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水曜日の凱歌 の商品レビュー

4.3

44件のお客様レビュー

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2020/05/21

戦争は戦争中はもとより戦後も国民に多大な苦しみを与え続けた。戦後、残された女、子供は様々な生き方を選ばなければならなかった。鈴子の母つたゑは自分と娘が生き抜いていくために今までとはがらりと違うしたたかに生きていく道を選ぶ。つたゑにはそんな才能も強さもあった。14歳という多感な時期...

戦争は戦争中はもとより戦後も国民に多大な苦しみを与え続けた。戦後、残された女、子供は様々な生き方を選ばなければならなかった。鈴子の母つたゑは自分と娘が生き抜いていくために今までとはがらりと違うしたたかに生きていく道を選ぶ。つたゑにはそんな才能も強さもあった。14歳という多感な時期であった鈴子はそんな母に反感を覚えながら次第に母を理解し、一人で強く生きていくことを教える母に感謝するようになる。 鈴子の友人勝子の母は焼け野原となった東京にとどまり、爆発で腕を失った勝子を看ながら貧乏な苦しい生活を送るが鈴子との出会いをきっかけに熱海に行きまもなく事故で亡くなる。 まだ自立していない子供の人生は親の考え方、生き方によって左右されてしまう。成長とともに二人が新たな自分の人生を生きていけることを願った。

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2020/04/24

戦後を生き抜く女性のお話。 恥ずかしながら、この本を読むまでRAA(特殊慰安施設協会)という存在を知らなかった。 終戦を迎えたことは1つの区切りではあるけど、それまでの思想や環境が変わっていく中でどう生き抜いていけばよかったのか、深く考えさせられた。 女性は強いとか、女性は...

戦後を生き抜く女性のお話。 恥ずかしながら、この本を読むまでRAA(特殊慰安施設協会)という存在を知らなかった。 終戦を迎えたことは1つの区切りではあるけど、それまでの思想や環境が変わっていく中でどう生き抜いていけばよかったのか、深く考えさせられた。 女性は強いとか、女性はあざといとか、そんな言葉じゃ言い表せないけど、最後はちょっとスカッとした。

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2020/04/19

どうしてこう、いつの時代も男はバカなのか……。 ごめんなさい、そう思わずにはいられない話でした。 戦争に負けた日本に、戦勝国のアメリカ人がいっぱいやってくる。 だから、頼まれもしないのに、慰安所を作った……。 そういうこと、我慢できねーのかよバカが、と女の私は思う。 きっと日...

どうしてこう、いつの時代も男はバカなのか……。 ごめんなさい、そう思わずにはいられない話でした。 戦争に負けた日本に、戦勝国のアメリカ人がいっぱいやってくる。 だから、頼まれもしないのに、慰安所を作った……。 そういうこと、我慢できねーのかよバカが、と女の私は思う。 きっと日本男子は、自分たちが我慢できないから、アメリカ人もそうだと思ったんだろう。 まあ、実際そうだったんだけど。 ホントバカ。悪いけど。 色んなことを「ずるい」と思う鈴子の気持ちもわかるし、おそらく日本の男に腹を立てている、という鈴子の母の気持ちも、わかるなあ。

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2020/04/12

戦時下、父やきょうだいを亡くし、母親と2人で東京で暮らす二宮鈴子。彼女の14歳の誕生日、昭和20年8月15日水曜日、戦争は終わり、日本は敗戦国となった。混乱する社会の中で、母子2人のサバイバルがはじまる。 戦争以前、女は家庭に入り、男たちを陰で支えるだけだった。しかし、敗戦国と...

戦時下、父やきょうだいを亡くし、母親と2人で東京で暮らす二宮鈴子。彼女の14歳の誕生日、昭和20年8月15日水曜日、戦争は終わり、日本は敗戦国となった。混乱する社会の中で、母子2人のサバイバルがはじまる。 戦争以前、女は家庭に入り、男たちを陰で支えるだけだった。しかし、敗戦国となり、多くの男手を失った日本では女たちも自立しなければならない。在日米軍の手足となる者、性を商売にする者、小料理屋、女中、キャバレー。男は女を守れなくなった日本で、奮闘する女たち。その一方で女が働くことを嫌悪する古い価値観を持つ男女もいる。 鈴子の母は英語を知っていたおかげでアメリカ軍の慰安婦施設の通訳として働くことができた。十分な報酬もらい、めぐまれた衣食住の提供を受ける鈴子と母。しかし、鈴子にとって、キャリアウーマンとして高みを目指し、米軍将校と付き合う母は昔の母ではなかった。そして、周りを見れば、その日をどうにか暮らしている貧しい女たちがいる。 豊かな暮らしをさせてもらっているのは、母のおかげ。しかし、そんな母にやりきれない気持ちを抱えつつ、自分ひとりで生きていくことにも臆病な鈴子。当時の日本は家にこもっておとなしくしている戦前の女性像と1人で生きて社会に向き合う女性像をめぐって、女たちが戸惑う時代だった。 敗戦から約1年後の水曜日、女性にとって新たな歴史的出来事によって、本作品は終結する。

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2020/01/15

再読。 14歳の多感な時期の女の子鈴子の目線で描かれる戦後の日本。 負けた国の女達のそれぞれの生き方に、複雑な思いを感じながらも、大変興味深く読み直しました。 鈴子が嫌悪感を感じてしまう母つたゑの生き方も、この時代にはやむを得ないもので、ある意味逞しく、羨ましくすら感じました...

再読。 14歳の多感な時期の女の子鈴子の目線で描かれる戦後の日本。 負けた国の女達のそれぞれの生き方に、複雑な思いを感じながらも、大変興味深く読み直しました。 鈴子が嫌悪感を感じてしまう母つたゑの生き方も、この時代にはやむを得ないもので、ある意味逞しく、羨ましくすら感じました。 勝子ちゃんとの再会のシーンには、涙が止まりませんでした。 勝子ちゃんと鈴子の会話、これこそが戦争で失われてしまっていた大切なものだったと思います。 慰安所をテーマにしている部分で、語られることの少ない作品かもしれませんが、素晴らしい作品。 またいつか手に取りたいと思います。

Posted byブクログ

2020/01/01

1945年8月15日、日本にとっての第二次世界大戦は幕を下ろす。 しかし、単純に、「戦争が終わった=平和が戻る」ではなかった。 敗戦国・日本には占領軍がやってくる。物資は不足している。戦争で失われた人材も数知れぬ。 人々は「戦後」がどうなるのかをはっきりとは描けぬまま、見えない新...

1945年8月15日、日本にとっての第二次世界大戦は幕を下ろす。 しかし、単純に、「戦争が終わった=平和が戻る」ではなかった。 敗戦国・日本には占領軍がやってくる。物資は不足している。戦争で失われた人材も数知れぬ。 人々は「戦後」がどうなるのかをはっきりとは描けぬまま、見えない新時代へと、いわば、ハードランディングせねばならなかった。 そうした中で、国策として設立された施設があった。 RAA(Recreation and Amusement Association)。日本語では「特殊慰安施設協会」と呼ばれる(cf:『敗者の贈り物』)。 占領軍兵士向けの慰安所で、一般の婦女子が兵士たちに襲われることがないよう、「防波堤」として作用するための施設だった。有体に言えば兵士の性のはけ口であり、娼館である。 国の肝いりで、かなりの好条件で大々的に募集がかけられた。表向きは「ダンサー」や「事務員」等となっていたため、仕事の内実を知らずに多くの女性たちが詰めかけた。面接で初めてその事実を知り、ショックを受けても、実のところ、他に選ぶ余地はなく、そのまま働き始めるものも多かった。 本作はこのRAAをテーマに据えた小説である。 但し、その切り口には少々ひねりがある。 主人公は14歳の少女・鈴子。父は交通事故で亡くなっており、兄たちは出征し、姉と妹は空襲で命を落とす。鈴子は母と2人きりで終戦を迎える。 母は語学力を武器にRAAでの職を得る。これは本当に「事務職」としてであり、母は春をひさぐわけではない。 物語は鈴子の目から見る形で進むので、RAAの生々しい内情は描かれない。 だが、思春期特有の不安定だが鋭い視線で、鈴子は戦後のある時期の深層をえぐり取って見せるのだ。 鈴子は一貫して不機嫌である。 いつもどこかで、「ずるい」と思っている。「つまらない」と思っている。何の罪もない妹が死ななければならなかったこと。大人たちが子供たちを守ってくれないこと。「どうして」と聞くと叱られること。「神の国」である日本のあちこちが焼き払われていくこと。 戦争が終わっても、暮らしは元には戻らない。鈴子は、不本意なことに、米軍の上陸に備えて、襲われることのないように髪を短く刈られ、男の子の服を着せられる。 小さいながらも会社の社長の奥様であり、それまで働いたこともなかった「お母さま」は、英語ができるため、RAAで働くことになったという。 母に連れられて職場近くに引っ越した鈴子は、徐々に、そこがどういう施設なのかを朧気に知ることになる。ついこの間まで「鬼畜」と呼ばれた米兵たちの機嫌を取る仕事。実際に米兵の相手をする女性たちの中にはひどい目にあっている人もいるという。「そんなところで働いて、お母さまはそれでいいの」と怒りも沸く。 けれども一方で、彼女は知ってもいるのだ。自分が他の子よりもおなか一杯食べられ、身ぎれいにしていられるのは、お母さまの仕事のおかげであるということも。そして自分がその特典を投げうつことができないことも。 母、つたゑは、よく言えば目端が利き、悪く言えばしたたかな人である。 父を亡くした後は、父の友人の愛人となり、その後は占領軍将校を射止め、戦後の混乱を渡り歩いていく。鈴子は確かに、この母がいなければ、貧窮にあえぐことになっていたはずだ。 鈴子がいかに反感を覚えようと、また将来的には袂を分かつことになろうと、母なくしては生き延びられなかったのも確かなのだ。 本作では鈴子と母をとりまく他の女性たちの人生もまた印象的に描かれる。 人目を引く美人だが、夫が出征する際に、他の男に奪われることがないよう、顔に大きな傷をつけられたモトさん。 大学出だがダンサーとなり、男たちへの怒りをたぎらせて、将来的には驚くような転身を遂げるミドリさん。 鈴子の幼馴染で、戦争でひどい目にあう勝子ちゃん。 物語の句点となる水曜日は三度来る。 終戦の日であり鈴子が14歳の誕生日を迎える1945年8月15日。 「オフリミット」でRAAが閉鎖される1946年3月27日。 そしてエピローグの1946年4月3日。 1つの時代の終わりであり、1つの時代の始まりである水曜日。 そのいずれで女たちは高らかに歌うのか。 700ページの大部の大半は、ざらりと重苦しい。 けれども、物語の最後には、幾分かの光が差す。結局のところ、どうしようもなくても、やるせなくても、生き残った者は生きていくのだ。 その牽引力が怒りであろうとも、まだ見ぬ未来へと拓けていく道は、ほのかに明るい。 鈴子は時代を変えていくことができるのだろうか。できたのだろうか。 お母さまが願ったように、「一人で生きていかれる人」に、おそらくはなったのだろう、と、かすかに思う。

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2019/12/13

主人公は14歳の女の子。話は昭和20年の春から始まる。空襲で家を失い兄や妹も失ったが、かろうじて母とは再会し2人で生きていくことになる。そして終戦を迎え、母は英語力を買われある団体に雇われる。それは政府からの要請による、進駐軍を相手にする慰安婦を世話する組織だった。最初は主人公は...

主人公は14歳の女の子。話は昭和20年の春から始まる。空襲で家を失い兄や妹も失ったが、かろうじて母とは再会し2人で生きていくことになる。そして終戦を迎え、母は英語力を買われある団体に雇われる。それは政府からの要請による、進駐軍を相手にする慰安婦を世話する組織だった。最初は主人公はそれがどういう施設なのかわかっていなかったが、次第に理解し慰安婦たちの状況を耳にすることにより、この施設を性被害を民間人に与えないための防波堤と言っている政府などに疑問を持つようになる。 一方でかつては良妻賢母だった母が働くようになり、ついこの間までは鬼畜と呼んでいた米兵を相手に愛想を振りまいたりする母のしたたかさにも嫌悪を覚えたりする。 春の大空襲からわずか1年の間に目まぐるしく変わっていく環境を少女の目を通して描いている。 戦中の慰安婦問題などはよく知られているが、戦後このような施設があったとは知られていない。事務職員として募集し面接の時に初めて本当の仕事が明かされる。戦後、家も働き口もなくすがる思いで応募した女性たちは他に選択肢がない。半ば強制的に身体を売ることを強いられた女性たちが全国で5万人ほどいたという。しかもある日突然解雇される。 そんな事実があったことはまるっきり知らなかったし、誰も問題にしてこなかった。戦後の混乱期だったし実質的には数ヶ月しか稼働していなかった施設とは言え、もっと知られるべきなのではないかと思った。

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2019/10/17

8月15日 戦争に負けたその日からすべてが変わってしまった。 戦後を懸命に生き抜く女たちの生活が 14歳の鈴子を通して描かれる 英語力を生かして進駐軍相手の通訳として働く母。 男を利用しながら「力」を求める母に 反発しながらも「しかたない」と無気力になる主人公 今の80代、...

8月15日 戦争に負けたその日からすべてが変わってしまった。 戦後を懸命に生き抜く女たちの生活が 14歳の鈴子を通して描かれる 英語力を生かして進駐軍相手の通訳として働く母。 男を利用しながら「力」を求める母に 反発しながらも「しかたない」と無気力になる主人公 今の80代、90代ってこんな思いをして生き抜いてきたんだなぁと改めて実感・・・

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2019/09/12

戦争が終わった終戦の日からの日々を14歳の鈴子の目線で描いた戦後の物語。 読み応えがあった。知らなかったことがたくさんあった。戦争中の悲惨な話は見聞きすることがあったけど、戦後の混乱期にこんなことがあったとは。 もちろん戦時中の鈴子の体験は凄まじく、戦争で母と二人生き残るも焼け野...

戦争が終わった終戦の日からの日々を14歳の鈴子の目線で描いた戦後の物語。 読み応えがあった。知らなかったことがたくさんあった。戦争中の悲惨な話は見聞きすることがあったけど、戦後の混乱期にこんなことがあったとは。 もちろん戦時中の鈴子の体験は凄まじく、戦争で母と二人生き残るも焼け野原となった東京同様に鈴子の心もがらんどうになってしまいます。でも母は生き延びるためにたくましく、したたかに新しい生活を始める。英語ができた母は、進駐軍相手の慰安施設というものにかかわる仕事に就く。 多感な年頃の鈴子から見える理不尽と矛盾。防波堤となった女の人たちと自分は何が違ったのか、この間まで鬼畜と教わっていたアメリカ人に奉仕するのはなぜなのか。笑顔で優しいアメリカ人が日本の女の人を買うのはなぜか。母がうまく時代を切り抜けた分、鈴子は周りより少し恵まれた生活ができます。そのことに対しても負い目や母に対する反発の気持ちを感じる。鈴子の気持ちがよくわかる。でも母の「もう懲り懲りなの。これからはちからが必要なのよ」というのもわかる。時代に背を向けるでもただ受け入れるのでもなく「受けて立つ」。そうして生き抜く気概が必要だった。変わらないと生きていけない。ただ弱い者から切り捨てられていく。 こんな戦争さえなければ。子どもたちにしてみれば、知らない大人が勝手に戦争を始めて、我慢させられ、すべてを奪われ、人生を変えられた。どうしてこんな戦争をしたの?何も悪いことしていないのに。 勝子ちゃんとの再会には涙が出た。なにもかも本音で話せる相手にやっと会えて本当に良かった。 ひとりでも生きていけるようにと言われ決意した鈴子はその後どんな仕事についてどんな大人になったのだろう。気になる。 本当に読む価値のある本でした。

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2019/07/16

戦時中の従軍慰安婦問題については、韓国の執拗な追及で、しばしばマスコミに取り上げられる。 しかし、敗戦直後の日本で、占領軍のために同じような目的のものが、政府によって組織されていたとは、寡聞にして知らなかった。 著者は、戦後裏面史のこの事実を、14歳の少女鈴子の眼を通して鮮やかに...

戦時中の従軍慰安婦問題については、韓国の執拗な追及で、しばしばマスコミに取り上げられる。 しかし、敗戦直後の日本で、占領軍のために同じような目的のものが、政府によって組織されていたとは、寡聞にして知らなかった。 著者は、戦後裏面史のこの事実を、14歳の少女鈴子の眼を通して鮮やかに描き出した。悲惨な現実ではあるが、彼女の眼を通すことによって、微妙なバランスを保っている。 しかも、ここに登場する女性たちは、時代に翻弄され、国家にさらに男たちにも裏切られながらも、絶望を突き抜けたところに立って爽快でさえある。 題名『凱歌』に象徴されるように、心地よい読後感となっている。 登場人物の一人ミドリは鈴子に、彼女の母親の気持ちを代弁し、「この国と、この国の男たちとに、そうねえ――多分、もう二度と信じるものかと思っているんじゃないかしらね。猛烈に、腹が立っているんだろうと思うわ」と、話す。 一方で、彼女はこのように言い放つ。 「あたしたちを犬畜生だとでも思っていやがるのかっ!パンパンだろうが何だろうが、あたしたちは人間なんだっ、この日本で生まれた、日本の女なんだよっ!おまえたち男がだらしないばっかりに、こうしてあたしたちが、後始末しなけりゃあ、ならないことになったんじゃないかっ」 彼女のこの啖呵に胸のすく思いがした読者(特に女性)が多いことだろう。

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