとネタバレになる類...
一瞬「文字禍」と空目して「中島敦への挑戦状か!?」と思ってしまいましたが、こちらは「文字の『渦』」ですね。 日本SF大賞・川端康成文学賞受賞作。日本SF大賞はともかく、川端康成文学賞の方は、かなりの英断ではないかと(笑)まさに「奇書」です。 あらすじを紹介するとネタバレになる類の作品については、レビュー投稿のときに注意を払うようにしていますが、この作品に限っては何をどう書けばネタバレになるのか、そもそも「あらすじ」とは(定義に悩む)といった、鴨ごときの浅薄な理解力では全く太刀打ちできない、まるで「手玉に取られた」かのような読後感です。でも、「あーよくわからん、ツマラナイ」という印象はなく、むしろ心地よい酩酊感が味わえますね(まあ、世の中ではそれを「手玉に取られた」というわけですがヽ( ´ー`)ノ)。 テーマは文字、主人公も文字、それを描いていくのも文字です。これまで見たこともないような文字がそれぞれに意味を持ちつつ大挙して登場し、組版にも工夫と意匠と暗喩が込められていて、これは出版社泣かせの作品だなぁ、と思ったのが第一印象(笑) 主要な登場人物(文字じゃなくて人間)も数名出てきますが、彼ら/彼女らはあくまでも文字の語り部であり観察者であって、結局は文字の、文字による、文字のための世界。人を食ったようなユーモラスな筆致で描かれる、文字をめぐるアイディアの奔流を楽しむことができれば、それに尽きるのでは、と思います。 同じように、文字を駆使して世界を描き出す作家として、鴨は真っ先に酉島伝法氏の作品を想起します。 が、酉島作品は文字によって異質な世界を、そこに暮らす動植物や無生物も含めて分厚く描き出し、知的大伽藍のような圧倒的世界観を広げていく「構築的」な作風であるのに対し、円城作品は文字というものを徹底的に掘り下げて、様々な角度・観点・価値観からしつこくしつこく文字の本質を突き詰めて、掴み取ったレイヤーを重ねていく、「重層的」な作風だと感じました。言い方を変えれば、酉島伝法は作品を「展開」し、円城塔は作品を「演算」しているイメージ。 共通して言えるのは、どちらも日本語を母語とする者こそが味わうことのできる、稀有な作品だということです。日本でSF者として生まれてきて、本当によかったなー。 しかし、酉島作品はギリギリ翻訳可能ですが、この「文字渦」は無理ですよね・・・^_^;
Posted by
最後まで読めばもう少し色々なことが謎解きされるのかな?と思ったが、でもなかった。 私が読めていない(知識が足りない)だけなのかもしれないし、もしかして作者の中でも元々全体的な設定はないのかもしれない。もしかしたら他の作品を読んだらもう少しわかるのかもしれない。
Posted by
文庫判が出るというので慌てて読了。文字の中に、文字の外に、どこへ行こうとするのだろう。何度も読みたい。
Posted by
色々な事情で中断してしまい、読むのに半年くらいかかった。面白いのだが、やはり難しい。「闘字」「誤字」あたりが良かった。
Posted by
情報技術と歴史や仏教を下敷きに、「文字」を題材にしたSF短編集。 何を元ネタにしているか、自分が読み取れたのはバイナリ、シンタックスハイライト、マークアップ言語、電子書籍(kindle?)、文字コード、デザインツール、typo、インベーダーゲームなど。インベーダーゲームのくだりは...
情報技術と歴史や仏教を下敷きに、「文字」を題材にしたSF短編集。 何を元ネタにしているか、自分が読み取れたのはバイナリ、シンタックスハイライト、マークアップ言語、電子書籍(kindle?)、文字コード、デザインツール、typo、インベーダーゲームなど。インベーダーゲームのくだりは特に笑ってしまった。 概念で殴るというか、こういう解釈もできるよねっていうのが好きなんだなあと自覚できた一冊。 調べながら読むのを解説でもおすすめされているので、PC版kindleで読んで即調べるのが良いかもしれない。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
読んでも読んでも、読んだようでも読んでないような気もする。不思議な気分。 禅問答を読んでるみたい。 時をおいて読み直すとまた違う風景が見えそう。 今の時点ではよく見通せない。 いつか、また読みたい。
Posted by
円城さんの作品は初めてだったが、全くついていけず断念…。 何というか格闘技的な読書が要求されますね。
Posted by
読むのが大変でした。…それはもう読むのが大変でした。笑。初の円城塔作品でしたが、他のレビュアーさんの感想にはこれが平常運転とあり、ちょっとどきどきしています。他の本、読めるかしら…。Kindleで読んだのですが、ルビの部分はちゃんとルビでした(ルビを使った仕掛けがある章があります...
読むのが大変でした。…それはもう読むのが大変でした。笑。初の円城塔作品でしたが、他のレビュアーさんの感想にはこれが平常運転とあり、ちょっとどきどきしています。他の本、読めるかしら…。Kindleで読んだのですが、ルビの部分はちゃんとルビでした(ルビを使った仕掛けがある章があります)。電子書籍でもきちんとできていてすごい。紙の本だとどうなっているのかとても気になりました。犬神家の一族の一族とか読んだことがある方はよりいっそう楽しめると思います。自分の想像を超えるような発想がたくさんあり(印刷機とか)、円城先生の世界にただただ圧倒されておりました。奇想天外な世界を味わいたい方は是非。
Posted by
いつも通り頭がおかしい平常運転。 兵馬俑の話と、膨大なテキスト群を海や島に見立てた話が面白かった。文字が生きていたという発想がすごい。私は文字までは考えが及ばなくて、言葉に利用されるという発想止まりだった。
Posted by
文句のつけようのない傑作。例を挙げるなら新国誠一のような、具体詩的な要素がふんだんに鏤められている。恐らく英訳はほぼ不可能だろう。これを日本語で読める喜びはこの上ないものだ。言語の意味に執拗に拘り、意味と文字とを視覚的に楽しめるものにしている。
Posted by